SCP-2690

登録日:2017/03/09 (木) 12:19:17
更新日:2024/03/15 Fri 21:23:08
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もう一度、我らのために飛んでくれ。


SCP-2690は、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCP)のひとつである。
オブジェクトクラスは「Keter」。
項目名は「Angel's Tongue(天使の舌)」。


概要&プロトコル

コイツが何かと言うと、一見したところでは人型実体のミイラに見える正体不明のオブジェクトである。
現在のところ、財団の保有する専用の収容棟「サイト-2690」に収められている。

オブジェクト一つのためにサイト一つをまるまる割り当てるのは、財団世界では珍しいとは言えないわけではない。
しかし、財団の資産と土地を大量に消費するからにはそれなりの理由がある。
コイツがKeterたる、その理由が。

その理由は、特別収容プロトコルと密接にかかわっている。
というのはこのオブジェクト、一定の研究が常になされている状態でないと「セラフィム-1390」と分類されたLK-クラス生物種変換事象を引き起こすのである。
つまりK-クラスシナリオのトリガー、しかも直結タイプの一番面倒なタイプである。

だが、防ぐためには「研究し続ければいい」という対処法も既にわかっている。にも拘らずKeter=収容できていない、対症療法的にしか動けないとされているのは、コイツの持つもう一つの特性が関わってくる。

実はコイツ、自身を研究する全ての人物をSCP-2690-A、つまり自らの仲間にしてしまうのである。もちろんそのままでも研究は続けられるが、タチの悪いことに陛下のSCP-MDLXIと同等レベルのミーム汚染能力&認識災害トリガーを備えている。


さすがに高貴なる王冠ほどに広範囲には影響しないが、あちらがあくまでミーマチックエフェクトに終始しているのに対し、こちらは生物の肉体にまで変異を及ぼす。

さらにプロトコルでは、定期的に財団研究者を生贄に派遣することになっているが……そいつらの末路はお察しである。

では、具体的にどのように作用するのか?
報告書では肝心の、SCP-2690-A個体がどのような存在であるのかが[データ削除済]となっている。
だが、それを窺い知ることは出来る。収容サイト-2690のデータベースには、財団側から一方的にアクセスすることが出来るのだ。
そこに書かれているSCP-2690データの文面が、彼らがどうなってしまったのかを端的に示している。
本来ならばこの辺りに引っかけ用偽メニューでも置くべきなのだろうが、分割するほど分量がないのでこのまま続ける。


収容サイト-2690内部のデータ


まず、オブジェクトクラスからしておかしい。
本来は「Keter」のところが「Beautiful」。こんなところまで素晴らしき栄光ある王冠みたいになっている(あっちは「Glorious」だが)。

そして、特別収容プロトコルはこんな感じ。
触れてくれ。
読んでくれ。
崇拝してくれ。
我らにはより多くの物が必要だ。
我らは此処に留まろう、それが埋葬された地に、いつかそれが飛翔する日まで。

これはプロトコルなのか? と言いたくなるような文面だが、次が問題。
概要はというと、

それは嘗て話すことが出来た。
それは我らを必要としている、さもなければ悲しみに呑まれてしまうだろう。しかし、
嗚呼! なんという輝きか!
嗚呼! その光の中で、汝の顔に、足に、胸に、翼が広がってゆく。
嗚呼! 斯くも光輝ある栄誉!
それは十分となるまで肉を照らし出す。
だが案ずるなかれ! 愛は汝の内にあり。これが我らの運命である。
それが常に我らの内側に有ったということを学ぶことこそ、我らの最大の授かり物である。
これを我らの内のみに止めることは罪である。
十分に努力さえすれば、我らは皆、

