SCP-2615-J

登録日:2017/02/27(月) 18:24:52
更新日:2024/03/10 Sun 19:08:49
所要時間:約 4 分で読めます





嘘だよ。妖精なんてないさ。


SCP-2615-Jは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCP)のひとつである。
オブジェクトクラスは「Euclid」。
項目名は「Clap Your Hands(手を叩いて)」。


……アイテムナンバーの時点で気が付いただろうが、ジョークオブジェクトである。「SCPじゃねえだろそれ!」みたいなものや「皮肉をメインとするオブジェクト」など、要するに普通のSCP記事ではできないようなことをやっちゃう記事群がJokeクラス。これもその一つである。


概要

まず、コイツが何かというと、妖精である。いわゆるフェアリー的な姿をした小型の人型実体群であり、熱を持たない光を発する、自然現象限定の現実改変を起こすなどの能力を備えている。
平均身長は15cmと、一般に連想される「妖精」そのまんまである。

収容プロトコルは非常に簡素で、

全てのSCP-2615-J個体は標準小型人型生物収容房に収容し、サイト17で保管してください。SCP-2615-Jには毎日3回食事を与えてください。

以上。
まあ、普通に財団の中で保護しておこう、という話である。

ちなみにこの実体群=妖精たちは、現実改変や発光現象などを全部「魔法」の一言で片づけている。
まあ、マジモンの魔法使いとかいてもおかしくないのが財団世界であるし、実際似たようなのが収容されているのが財団だが。ベクトルは反対だが崇高なるカルキスト・イオンとかまさにその典型である。
とはいえ所詮ジョークオブジェクト、この妖精たちはイオンやカルキストほど危険ではない。

個体の一人にインタビューを行った記録もあるが、抜粋すると、

タムリン博士:#28、あなたは自分の生体機能が様々な面で科学的にありえないことに気づいているのでしたね? どのように機能しているか教えていただけませんか?

SCP-2615-J #28:ええ、分かったわ。あなたたちは「俺は妖精なんか信じないぜ」なんていう古くさいごまかしで、私たちを追い払おうとしてるんでしょう。そんなことしても無駄よ。分かってるでしょう。だって私たちはこの間、実存主義を引き払ってきたんだから。

タムリン博士:質問を理解していらっしゃらないようですね。たとえばそうですねえ、あなたの体重は——何ですかこれ? 35グラム? その羽根では空を飛ぶことなんてできないはずですが。

SCP-2615-J #28:それは魔法よ。

タムリン博士:では、その発光は? あなたが光る生物学的根拠も化学的根拠もありませんが。

SCP-2615-J #28:それも魔法よ。

タムリン博士:しかし、他にも——

SCP-2615-J #28:ま ほ う !全部すっごい魔法のおかげなのよ、この間抜け! どうやったら、その頭蓋骨でできた脳みそに分かってもらえるんでしょうね?
[この時点でSCP-2615-J #28の発言はうなり声、うめき声、叫び声、罵倒の羅列にまで退化し、現在まで解読されていません。]

タムリン博士:話を終わりにしましょう。

とまあこの有様。財団の思考は科学的思考(=全ての物事には明確な原因があるとする考え方)が基礎なので、逆に理屈が存在しないモノホンの魔法というのは理解できないのかもしれない。

しかし、小規模かつ限定的とはいえ、現実改変を起こす実体群があんな簡素なプロトコルでいいのだろうか?
インタビューに応じたのが28番であることを考えると、最低でも28体、もしくはそれ以上のSCP-2615-J実体がいることになる。
力を合わせればもっと巨大な規模での現実改変が起きてもおかしくない。
にも拘らず、SRAパネルやスクラントン現実錨などの対処がなされていないのだ。

財団は一体何を考えているのか?



……というのも至極当然の話であり、この文書の終わりにウォーカー研究員からのコメントがある。
曰く、

やあ、すまないね。たぶん君は財団に入ったばかりで、ジョークでこのページにリンクされてきたんだろうな。話を進めよう。実は、名前に”-J”と付いているものは今や全て誰かがでっち上げた内輪のジョークなんだ(こいつは士気向上に役立つんだ)。普段ならこんな文章を書いておいたりはしないんだが、「SCP-2615-Jのコメントに隠された重大な意味」は何かって一週間に5回も聞かれたところでね。「重大な意味」なんてものはない。Joke SCPは実在しない。ここを立ち去って、SCP-779とかでも読んでいきなさい。
追伸 もし面白い点が分からなかったら謝罪する。元々これは96年のサイト-17ピクニックに来た人を爆笑させるために作ったやつなんだ。まだ残しておこうと思ってる理由は、単に新入職員をからかって怒らせるのが好きな奴がいるからさ。

