SCP-2237

登録日:2017/03/12 Sun 02:27:57
更新日:2024/01/07 Sun 03:32:22
所要時間:約 13 分で読めます






時が未来に進むと誰が決めたんだ?



 記録保管者からの注釈: 以下の文書は歴史的な記録のためにのみ維持されています。
自身のセキュリティクリアランスにおいて適切な最新の文書については、AAC/HMC連絡係に問い合わせてください。

この文書は全米確保収容イニシアチブ(American Secure Containment Initiative)、超常現象の確保収容に関する王立財団(His Majesty's Foundation for the Secure Containment of the Paranormal)、怪異なる事物についての聖帝評議会(the Holy Emperor's Council on Unearthly Matters)、ツァーリの賢人団(Tsar's Seers)*1の主要メンバーによって1915年7月9日に批准されたものです。
SCP財団は、未だ人類の理解の及ばないものを確保する、人類の正常な世界の認識に害を及ぼすものを収容する、理解の及んでいない超自然的な脅威から人類を保護する、という役割をより良く果たすために前述の組織から形成された新たな組織であり、この文書は財団最初の文書の一つです。


SCP-2237とは、HMFSCP及びSCP財団本部が収容しているSCiPである。
そのオブジェクトクラスはEuclid(中程度の封じ込め困難性)

特別収録プロトコル


接近する民間人に対してはカバーストーリー「ハフィヤ地域の英国軍関連施設につき、関係者以外立入禁止」でオブジェクトへの接近を阻止する。
オブジェクト及び内部から回収された遺物は、統合されたセキュリティクリアランスシステムの運用開始まで、各組織に於ける最高レベルのクリアランス保持者(例えば財団の場合、O5職員)を除き機密扱いとする。
問題のブツ、つまりオブジェクトは周囲を要塞化した防壁で構築し、そこに武装警備員を常駐させて常に警戒にあたらせる。

敵対的な行動*2があった場合、本オブジェクトを管理するHMFSCP及びその同盟組織はあらゆる軍事力を使ってオブジェクトと周囲施設を再占領し、さらに必要ならば各組織の母国から追加の人員を派遣することになっている。

また先述の警備員はイギリスの軍事的慣習に精通した帝国臣民…要するにイギリス連邦関係者の軍人のみとし、装備も英国製で固めるべしともなっている。順調に紅茶濃度が上がってきたな。

なんだか異様な警備体制だが…。


説明


ここまで厳重に警備する必要のあるSCiP、SCP-2237は北アフリカのハフィヤ砂漠に位置する謎の都市遺跡である。
1890年代に大英帝国が進出した際に発見され、HMFSCP*3の注目を集めた。
人里からもだいぶ離れたところに位置しているこの遺跡は、建造物の大部分は人為的に取り壊されたか、或いは自然に風化したかで破壊されている。
で、HMFSCPが突撃して調べてみたところ、こいつは相当なトンデモさん過ぎるので、ある程度の技術開発が進むまで封じ込めの必要があると判断され、上記の物々しい警備体制となった。

どんくらいトンデモさんなのかって?
ドラえもん張りのビックリドッキリ技術がてんこ盛りだったのだ。

  • エーテル媒質由来の謎のエネルギーを投射する兵器(のような装置)
  • 投影機やフィルム無しで映像を表示するコンソール
  • 最先端の鋳造技術を超えた超強度の謎合金製の材質
  • フィルムを使用しない自動記録システム
  • 会話が可能な実体のない装置

何このオーパーツ。
さらに都市の中心近くにある図書館と思わしきコンソールには物理的な記録と、さらにトンデモデータが詰まっていた。

何が詰まっていたのかって?
こいつは大昔の遺跡のはずなのにシュメール文字、ヒエログリフ、ラテン語、日本語、中国語、英語、ロシア語、フランス語…と地球上で使われている/いた各種の言語を用いたデータが記録されていたのだ。
しかも先述した4団体への言及が含まれていたためにHMFSCPは各組織への接触が必要となった始末。お疲れ様です。

そして都市の中心部には、この都市のモニュメントと思わしき抽象的なデザインの彫刻があり、そこには現代英語、現代フランス語、現代ロシア語、現代日本語の4言語でこんな碑文が刻まれていたそうな。

君は戦士だ。征服軍の子供達だ。その肩には人類の遺産を負っている。道を外れるな。死者のため、そしてこれから生まれる者達のため、君は強くなければならない。我々は信じている。

何…この、何?
とか何とか言ったかは知らないが、この碑文の意味は現在に於いても調査中である。



追記・修正はロストテクノロジーに思いを馳せながらお願いします。



SCP-2237 - "There is always a cost…"
by Agent MacLeod
http://scp-wiki.net/scp-2237

SCP-2237 - 「代償は常に付き物だ……」
by Suga Sho
http://ja.scp-wiki.net/scp-2237

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。











































































 

今、我々が歩んでいる道は、切れ目なく過去から繋がっているのだろうか?

