ガブリエル・ミラー(SAO)

登録日:2017/02/18 Sat 01:34:10
更新日:2024/04/11 Thu 18:16:43
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※この項目はネタバレが多分に含まれています。閲覧にはご注意下さい。



君の魂は、きっと甘いだろう。(Your soul will be so sweet.)



ガブリエル・ミラーとは、ライトノベルソードアート・オンライン』に登場するキャラクターである。

CV:石田彰釘宮理恵(幼少期)

◆概要

登場は第4部≪アリシゼーション≫後編、≪アンダーワールド大戦≫編。

米国の民間軍事会社《グロージェン・ディフェンス・システムズ》の最高作戦責任者(CTO)。1998年3月生まれ、金髪蒼瞳、身長185cmの男性。

《サトライザー》という名で《ガンゲイル・オンライン(GGO)》のアカウントも所持しており、第4回の《バレット・オブ・バレッツ(BoB)》で優勝している。
しかも徒手空拳と拾った武器だけで。*1
アニメ版では仲間を連れてPKスコードロンを結成し、採算度外視でプレイヤーを虐殺していたことも明らかになっている。*2

幼少期の趣味は昆虫標本の収集だったが、それは純粋な昆虫への興味ではなく、「死んだ生物の魂はどこへ行くのか」という疑問を追及せんとしたため。
その入れ込みようは「標本に囲まれていると虫達が生き返り動き出す」幻覚を見たり、実験の為に数えきれない程の虫を殺した事はおろか、幼馴染で真面目に結婚を考える程親しかった「アリシア」という少女を一瞬の躊躇無く殺害する程。*3

その際に彼女の額から逃げ去る金色の光を見た事で「魂への渇望」とも言うべき欲求は極まったものとなり、その光を捕らえる事だけを目的に生きる事になる。
国家安全保障局(NSA)が真正ボトムアップ型AI《A.L.I.C.E.》を奪取せんと立案した《オーシャン・タートル強襲作戦》に参加したのもその一環で、あわよくばSTLとそのテクノロジーを奪い、何人もその手で殺害してなお掴めなかった《魂の本質》を掴もうと明に暗に行動した。

ヴァサゴ・カザルスやハンス、クリッターらと共にオーシャン・タートルのメイン・コントロール室や第一STL室、動力源である原子炉を制圧した後は、内部からの操作でアリスのフラクトライトが記録されたライトキューブを確保するためにスーパーアカウント04《闇神ベクタ》を用いてアンダーワールドにログイン。《皇帝》という設定を利用して暗黒軍に人界襲撃を指示し、アリスを捕らえる駒に使う。
アンダーワールド人が本物の人間と本質的にはまったく変わらない魂を持っているとわかった上で、オーク軍の兵士たち3000人を暗黒術師の生贄に捧げる事を指示したり、人界襲撃に反対し反目を画策していた暗黒騎士長・シャスターをあぶり出す為に彼の部下であり妻となる予定だった女性の首を氷漬けにして彼の目の前に突き出したりと、目的の為なら手段を顧みない非情さをのぞかせている。……というか一々やり方がエグ過ぎる。
…いやまあ、これでも同僚のヴァサゴの陰湿さに比べればまだマシに見えるが。

シャスターを始末した後は玉座で軍に指示を飛ばすだけだったが、アリスを発見した後は捕らえた者に人界全領域の支配権譲渡を約束したり、暗黒騎士のアカウントでログインしたヴァサゴがスーパーアカウントでログインしたアスナによって斃されると行動を再開。
まずアメリカのVRMMOプレイヤー、それらが軒並み倒された後には中韓のプレイヤーを「新規VRMMOの時限テストプレイ」なり「中国の民間有志が共同開発したVRMMOのテストサーバーが日本のプレイヤーに攻撃されている」と偽って自らの戦力とし、アンダーワールドにログインさせる*4などとんでもない手を次から次に行っていた。

