コンパウンドボウ(武器)

登録日:2017/03/13 Mon 15:51:55
更新日:2024/03/19 Tue 23:32:41
所要時間:約 5 分で読めます





コンパウンドボウとは、現代で使われるの一種。日本語では化合弓と呼ばれる。
まれに複合弓とも呼ばれるが、そちらはコンポジットボウ(複数の材料を張り合わせて作る弓)を指すことが多い。


◆概要

洋弓のアーチェリーではリカーブボウという弓が存在し、従来の弓の機能に一番近いタイプであるが、コンパウンドボウはそれらとは全く異なる性質や構造を持っている。

簡単に説明すると、弓の両端に装着された動滑車とテコの原理によって引きが重い弓でも軽々と引ける上、構え中の射手の負担を激減させられるために命中精度も上がるという魔法の弓である。…近代物理学と材料工学の粋を凝らして考案・作成された物なので、魔法(物理)の弓と言うべきか。
威力や射程もリカーブボウとは比べ物にならないほど高く、シカやクマといった大型の動物でも仕留められるほど。
またプレートが組み込まれていない防弾チョッキも楽々と貫通する威力があるので意外に侮れなかったりする。

ただし人力なので、従来の弓ほどではないが威力は使用者の筋力・技量に依存する。普通の人が使ったところで「あくまで弓にしては高威力」という程度で、狩猟用ライフルなどには遠く及ばない。
一応、銃と比べると音が小さいという利点はあるのだが、引き替えに威力や射程がトレードオフになってしまう。
また動物が半矢になって殺しそこねることがあり、このため日本では他の弓と同様に使用禁止。海外でも批判が絶えなかったり。

1966年のアメリカで考案されたという新しい技術であり、誕生してからまだ半世紀ほどしか経っていない。
アーチェリーの競技では従来のリカーブボウとは別種目となっている。ちなみにオリンピックの競技種目にはコンパウンドボウは含まれていない。


◆各パーツ

コンパウンドボウに限らず、アーチェリーの弓は分解されて組み立てるようになっており、様々な部品やオプションパーツが存在するが基本的な物だけ挙げる。


●ハンドル
撃ち手が弓を持つための基本的な中央のパーツ。

ひと昔前まではスマートでコンパクトなサイズだったが、最近ではやたらとでかく面積が広い上に複雑な形状で骨組みのようなハンドルが多くなっている。
矢のパワーこそ出しやすくなったが、持ち運びにはかなり不便。


●リム
ハンドルの両端に取り付けられる弓がたわむ部位。弓を引く時のエネルギーが蓄積され、剛性が強いほど引きが重くパワーのある矢が撃てる。
素材や作り方によってリムの剛性は異なり、ハンドルへの装着の締め付けを緩めたりすることで弓の引きの重さを変化させられる。

ちなみに分解時は細い板のような状態で、基本はボウプレスという道具がないと組み立てられない。


●ホイール・カム
コンパウンドボウで最も特徴的なパーツ。リムの両端に取り付けられる偏心滑車。
この滑車の回転によって弓の引きの重さを激減させられる。

例えば60ポンドの重さの弓だったら、半減から7割減ほどの20ポンド程度までの重さになるのである。
このため普通の弓と違い、撃ち手は標的を狙っている間は引き手に大きな力を入れずに済むので楽に狙える。

さらに形状によってパワーやスピードも大きく異なっているのが最大の特徴。


●ストリング・ケーブル
ストリングは弓を引くための弦で、滑車に取り付けられている。
コンパウンドボウは普通の弓と違って引き始めが一番重く、それが滑車の力で途中から一気に下がるという特徴がある。

ケーブルは片方の滑車と反対の滑車に交差させるように装着されており、滑車の動きを連動させて引っ張ることで手を離したストリングを巻き取って矢を放つようになっている。


●アローレスト
装填した矢を乗せて射出を安定させるための台座。ハンドルに装着させる。
ネジ式の簡易的なものから、複雑な構造の本格的なものまでデザインは実に様々。


この他にも様々な補助パーツが存在するが、何でもかんでもゴテゴテと装着しても重くなるし持ち運びも面倒になるし、見栄えも悪くなるのでほどほどに。
過ぎたるは猶及ばざるが如しである。

+ その他のパーツ・アクセサリー等
●ケーブルガード
ケーブルが矢と接触しないように横にずらすためのもの。
なお、滑車の機能によってはこのパーツを使用しないで自動でケーブルを横にずらしてくれるものも存在する。
ランボーが使う弓のオメガホイールと呼ばれるものがそれ。

●リリーサー
専用の引き金を弦に引っかける発射装置。
指撃ちよりも機械的な動作で矢を射出できるのでより安定した軌道で射出できる。

●サイト
標的に狙いを定めるためのいわゆる照準器。

●スタビライザー
矢を放った時の振動を軽減させるための重り。



◆種類


●4ホイール型
最初期に生み出されたタイプで、その名の通りに滑車が4つ取り付けられている。
現在はほとんど見かけられない。


●ラウンドホイール・エナジーカム型
真円形の偏芯滑車。
コンパウンドボウの滑車機構としては旧型で、現在主流のカムと比べると発射する矢のスピードやパワーが控えめなのであまり人気が無い。
が、それでも弓矢の威力としては十分で、60ポンド(約27kg)くらいの弓で200~250fps(秒速60~76m)くらいのスピードが出せる。

