SCP-120-JP

登録日:2017/02/26 (日曜日) 13:15:10
更新日:2024/02/15 Thu 20:14:49
所要時間:約 7 分で読めます






きみはいつか大人になる。それを止めることはできない。今、私はきみにとっての世界で一番の宝物だろう。







 SCP-120-JPは共同創作サイト「SCP Foundation」で生み出されたオブジェクト。
オブジェクトクラスはEuclid。項目名は『世界で一番の宝石』。



概要

 SCP-120-JPはクモガイ(学名:Lambis lambis)の貝殻の形を有している。
クモガイとは沖縄やオーストラリア等の東南アジアに生息する貝の一種で、クモが足を広げたような形だからクモガイなのだそう。美味しいらしい。
知性を持つらしく、人間と同程度の会話が成り立つ。

 コイツの異常性は、SCP-120-JPに価値があると考える人間が存在しないことで発生する。
近くにそういった人間がいないと貝の空いている部分から凶暴な高さ8m、全幅30mの巨大生物を出現させる。(報告書通りSCP-120-JP-1と表記する)
120-JP-1は周辺にある高価な物を優先的に破壊し、「120-JP-1が無力化される」「自分の意志で120-JP本体に戻る」まで破壊行動を続ける。
だが、財団の機動部隊でも制圧できないレベルの強さなので、実質後者の条件でしか鎮圧不可能である。


発見と収容

 SCP-120-JPは120-JP-2(後述)と共に発見された。財団は120-JP-2の許可を得て、120-JPを運搬車両に乗せたのだが、
価値を見出す人間が消滅したことで、120-JP-1が出現。運搬車両が大破した。ジェラルドォーーー!
 詳しくは報告書を読んでいただきたいが、幾度と収容手順を変更し試行したが失敗。このままKeter行きが決まりそうだったが、

だって良く考えたらあいつに壊された分を合わせると、あいつには50億円くらいの価値があるんだなあって、ふと思ったんだ。
───研究員G

 明らかに皮肉だが SCP-120-JPの価値を見出した研究員が登場すると、120-JP本体はピタリと120-JP-1の出現を停止。
財団は120-JPの特異性を発見し、これ以降下記の収容方法を取るようになった。



 つまり、SCP-120-JPを「世界一綺麗(10億円くらい)」だと思う人間がいなければならないのだが、財団職員にとって『命より大事な物』のレベルがあるものはたかが知れている。

「じゃあこいつKeterじゃね?」と考えるだろう。実際、発見された時は特性が判明しておらず、「発見と収容」で述べたように、これまでで9回も収容違反が発生している。
 だがこのオブジェクトはEuclidである。「一応現在は収容できてるけど、正直予断を許さない」(オブジェクトクラスより)のである。


つまりそこには、『SCP-120-JPが世界で一番の宝石』と考える人間がいたのだ――――


120-JPと120-JP-2

 SCP-120-JPは████(報告書でも検閲済み)の海岸に存在していた普通の貝殻だった。
財団に発見された時は同様の地域である████の家屋にいたのだが、その町は土砂災害によって壊滅的な被害を被っていた。
 当然120-JPの家もなぎ倒されてしまったのだが、そこにいた【少女】によって120-JPは守られたのであった。

 【少女】。そう、彼女こそが『SCP-120-JPが世界で一番の宝石』と考える人間だった。報告書内ではSCP-120-JP-2と呼ばれている。
少女の名前は検閲されていて読めないが、120-JP本体が「アイリ」と呼んでいるため、こちらでもそれを名前とする。

 アイリは20██年生まれの女性である。件のちいさな魔女とは違い、異常性は見られない、ごく普通の人間である。
彼女は前述の████に住んでいた。そこの海岸で彼女はSCP-120-JPを拾ったのだった。

 彼女は120-JPを宝物とし、祖母からもらった戸棚の上へ置いた。
彼女は、土砂災害で両親を失った。そんな彼女にとって、120-JPは文字通り【命より大事】だった。

 アイリは現在、財団に「孤児の保護」という名目で収容され、財団傘下の教育施設に通っている。(義務教育が終了していないこと、20██生まれであることから2002~2011年出生であると分かる)
じゃあ120-JP本体は? となるが、財団が偽装で建てた博物館で、【この世で最も高価な貝殻】として展示されている。

 現在120-JPはアイリのみに心を開いていることから、アイリは収容サイトから30分以上の外出は許されていない。一方で、どちらかが望めば、(財団審議の上で)ビデオ電話による会話が許可されている。

 報告書には120-JPとアイリの会話記録が残されているが、なんというか、

[120-JPとアイリが収容されて間もない頃]


SCP-120-JP: アイリ。ここはなんとも大きな施設だ。私にふさわしい場所もどこかにあるかもしれない。

SCP-120-JP-2: ふーん。ヤドカリさんの家来たちもそこに呼ぶの?

