SCP-1475-JP

登録日:2017/04/14 Fri 22:28:58
更新日:2023/11/05 Sun 13:07:41
所要時間:約 4 分で読めます





東西南北津々浦々。たまには路線変更もありさ、何たって旅なんだし。


SCP-1475-JPは、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCP)のひとつである。
オブジェクトクラスは「Safe」。
項目名は「標的はノースカロライナ」。


概要

コイツが何かと言うと、異常な特性を持った椅子である。
日本産の杉で作られており、背もたれには「Welcome to America」と書かれている。

現在、財団は13脚を収容しているが、SCP-1475-JP-13だけは実験への使用が禁止されている。
何かとんでもない特性があるのか、とこの時点で思うだろうが、それには先を読んでいただきたい。


この椅子の異常な特性は、人間が座った時に現れる。
座った人間はSCP-1475-JP-Aとなり、その時点で椅子ともども物理的な干渉を受け付けなくなる。
なお、来ている服や装備している物品にもこの耐久性が付与されるが、身に着けている本人のものより弱く、脱落することもある。

座ってから3分経つと、この椅子は細かく震えながらアメリカ合衆国・ノースカロライナ州の方角を向き、それからきっかり5秒後、座っている人間を前方45度の角度で大爆発と共に射出する
この時発生する爆炎は見せかけであり、燃え移ったり広がったりはせず、発生から程なくして勝手に鎮火する。

射出速度は時速1000Km以上というとんでもないスピードであるが、対象に付与された耐久性は維持されており、また意識もあるため通信機を用いれば会話も可能。
また、射出から20秒ほどで存在が一時的に変化し、障害物をすり抜けるようになるが、周囲がターゲットを視認することも出来なくなる。
この20秒の間に障害物にぶつかった場合、ターゲットはぶつかったまま20秒が経過するまで静止し、透明化が起きると同時に同様の速度ですっ飛んで行くことになる。
この時、ぶつかった障害物・ターゲットともに無傷であり、また音速を超えたことによるソニックブームも発生することはない。
この透明化はノースカロライナへの「着弾」の20秒ほど前に解除される。

射出から大体2時間10分前後の時間を経て、対象はノースカロライナ州の特定の座標を基準とした、誤差20m以内の地点に着弾する。この時発生するはずのクレーターなどは発生せず、耐久性により本人も怪我をしたり死んだりすることはない。
着弾から3秒後にこの耐久性は失われ、元に戻る。

異常な特性については以上が全てで、他に何かが起きるわけでもない。
なぜターゲットがノースカロライナへ飛ばされるのか、という理由についてもわかっていない。


収容経緯&実験記録

このオブジェクト、元々は「爆発とともに浮浪者が消えた」という通報が警察に寄せられたことで、財団の注意を引いた。
そこで、現場にエージェントたちが急行したのだが、異常性を把握していなかった、というか何が原因なのかがわかっていなかったため、うっかりこの椅子にエージェント・飛鳥が座ってしまった。

結果、エージェント・飛鳥はノースカロライナへ射出されたが、先に飛ばされた浮浪者が混乱しているのを見つけ、インタビューを行った。さすがプロ。
その結果、この椅子がオブジェクトであることが判明し、目撃者や当事者に記憶処理を施して収容と相成った。

そして、オブジェクトを確保すれば、次は収容のためのデータ取り、要は実験である。
なお、これらの実験にはそれぞれ別の椅子が使われている。

  • 実験その1
試行:実験室内でDクラスを座らせてみる
結果:射出直後に実験室の壁に激突。20秒間静止した後、ノースカロライナへすっ飛んで行った。2時間24分後、着弾。
メモ:これ以降の実験は屋外で行う。

激突したDクラスはどんな気持ちで20秒を過ごしたのだろうか。

  • 実験その2
試行:GPSと通信装置を持たせてDクラスを座らせてみる
結果:GPSは正常に機能。通信も問題なく行えたが、寒さを感じないなど、断片的な証言しか得られなかった。2時間18分後、着弾。

珍しくGPSが仕事をした例である。

  • 実験その3
試行:沖縄県から射出してみる
結果:2時間15分後、着弾。

発射地点がどこであっても、かかる時間は2時間少々で大きくは変わらないらしい。

  • 実験その4
試行:ノースカロライナの着弾地点から射出してみる
結果:真上に射出。空中で静止した後、2時間32分後に着弾……したが、SCP-1475-JP-4の上だったため、直後にもう一回射出。2時間12分後、再度着弾し回収。

