SCP-981-JP

登録日:2017/02/10 Fri 14:47:48
更新日:2024/04/12 Fri 12:04:39
所要時間:約 9 分で読めます




SCP-981-JPはシェアード・ワールドSCP Foundation、及びその日本支部にて登場するオブジェクトの一つ。
オブジェクトクラスはEuclid。

項目名は「うぇんかんかんほやうかむい」。


概要

SCP-981-JPは、古くからロシアのサハリン島にあるチェーホフ山の洞窟内部に存在する生物である。
大まかにSCP-981-JP-1とSCP-981-JP-2の二種類に分けて分類されており、SCP-981-JP-1は半径18mほどの半球型をした生物である。
表面はなめらかな肌をしており、目や耳と言った感覚器官、口などの摂食器官もなく、食べないため当然排泄器官も無い。
要するに見た目だけなら表面に穴も凹凸もないつるつるのドデカいお饅頭みたいな生き物が洞窟の中にどっしり鎮座してる感じである。
体の構造的にはかなり脆いようで、指でちょっとつついただけで触れた部分が潰れたり崩れたりしてしまう。
が、その分自己再生能力が極めて高く、どれほど体をボロボロに崩されても35分程度で完全に再生ができるようだ。
この自己再生の行程にはエネルギーは一切消費されてはいない様で、そもそも普段から何も食べずにいるのにどうやって生命維持活動に必要なエネルギーを維持しているのかも不明である。

そして、財団がこの生物の調査を進めた結果この生物、なんと遺伝子的には人間と一致していた。
しかも一人の人間ではなく、含まれた遺伝子の細胞の数と、体内から見つかった脳を含む主要な臓器の合計から
14人の人間が混ざり合って出来た生物であることが判明したのだ。


なんとも不気味な生物だが、とは言えここまでの説明だけなら
単純にでっかくて脆くて再生力のあるお饅頭であり、特に他の人間には無害のようにも見えるが、

無論そんな簡単な話ではない。

ここで出てくるのがもう一つの生物、SCP-981-JP-2。
此方は人間の大腸に似た外見をしており、脳や筋肉などは無いようだが蛇のようにうねりながら、のたうちながら周囲を徘徊する。きめぇ。
この生き物の先端部、蛇の頭や口にあたる部分には盲腸の虫垂にも似た突起器官があり、そこから勢いよく成分不明の謎の粘液を吐き出すことが出来る。きめぇ。

この粘液は人間と金属で触れるとそれぞれ異なった効果をもたらし、金属にかかった場合は金属がジュウジュウと音を立てて急速に腐食…どころか一瞬で消滅する。
錆びるとか腐るなんてものじゃなく瞬時に消失するのである。
人間にぶっかけられた場合、ぶっかけられた相手は即座に激しい腹痛を催し、悶え苦しんだ末におよそ6時間後に
対象の大腸が新たなSCP-981-JP-2に変化して腹を突き破って出てくる。当然犠牲者は即死である。

触手状生物に謎の粘液をぶっかけられるといえばその手の手合いによってはある意味期待の掛かる絵面ではあるが、
まあSCPに薄い本を望んでも大概エロ同人ではなくグロ同人である。

このSCP-981-JP-2、そもそも何処から出てくるのかと言えば、上述のでっかいお饅頭ことSCP-981-JP-1の体内からである。
SCP-981-JP-1は普段は大人しく洞窟の中でじっとしているのだが、定期的に自分の身体を意図的に破裂させ、その内部から1~3匹のSCP-981-JP-2を放出させている。
この行為はSCP-981-JP-1が基本的に意識が朦朧とした状態であり、一定の時間で覚醒に近づいた際にSCP-981-JP-2を放出すると考えられている。
要するに普段大人しいのは寝ぼけ眼のような状態で、完全に目覚めてしまえば恐らく際限なくSCP-981-JP-2を出しまくってしまうのだろう。
これを防ぐために、財団はSCP-981-JPの周囲をアクリルガラスで覆い、毎日種類の違う精神抑制剤を注射することで脳活動が活性化しないように注意しなければならない。

それでも現在SCP-981-JP-1はおよそ1月に1回の頻度でSCP-981-JP-2を放出しているが、
一度に放出されるSCP-981-JP-2の数が少なく、かつこちらは再生能力もなく寿命も3日程度と短命なのが幸いか。


収容の経緯

このSCP-981-JP、どうやらかなり古い時代からサハリン島に存在していたらしく、最古の記録ではごく一部の古代アイヌ民族の民謡や歌にその存在を示唆される一節が登場している。
詩によって立場は微妙に変わるが、大まかに「鉄を憎む蛇の魔神」として登場し、『アイヌラックル』というアイヌ神話の英雄と激しい戦いの末に敗れたり逃亡したりしている。アイヌラックルから身を隠すために自ら休眠の眠りについた、ともされている。

18世紀に江戸幕府がサハリン島にまで影響力を及ぼしだしたころ、蒐集院によってSCP-981-JPが最初に発見され収容されることになる。
蒐集院は巨大な肉の塊にして急速な再生力を有する様からコイツを太歳星君と名付け、
この頃から周期的にSCP-981-JP-2を放出していたSCP-981-JP-1をやはり「深い眠りの状態」にし続けるため薬物や呪術を用いて封じてきた。
またこの頃は現在よりも更に脳活動が抑えられており、仮に目覚めかけても簡単に再度眠らせることが可能だったようだ。