しかし、シノンリーファがスーパーアカウントを用いてログインし、リズベットシリカ達の必死の説得によってALOプレイヤー達が自分のアカウントをコンバートさせてまでの参戦、見境なく殺戮を繰り返す暗黒軍側(の筈の)プレイヤー達や今までの皇帝の非道な命令に業を煮やした暗黒界人や亜人族が人界軍に味方した事により、形勢が逆転しかかる。
それを見越していたガブリエルは襲撃者達を撃退すべく前線に出てきたアリスを拉致、それを阻みにきたベルクーリの裏技によって天命がゼロになりアリスを奪還されるが、《サトライザー》のアカウントをコンバートしすぐに再ログイン。《太陽神ソルス》の飛行能力によって追走してきたシノンに対し、心意によって生み出したスナイパーライフル《バレットXM500》を用いて彼女のヘカートと狙撃戦を繰り広げた。*5

シノンを退けた後は現実世界へ向かうアリスを追って再び《ワールドエンド・オールター》を目指すが、比嘉の決死の行動とアスナ、リーファ、シノン、何より相棒であるユージオの尽力によって精神喪失状態から復帰したキリトによって阻まれる。
精神への直接干渉をも跳ね除けてもなお《闘志》らしき感情を見せないキリトの《魂》に興味を示し、本物の浮遊城の王のように3分間付き合うことを決める。

《無の心意》によって《銃撃》と《格闘》以外*6の攻撃を吸収し、一方的にキリトを苦しめた事で《全能感》を得、ガブリエルにとっての《全能》のイメージとガブリエルのセルフイメージが同化した、背には六枚の翼、頭上に漆黒のリング、肉体は実体のない青黒い光が人のカタチをした、まさに《死の天使》ともいうべき姿に変化。

その上頼みの綱であった銃撃と格闘による攻撃をも取り込み無効化するという暴挙を前に、キリトは諦めかけてしまう。
しかし、相棒の言葉に勝機を見出し、再び戦いへ挑む。

「彼ら」の尽力によって再び現実世界に送り返され、己を下したキリトの《魂》を得るべくもう一度アンダーワールドにログインしようとするが、ある事情によってそれは叶わず、アリスの回収も失敗した襲撃グループは最後にテロまがいの行動を起こすのだが、それはまた別の話。

ここまで記載した内容から分かると思うが、ガブリエルは原作者公認で本作唯一の「そうなる理由を一切持たないキャラクター」という、文字通りの狂人として設定されている。
行動が陰湿極まりなく同情出来る点は皆無とは言え、ヴァサゴにすら設定されていた過去も無くこの行動に走ることが可能なことこそ、彼の最大の特徴である。


◆戦闘能力

既に書いた通りだが、強いなんて次元じゃない。歴代ラスボスの強さ(須郷除く)が霞んで見えるレベル。ざっと列挙すると、
  • 第三回優勝者であるシノンも参戦している第四回BoBで、素手と拾った武器だけで優勝する
  • 心が虚ろである為、シャスターがその身を引き替えに発動させた《殺の心意による魂への直接攻撃》をまったく受け付けない
  • シャスターの心意を一目見ただけでロジックを理解し、すぐさま意のままに扱ってみせる
  • 剣技においてアンダーワールド最強*7とされるベルクーリと剣で競い合える。同等でこそ無いが、それでも「一歩劣る」程度
  • 狙撃の精度もシノンと同等以上。高速でランダムに飛び回る人型の物体を、自身も走り回りながら平然と当てて見せる
  • 前述した通り、攻撃一切無効。これは茅場のようにシステムによるものではなく、彼の心のありようが現れたもの
  • これらの性質から、アンダーワールドの神をベースにしたアカウントであるベクタより、自分のものである「サトライザー」の方が強いという有様。

