空母いぶき

登録日:2017/02/13 Wed 21:30:25
更新日:2024/02/20 Tue 00:58:22
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武力交渉
よりリアルに描かれるリアル軍事エンターテイメント、空母いぶき

◆作品解説

『空母いぶき』は、かわぐちかいじ作品の軍事漫画。『ビッグコミック』にて、2014年から2019年まで連載中されていた作品。全13巻まで発刊されている。

現在は、続編である『空母いぶき GREAT GAME』が連載中。こちらは現在まで10巻まで発刊されている。

かわぐち氏といえば、冷戦時代真っ只中描いた『沈黙の艦隊』。日本を分断した復興作品『太陽の黙示録』。そして、アニヲタ御用達ともいえるタイムスリップ架空戦記『ジパング』を描いた漫画家であり、本項目も軍事関連を描いた作品でもある。

しかしこれまでの作品とは違い、空母いぶきは現代の世界情勢を再現しており、中国と問題になっている尖閣諸島問題を取り扱っている作品でもある。
作品が発表される前は、尖閣諸島中国漁船衝突事件や、散発的に発生する尖閣諸島中国船領海侵犯事件を念頭に、日中関係の中で離島防衛および奪還作戦の可能性が現実味を帯びており、そうした中で発表された作品であり、最も注目された漫画になっている。

が、作中では度々表現としては可笑しいことがあってか、2chの掲示板では度々炎上しているとかいないとか…


世界は再び『空母』の時代に突入しつつある


◆あらすじ(1巻~

時に西暦20XX年、先島諸島は尖閣諸島にて、民間人(という名の中国工作員)が突如五星旗を掲げ上陸する事件が発生する。
そんなことをすれば当然海上保安庁が黙っているはずもなく、特警隊を引き連れて島へとヘリを飛ばす。日本政府もこの上陸行動を即座に民間人ではなく工作員だと推測し、平和的解決的に進めるように指示を出す(この辺は現実でも起こっている)。
しかしその最中、中国海軍の空母《遼寧》が日本の排他的経済水域を越えて接近している情報が入る。
明らかに行動が違う中国側に違和感を拭えない日本政府。そして、海上保安庁の巡視船と中国の海警艦が衝突したのを皮切りに空母《遼寧》から艦載機《殲15》が発艦し、調査目的で海上へと急行していた海上自衛隊の護衛艦《あたご》へ威嚇目的のミサイルを発射する。
これを知った日本政府は尖閣諸島で保護していた中国人を開放。世論から日本政府は逃げ腰だと否定的に見られてしまう。
だが、事態を重く見た内閣総理大臣である垂水慶一郎は、数年後に予定していた新型護衛艦建造計画《ペガソス》を前倒しで始動させることを決定。

時を同じくして、航空自衛隊の《秋津竜太》は出向先のノーフォーク米海軍基地にて、今回発生した事件により《ペガソス》計画が前倒しになるのを確信する。

コードネーム『ペガソス

それは、戦後日本が初めて持つことになる国産空母《いぶき》の誕生であった。

翌20XY年4月、『いぶき』率いる第5護衛隊郡が南鳥島沖での演習航海中、中国軍は『曙光工程』を発動。

突如として日本への侵攻を開始し、先島諸島(与那国島及び多良間島)や尖閣諸島の制圧、与那国島にて自衛隊初の戦死者を出したことに加え、一方的に発表を繰り返す中国に対し、話合いの意思がないと判断した日本政府は、内閣総理大臣である垂水慶一郎の指揮により、『海上警備行動』に続き史上初の『防衛出動』を下令。この時点で自衛隊と中国人民解放軍との武力衝突は避けられないものとなる。

日本初となる防衛出動に対し、自衛隊、捕虜となった島民、日本政府、そして日本国民はまだ知らぬ戦闘へと巻き込まれていく。


そして、2019年5月24日。

まさかの実写映画が公開されており、色んな意味で話題を呼んだ。


◆主な登場人物(随時更新予定)

海上自衛隊《第5護衛隊群》

  • 秋津竜太
この作品の主人公であり、空自始まって以来のエースファイターと称される人物。海上自衛隊初となる航空機搭載型護衛艦である『いぶき』の艦長に任命され*1、同時に史上最年少となる一等海佐へと昇進する。
空自の特徴と言われる四字熟語『勇猛果敢・支離滅裂』を体現するかのように、嵐の中デッキに出て荒波に挑むは、自ら新型戦闘機F35JBを操縦士する。そして止めに自ら『アジア最強』と掲げ、他の艦長から適正を疑う報告書まで出されているが、日本を守るという思いは誰よりも強い。分析力、判断力も高く、敵航空機の撃墜を即断し、占領されている多良間島への爆撃作戦など数々の作戦具申を行っている。

