バージェス動物群

登録日:2017/02/08 Wed 23:24:47
更新日:2023/08/21 Mon 00:18:12
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バージェス動物群とは、バージェス頁岩とよばれる岩から発見された動物群のことである。


概要

バージェス頁岩ってなに?

バージェス頁岩とは、バージェス山(カナダ・ロッキー山脈のひとつの山)から採られる頁岩。
頁岩(けつがん)というのは海底で泥が薄く積もってできた岩であり、本のページ(頁)のように薄く剥がれるから頁岩というのである。

泥というのは地学においては、1/16mm以下の細かい粒子のことを指す。そういう細かいつぶつぶなので、
酸素などをほぼ通すことがなかったため軟体動物がそのままの形を残しやすかった。
しかもいろんな方向からのサンプルが取れたので、生物学者は思わずヒャッホイしちゃったのだ。

バージェス動物群の特徴は?

バージェス動物群(バージェスモンスター)はカンブリア期に起きたカンブリア爆発
(動物が爆発的な進化を遂げた時期)に登場した生物群である。
約5億2,500万から約5億50万年前の古生代カンブリア紀の海に生きていた生き物たちと考えてくれればいい。
こいつらの登場でエディアカラ生物群は絶滅に追い込まれたとされる。

バージェス頁岩から見つかったからバージェス動物群なわけであるが、
同時期のものと見られる化石として、澄江動物群というのもいる(こっちのがちょっと古い)。
「この時期の」と主張したい場合はカンブリアンモンスターと呼ぶのが本来は正確なんだろう。
以下のものも、バージェス頁岩以外のものもいくつか扱う。

生物的には様々な種に属し、中には系統不明の種もいる。
というか進化とともに絶えてしまった種も多いだろう。
だがほぼすべてが現存の動物門に区分されると現在では考えられている。

その現代の生物には見られない独特の姿は、創作上のモチーフとしても好まれ、
有名なところでは遊戯王にバージェストマなんかがいる。

そして、なぜかぬいぐるみがある。誰得だよ。

どうしてこうなった

ダーウィンの進化論に則れば、「不合理(=生存に不利)な形質を持つ生物は淘汰されていく」というのが基本的な考えである*1
そう考えると、同時代に、あまりに多様すぎる形質を持って生まれたバージェスモンスターたちはこの進化論の基本理念に反しているように見える。

しかし、ここで穴がある。「不合理な形質を持つ生物を排除する」のは一体誰なのか、ということだ。
もちろんそれは同時代に生きる他の生物種である。より生存に有利な形質を持つ種が生き残りやすく、そうでないものは有利な種に排除されて生き残りにくい、というのが自然淘汰の基本的な考えだ。
このカンブリア爆発の時期は、生物が単細胞から多細胞に進化する基本的な条件が整い始めた時期であると考えられている。多細胞生物は、単に所持するエネルギー量が多く運動性が高いというだけで単細胞生物に比べて有利な形質を持っている。そして、今までが単細胞生物の時代だったということは、多細胞生物のライバルなど全く存在していない。
つまり、この時代はぶっちゃけ「多細胞である」というだけで、生存に有利な時代だったのである。
そのため、「とにかく多細胞でありさえすればいいや」とばかりにトンデモな形質を持った生物が産まれまくった…と考えられている。

…が、多細胞生物の種類が増えてくると、多細胞生物同士の間でも生存の有利不利の差は出てきてしまう。「多細胞なら生き残れる」という時代は終わりを告げ、多細胞生物同士の生存競争が始まったのだ。
そうなれば当然、「合理的に」「無駄を削ぎ落とした」生物こそが有利になるのは自明の理である。
バージェスモンスターが現代にほとんど子孫を残していないのは、こうした生存競争に敗れ、現代の生物に繋がる系譜だけが勝ち残っていったからなのである。


紹介

★はぬいぐるみが存在する種。

アノマロカリス/genus Anomalocaris

バージェス動物群の中では恐らく最も有名であるキング・オブ・バージェスモンスターズ。
詳しくは個別項目を参照。


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★ピカイア/genus Pikaia

大きさは4cm程。細長い身体をしており、一方には2本の触角が生え、もう一方にはイカのエンペラのようなヒレがついている。
触角のある方が頭とされているが、現存する酷似した生物であるナメクジウオのようにヒレがある方が頭ではないか?とも言われている。
そして背中には脊索があることから、「脊椎動物の祖先」ひいては「人類の祖先」と考えられていた。
GANASIAの『ELECTRICAL COMMUNICATION』にある「帰る場所探してる ピカイアの遺伝子は」という歌詞もそこから。
だが後にカンブリアより古い時代に生息していたと思われる澄江動物群が発見され、その中に後述のハイコウイクティスやミロクンミンギアという脊索動物が見つかったため、
今では単にカンブリア紀に棲息していた脊索動物の1種と見なされている。