SCP-120-JP: アイリ。私の名前は『深き海とそびえる山を統べる偉大なる王』だ。ここは退屈だ。いつか呼ぶかもしれない。

SCP-120-JP-2: ねえイチゴ狩りでとったイチゴでジャム作ったんだけど食べる?

SCP-120-JP: 食べる。

[この後、120-JP-1の小さいやつが出てきて、ジャムを塗ったパンをもぐもぐした]

アイリが教育施設から帰室後


SCP-120-JP-2: 今日ね、算数のテストで25点だったの。それで先生が怒ったんだけど、ほんとに算数って勉強する意味があるの?

SCP-120-JP: アイリ。この宇宙すべてにおいてもっとも偉大な知識は算数だ。とても意味深いぞ。

SCP-120-JP-2: えー。ヤドカリさんも海の中でも分数とか使うの?

SCP-120-JP: 使うとも。私がクジラを仕留めたなら臣下には16分の1ずつ分け与えるぞ。あとアイリ。私の名前は『深き海とそびえる山を統べる偉大なる王』だ。

[120-JPは知能テストに激しく抵抗している]


[120-JP-1が収容違反中]


SCP-120-JP-2: ヤドカリさんなにしてるの?

SCP-120-JP: アイリ。私の名前は『深き海とそびえる山を統べる偉大なる王』だ。ココのものは私の価値を知らない。なんとも愚かなサルたちだ。

SCP-120-JP-2: 怖いから大きいの出したらダメって言ったじゃない。

SCP-120-JP: アイリ。ここはお前の家ではない。私は罰を与えねばならない。

SCP-120-JP-2: おじさんたちがあなたが貝に戻るまで話してって言われてるの。[データ編集済:一般的なテレビゲーム]やりたいから早く戻って。

SCP-120-JP: アイリ。お前にはまだわからないだろうがココのものどもに私の価値を

SCP-120-JP-2: 早くして。

SCP-120-JP: はい。

[直後、120-JP-1は120-JPへと戻っていった]

120-JPはバカなんじゃないか 120-JPはアイリに対し非常に友好的と分かる。

アイリが育つと

 財団が「Euclid」を判断したのには、文字通り「予断を許さない」からである。それにはアイリも関係し、
彼女が育ち、120-JPに飽きてしまったら、すなわち、アイリが他に宝物を見つけてしまったら? 一体、どうなるのだろうか。

 120-JPもこの事には感付いているらしく、120-JP-1によく似た小さい生物を出して、レポート用紙に文章を書き記した。
詳しくは報告書を読んでいただきたいが、あなたはそれを読んで、何を思うだろうか。


余談

 筆者であるZeroWinchester氏は、最初はアイリは成人のつもりで書いたのだが、後々それが凄く切ないと思ったので、現在のアイリに修正したとのこと。

 また、ZeroWinchester氏自身によるTaleがある。項目名は『アイリと真夏の日曜日』。
詳細は原文を読んでほしいが、120-JPが120-JP-2の夢を叶えるためにあれこれ演出を……という内容になっている。

 最後に、非公式であるFS(SCP日本支部ファンサイト)の、「欲望カメラ」によるクロステスト結果を載せておく。

被験者:SCP-120-JP
撮影された行動:撮影のため、SCP-120-JP-2により掲げられている
撮影結果:SCP-120-JP-2の面影のある██才前後の女性が、 抱きかかえた[データ抹消]にSCP-120-JPを握らせている。
結果において、SCP-120-JPの会話ログに度々登場する 『深き海とそびえる山を統べる偉大なる王』を想起させるような変化が存在しなかったことは注目に値します。



きみは大人になる。そうでなければならない。きみもいつか子供を生む。そして、その子供に私との思い出を語るときがやってくる。きっとそうなる。
思い出の中の私は、今と変わらずに世界で一番の宝物であり、そのとき初めて私は本当の価値を手にする。
それこそは世界で一番の宝石───
[最後の一行は乱雑な線で消されている]




追記・修正は、子供の頃の宝石を持ち続ける人がお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-120-JP - 「世界で一番の宝石」
by ZeroWinchester
http://ja.scp-wiki.net/scp-120-jp

120-JP-Tale - 「アイリと真夏の日曜日」
by ZeroWinchester
http://ja.scp-wiki.net/aile-sunday

120-JP-FS - 「CROSS TEST - SCP-120-JP/SCP-978」
by BrRd_Kakeru(原作者:名もなきvipper)
http://scpjp-fansite.wikidot.com/cross-test-scp-120-jp-scp-978

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最終更新:2024年02月15日 20:14