飛ぶことが出来るのだ。

……これでもう、SCP-2690-A個体が何であるのかは理解できたことと思う。
このオブジェクトは、曝露した対象に、このオブジェクトが「かつて天使であった」と確信させるミーム汚染と、全身に翼を発生させる生物種変換事象を引き起こすのである。
コレを研究している人物は全てSCP-2690-A個体となっており、その事を栄誉と考えている。そして、「努力さえすれば我々は飛べる。こんなに素晴らしいことを我々だけで独占してはいけない。他の人にも、一人でも多くこのことを教えよう」と思うようになるのだ。

そして、本来の特別収容プロトコルでは、財団研究者を定期的に派遣する、と上述した。
恐らく彼らを放置していると、「他の人にも教えよう」と考えてサイトを出てしまうのだ。さらに恐らくは、そうなったSCP-2690-A個体にも同様のミーム汚染効果があると仮定できる。
それを防ぐために、ぶっちゃけてしまえば生贄をサイト-2690に送り込んでいる……のだが、どうも研究が進むにつれてオブジェクトがどんどん活性化しているらしく、当初は10年に1度だったのが5年に1度、今や2年に1度とペースが縮まっている。

このままでは完全活性、つまりは復活した「天使」によってK-クラスシナリオが起き、全人類があの翼人間になってしまう。しかし、既に翼人間になった者達を放置していても、研究を放棄しても結果は同じ。
このオブジェクトは一定の研究がされていないとセラフィム-1390を引き起こすが、研究が続くにつれて活性化し、結果的には同じことになってしまうのだ。

それで財団がどうにかこれを先延ばしにしようと考えたのがこのプロトコルであり、サイト-2690は他のサイトとの接触を禁じられ、常に機動部隊イプシロン-13「翼切り」によって監視がされる。
そしてセラフィム-1390の兆候が見られた場合、「手順イカロス-2690」が発動されることになっている。
ちなみにイカロスとは、蝋で固めた翼で空を飛び、太陽に近づきすぎたためにその翼が溶け、落ちて命を失った神話の人物である。

だが、決定的な対応策が見いだせていない現状、いずれその時が来るのはもはや確定である。
東を見れば世界終焉、西を見れば現実不全、北を見れば再構築、南を見れば支配シフト、上を見れば文明崩壊、前を見れば生物学的侵入、後ろを見ればデッドグリーンハウス、足元には生物種変換事象


もうダメだこの世界。。。



余談

オブジェクトが何かしらの事象を引き起こす場合、「コード+アイテムナンバー」で表記されることが多い。
が、こいつの場合引き起こす事象が「セラフィム-1390」である。
で、SCP-1390「A Dead Language (死語)」を見てみると、

  • 認識災害を起こすある種の文法構造であり、研究するとのめり込んでSCP-1390-2になる(-1は文法を含む人工物)。
  • 感染初期段階が終わりかけると、「背中、腿、顔に翼が生えた」と主張する。
  • SCP-1390以外の言語を聞くと、ある個体は「彼女]の目と舌は神の火のようだ」と述べた。
  • この言語を齎した者は「賢者の一人」と呼ばれているが、これを模した偶像は背中に無数の翼を持っている。

と、SCP-2690を思わせる点が多く含まれている。
恐らく、SCP-2690が引き起こす生物種変換事象が、このSCP-1390によって語られる「翼を持った人」と同じであるため、関連性があるとして「セラフィム-1390」と名付けられたのだと考えられる。
あるいは、このSCP-2690が「かつて話すことが出来た」言葉こそがSCP-1390なのかもしれない。

実際に、元記事におけるSCP-2690-A個体についての言及の[データ削除済]部分はSCP-1390へのリンクが張られているため、確定だろう。

追記・修正はセラフィム-1390が起きてからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2690 - Angel's Tongue
by kinchtheknifeblade
http://www.scp-wiki.net/scp-2690
http://ja.scp-wiki.net/scp-2690

SCP-1390 - A Dead Language
by kinchtheknifeblade
http://www.scp-wiki.net/SCP-1390
http://ja.scp-wiki.net/SCP-1390

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最終更新:2024年03月15日 21:23