SCP-374-JP

登録日:2017/04/14 Fri 21:43:08
更新日:2024/03/21 Thu 13:31:12
所要時間:約 8 分で読めます





「何て悪質なオブジェクトだ。また俺の休みがなくなった!」-とあるエージェント


SCP-374-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスEuclid

項目名は「秘密結社キャッチ&リリース」。
新手の要注意団体みたいな名前だが、SCPオブジェクトである。


概要

コイツが何かと言うと、財団日本支部のとあるサイト内で一か月ごとに発生する財団職員の誘拐事件である。
つまり現象系のオブジェクトであり、SCP-374-JPはこちらに与えられたナンバーである。

該当サイトには、食堂、受付、会議室のいずれかに「秘密結社キャッチ&リリース」と署名された封筒、SCP-374-JP-Aが出現し、これが事件の始まりとなる。
中の便箋には、サイト内の職員の内誰か一人の名前と、日付、時刻、「3時間預からせていただきます」というメッセージが書かれている。
ちなみに職員の誘拐と書いたが、そうでなくてもこのサイトに最低3日間滞在するとターゲット候補となる。

この日付と時刻は事件が発生するタイミングを予告したものだが、日付に関しては封筒の出現から1~2日後、時刻に関しては午前9時で固定されている。少なくとも、現在ではそれ以外の時刻は未確認である。

で、実際にその日の9時に何が起きるのか?
まず、ターゲットとなった職員の周囲の地面や壁が、材質にかかわらず水面のように波打ちはじめ、その中から人型の生物が出現する。
この人型実体だが、黒い背広を着ているのはともかく、明確な異常として、頭がオオクチバス(通称ブラックバス)になっている
さらに、常に全身が淡水で濡れており、体型や服の構造、断面図を見た限りにおいては男女の性別や、個体による体格差も確認されている。

この実体群、SCP-374-JP-Bは人間と比べるともろく、体を暴徒鎮圧用ゴム弾で撃たれた場合でも死ぬ、という虚弱っぷりである。この死んだ個体については、体は水のように溶けて消え、頭のブラックバスはそのまんま魚の死骸として残る。

この魚人間に触れられたターゲットは意識を消失し、最低5分間昏睡する。
障害物や防護服で接触を阻もうとしても、すり抜けてしまうために妨害は不可能。

対象の周囲に出現した魚人間たちは、対象が居る方向へ動き出す。
財団は当然、妨害を試みるが、いくら殺しても次から次へと補充されるため、結果的に時間稼ぎにしかならない上に誘拐そのものは阻止出来た例がない。
ターゲットを確保した魚人間たちは、出てきた時と同じように地面や壁を波打たせて沈み、消える。


各種記録

オブジェクトの特性が特性だけに、実質収容が全く出来ていない。
そのため、財団の対応は当初、どうやったらこの誘拐を防げるか、という部分に絞られていた。

  • その1
試行:ターゲットを金庫に入れる
結果:金庫の中に魚人間が出現。誘拐阻止失敗。

  • その2
試行:クレーンでターゲットを空中に吊るし、周囲を機動部隊で固める
結果:数の暴力で押し切られた。誘拐阻止失敗。

  • その3
試行:強化ガラスの部屋にターゲットを入れる
結果:壁面・床面から魚人間が出現。誘拐阻止失敗。
メモ:首の接合部を確認したが、魚の腹に首の断面がくっついているだけじゃないか。

  • その4
試行:ターゲットを壁と床が金網の部屋に入れる
結果:金網から魚人間が出現。誘拐阻止失敗。
メモ:てっきり、金網の外から出現して、中に擦りぬけると思ったが。中に直接出現するのか。

  • その5
試行:ターゲットをヘリコプターに乗せる
結果:ヘリコプターの中に魚人間が出現。誘拐阻止失敗。

  • その6
試行:ターゲットを空中のヘリコプターからハーネスで吊るす
結果:ヘリコプターの中に魚人間が出現。誘拐阻止失敗。パイロットが動揺したため、魚人間がパイロットを昏睡させて操縦を代わり、近場のヘリポートに着陸させた。
メモ:死傷者を出す気はないらしい。

  • その7
試行:ターゲットを小型スクーターで走らせる
結果:対象の後ろに魚人間が出現。ターゲットを昏睡させた後スクーターを徐行させ、転倒させながら降車させた。誘拐阻止失敗。

  • その8
試行:ターゲットを小型スクーターで走らせ、周囲にスナイパーを大量に配置
結果:ターゲットの後ろに出現した魚人間を狙撃したが、直後に現れた別個体にスナイパーが制圧された。誘拐阻止失敗。