だとか。
まあ、ジョーククラスオブジェクトはあくまで「オブジェクトの体裁をとった執筆者のお遊び」であるため、カノン的には「財団内部の職員が作った冗談」ということになっているらしい。


他のジョーククラスに比べるといささかパンチに欠ける気もするが、「財団世界でのジョーククラスの扱い」について触れたという意味では面白い記事と言えるかもしれない。


余談

研究員の言っているSCP-779「Brownies (ブラウニー)」は、見た人間がそれを住居の維持管理をする妖精「ブラウニー」だと誤認する認識災害をもたらすハチである。
この記事で妖精を扱っているため、比較として挙げられたのだろう。



追記・修正は手を叩きながら……では出来ないので、普通にキーを叩きながらお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2615-J - Clap Your Hands
by KnightKnight
http://www.scp-wiki.net/scp-2615-j
http://ja.scp-wiki.net/scp-2615-j

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。




















夕焼けは
船乗りの歓び















朝焼けは
船乗りの警告















海に沿って
太陽は踊る


















そして全ての彼らの愛は
赤き血に染まる

























反ミーム接種を確認しました。このまま進んでください。




















警告

クリアランスレベル3/2615未満の職員は、このファイルの閲覧を制限されています
誤ってこのページを開いてしまった場合はページを閉じ、直近1時間のページ履歴を削除した後、クラスH記憶処理のためにHMCL主任代理に報告してください。ご協力をよろしくお願いいたします。















SCP-2615

登録日:2017/02/27(月) 18:35:52
更新日:2024/03/10 Sun 19:08:49
所要時間:約 3 分で読めます


タグ一覧
SCP SCP Foundation SCP財団 エルフ Keter




上でジョークオブジェクトだと書いたな。
あれは嘘だ。



SCP-2615は、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCP)のひとつである。
オブジェクトクラスは「Keter」。
項目名は「If You Believe(信じるなら)」。


上で述べた「SCP-2615-J」は、コイツの存在を隠ぺいするために財団が内部に向けて公開した偽の文書である。
いや、偽というのも少し違うが、これについては後で説明する。


概要

まずこのオブジェクトのナンバーは、超時間的人型実体群である「SCP-2615-A」と、彼らの文化・文明である「SCP-2615-B」をまとめた集合に与えられたものである。

で、コイツらがどんな特性を持っているのかというと、まずSCP-2615-Aの方は、外見的には人間に近い。
が、耳は上部が尖っており、小さな音を拾いやすくなっている。さらにSCP-2615-Aは5色型色覚生物、つまり5つの原色を視覚的に認識することが出来るのだ。

さらには人間よりも加齢速度が遅く、平均自然寿命は109歳とかなり長生き。そして最も顕著な点として、SCP-2615-Aは肝臓と胃の間の胆のうの近くに、小さな球体状の臓器がある。この臓器は神経系に繋がっているとみられ、一時的に局所現実の崩壊を引き起こす……つまり小規模な現実改変が出来るのである。

そしてこの実体群……ぶっちゃけると妖精たちだが、この連中、ほぼ例外なく何らかの形で軽度の強迫性障害を患っているのだ。さらに大半は社会病質を持ってはいないものの、他者を操作しようとする気質が強くみられる傾向がある。
そして、確認されている限りでは二つの感情を持つが、これらは人間のそれとは異なっているものらしい。
なお、こちら側では体格については詳細に書かれていない。そのため厳密にどのような姿かは不明である。


だがこれだけならば、Keter認定には足りない。
本当に問題なのは、彼らの文化・文明であるSCP-2615-Bと、彼らの持つ基底現実における特性である。


「妖精たち」の歴史

この記事には補遺がある。その一つは、彼らの歴史について記したものである。

  • ???~紀元535年
この当時、個体群は主に部族で構成されており、ヨーロッパ北西部に位置していた。
異なる部族が農業、遊牧、狩猟・採集といった生活様式を持っており、いくつかを合わせた生活様式を持つ部族も存在していたらしい。
で、これら部族は人間や他の部族に対してたびたび奇襲を行い、若者や少年少女を捕虜として捕まえ、自分たちの部族へと引き込んでいた。
信仰も存在したが、その形態はほとんどが原始的なシャーマニズムであり、多神教や一神教、精霊信仰が入り交じったわけのわからんものである。
さらに、いくつかの部族には鉄を邪悪な物質とみなすという特徴的な信仰があった。これはどうも、破傷風の患者を観察した結果であるらしい。
そしてこの当時、人間とSCP-2615-Aの間にはお互いに関する迷信と疑念が存在していた。この期間の終わりに向けて、SCP-2615-Aの部族はより大きな集団へと統合されていくこととなる。