上記のアノマロカリスと同様アニメ「ジーンダイバー」に登場。操られたアノマロカリスに狙われていた。


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★ウィワクシア/Wiwaxia

全長は大体2.5cm~5cm。
身体は堅い鱗で覆われており、さらに十数本の棘が生えている。この棘と鱗は外敵から身を守るためと考えられている。
下面は柔らかく、かたつむりのように海底を這い回っていたようだ。前方には顎と歯があり、これで海底の有機物をかき集め食べていたと思われる。
また、鱗には数百nm程の溝があり、マルレラと同じく虹色に光っていたのではないかと言われている。

ちなみに環形動物の一種であり、釣り餌に使用されるゴカイ等の先祖に近い。
ハルキエリアというよく似た生物がいて、近縁種と言われている。このハルキエリアは前後にシャミセンガイと似た殻を持っており、
腕足動物に近縁であるという説もあり、歯舌を持つことから軟体動物という説もある。


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★オットイア/Ottoia

体長約8cm~16cm程。
太いミミズのような見た目をしており、頭の先に棘が生えた吻(ふん:動物の体において、口やその周辺が前方へ突出している部分)がついている。
化石は体を曲げた物が多く見つかっており、海底にU字型の穴を掘って潜んでいたと考えられている。
胴体部分の後ろにはカギ状の突起が8つ並んでおり、これを穴の壁に引っ掛けて体を固定していたようだ。
現存する生物ではエラヒキムシに似ている。チンコとか言うな
ちなみに肉食であり、巣穴に近付く物には積極的に襲いかかったらしい。しかも共食いもしてたとか。


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★マーレラ/Marrella

マルレラ、マレラとも。全長数mm~2cm程度。
頭には2対4本の棘があり、大きな棘は体の2倍程長く、後部の棘は体長とほぼ同じくらい。
さらに2対4本の触角も持ち、短い方のの触角は先端がブラシ状になっている。
胴は24~26の体節に分かれており、そこからそれぞれ脚が生えている。
棘やら触角やら脚やらで、もはやなにがなにやら
マルレラは海底を這いながらブラシ状の触角を使って小さな生物や有機物を口に集めて食べていたと考えられている。

また棘には溝が刻まれており、光の当たり方で虹色に見えたのではないかとも言われている。
マルレラの化石はバージェス頁岩の標本の中で最も多く見つかっており、その数は1万5000個以上。
様々な姿勢の化石が見つかっているため、立体的な復元が可能となっている。


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★オパビニア/Opabinia

目が5つ、そして象の鼻や掃除機のノズルのような触手が生えており、その先はトングのようなギザギザがついているというよくわからない姿をしている。
そのあまりの奇妙さから、初めて学会で復元図が公開された時会場は爆笑。一時進行をストップせざるを得なかったらしい。

分類上は他のどの動物にも当てはまらず、独立した動物門と考えられているが、
ヒレの付き方や触手で獲物を捕食するという特徴からアノマロカリスと近縁の種なのではないかとも言われている。
「足があって海底を歩いていたのか、足が無く常に魚の様に泳いでいたのか」がハッキリしないのもアノマロカリスと同じ。
また、研究の進んだ近年では「独立した動物門なんて無くて、普通に節足動物の一種なんじゃねーの?」とも言われている。めでたいやら寂しいやら。
余談だがスピッツのアルバム「小さな生き物」の中にオパビニアという曲が存在する。
._
いヽ    οαρ      ιγツ
ゝヘ ト、  γoσヽヽヽヾヾヾミノ
   ゞニニニノ゙ー~ー~-‐" ̄


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★ハルキゲニア/Hallucigenia

有爪動物門に属すると考えられている。
胴体は棒状で細長く、丸い頭まるでペニス
腹から7対の細長い脚。背中からは同じく7対の鋭い棘が生えている。
サイズは0.5~3cmで意外と小さく、他の生物の屍肉を餌にしていたと考えられている。キモかわいい。

当初の復元画はトゲトゲの脚に背中から触手というスタイルだったが、1984年に上下が逆だったことが判明し、描き換えられた。
その後2015年には、なんと前後も逆だったことが判明。なんなのこいつ。
そして前後が逆だったという事は当然丸いのは頭ではなかったという事になるのだが、なんとその正体は消化管からはみ出た内容物、即ちウンコ
もう何もかんも冗談みたいな生き物である。