これだけでも彼がどれだけとてつもない戦闘力を持つかがわかるだろう。誰だよキリト最強とか言ったやつ。
そもそも、曲がりなりにも精神喪失状態から復活してアドミニストレータ戦から大幅にパワーアップしている筈のキリトが終始圧倒されてしまう程の戦闘力の為、不毛になりがちな本作の最強議論を行っても間違いなく現時点ではトップになるお方である。
しかも戦闘力だけでなく知略にも優れ、襲撃軍の戦略の大半を立て、直前まで自らの目的を悟られることなく暗黒界軍を意のままに動かし、状況に応じた適切なロールを演じることも容易い。

しかし完全な存在など居ないという事か、そんな彼にも一点だけ弱点が存在した。


◆末路

以下、最終決戦に関するネタバレ。









勝機とはつまるところ、ガブリエルが持つ「人の心への怖れ」。
ガブリエルが魂に固執し、奪い、壊そうとするのは、彼が《人の心》というものを知らないから。

そう、彼は心が理解できないから、他人から奪おうとするのだ。

キリトは《夜空の剣》の記憶を全開放。世界を包むように広がったのは無限の夜空。
アンダーワールドにいる人々全ての想いを束ね、キリトはかつて最も修練し、最も頼った二刀剣技を放つ。

スターバースト・ストリーム。連続16回攻撃。

ガブリエルは最後の抵抗とばかりに剣状のエネルギーフィールドでキリトの左腕を切り落とし、そのままトドメを刺すべく斬りかかるが、剣に宿る意志が青薔薇の剣を支え、虚無の刃を受け止めた。

その心に応えるために振り下ろした17撃目は天使の身体に人々全ての想いを流し込み、ガブリエル・ミラーはこの世界から退場した。


――――――――ははははははは!!


哄笑と共にSTLから起き上がったガブリエルは、あれほどの力を見せた剣士の心を喰らうために、三度ログインしようとする。

しかし、顔をしかめつつ振り向いた彼が見たのは、STLのシートに横たわり、目を閉じる長身の白人男性の姿だった。
見覚えの無い男が自分のマシンを勝手に使っている事に腹を立てるが、その顔が誰の物かようやく気付き、思わず口を閉ざす。

目の前で横たわっている男は紛れもなく《ガブリエル・ミラー》。ならば、ここで見下ろしている《ガブリエル・ミラー》は何者なのか。
自己が何者か確信が持てず混乱し始めたその時、背後で声がした。


……ようやく、こっちに来てくれたのね、ゲイブ


そこに立っていたのは、白いブラウスと紺のプリーツスカート姿の、幼い少女だった。


……アリシア。なんだ、そんな所にいたのか、アリー


アリシア・クリンガーマン。ガブリエル・ミラーが、魂の探求という崇高なる目的のために、初めて殺したとても仲良しで幼馴染だった少女。
ガブリエルは彼女の魂を捕らえ損ねた事を長らく悔いていたが、それは決して失われたわけではなく、ちゃんと傍にいてくれていたのだ。

思わず伸ばしたガブリエルの右手を、凄まじい速度でアリシアの左手が掴む。刺すような冷たさのその手は、万力の如く微動だにしない。


……冷たいよ、手を放してくれ、アリー

だめよ、ゲイブ。これからはずっと一緒なんだから。さあ、行きましょう

行くって……どこにだい。だめだよ、私にはまだやるべき事があるんだ。離して。離すんだ、アリシア


少し厳しい声を出したとほとんど同時に、彼女がさっ、と顔を持ち上げた。前髪の下の顔が視界に入ったその瞬間。
ガブリエルは、心臓が縮み上がるような感覚に襲われた。息が荒くなり、肌が粟立つ。正体不明の感情に苛まれる。


それが恐怖よ、ゲイブ。あなたが知りたがってた、本物の感情。どう、素敵でしょう?