むしろ安いし、構造が単純でメンテナンスが楽という利点もあるので使いこなせば化ける。
下記のランボーやクラウザーが使用しているのはこのタイプ。


●シングルカム・デュアルカム・ハイブリッドカム・バイナリーカム型
現在主流となっている滑車機構。滑車の形状が真円ではなく楕円など複雑な形状となっている。
カム機構によって滑車の回転運動の動きを途中で変化させることで、より高いパワーとスピードを発揮できる。

大体300fps(秒速91m)程度のスピードの矢を撃てるが、中には400(秒速122m)越えになる代物もあるとか。

が、その分だけ弓の引きが重くきつくなったりするので、射手はかなりのパワーを必要とし、疲れる。
あと複雑な構造故にメンテナンスも面倒だし、コストも高い。

各々の違いについて簡単に説明すると…

●シングルカム(1カム)
片方のリムにカムを、もう一方には真円の同心滑車のホイールを組み込んだもの。ストリングがかなり長いのも特徴。

●デュアルカム(2カム)
両方のリムにカムが装備されている。

●ハイブリッドカム(1.5カム)
二つのカムの形状がそれぞれ異なっており、1カムと2カムを足して二で割ったような性能。

●バイナリーカム
基本は2カムと同じだが、二つのカムの形状が全く同じ対称的で同調して動くためより安定した矢が撃てる。


●パラレルリム型
リムがハンドルに対して横に平行になっているタイプ。
矢を撃った時の振動と衝撃を上下に逃がすことで発射のブレを軽減させている。

その分、ハンドル部分がやたら大きくなったりしているので重い。


●ノーカム型
最近新たに開発されたタイプ。
滑車の形状がラウンドホイールのような真円でしかもでかい。

このタイプの弓はハンドルが極端に長く大きく、リムもパラレル型でとても小さいために衝撃もかなり小さく抑えられているのが特徴。


まだまだコンパウンドボウの発展と進化は留まることを知らない……。


◆フィクションでの主な登場作品

映画やゲームなどでは意外にもそこそこ大活躍をしており、癖はあるものの中には銃よりも強いものもあるロマン武器にして強武器である。

映画・アニメ・小説等

ランボーシリーズ
主人公のジョン・ランボーが2作目で使用するのがコンパウンドボウ。ちなみに使用していた弓は実際に売られていたことがあり、今でもレプリカや似たような構造の弓が手に入る。
どうやら作中の描写からボウプレス無しで組み立てられるようで、分解時はクイーバーに収納したりできる模様。

ランボーはこの弓を使って無双した他、爆薬付きの矢じりを装着してヘリを撃ち落としたりと大活躍した。

ホット・ショット2
主人公のトッパー・ハーレーが使用。……チキンアローという伝説的爆笑シーンが見もの。

ログ・ホライズン
登場人物のヘンリエッタが「時計仕掛けの奏歌弓(クロックワークスアーチェリー)」という名の弓を使用。
イラストから見ると、どうやらデュアルカム式の弓らしい。

パニッシャー
フランク・キャッスルが、クライマックスの戦闘で使用。

マッドマックス2
製油所の住人の一人である女戦士が使用。

●ブレイド3
「ナイト・ウォーカー」の一人であるアビゲイル・ウィスカーが折りたたみ式の物を使う。

●ジュラシック・ツアーズ
登場人物の一人であるトレスが途中から持ち出して使用。

ゲーム

●バイオハザードシリーズ
バイオハザード4においてジャック・クラウザーの愛用する武器として登場。
その威力はライフル並に強く、マーシナリーズではガナードを次々と射殺できる。
なお、本編ではマインスロアー搭載の矢を撃ってきたりしたが、こちらは使えない。マーシナリーズでも使えれば便利だった。

ちなみにエイダ・ウォンが4で使用する火薬付きボウガンもコンパウンドボウである。

バトルフィールド4
ファントムという名のコンパウンドボウが登場。
様々なタイプの矢じりが装着でき、爆薬や毒煙幕の矢じりも使える。

でも銃と違って伏せ撃ちができないという欠点が……。

●トゥームレイダー ディフィニティブエディション
使用できる武器の一つに弓矢が存在し、その中にコンパウンドボウがある。
火矢から爆矢、さらにはナパームや装甲貫通矢といった矢まで撃つことができる。

●モンスターハンター
初期武器の強化形(クロスでは鉄武器)のパワーハンターボウが典型的なコンパウンドボウの形をしている。

艦隊これくしょん -艦これ-
Ark Royalが、飛行甲板をモチーフとしたコンパウンドボウを使用する。





追記・修正は100ポンドの弓で爆薬矢じりを撃って敵をふっ飛ばしてから。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • アーチェリー
  • ボウガン
  • ランボー
  • ジャック・クラウザー
  • 洋弓
  • 弓使い
  • 弓兵
  • 弓矢
  • 武器
  • 爆薬チップ
  • ポイズンチップ
  • 武器項目
  • 狙撃
  • 遠距離攻撃
  • ロマン
  • エイダ・ウォン
  • コンパウンドボウ
  • 滑車
  • アメリカ

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月19日 23:32