そして、この時点ではSCP-981-JP-2の吐き出す粘液は金属を消滅させる効果だけで、人間には無害だったらしい。


その後20世紀前半に入り、ソビエト連邦が出現してからは設立の勢いのままロシアでの財団の活動が押され始め、
とうとうSCP-981-JPはロシアのGRU"P"部局に所有権を奪取されてしまった。
しかし管理自体はP部局も蒐集院や財団と同じような手順の収容手段を守っていた為、大きな問題が起こることもなかったようだ。

……ソビエト連邦時代の末期になるまでの間は。

突如としてP部局の収容施設で大規模な収容違反が発生し、大量のSCP-981-JP-2が施設から溢れ出したのだ。
この事を知った財団は即座に機動部隊を出動させ、SCP-981-JP-2の殲滅とSCP-981-JP-1の精神抑制措置を迅速に行った事で幸い被害は最小限に抑えられた。…情報隠蔽の為の記憶処理や情報規制がクッソめんどくさいほど広範囲になったが。
この事件によって再びSCP-981-JPは財団の管理下となり、その後の調査によってP部局はどうやらSCP-981-JP-2の粘液を兵器転用に利用しようとしてSCP-981-JPに余計なちょっかいを出してしまったせいでこの収容違反が起こったらしい。

これによってSCP-981-JP-1は休眠状態から一度完全に覚醒してしまい、その後も薬物投与によっても元の「深い眠り」にはできなくなってしまった。
現在の低レベルな脳活動も、あくまで薬物で精神を安定化させているだけで元のように「眠った状態」ではなくなってしまったのだ。
本当に余計なことを…



そしてさらに時は流れ2000年代になったある時の事、再び事件が起こる。
突如としてSCP-981-JP-1が完全に覚醒し、大量のSCP-981-JP-2を放出しだしたのである。
すぐさま博士の一人が精神抑制剤を投与したことで事態は収束できたのだが、この時SCP-981-JP-2の出した粘液が博士にかかってしまい、
その直後に博士は激しい腹痛をしだした。そう、この時点で初めて、SCP-981-JP-2の粘液が人間にも異常な効果をもたらすようになっていたのである。
これ以降、薬剤投与の担当者は全身防護服を着ての活動が義務付けられる。

何故突然SCP-981-JP-1が覚醒したのか、後に行われた調査の結果、この日の薬剤投与の担当であったある博士が、
精神抑制剤ではなく真逆の効果である精神刺激剤を投与していた事が発覚し、その博士は自室で大量の精神抑制剤を自分に投与し薬物自殺をしていた。
しかも投与された薬物には精神刺激剤だけではなく、少量の未知の異常物質も混合されていたらしく、
博士が何故このようなことをしたのか、異常物質をどこで入手したのかは今もなお詳しいことはわかっていない。
博士は25年以上財団に忠誠を誓い働いてきたベテランであり、単純な薬の取り違えというミスとは考えづらいが…

SCP-981-JP-2の粘液が人間に作用するように変化したのも、この時の異常物質による効果だと考えられている。


補遺

と、このように恐ろしい能力を持つが一定の手順をしっかり厳守していればなんとか収容可能なコイツだが、そもそもが一体何なのか。
人間と同一の遺伝子、というか異形となった人間そのものであるこの生物の生態に、もしかしたらSCPに詳しい方は何となく察しがついてるのも多いかもしれない。

その正体を示唆する文献が、実は1875年に蒐集院がサハリン島から撤退する際に持ち出した物品の中に紛れていた。
蒐集院が財団に吸収合併されて以降、SCP-981-JPの収容を引き継いだ財団がそれらを回収していたのだが、文章の大半があまりに古く、
そして未知の言語で書かれていた為に殆どが読めない状態だったが、それでも財団の解読班がなんとか翻訳に成功したのが下記の手紙である。

Ozi̮rmok*1の敬虔なる信奉者である、ゼンド*2・[削除済]への通達

悪い知らせです。かの不信心な[判読不能]の異端者たちが、どこからかあなたがたのことを嗅ぎつけたようです。
奴らは“共にある信奉者たち”を[恐れて/警戒して]います。その鉄を朽ちさせる力を[恐れて/警戒して]います。
奴らは[蜜蝋?]の鎧に身を包み、あなたがたのことを探しているようです。
“共にある信奉者たち”は[不完全/未完成]です。今の彼らでは、鎧を破ることはできないでしょう。
幸いにも、異端者たちはあなたがたの詳しい居所を確信してはいないようです。信奉者たちを[深い眠り/仮死]に就かせなさい。
そして彼らを大地の下の[墓所?]に隠し、不信心者たちの目を欺くのです。然るべき時が来たれば、彼らは再び[深い眠り/仮死]から解き放たれるでしょう。

カルキスト・[削除済]

アイヌの民に伝わる伝説にて鉄を憎み、金属を消滅させる魔神が逃げ出した英雄アイヌラック。
もしかしたら彼の着る蜜蝋の鎧の下には、機械の身体が構成されていたのかもしれない。

おまけ

SCP-981-JPの著者、Usurahi氏の著者ページによると、メタタイトル「うぇんかんかんほやうかむい」の元ネタはアイヌ語で、それぞれ「うぇん」は「悪い」、「かんかん」は「腸」、「ほやうかむい」は「蛇神」を意味しているとのこと。


追記・修正は粘液を顔にぶっかけられてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-981-JP - うぇんかんかんほやうかむい
by Usurahi
http://ja.scp-wiki.net/scp-981-jp

薄氷博士の人事ファイル
by Usurahi
http://ja.scp-wiki.net/author:usurahi

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最終更新:2024年04月12日 12:04

*1 オジルモーク。サーキック・カルトの最高位を表す階級名。すなわち崇高なるカルキスト・イオンの事を指す

*2 サーキック・カルトの中層階級