SCP-2511

登録日: 2017/03/11 Sat 23:16:19
更新日:2024/04/12 Fri 22:30:54
所要時間:約 8 分で読めます





貴方の故郷である川の名ですよ。私の場合ですと、筑後川の生まれですから筑後の河猿となりますな。


SCP-2511はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は『Kappa Population Distribution: More in Mongolia than anywhere else』。
日本語訳名は『河童人口分布案件 ~むしろ蒙古によく見られる~』。


概要

SCP-2511は、「オオサンショウウオによく似た人型実体群」(以下SCP-2511-A群と呼称)が、
福岡県佐賀県長崎県熊本県大分県といった本来の出身地から突如モンゴルにワープしてしまうという現象系オブジェクトである。

…文字列のパワーワードっぷり。
SCP-2511-A群は恐らくは河童なんだろうが*1、一個体に対するインタビュー記録を除けば河童という単語は出てこない。
ただし、このオブジェクトの担当である機動部隊は機動部隊カッパ-26(“カッパ・ズールー”)というトマトが飛びそうな名前をしている。
SCP-2511-A群の母語は日本語族由来の未知の言語だが、佐賀方言を用いて人間と会話することも可能。
画家によって最低でも1836年には人間は河童を認知していたと考えられている*2

彼らは本来、筑後川流域に生息しているようなのだが、どうしてかモンゴルにワープしてしまい、
しかも現在はモンゴルに住んでいる河童が本来の生息域である筑後川流域よりも多くなってしまっている。
しかも筑後川流域に住む河童人口がモンゴルに住む河童人口を上回ると、モンゴルのほうが多くなるように自動調整(つまりワープ)させられる。
河童たちが日本に戻ろうとしても、モンゴルの国境線を踏んだ瞬間モンゴルの別の地域にワープしてしまう。
なるほど、「むしろ蒙古によく見られる」とはよく言ったものである。

インタビュー記録はこんな感じ。

インタビュー対象: SCP-2511-A-0126

インタビュアー: ミサコ・マックモロー博士

序: 以下のインタビューは、本来は日本の佐賀方言で行われている。

<記録開始>

マックモロー博士: おはようございます。記録のためにお名前を述べていただけますか?

[SCP-2511-A-0126はマックモロー博士をぼんやりと見つめている。]

マックモロー博士: すみません、何か問題でも?

SCP-2511-A-0126: いや、問題は無いのですがな。貴方がたの種族が今日まで生き残っていたという事が奇妙で興味深く思われたものでして。

マックモロー博士: それはどういう意味です?

SCP-2511-A-0126: このような事を申すのは幾分気まずいのですが、貴方がたの種族は我々にとっては神話の存在なのですよ ― 昼の世を歩く太陽の子ら。貴方がたの種族が夜闇の子らを制した“花の日”についての伝承を我々の祖先が書き残しておるのです。しかし、こうして太陽の子が目の前で好意的に振る舞っているのを見ると全く魂消ますわい。

マックモロー博士: お褒めに預かり光栄です。しかし一先ずは、お名前をお聞きして宜しいですか? 私のことはミサコと呼んでいただいて構いません。

SCP-2511-A-0126: ミサコさん、貴方の源名は?

マックモロー博士: すみません、詳しく説明してください。

SCP-2511-A-0126: 貴方の故郷である川の名ですよ。私の場合ですと、筑後川の生まれですから筑後の河猿となりますな。

マックモロー博士: 河猿さん、地上世界の我々には源名というものが無いのです。

[SCP-2511-A-0126が溜め息を吐く。]

SCP-2511-A-0126: 嗚呼、筑後川よ。両親がきっと不安に思っていることでしょう。

マックモロー博士: 大丈夫ですよ。私たちが貴方がたを助けるためにここに居ますし、貴方からの協力もまた必要としています。ここに辿り着く前に何が起こったかを教えて頂きたいのです。

SCP-2511-A-0126: それが、よく分からんのです。これが起こる前日はごく当たり前の一日で、夜もいつものように眠りました。翌日、どうも水の味が違うぞと感じまして。目を開けると、もはや自宅ではなくここに居た次第です。

マックモロー博士: ご説明有難うございます。この出来事の前に変わったことはありましたか?