ちなみにハルキゲニアとは「幻覚のような」という意味からきているらしい。確かにヤバい薬をキめればこんな幻覚を見そうではある。


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★ヨホイア/Yohoia

体長はおよそ0.7~2.3cm。三葉虫などと同じく節足動物門に属している。
胴体部は13の体節からなっており遊泳や呼吸のための鰓がついている。尾部は平たくなっておりエビと似ている。
頭部にはつぶらな目が2つと4対の脚、そして最大の特徴である腕のような物が生えている。
この腕の先には4本に分かれた爪がついており、これで餌を捕まえて食事していたと考えられている。
また、アノマロカリスの一種と言われているパラペイトイアにも同じような4本の爪の生えた腕があり、近縁の種の可能性もある。


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★サンクタカリス/Sanctacaris

体長は約10cm程。
頭部は丸いドーム状の形をしており、その下には6対の付属肢。
そのうちの5対は棘だらけであり、これを使って獲物を捉えていたと考えられている。
胴は11の節にわかれており、それぞれにヒレのような肢がついている。
歩くには適していない形状の肢であるため、ヒレのように動かして泳いでいたらしい。
分類上は節足動物の鋏角類に属していたとされており、クモやサソリの先祖にあたる。
ちなみに名前の由来は「聖なる爪」とやたらカッコいい。


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★ネクトカリス/Nectocaris pteryx

体長約2cm程。 頭は甲殻類のようで海老に似ている。
ところが胴体部は魚のようになっており、脊索動物に似ているという不思議な生物。学名の意味も「エビ頭」。
研究が進んでなかった頃は「甲殻類と脊索動物のキメラな謎生物」な見た目の復元図が書かれていたが、
現在は研究が進み、「イカの祖先」のような見た目になったことを残念に思う人も多々居る。
生態としては漏斗と呼ばれる口のような器官から水をジェット噴射して泳いでいたようだ。
また、現時点では最古の頭足類ということになる。

メタスプリッギナ/Metaspriggina walcotti

後述のミロクンミンギアとハイコウイクティスの少し後の時代に生きていた原始的な魚。
ミロクンミンギアやハコウイクティスと違い、発達した大きな目を持っていた。
脊椎動物にほぼ共通して持つ「鰓弓」という弓場の骨が2本確認されており、これが後に顎に進化したと考えられる。

同時期の生物(カンブリアンモンスター)

ここではバージェス頁岩とは関連しないが、同時期に生きていた生き物について紹介しておく。
★はぬいぐるみが存在する種。

★パンブデルリオン/Pambdelurion whittingtoni

アノマロカリスの近縁種と考えられる生き物。目は無く、体の側面に11対ある鰭の下には、歩脚があった模様。
そのため、遊泳も歩行も可能であり、おそらくは半遊泳生活を送っていただろうとされる。
また、頭部下に円形の口があるものの、鋭い牙もないなら強い咀嚼力もなかったようで、強力な捕食者ではなかった。
頭部から2本生えている触肢には櫛状の器官があり、それで海水中のプランクトンを濾しとって口まで運んでいたと見られる。


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★シダズーン/Xidazoon stephanus

中国で発見された澄江(チェンジャン)動物群の一種。パッと見オタマジャクシのようなフォルムをしている。
頭部は丸く先端には円形の口、側面には5つのエラ穴がある。これはヤツメウナギとほぼ同じ構造であり、脊椎動物の特徴を持っている。
ところが後ろ半分の尾部は7つの体節からなっており、これはエビやカニ、ムカデといった節足動物のようになっている。
誰だオナホみたいって言った奴は
つまり系統的にかなり違う脊椎動物と節足動物両方の特徴を持っていることになる。
そのため現在の分類に当てはめることが出来ず、
似たような特徴のウェツリコラ(ベッツリコーラ)やバンフィア、ベイダズーン、ディダズーン、ユンナノズーンなどとともに、
「古虫動物門(またはベッツリコーラ門)」という新たな分類にすることが提案されている。


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★ミロクンミンギア/Myllokunmingia fengjiaoa

中国で発見された澄江動物群の一種で、最古の魚類且つ最古の脊椎動物
体は流線型で、頭部には原始的な目と円形の口、体の側面には6~7対のエラがあり、そして背鰭と腹鰭を持っている。
その体構造から、軟骨で出来た脊椎のようなものがあったと考えられている。


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ハイコウイクティス/Haikouichthys

ミロクンミンギアと同じ海域と時代に生息していた最古の魚の一種。
大きさは3センチくらいで、名前は「海口の魚」という意味。
目の作りはミロクンミンギアと同じく原始的で、ぼんやりとしか見えなかったと考えられる。


追記/修正とぬいぐるみの存在意義の考察をお願いします。

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最終更新:2023年08月21日 00:18

*1 実際にはツノゼミの角など、この理論では説明しきれない形質も存在するが、ここでは割愛