  • 535年~1772年
複数の部族が統合してできた大集団だが、この連中は土地や資源、政治的権力を求め、1世紀に渡って他の集団と恒常的に戦争を行っていた。この1世紀の終わり頃にはSCP-2615-Bは27ヶ国に分かれ、ようやくの安定を見ることとなる。

この当時、最大でかつ最も影響力のあった国はブリテン島全体とフランス、ベルギー、オランダ、ノルウェー、ドイツ、デンマークの一部に国土を構えていた。
これらの国とその他の18の国では、SCP-2615-Bは家族の延長としての自制と自立が可能な集団によって構成されており、家族集団間の婚姻により中央君主への忠誠と感謝を捧げることもあったという。

そして、残りのうち7国では、統治組織は代表民主制によって構築されていた。
土地を小さな市や州に分割し、それを家族集団の家父長と家母長で構成される小さな民主システムで統治するという、日本で言うと幕府と藩に近い形態だった(これも正確とは言えないが)。各州は中央政府に代表者を送っていたと見られている。

最後の1国は二党政治システムによって構築され、二つの党はそれぞれ「夏廷」「冬廷」と呼称された。
各SCP-2615-A個体は15歳で成人とみなされ、自身の属する政党を決めていた。各党の構成員は自党の他の構成員を律し、制御することを求められており、さらに二党間の婚姻は禁止されていた。
春の終わりから秋の始まりまでは、夏廷の構成員が冬廷の構成員の、秋の終わりから春の初めまでは、冬廷の構成員が夏廷の構成員の完全な支配権を持つという形がとられていた。そして、ここに属するSCP-2615-Aが領土や住居を築く場所は、田舎や人が住んでいない土地が最も一般的だったという。

その後、1000年以上にわたって小さな領土紛争が発生したものの、ほとんどの戦争は短期間であり損害は小さく、大規模な権力移譲を引き起こすには至らなかった。さらに15世紀から17世紀にかけて、SCP-2615-Bの国家はヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカを横断する植民地を形成し始めていた。

さらにはこの時代、SCP-2615-Bでのアノマリー(簡単に言うと異常)の存在が著しく増大した。ほとんどの場合、低レベルアノマリーはSCP-2615-Aが娯楽や実益のために利用し、高レベルアノマリーは宗教の基盤を形成することになった。

さらにさらにこの時代、人間とSCP-2615との交流が少し増えた。稀なことではあったが、商品やサービスの交換のためにSCP-2615はときおり人間と商業協定を結ぶことになった。
SCP-2615-Aは人間の幼児を誘拐してSCP-2615-Bで育てることや、SCP-2615-Aを人間の社会で育つように送り込む……いわゆるチェンジリングを実行するようになったが、それもこの時期だと見られている。


  • 1772年~現在
SCP-2615は地球全土に広がった。彼らの居住地のほとんどは人がほとんど、あるいは全く住んでいない地域である。
現在は、ある有力な人間とSCP-2615の街が、SCP-2615と人間の共存の中心として活動している。SCP-2615の中には国家を形成または国家を拡大し、人口過密を防止するために超次元空間を利用している場合もある。

彼らの領土のほとんどは、元々存在していたSCP-2615の27国のうち25国の中の、とある1国に忠誠を誓っており、元の君主国家のうち2国は、最大の君主国家に併合された。これらの領土の存在により、基準世界の国家の地政学的な地位が変化を余儀なくされている。現在のところ、ほとんどの国家は保有領土が縮小し、多くの国家はSCP-2615国家への接近や関係に基づき、富や権力が増減しているという。

さらに、アノマリーがSCP-2615-Aの日常生活やSCP-2615-Bに著しい速さで浸透しており、逆に人類の生活や社会へのアノマリーの氾濫が発生している。
財団とほとんどの要注意団体が依然として活動中だが、異常の隠蔽を維持することには興味がなく、アノマリーに対しては比較的寛大な態度をとっている。



特別収容プロトコル

お分かりいただけただろうか?
要するにこのオブジェクトの正体は、「小規模な現実改変能力を持った異種族の国家」である。そりゃ、こんなもん収容できるわけもない。文句なしのKeterである。

