SCP-1233-JP

登録日:2017/02/20 (月曜日) 22:45:00
更新日:2024/02/26 Mon 12:21:42
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SCP-1233-JPは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。





ようやくここへたどり着いてくれたようだね
まずは、おめでとう。そして、ありがとう。





警告
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セキュリティクリアランスとゲネシス・プログラムの対象者リストを再確認してください。




項目名は『特別退避プロトコル”ノア”』。オブジェクトクラスは「Thaumiel」に指定されている。

SCP-1233-JPは、滋賀県の某村地下4271メートルに存在しする直径約2113メートル、平均的な厚さが約70メートルの円盤状金属である。財団世界の滋賀県には、山とほぼ同じ大きさの金属板*1が埋まっている。

調査によるとこれは半現実実体のようで、その組成は地球の地殻付近には存在しない未知の元素を含む数種の金属から構成されている。
財団は金属板が埋まっている地域を二重の電流柵で囲い、その地域に通じるすべての道路を封鎖した状態で『収容サイト81██』に指定し、民間人が間違って入り込んでしまった場合には機動部隊を送り込むといった厳重な警戒を施している。
さらに金属板は『事案SCP-1233-JP-A』を契機に、本来は幽霊などの実態を持たない存在に影響を与える装置である『メトカーフ非実体反射力場発生装置』を三重のバックアップが施された状態で拘束している。

一体、誰がこのような物を作成したかは不明だが、作成年代や用いられている科学技術などから総合的に判断した結果、人類以外の知性体がその製造に関与していたのではないかという推測が立てられている。



財団との関わり

このSCiPを財団が認知したきっかけは、1900年代にアメリカ資本であるSCP財団が『蒐集院』*2に吸収合併を打診した際であった。

滋賀県に逃亡するまでに色々とやらかしている蒐集院過激派が、のちに財団から『青い陽炎』と記録される事件を引き起こしたのである。

この事件により、当時SCP-1233-JPが存在していた地域の村の大部分を含む700人以上もの死傷者が発生。
記憶処理などを用いて隠滅した財団は、火山性有毒ガス発生の名目で村そのものを隔離し、村の跡地には収容サイト81██を建造する。*3

…しかし、4000メートル以上も穴を掘った蒐集院はいったいこの地で何をしたのだろう?噴火でも誘発するためか?

いずれにせよ傍迷惑なのは間違いないが、結果的にこのSCiPが発見される事になったから、GJと言っていいのかもしれないたぶん


宇宙船『滋賀県』


ところで金属板は地中へ釘付けにしている装置が、万が一、一斉に止まってしまったらどうなるか…?

『メトカーフ非実体反射力場発生装置』による拘束が外れてしまった途端、こいつは穏やかに加速しながら地上へ向けて移動を開始し、地上に近づけば近づくほどこの金属板は実体へ近づき、最終的には地下2339メートルで実体化する…と財団は試算している。
そして、金属板は実体化しながら浮上し続け、地下2キロメートルに到達した場合、SCP-1233-JPは甚大なエネルギーを放出して瞬間的に第二宇宙速度へと到達する。その上に滋賀県を乗っけたまま

 第二宇宙速度=時速40300キロメートル=地球脱出速度


つまり、滋賀県はそのまま『ラピュタ』…いや、『ブリキン島』になってしまうのである。

さらば、地球よ……旅立つ滋賀県を載せたまま飛び立った金属板こと『SCP-1233-JP』は、地球から見てさそり座の方向に22光年離れた位置に存在するグリーゼ667Ccへと到達する。
この星は、太陽系外惑星のうち地球の数倍程度の質量を持ち、かつ主成分が岩石や金属などの固体成分と推定されているスーパーアース*4と呼ばれ、地球の代用として住み着くことができるかも知れない星の一つである。*5
なお、グリーゼ667Ccへの到達には最低でも███年と推測されているが、SCP-1233-JPには環境調整機能の搭載が判明しているとはいえ、人類の生存をカバーするかは定かではない空気ぐらいはどうにかしてほしい。直径80kmという限られた大地の限られた資源で早急に人類を存続させる手法の構築が求められる。機械仕掛けの神を応用すれば何とかなる…かな?