SCP-2511-A-0126: 大してありません、何もかも普通でした。しかし、その晩に夢を見たことは覚えとります。まるで何かしらの呪詛のように、頭の中に木霊する読経の夢でした。

マックモロー博士: その内容は少しでも思い出せますか?

SCP-2511-A-0126: “ざ・かっぱ・いず・もー・こまんりー・ふぁうんど・いん・まんごりあ (za kappa izu mō kōmanrī faundo in mangōrīa)”と。我々の種のことを言っておるのだろうとは確信しとります。しかし、“まんごりあ”とはいったい何のことです?

マックモロー博士: おそらくそれはMongolia ― モンゴルのことでしょう。私たちが今まさにいる場所です。

<記録終了>

ちなみにこの後、人間の子供が筑後川で行方不明になり、モンゴルに転移したという事件も発生している。
人間だったためかちゃんと財団の手で孤児院から引き取り、親元に帰されたが。
このことから、思春期前の子供が筑後川に近づかないように財団は機動部隊を設置して監視している。

余談だが、「The Kappa is more commonly found in Mongolia」とは、ハリー・ポッターシリーズ第三巻でセブルス・スネイプが発言したセリフである。

さらに余談だが、筑後川の河童と大陸との関係としては、 シルクロードを渡ってきた『ペルシヤ河童』が支流に住み着き、筑後川の河童に疫病が流行した隙に侵攻をかけてきたが、筑後川の河童は筑後国国司・草野永平へ訴えて胡瓜を分けてもらいペルシャ河童を滅ぼし、生き延びたペルシャ河童は有明海のイソギンチャクに姿を変えた という民話がある。














…でだ、ひとつ見なおしてもらっていいだろうか。

SCP-2511-A-0126: このような事を申すのは幾分気まずいのですが、貴方がたの種族は我々にとっては神話の存在なのですよ ― 昼の世を歩く太陽の子ら。貴方がたの種族が夜闇の子らを制した“花の日”についての伝承を我々の祖先が書き残しておるのです。しかし、こうして太陽の子が目の前で好意的に振る舞っているのを見ると全く魂消ますわい。

この文章を雑に要約すると、こうなる。

「昔夜行性の種族を倒したというあなたがた昼行性の種族がいまだに生きてるとかなんだこれは…たまげたなあ…」

そして「太陽の子ら」。「花の日」。

これは我々の元へ逃れてきた「太陽の子ら」から得た情報です。我々はそれを信じませんでした - 信じたくなかったのです。

我々は1日でSCP-1000人口の70%を一掃しました。花の日(The Day of Flowers)、その出来事を「子ら」はそう呼びました。

SCP-2511-A-0126が言及している「夜行性の種族を、昼行性の種族が打倒した”花の日”」とは、
人類がSCP-1000を一気に殺して回った日のことを指しているのではないだろうか。

正直河童には悪いが、河童がいたことやモンゴルにワープすること以上に、現生人類のルーツとSCP-1000になにをしたかが気になるところである。
だが、その情報は一般財団職員には知らされないようだ。


追記・修正をお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2511 - Kappa Population Distribution: More in Mongolia than anywhere else
by MrWrong
http://www.scp-wiki.net/scp-2511
http://ja.scp-wiki.net/scp-2511


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最終更新:2024年04月12日 22:30

*1 頭に皿があって、皿の25%以上を水が満たしていないと全身麻痺を訴える

*2 天保7年(1836年)に昌平坂学問所の儒者古賀とう庵(こが・とうあん)がまとめた『水虎考略』のことを示しているのだろうか?