一応、共存の可能性は示唆されているが、両サイドにはびこる各種のアノマリーには財団は興味を向けていない。
財団が腐心しているのは、やはりSCP-2615の収容である。

では、どうやって収容するのか?
それは、SCP-2615の持つ特性に基づいている。

この妖精あるいはエルフたちとその文化・文明は、基底現実において、彼らや彼らの文明・文化の概念を事実だと認識する人々が多いほどに、現在の時間軸における存在が強まる。が、逆に、概念を理解しながらも虚構だと認識する人々が多いほどに、現在の時間軸における存在が弱まるのだ。
そして、彼らSCP-2615が完全に出現すれば、それらの歴史が基底現実に組み込まれることになる。つまり、人類の認識する歴史が変更されてしまうことになるのだ。

これを防ぐために、財団はSCP-2615の概念を虚構であると一般に認識させるプロトコルを組んでいる。
が、この「事実の認識」は当然ながら所属では区別されない。財団職員がこの概念を事実だと認識すると、彼らの存在が強くなってしまう。

そのために用意されたのが、冒頭のSCP-2615-Jである。
プロトコルを引用したものがこちら。

SCP-2615-Jと名付けたファイルを、SCP-2615の活動の隠蔽用に作成してください。このファイルはユーモラスな文調で、現在のSCP-2615のステレオタイプを組み入れ、SCP文書の標準的フォーマットを用いて作成してください。この文書は類似する文書群と共に保管します。この文書群には全て末尾に”-J”を添付し、ユーモラスな存在や逸話をSCPフォーマットで記述してください。職員はこの文書群を広めても構いませんが、全ての”-J”ファイルは虚構であり、あくまで意図はユーモア目的であることを明白にしてください。SCP-2615へのアクセス権を持たない職員がSCP-2615は実在し得ると考え始めた場合、文書SCP-2615-Jを読むように誘導してください。

つまり、本部に限って言えば、他のジョークオブジェクトは全て説得力を持たせるためのデコイであり、本命はSCP-2615-J。そしてそれすらも、SCP-2615を隠蔽する、財団職員への欺瞞情報である。

それを示すある人物の説明がこれ。

SCP-2615収容計画の新人からよくされる質問は、何故苦労してまであの-J記事を維持しているのか、あるいはそもそも何故あのような記事を作ったのかというものです。何故一般社会に対して行っているのと同じことを職員に行い続けるだけでは駄目なのでしょうか?
一番の理由は効果がないからです。もちろん職員にSCP-2615は全て壮大な作り話であると言い続けることはできます。
しかし少し落ち着いて周りを見渡してみましょう。我々が収容しているものの半分は作り話を構成しているものです。職員にSCP-2615はありえないと言い続けることはできますが、彼らは日々そのありえないものと働いているのです。
扉の先にあるものを見たら、彼らはすぐに、ひょっとしたら他のありえないものも存在しているのではないかと考え始めます。彼らはビッグフットや寝る前に両親に読み聞かせてもらった物語、癌の治療法といったものが本物かもしれないと考え始め、やがて妖精についても同じように考え始めるでしょう。
だから我々は妖精をジョークへと変えました。職員が妖精のありえなさを笑うように仕向け、妖精が存在していると考えるなんて本当に馬鹿げているとだけ思わせ続けているのです。

財団職員が日々接しているのは「ありえない」もののオンパレードである。当然職員によっては、低クリアランス職員に対する欺瞞情報の存在を知っていることもあるだろう。
だから、そんな彼らに「そんなことはありえない」と言うだけでは、信じさせないということは出来ない。認識の変化を強引に矯正することは可能だが、手間もコストもかかり過ぎる。財団の資源は有限なのだ。

だから、彼らはジョーククラスオブジェクトという概念を作った。
実際には存在しないオブジェクトを扱った、お遊びの、報告書風の記事。その中に妖精を混ぜ込むことで、逆説的にそれらの存在を虚構だと認識させたのである。

嘘を嘘だと見抜けるから、その中に混ざった真実に気が付かない。
つまりは、そういうことなのだ。



SCP-2615-J/SCP-2615

Clap Your Hands/If You Believe(信じるなら、手を叩いて)





追記・修正は虚構を虚構だと見抜ける人にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2615-J - Clap Your Hands
by KnightKnight
http://www.scp-wiki.net/scp-2615-j
http://ja.scp-wiki.net/scp-2615-j

SCP-2615 - If You Believe
by KnightKnight
http://www.scp-wiki.net/scp-2615
http://ja.scp-wiki.net/scp-2615

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最終更新:2024年03月10日 19:08