リセットボタンが押されたとき、世界がやり直され上書きされたことに"住民"達が気づく術はあるのだろうか?

アクセス: ファイルSCP-2237

Accessing file…
警告:次の文書はレベル5/2237機密です。許可のないアクセスの試みは終了に繋がる可能性があります。セキュリティクリアランスを入力してください。

氏名: *********** 地位: 人事最高責任者 パスワード: ****************

セキュリティクリアランス……確認されました。文書SCP-2237を開きます。

アイテム番号: SCP-2237
オブジェクトクラス: Thaumiel


!?
…ここからは現行の「財団」に於ける、SCP-2237の解説に入る。


特別収容プロトコル

惑星間通信能力を持つ全てのサイトはSCP-2237との接触を維持することとなっている。つまり常に通信している状態にしておけということ。
こいつを起動させる「X-DAY」が来るときまでは、SCP-2237に送信される情報は声明アルファのみで構成される。
SCP-2237各実体は24時間毎に「自己診断結果」を送信することとなっているが、もし一つでも「応答」が来なかった場合、財団の制御する天文台が『迷子』となったSCP-2237を捜索することとなっている。この時当該のSCP-2237が機能を維持していることを確認できた場合、それに向けられた全ての通信を声明ベータにより構成されたものに置き換えられることとなっている。それによりベータ起動イベントが発生する。
じゃあ『迷子』の2237が発見できなかったら? その時はオメガ起動イベントが意図せず発生したことにより当該のSCP-2237は『回収不能』とみなされる。
SCP-2237実体が自己修復能力を超えた損害を受けているとわかった場合、財団の宇宙船を当該のSCP-2237にドッキングさせ修理を行う。一応SCP-2237実体にも『仲間』を修復する機能は備わっているようだが、利用は推奨されていない。

万が一K-クラスシナリオ待ったなしの状況になった場合、SCP-2237との通信が可能な全財団施設は施設が機能を失うか、或いは全てのSCP-2237実体がオメガ起動イベントを受信したことを確認するまで声明オメガ…つまり「SCP-2237発動指令」を送ることになっている。
またSCP-2237実体は240,000時間の間声明を受信できなかった場合、自動的にオメガ起動イベントを開始するように設定されている

これで何となく察しがついたかも知れないが、このSCP-2237実体と言うやつの正体は宇宙船。
その「乗員」は次の基準を満たす人物から選ばれることとなっている。
  • 身体的、精神的に優れた資質を備えていること。
  • 遺伝的疾患、精神疾患、依存症の家族歴がないこと。
  • 財団への絶対的な忠誠。
  • 電気工学・化学工学・教育学・機械工学・量子光学・植物学・農業工学・生物学・遺伝学・農学・神学・哲学・原子力工学・物理学・気象学・言語学・地質学のいずれかの一つ以上の分野で学位を持つこと。

各SCP-2237実体の位置、設計、予定された目的地に関する情報はレベル5/2237クリアランスにより制限されている。
SCP-2237のメンテナンスや補給に関わり、尚且つその任務の組織化に直接関わらなかった職員には任務完了の報告後にクラスCの記憶処理が施される。

SCP-2237の存在そのものは機密ではないが、万が一SCP-2237実体の位置を民間人或いはセキュリティクリアランスの不適切な人物が確認してしまった場合、彼らにもクラスCの記憶処理が行われる。


説明

SCP-2237という宇宙船、こいつは一体何者なのか。
こいつは個々に異なる設計で作られ、それぞれ独自の太陽周回軌道を周回する財団保有の宇宙船団。
こいつらには以下のような機能が収まっている。

  • 通常型プラズマロケット推進システム(いわゆるプラズマエンジン)
  • 通常型イオンエンジン
  • 最低250名の乗員を乗せられる収容能力
  • 全乗員の50年分の食料、水、空気の貯蔵手段
  • 食料生産工場、発電システム、空気及び水の浄化設備
  • 無期限に蘇生可能な状態で全乗員、家畜、作物、種子、ヒト胚を格納する手段
  • 自己修復能力
  • 他のSCP-2237実体を除く財団資産とのコミュニケーションを維持するために設計されたAI
  • 不整地に全乗員及び物資を着陸させる手段