総括:阻止不可能。
どうあっても誘拐そのものは阻止できない、という結論に至った。
ちなみに誘拐されたターゲットはどうなるのかというと、結構広めの一室に留め置かれる。
室内には三点ユニットバス、シングルベッド、本棚が1つある。置かれている本はおおむね魚関係で統一されており、部屋の出入り口には魚人間が一人居座っている。

この魚人間、他の個体も含めて一切喋らないが、ターゲットが破壊行為や攻撃を行った場合は誘拐時と同様の昏睡による鎮圧を行う。で、それ以外の要望にはおおむね応じるなど、危害を加える行動は制止するが、他者を傷つける行為は決して行わないようだ。

そして、誘拐から2時間が経過すると、再びターゲットを昏睡させ、元いた場所に戻してから去っていく。これに伴い、最初に出現した予告状は淡水となって溶解する。


つまりこいつら、本当に人間を誘拐しては元に戻す、という意味不明な行動ばかりやっているのだ。
危害を加えるでもなく、何か聞き出すでもなく、本当にそれだけ。

というわけで、財団はさらなる試行を行った。

  • その9
試行:ターゲットの体内に時限爆弾を埋め込み、ビデオカメラを持たせて映像記録を撮る
結果:時限爆弾は摘出・解体されており、ターゲットを送り返した際に置いて行った。映像記録はそのまま。
メモ:とことん死傷者を出すつもりはないらしい。

この魚人間たち、財団側の行いであっても自分たちの周りで死傷者は出させない、というポリシーのようなものを持っているようだ。
で、要求に応じて支給される物品だが、これには限界があるらしく、出回ったのがごく最近のものや、プレミアのついたものは無理らしい。どうも、独自の入手ルートを持っていると思われる。
そしてターゲットが留め置かれる部屋だが、異空間ではなくどこかの建物の一室らしいことが映像記録からわかっている。

とはいえ、現状分かっているのはこれくらいである。
その後、財団の調査により、ターゲットとなる職員は、期日が休暇であることが条件らしい、と判明。
そこで、シフトを変更してその職員に仕事をさせたところ、ターゲットが別の人員に変わった。
これにより、特別収容プロトコルは次のように策定された。

  • Dクラス職員がターゲットになったら、実験をするのでない限り放置するよ
  • それ以外の職員がターゲットになったら、Dクラスがターゲットになるまでシフトを変えるよ*1

と、いたって単純。誘拐は防げないが、危害を加えられるわけでもないので、要は使い捨ての人員であるDクラスにターゲットを絞らせてしまおう、という話である。


で、補遺がもう一つ。
魚人間たちに誘拐された人員は無傷で戻って来るのだが、ある研究員は、自分が接触した魚人間の手に、以前ターゲットになった別の研究員と同じホクロがあるのを見つけた。
そこで機転を利かせた研究員は、その魚人間の手をカメラで撮影し、戻って来てから現像した写真と、問題の研究員の手を照合。
その結果は、ぴたりと一致。

これを受け、その後に20体の魚人間の手を撮影し、過去にターゲットとなったDクラスを含む職員の指紋・掌紋と照合したところ、9人分のデータが、体格まで含めて完全に一致した。
つまりこの魚人間たち、頭部のブラックバスが本体であり、体の方は過去のターゲットの首から下を、不明な方法で淡水によってコピーしたものなのだ。

この直後にターゲットとなった別のエージェントは、シフト変更をせず誘拐され、その後魚人間たちに、彼らの身体が過去のターゲットのコピーであると突き止めたことを告げ、なぜこういうことをしているのか、と尋ねた。
すると魚人間は、一旦退出したあと、予告状と同じ封筒をエージェントに渡した。
3時間後に戻ってきたエージェントは、封筒の中身を確認した。そこには、彼らがなぜこんなことをするのか、その理由が極めて端的に書かれていた。


曰く、



しゅみです

秘密結社キャッチ&リリース


……。


…………。



…………………。





…………………………。






そうですか……。






まあ、要するに自家消費や漁業でなく遊魚目的で釣りを楽しんでいる人間に対する魚の側からの痛烈な皮肉を体現したSCPである。そりゃ魚からしたら意味不明だもんな……。
でもそうなると、彼らの心境次第では今後誘拐されたターゲットを必ずしもリリースしてくれる保証はどこにもないということに……。




追記・修正をよろしくお願いします。ねこです


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-374-JP - 秘密結社キャッチ&リリース
by doragon_akitsuki
http://ja.scp-wiki.net/scp-374-jp

SCP-374-JP事案-1
by sabi-tyouseki
http://ja.scp-wiki.net/sabi-tyouseki-1200tale-1

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最終更新:2024年03月21日 13:31

*1 ちなみに上のフレーバーテキストが有名なせいかよく勘違いされるが、収容プロトコルはあくまでも「休暇日を変更」するだけで休みが無くなる訳ではない。やっと来た休暇は先延ばしになるだろうし、立てていた予定もボロボロにはなるだろうが。