着弾点にこの椅子があった場合はもう一回射出されること、射出点がどこだろうと滞空時間は対して変わらないことが判明した。このDクラス、とんだ災難である。

  • 実験その5
試行:色々な動物を座らせてみる
結果:人間以外は変化なし。

人間だけが射出されるらしい。基準は何だろうか。

  • 実験その6
試行:2人、3人と複数人で座らせる
結果:同時に射出。2時間少々で着弾。

人数は関係ないらしい。なお3人の試行では楔形の編隊を組んで飛んで行ったとか。


とまあ、大体異常性はわかって来た。
要するにこれらの椅子に座ると、ノースカロライナへ向けて射出され、2時間少々の空の旅のあと、ノースカロライナへ無事に着弾するのである。
しかし、ここで一つ事件が起きた。

大体データも揃ったかな、という頃になって、財団のゴミ捨て場から13脚目が発見されたのだ。
新しく発見されたのならデータを取らなければならない。他の個体にはない異常性があるかも知れない。
というわけで、実験。

  • 実験その7
試行:SCP-1475-JP-13に、GPSと通信機を持たせたDクラスを座らせる
結果:射出直後にバードストライクしてGPSが脱落。

で、事件はここで起きた。Dクラスは無事に着弾したのだが、そこには待機しているはずのノースカロライナのサイト職員の姿が全くなかったのだ。
日本で記録をとっていた研究員は、もしや異世界か異空間かに飛ばされたのか、と危惧し、エージェント・飛鳥に本部への緊急連絡を指示。
問題のDクラスは、夜の闇の中で周囲を探索し、街の光を発見。
見つけたそれは街灯であり、さらに周囲を見回すと地名の書かれた看板を発見。

で、それを見つけたDクラスの叫びがこちら。

おい! ふざけんじゃねえぞ! 話が違う!



ここはノースカロライナなんかじゃない! サウスカロライナだ!



……なぜかこのDクラス職員、サウスカロライナに着弾してしまったのである。
もちろんそこにもサイトはあるので、現地の職員がDクラスを無事回収した。
で、SCP-1475-JP-13で追加実験を行ったところ、9割以上は他と同じくノースカロライナへ着弾するのだが、どうもコイツだけどこかがバグっているらしく、2%の確率でサウスカロライナ、1%の確率でウェストバージニアにミスショットを起こすことが判明。

ごくごく低確率でもどこに飛ばされるかわからない、またこれ以外に飛ばされる場所があるかもしれないのでは危険だ、ということでこの13番目を使用した実験は禁止されることになった。



座るとノースカロライナへ飛ばされる椅子。

空の旅は2時間少々。

1つだけたまに間違うのはご愛嬌。



何、この……何?



Tale「Unwelcome to America!」

この椅子の類似品をたまたま手に入れた北朝鮮を舞台にした短編。
要約すると、この椅子を北朝鮮が改造し、着弾時に半径150kmを巻き込む大爆発を起こすようにした新兵器「刑火鳥7号」に、トップの脅威となる人物を乗せてアメリカを消し飛ばそうとする、という話である。

ちなみに結果。

incident: ████/██/██未明、朝鮮半島北部に半径およそ150kmの巨大クレーターが突如として出現しました。
韓国支部からの報告によれば、クレーター出現の2時間23分前に、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)から飛んでいく人型の物体を数秒間確認できたとのことです。また、クレーター中心部に40代の男性が倒れているのを発見しました。
いずれの特徴からSCP-1475-JPとの関連性が指摘されていますが、これまで見られていなかったクレーターの発生理由など多数の不明点が浮上しています。現在、韓国支部との協力の元で調査を進めています。

見事「ノース」コリアに着弾。自国の大半*1(トップの脅威となる人物除く)を吹っ飛ばしてしまった模様。だめだコリァ。


追記・修正は太平洋上空をマッハで飛びながらお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1475-JP - 標的はノースカロライナ
by semiShigUre
http://ja.scp-wiki.net/scp-1475-jp

Unwelcome to America!
by kyon824
http://ja.scp-wiki.net/unwelcometoamerica

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最終更新:2023年11月05日 13:07

*1 単純計算で、北朝鮮の面積約120,500km²。クレーターの面積約70,650 km²