さらに、複数のSCP-2237実体は植民後の人類の正常性を乱さない範囲で、テラフォーミング及び人類の植民を促進するための様々な機器が搭載されているようだ。
この「装備」は、シャンク=スクラントン因果撹乱器、アルクビエレ・ドライブ(超光速移動システム)、さらに万が一SCPが再発生した場合に備え「収容方法」を伝えるための全財団文書のコピーなどがあるが、これら以外にも色々あるようだ。
だが最初の装備である「シャンク=スクラントン因果撹乱器」から何か不穏な気配が漂っているが…
たぶんこのWikiにアクセスしている財団職員の諸君なら思い当たる節があるだろう、「スクラントン」という名に。そう、「スクラントン現実錨」が思い浮かんだ財団職員は確実にいるはずだ…

SCP-2237実体はオメガ起動イベント…つまり「SCP-2237船団出発指令」が出されたその時に、とあるSCPによって構築された幾つかの天体を含む特定の太陽系外惑星へ向かうことになる。惑星を作り出すSCPというものまで保有しているようだ。
目的地に到達したSCP-2237実体はベータ起動状態に移行し、全乗員のコールドスリープを解除し当該惑星の軌道上に入る。
乗員は搭載されたAIと共に着陸可能地点を探し、地質・地理・気象などを測定し最適な着陸地点と方法を決定する。
着陸後に各SCP-2237実体の乗員は事前に定められた社会的階層と地位に従い社会構造を形成し、植民計画を開始する。

長々書いたが要するにこいつの実態は『宇宙規模のノアの方舟』なのである。
それもK-クラスシナリオ発生時に人類を地球外の惑星に植民するための。

で、先程の「シャンク=スクラントン因果撹乱器」という、名前の時点で物々しい装置…
そもそも何故テラフォーミングだけで因果をどうこうするような機器が必要なのか?
それに関しては以下の覚書を読んで欲しい。


SCP-2237に関するO5評議会覚書、2340年5月19日

1、君がO5評議会、倫理委員会、人事最高責任者によって選抜された場合。おめでとう。君は我々の有する最高の人材の一人で、我々は人類の未来と同じくらい君を信頼している。君の職務は財団全体でももっとも重要なものの一つだ。我々は君がそれを成し遂げると確信している。
2、君が適切なクリアランスなしにこの文書にアクセスしている場合。この場合もやはり君を祝福しなければならない。財団アーカイブのハッキングは容易ではないからな。だが、君はすぐにその端末を破壊し、接近中の機動部隊に協力すべきだ。そうすれば彼らは君にクラスC記憶処理を施すだけでそっとしておいてくれるだろう。
3、君があるSCP-2237実体の最初の乗員の子供の一人である場合。君に言うべきことはこれだけだ;君は戦士だ。征服軍の子供だ。その肩には人類の遺産を負っている。道を外れるな。死者のため、そしてこれから生まれる者達のため、君は強くなければならない。我々は信じている。

隠す必要が薄いように見えるにもかかわらず、このプロジェクトが異常に秘密主義的なのには理由がある。常に代償が伴うからだ。ほぼ全てのSCP-2237実体が装備しているシャンク=スクラントン因果擾乱器はテラフォーミング装置ではない。それはあらゆる観点と目的から見て、兵器化された現実改変装置だ。全てのSCP-2237実体に搭載された人工知能システムはその能力を完全に自覚しているが、それが乗員や積荷に危害を加えることはできない。どのような状況でも彼らがそのように振る舞うことはないだろう。これらの実体は、少なくとも諸君の全てと同じ程度には財団に忠実だ。彼らがそこにいるのは、目標の惑星をヒト以外の知性体が専有していた場合にそれを確実に消滅させるためだ。因果擾乱器はヒト以外の知性体を初めから存在しなかったかのように消し去り、人類がその新しい家、つまり諸君の家で最初から進化していたかのように書き換える。倫理委員会はこれを知らない。しかし、これは我々が生き残るために支払わねばならない代償だ。我々が保護しなければ、我々の長きにわたる確保と収容は全て無駄になるだろう。

幸運を祈る。
-O5-1, O5-2, O5-4, O5-5, O5-6, O5-9, O5-10, O5-13

…。
あの装置はテラフォーミング用の機器なんてものではなかったのだ。
その正体は仮に目的地の惑星に「先住民」がいた場合、彼らを現実改変により『最初からいなかった』ことにしてしまう、
つまり消してしまうための『兵器』だったのだ。

そして最初のHMFSCPによる『遺跡』…つまりかつて地上に降りたSCP-2237に関する記事と照らし合わせると、
ある不気味な想像ができる。

この星は本当に"太陽系第三惑星・地球"なのだろうか。
人類は本当に『地球の先住民』なのだろうか。
もしかしたら太古の昔にここには『真の先住民』がいたのではないのか?