  • 新波歳也
護衛艦《いぶき》の副艦長兼航海長についている海上自衛官。物語の副主人公。
いぶきが空母というカテゴリーではなくただの護衛艦ならば艦長に選ばれていただろうと劇中で語られている。
先の発生した尖閣諸島中国人上陸事件では、結果的に威嚇に屈した形となったために当時出向していたアメリカ海軍からは《負け戦》と言われるも、発足以来誰も犠牲を出さずに終わった件を《勝ち戦》と評価した。
問題行動が目立つ秋津を何かと思っているようだが、日本にかける思いは強いと要所要所で評価はしている。

  • 涌井継治
初登場時は『あたご』艦長を務めており、階級は一佐だったが、のちに海将補へ昇格し、第5護衛隊群司令を務める。
曙光工程で宮古島海域へ急行する際、待ち伏せをし先制攻撃の意思を見せた元級潜水艦『遠征103』に対し、尖閣諸島中国人上陸事件にて威嚇目的で発射されたミサイル攻撃で防御が間に合わなかった記憶と敵艦の人命を奪うことの板ばさみとなり、自ら先制攻撃を行うか煩悶するが、日本が受ける壊滅的な被害を想像し、迎撃準備をする『けんりゅう』への攻撃命令を自制する。

  • 浦田 鉄人
涌井群司令の後任として護衛艦『あたご』の艦長を務める。階級は一佐。
何よりも自衛隊として専守防衛を重んじており、事実上の空母である『いぶき』就役に伴い若い隊員が旧帝国海軍の『伊吹』復活をはしゃぐ空気を諌めている。艦長会議での秋津の『アジア最強』という思想に対しても懐疑的に見ており、適正問題があるのではと艦隊司令である水谷司令官に報告をしている。
海上自衛官としての責務は強く、中国軍戦闘機『殲-20』からのミサイル攻撃、尖閣諸島への艦砲射撃、自らが乗艦する『あたご』を盾にしてでも魚雷から『いぶき』を守ろうとするなど、強い意識を持っている。

  • 浮船 武彦
こんごう型イージス護衛艦4番艦『ちょうかい』の艦長を務める。階級は一佐。
スキンヘッドでいかにも厳つそうな見た目をしているが、実は普段はイケイケな性格であり、本気になると関西弁になる。秋津の言った『アジア最強』の言葉に同調しており、その言葉を認識しながら、多良間島沖に展開する中国海軍駆逐艦を排除した。
続編である『空母いぶき GREAT GAME』でも引き続き第5護衛隊群に『ちょうかい』と共に所属している。

  • 瀬戸 斉明
あさぎり型護衛艦3番艦『ゆうぎり』の艦長を務める。階級は二佐。
護衛艦に搭乗する乗員を家族と考える人物であり、中国軍との決戦の際に被弾した際も『ゆうぎり』よりも-リスト
負傷者の確認をしていた。艦隊の前衛を担うことに誇りを持っていたが被弾による艦隊の立て直しの際し、秋津から促される形ではあるが、後方支援と周り最後まで戦い抜いた。

  • 清家 博史
あさぎり型護衛艦6番艦『せとぎり』の艦長を務める。階級は二佐。
尖閣諸島への砲撃さ際し、護衛艦『あたご』の護衛として随伴。中国海軍の潜水艦からの魚雷攻撃を防ぎつつ、『あたご』の砲撃の支援を行っていたが、『けんりゅう』との攻防をしていた『遠征103』が無謀ともいえる追撃を行い、『あたご』を守るために盾となり被弾。尖閣諸島への砲撃は成功し、撃沈は免れたが艦隊から離脱となった。

  • 滝 隆信
そうりゅう型潜水艦4番艦『けんりゅう』の艦長を務める。階級は一佐。
中国海軍潜水艦のキロ級・元級の性能向上と艦数の多さ、また広大な日本の領海域に対し、自衛隊の所有する潜水艦では手が回らないことを危惧している。防衛出動が発令されてもなお現場に政治を持ち込むことに不満を漏らしてた。潜水艦の操艦技術には目を見張るものがあれど実戦の戸惑いから敵潜水艦からの攻撃を許してしまうこともあったが、最後は任務遂行のために『遠征103』を撃沈した。その後も単艦にて中国海軍駆逐艦を一隻航行不能にするなど非常に優秀なサブマリナーである。

  • 海老名 洋子
あさぎり型護衛艦4番艦『あまぎり』の艦長を務める。階級は一佐。
艦隊から離脱となった『せとぎり』のバックアップとして第4護衛隊群から編入された。海軍家系らしく性格は一徹。初の実戦に際し、当初は緊張をしていたが、すぐに対応し中国軍からのミサイル攻撃を防いだ。