ところで、時速40000キロという異常な速度で浮上することによって発生する衝撃を和らげるギミックが金属板には仕込まれているようである…が、発射台代わりにされた地球はどうなるのか?

  1. 琵琶湖を震源に震度7を大幅に超える広域大地震発生。
  2. この地震により、地軸変動にともなう気候の大変動。
  3. 地球が公転軌道を離脱。(太陽への落下の可能性を含む)
……etc

K-クラスシナリオが発生し、最悪はXK-クラス:世界終焉シナリオ」、良くても「IK-クラス:世界文明崩壊シナリオ」に陥ってしまうだろう。



21世紀の箱舟運用計画書


このSCiPの特性を利用し、財団はK-クラスシナリオが発生した際の保険として運用するプロジェクト、『特別退避プロトコル”ノア”』を立案した。

具体的には『緊急事態レベル5』の発令時かつ、O-5のうち三名がプロトコルの実行を許可した場合にのみ発令される四段構えの作戦である。

  1. ゲネシス・プログラムに従い、特定指定エリアの人員移動実施。
  2. SCP-1233-JPの拘束を開放。
  3. SCP-1233-JP、及び特殊指定エリアの射出待機。
  4. プログラムの対象者はグリーゼ667Ccへ移住、人類文明の再構築を行う。

前述したように、SCP-1233-JPが宇宙空間へ打ち上げるのは琵琶湖を中心とした直径80キロメートルである。


ゲネシス・プログラム




閲覧制限
レベル4/ゲネシス-1233-JPの権限が必要


ゲネシス・プログラム』は、上記の『特別退避プロトコル”ノア”』が発令された際、特殊指定エリアへの立ち入り許可される人物を選定する一連の手順を総称である。
エリア内に居住できる環境を整え、維持するためには人口に制限をかける必要があるため、退避人数及び退避対象者はより厳密に制限が設けられている。
上記はプログラムの実行による選考基準及び、現時点での対象者リストである。
閲覧には「レベル5セキュリティクリアランス」または「レベル4/ゲネシス-1233-JP」の権限が必要なので注意してほしい。








ある男の残した手記‐遠からず訪れる破滅を避けるために


SCP-1233-JPが発見されると同時に密封された容器に封入された手記が発見されている。
この手記にはSCP-1233-JPを起動時の動作内容や、操作方法などが記載され、住民の管理手順や植民を行う際の注意点までが記載されていた。
年代測定の結果、この容器及び紙が製造されたのは、およそ███年前であると算出されるが、紀元前150年*6よりもさらに数百年以上遡った年代であるため、手記はパラレルワールドで記載されたものであると推測され、現在は詳細な分析が進められている。
この手記の一部には未来に通じる情報が含まれることから、ありとあらゆる角度からシミュレーションが行った結果、この手記に一定の信ぴょう性があると判断し、財団による『特別退避プロトコル”ノア”』のひな型となった。

以下に、その手記の(ほぼ)全文を記載する



親愛なる財団諸君

ようやくここへたどり着いてくれたようだね。
まずは、おめでとう。そして、ありがとう。
本当は直接会って話をしたいのだが、何度やってもうまくいかなくてね。
仕方なくこうして回りくどい方法を取らせてもらった。
この方法に辿り着くまでの旅は、本当に、本当に長かったよ。

もうこの船について、少しは調べてみたかな?
君たちも察している通り、これは宇宙船だ。
琵琶湖を水源とする半径80kmの地表を丸ごと積み込んで宇宙へ飛び立つ、巨大な宇宙ステーションだ。
巨大とは言っても、地球全体からしたらクズみたいなものだが、それでも、君たちにとっては最後の希望となるものだろう。
この宇宙ステーションについていくつか説明をさせてもらう。
無論、優秀な君たちは私の言葉を鵜呑みにしたりはしないだろう。
疑問があれば存分に調べてくれ。あらゆる調査結果は私の言葉が真実だということを示すだろう。
この船を誰が作ったのかは人知及ばぬところだが、どうすれば動くのか、どう暮らすべきなのか、私は幾度も見てきた。
それを、君のために記す。