そして、このオブジェクトがHMFSCPにより発見、収容された時期である1890年代は、本当に「1890年代」なのだろうか?
今この瞬間は本当に「2024年04月20日 (土) 」なのか?
あのSCPが積んでいる「シャンク=スクラントン因果撹乱器」に関しては、「人類がその新しい家、つまり諸君の家で最初から進化していたかのように書き換える。」と言及されているが…
もしかしたら、今の歴史は過去に"何か"によって一旦「書き換えられ、カウントがリセットされた」のではないのだろうか?

どっちが財団世界の昨日なのだろうか。



SCP-2237 - "There is always a cost…"(「代償は常に付き物だ……」)



類似するオブジェクト

  • SCP-1233-JP(通称:特別退避プロトコル"ノア")
滋賀県の地下に埋まっている謎の金属製の半実体円盤。犀賀派が関与しているオブジェクトの一つ。
現在は非実体物を拘束する「メトカーフ非実体反射力場発生装置」により動きを止められているが、この機器を解除した場合滋賀県を乗せたまま宇宙へすっ飛んでいく。
行き先が地球型惑星の一つたる「グリーゼ667Cc」であることも判明しており、財団はこれを利用しK-クラスシナリオ発生時の「人類の脱出艇」として使うことを決定、Thaumielクラスが割り当てられている。



追記・修正は今この瞬間が本当に21世紀なのかを確かめながらお願いします。


その他の情報については文書2237-ブラボーを参照してください。

閉じる:ファイルSCP-2237

Ok.

開始:プロトコル2237-オメガ

警告:この操作はレベル5/2237セキュリティクリアランスが必要です。セキュリティクリアランスの詐称は終了に繋がる可能性があります。セキュリティクリアランスを再入力してください。

氏名: *********** 地位: 人事最高責任者 パスワード: ****************

セキュリティクリアランスを確認しました。プロトコル2237-オメガを開始します。

ログアウト

宜しいですか?

はい

ログアウト……完了。
ログアウトに成功しました。

シャットダウン

シャットダウンしています……

余談

最後の終了処理に関して、ある不穏な部分があることに気づいただろう。
コマンドの一つに「プロトコル2237-オメガを開始します。」と明記されているのである。

上記の通り、SCP-2237は「声明オメガ」、即ち「SCP-2237出動指令」を受信することでオメガ起動モードに移行、
つまり植民先の惑星に向けて出発するのである。

それから考えれば、この「プロトコル2237-オメガ」というのは十中八九「声明オメガ」の送信を示唆しているのであろう。
つまり、我々の手でSCP-2237を「起動」してしまった可能性があるのだ。

この手の「もう発動しちまった」の可能性があるオブジェクトとしては、他には例によって例の認識の鳥もあるが、
あいつの場合は我々「第四の壁の向こう側の人間」が覗き見した時点では恐らく既に活性化或いは実体化していると考えられる、
逃げのようであるが、少なくとも「我々には責任は無い」と考えることもできる。まあ活性化どころか存在を認識した時点でオワタ、なブツなのだが

対するこいつの場合、我々が「引き金を引いた」と思わしき部分があるのだ。

…以上のことを、ハフィヤ砂漠で「謎の都市遺跡」として"発見"された2237のことと照らし合わせると…。

我々は、もしかすると財団世界の宇宙に対しとんでもないことをしてしまったのかもしれない。





SCP-2237 - "There is always a cost…"
by Agent MacLeod
http://scp-wiki.net/scp-2237

SCP-2237 - 「代償は常に付き物だ……」
by Suga Sho
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最終更新:2024年01月07日 03:32

*1 作者曰く、アメリカ、イギリス、日本、ロシアに於ける財団の前身の組織であるとのこと。怪異なる(ryが日本における財団の前身の組織であるようだ。蒐集院じゃないのか?それはヘッドカノンによる、としか言えないだろう

*2 武装しての襲撃など

*3 大英帝国版のSCP財団