◆軍事兵器

DDV-192 『いぶき』
ペガソス計画によって生み出された、自衛隊初の航空機搭載型護衛艦。現実世界で作ったらどっかの野党や左翼団体、そして隣の国とかが絶対黙っていないであろう代物。
空母……え?護衛艦?ああ、そうですか…じぇねえよ!!
恐らくいずも型2番艦として予定されていた護衛艦を改修して開発されたと思われる。
実際にこの作品が発表される一年前に護衛艦《かが》が起工し、連載2年後に竣工している。これはジパングでのイージス護衛艦《みらい》と同様に当時まだ全体像が未発表だったあたご型護衛艦をかわぐち氏が想像で描いた経緯もあり、今回も同様ではないかと考えられる。
(最もジパングはイージス艦だからこそ許されるが、今回は実質空母であるため実現するのは現時点ではかなり難しく、運用しているいずもを艦載機搭載などにすれば莫大な費用がかかるため実現するのは不可能と思われる)
搭載機は後述でも登場するが、新型ステルス機F35JBを15機搭載している。部隊名はそれぞれ『アルバトロス』『スパロウ』『ターキー』『ピーコック』。
武装もいずも同様、SeaRAM2基とファランクス20ミリCIWSだけであり、この辺りはいずも同様に艦隊司令という位置づけと思われる。
  • なお本作の連載開始後、現実にいずも型護衛艦2隻のF35-B搭載改修が決定した。

ステルス垂直離着陸機『F35JB』
恐らく現実で配備したらとある団体やどっかの国が黙っていないだろう兵器その2。
一機辺りの単価は150億円。専守防衛を掲げる自衛隊が艦載機を艦船に載せるというのは憲法その他諸々で色々やばい(空母が戦略兵器にあたるため)が、F35JBはあくまでも対潜用という説明で通しているが当然野党などが猛反発している始末。またいぶきもであるが、海外からも否定的な意見などがでており、二つ合わせで中国軍が攻めてきたのはいぶきによる性などと言われている。
性能的には作中では中国のステルス機殲20以上のステルス性を有している能力があるとされているが、既に6巻時点で2機喪失している。最初の1機は敵艦載機との戦闘で、もう1機は多良間島でのミサイル車両破壊作戦で撃墜されている。また、Bタイプ以外にAタイプも実戦配備されており、沖縄の空港へ進出している。
現実ではF35Aが今月に入り組立作業が終了したニュースが入ったばかりではあるが、Bタイプが実戦配備される日がくるかは定かで無い。というよりBタイプ配備=艦載機になる可能性が高く、もし配備されればリアル空母いぶきが誕生するかもしれない。
  • こちらも本作の連載開始後、現実で導入予定に。
なおCタイプは現実社会では米海軍のみの導入となっており、作中でも登場しない(米空母の甲板に見えるのはF/A-18)

DDG-177『あたご』
あたご型イージスミサイル護衛艦の1番艦。原作第一巻にて、尖閣諸島中国人上陸事件発生時に、佐世保から『てるづき』と共に現場に調査目的として急行。直後に起きた、中国海警船と海上保安庁の巡視船の衝突事故をきっかけに、空母『遼寧』から発艦した『殲15』から威嚇と警告を含めたミサイルを発射される。幸いロックオンされておらず、直撃には至らなかったが、艦長を務めていた涌井海将補(当時は一佐)には手痛い攻撃であり、後の潜水艦への先制攻撃への苦悩に繋がる。
その後は、第5護衛隊群へ、対空戦闘指揮艦として配備されている。中国軍尖閣諸島進行時、補給作業中に攻撃を仕掛けてきた『殲20』からの対艦ミサイルを迎撃、続く尖閣諸島基地化を阻止するために、LRLAP弾による艦砲射撃とその能力を遺憾なく発揮。最終決戦となる24機による猛攻にも防御と攻撃を兼ね合わせ、いぶきを守り抜いた。

DDG-176『ちょうかい』
こんごう型イージスミサイル護衛艦の4番艦。第5護衛隊群に配属され、尖閣諸島進行時には、あたご同様艦隊防衛に徹する。先の補給作業中の攻撃に対し、1機による単独攻撃を仕掛けてきた『殲20』に対しSM-2により撃墜。これが戦後日本における自衛隊初となる敵兵士殺害となった。第5巻にて、多良間島沖に展開する中国海軍駆逐艦『哈爾浜』『洛陽』を武器のみ破壊するという高度な任務に当たる。イージス艦として全機能を発揮し、敵艦砲撃という危機に陥るも、イケイケな艦長浮舟一佐の操艦と指揮により、フォークランド紛争以来となる対艦戦を制した。続く、多良間島にて上陸作戦を遂行するために海域に接近している水陸機動団の援護のため、対艦ミサイル発射を誘発するために近海へと急行。艦載機F35との連携により、全ての対艦ミサイルの破壊に成功したのだった。


追記、修正頼みます。

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最終更新:2024年02月20日 00:58

*1 アメリカでは空母の艦長が空軍から選出されることにならったか