恐怖。探求と実験の為に殺してきた多くの人間達が、今際の際に浮かべていた表情の源。
しかし、初めて味わうその感覚は、とても心地よいものではなく、むしろ不快ですらあった。こんなものは知りたくない。早く終わらせたい。


だめよ、ゲイブ。これから、ずーっと続くの。あなたは永遠に、恐怖だけを感じ続けるの


ずるり、とアリシアの小さな靴が金属の床に沈み込む。そして、ガブリエルの足も共に徐々に沈んでいく。


あ……や……やめろ。離せ……やめろ


うわごとのように懇願するが、アリシアの、そして殺してきた人間達の腕が絡みつき、逃げる事を許さなかった。恐怖はどこまでも高まっていく。


やめろ……やめろ、やめろやめろやめろ―――――――――ッ!!


ガブリエルは悲鳴を上げた。何度も、何度も。無数の白い手が、肩に、首に、顔に絡みつく。

聡明な彼には、そんな状況でも自分の行く末がわかっていた。この恐怖が、これから無限に続くのだ。

少女の顔が、嬉しそうに笑った。まるで幼馴染みと一緒にいられるのを喜んでいる、あるいは自分を殺した男にもその恐怖を味わせられるのを待ってたかのように。

───かくして、魂の行く先を求め、多くの人間を殺してきた男は、名前通り地獄の恐怖を味わいながら、幼馴染みを始めとしたその魂達によって地獄へと引きずり込まれていったのだった。

後に彼の死体を見た部下たちは、そのあまりの悍ましさに戦慄したという。
アニメでもこのシーンはあり、石田彰氏と茅野愛衣(アリシアの人)氏の熱演によって、本当に怖い。


◆余談

原作者・川原礫先生によると、「ブラックホールのような人間」「リアルで殺しに来るので全キャラ中で一番敵に回したくない人」とのこと。

また、アリシゼーション編のラスボスでありながら、主人公であるキリトと最終決戦まで一切因縁を持たせなかったのには、
「これまでのSAOの敵キャラクターはどこかしら理解できる部分があったが、ガブリエルは一切の共感を阻むキャラクターとして造形したかったため、キリトとの因縁を作らないことによって、キリトが彼のことを理解する機会を与えないようにした」ことが理由だという。


追記・編集は、本物の感情を知ってからお願いします。

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最終更新:2024年04月11日 18:16

*1 アニメにおいてパスワードは「Yastgutdwiiys」という事が判明しているが、作者のツイートによれば、「You aren't supposed to give up the demon who is in your soul」という英文の頭文字であるとの事。意味は「お前の魂の中の悪魔を放棄するな」、実にガブリエルらしい言葉である。

*2 この時ヴァサゴもPoHの姿を流用したアバターで試合を見ており、去り際に「また会おうぜ」と呟いている。なおガブリエル自身はシノンがキリト達と組んだスコードロンと戦った際、「あんな異質なスコードロンと戦っても意味がない」とコメントしており、自ら戦場に出ることはなかった。

*3 これは単なる「魂への興味」だけではなく、家が莫大な負債を抱えて引っ越す彼女を他の誰かに渡したくなかったという独占欲にも似た感情が引き金となっている。余談だが、この時のガブリエルは10歳である。

*4 アンダーワールドはダイブした人間の「記憶」から構成されたいわば「超リアルな夢」であるが、基本はあくまで《ザ・シード規格》の仮想空間であり、時間加速が行われていなければ下位のポリゴンワールドに既存のフルダイブ機器を用いてダイブする事は可能。ガブリエルはこの為に、同行していたハッカーのクリッターに加速倍率を等倍にする指示を出していた。

*5 この時もサトライザー/ガブリエルはシノンを終始圧倒しており、彼女が自身の左足を消し飛ばされながらも一矢報い、右腕を吹き飛ばされるまで不敵な笑みを崩さなかった。

*6 ガブリエルはGGOは勿論現実でも豊富な戦闘経験がある為、それらによるダメージをよく知っているが故にダメージを無効化出来なかった。この時は、だが。

*7 と言っても本人は自身が衰えていることを自覚しており、現在は弟子のアリスを最強と称している。