To be or not to be; that is the question.-二度目の洪水を起こす者へ

この手記の筆者である『犀賀』とは、財団の日本支部がマークしている要注意団体の一つ、『犀賀派』の主催者である時空物理学者、犀賀六巳(さいが・ろくみ)の事と推測されている。
彼とその信奉者から構成される『犀賀派』は、パラレルワールド全体を救うためならその中の一つを犠牲にすることすら厭わない過激な救世集団なのだ。

彼が発見し、未来へと残したこのSCiPにもそんな彼の理念がよく表れている。
即ち、人類の大多数を犠牲にして『人類』という種族そのものを死守せよ、という思想である。

しかも、彼は財団がSCP-1233-JPの存在へ確実にたどり着くために、この狭い日本国内に大量のSCiPと要注意団体をばら撒いたのだ。

  • 異常生物研究組織=日本生類創研…異常な生命体を次々と開発する民間の研究施設
  • 異常工学研究企業=東幣重工…オーパーツを開発する重工業
  • 異常不動産会社=如月工務店…いわゆる「鬼」の子孫が運営する企業
  • 異常化粧品会社=イワナガ美容組合…人体改造を引き起こす化粧品を販売する民間企業。「販売員ミヨコ」の所属する団体とも考えられている
  • 異常観光ガイド=如来観光…観光開発に特化した異常な物品などを扱う民間企業
  • 不死兵団=負号部隊…第二次世界大戦時に作られた旧日本軍の兵器開発セクション
  • デリンジャー=懐中銃教会…銃を無上の物として尊ぶカルト集団

これらの要注意団体は、様々な形で財団とかかわりあい、多くの人々の人生を狂わせてきた。
そのすべてが…犀賀六巳という一人の男の用意した存在だというのである。

あれ、『博士』がない。…やっぱりあのパクリ魔変態野郎は犀賀派とは無関係の存在だったか。

いや、そんなことは救いにはならない。

ノアは、世界を再生するのに必要な『命』を死守する事だけを命ぜられた。
しかし、財団は世界を一度滅ぼす洪水そのものも起こすように言われているのである。

財団は、明日何処を向けばよいのだろうか?


類似するオブジェクト

何かを犠牲にして、人類を救うためのシステムという点でSCP-1233-JPとよく似たシステムは財団自体も所持している。
ただし、財団がとるスタンスはかのジェレミー・ベンサムが打ち立てた理念である『最大多数の最大幸福』。
いったいどういう意味なのかというと?

SCP-1153-JP(通称・一人去る時)
特定の地域にSCiPが集中するように因果律を操作し、もし満杯になったらその地域ごと隔離することでSCiP被害を軽減させようという財団本部のプロジェクト。
勿論、勝手に保管庫代わりに利用された地域の住民には堪ったものではないが、それで世界が助かるんだから…我慢して死んでね?

ただし、SCP-1233-JPとは違い、財団謹製の手法では世界を救えるか否かは正直微妙である。詳しくは当該項目をどうぞ。


余談

手記の中で犀賀が言及している「長野の大ウツロ」とは、対策を施せば施すほど過去の被害がでかくなる超危険なオブジェクト、SCP-280-JPである。
そして、このSCiPは、SCP財団日本支部の『1000JPコンテスト』応募作品として制作されたものの一つであった。


追記・修正はこの二つの問題のうち、どちらを真剣に考察するかをお考えになりながらお願いします。
  1. 大多数の人間を犠牲にしてまで『人類』という種族を守ろうとする意義
  2. カモノハシの真なる存在理由

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1233-JP - 特別退避プロトコル”ノア"
by dr_toraya
http://ja.scp-wiki.net/scp-1233-jp

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最終更新:2024年02月26日 12:21

*1 2113mは北海道の大雪山系の『愛別岳』とほぼ同じ高さ

*2 日本で古来より異常な性質を持った物品等を管理していた組織

*3 事件の生存者が解放される予定は存在しない

*4 巨大地球型惑星

*5 2011年11月にカーネギー研究所とゲッティンゲン大学の研究者によって『 』として言及されている。

*6 この年代は歴史上に紙が登場した