SCP-161-JP

登録日:2017/02/02 (木曜日) 11:39:00
更新日:2024/03/18 Mon 15:18:59
所要時間:約 5 分で読めます



SCP-161-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『伊れない病』。オブジェクトクラスは堂々の「Keter」。

概要

SCP-161-JPは「伊る」を認識できなくなるミーム汚染だ。
コイツを一度発症してしまうと、「伊る」動作や、それに関係する認識が過去にさかのぼって失われてしまうのである。

例えば、はその殆どに「伊る」仕草が用いられている日本の伝統芸能『能』や『狂言』が、発症者には「和装をしてお面を付けた人間が扇子を片手にウロウロと歩き回っているだけ」の非常に残念なものに見えてしまう。

しかも、厄介なことに再び「伊る」という単語の読みを認識させると対象は漏れなく逆行性健忘を発症してしまう。

よくわからないだろうから、実験記録を見てみよう。


実験記録の抜粋
【研究員は 『子供が庭で伊りまわっている』と書かれたホワイトボードを指し示した】

研究員「この文章を音読してみて下さい」
被験者「子供が庭で……、い…イりまわっている…か? わかんねぇな」
研究員「そこは『伊りまわっている』と読むのではありませんか?」
被験者「ん? あっ、そうそう! 伊るだよ伊る! ド忘れしてたよ。かー…、アレ? か…か……」

【被験者は突然無表情となり、約5秒間にわたって眼球を左右に激しく痙攣したように動かした】

研究員「大丈夫ですか?」
被験者「……ん? いや、ちょっと頭痛がしただけだよ。ところでさぁ、さっき言ってたテストっつーのは、まだ始まんないのか?」

この症状で失われる記憶は「伊る」の読み方を認知したりしてから過去数時間分。通常、記憶に干渉する類のSCiPは改めて覚え直すことである程度リカバリーできるが、その度に記憶が「伊る」を学習する前に巻き戻る。

残念ながら、我らが財団ですらこの元凶を突き止めることは出来なかった。





類似するオブジェクト

SCP-161-JPのように自覚させることすら不可能な異常をもたらすSCiPを財団はいくつも収容している。


中身を読んでしまうと、自分が最も禁忌であると考えている物事を実行したくなってしまうミーム汚染を引き起こす本。
とあるTALEでは、ある要注意団体の元凶となってしまった事も…。

「らぬき言葉」のような特定の文字を使わずに暮らしましょうという啓発本…等に見せかけた認識災害を齎すオブジェクト。
本の内容を読んでしまうと、実際に倍濁音や踊音、要は「  」等の文字を認識できなくなってしまう。

本来なら、言葉にすることすら憚られる美しい装飾の施された王冠でございます。少し頭に頂いてみれば、王冠の功徳により貴方は王になれるでしょう。


また、関係者の過去の記憶を書き換え、時には現実改変まがいの異常を引き起こすSCiPも多数収容されている。


今は亡き人気歌手███氏の「〈検閲済み〉」の特定バージョンを聞いた者を消滅させ、20世紀に起きたある航空機事故(貨物便が墜落した事故)の犠牲者に追加する。
報告書では「辻褄合わせのため、『公的には旅客便墜落事故と偽装する』というプロトコルを実行済」とある。つまり「あの事故」は…?

紙を顔面に押し当てた相手の頭部に、描いてあるとおりのボールギャグを装着させ、犠牲者が第三者には犬に見えるようになる設計図。
しかも、関係者全員の記憶を書き換えて犠牲者が元々犬だったと誤認させてしまうおまけ付き。


…財団の明日はどっちだろう?

財団の懸念

SCP-161-JPの有効な治療法も、予防法も未だ未解明のまま。犠牲者は増加し続けると人類の文化が訳のわからない動作の連なりに変貌してしまいかねない。

幸い、「伊る」動作は日常生活とはあまり縁がない。
しかし、「眠る」「食べる」「佐う」のような概念が消滅すればその被害は甚大なものとなるであろう。

そんな最悪の事態に備え、財団はユネスコの全面協力のもと、伝統舞踊・武道・スポーツなど、「伊る」動作の関わる無形文化財超長期保存計画に着手している。




「追記・修正」が消滅してしまわない事を祈りつつ……















































メタ視点からの余談


結論から言うと、

「伊る」「佐う」という言葉はこの世に存在しない。

このオブジェクトのように、財団の存在する世界にだけ通用している概念や用語を登場させ、見た事も聞いたこともない言葉を目にした、
第四の壁の向こう側に居る我々を混乱させる事を狙ったメタ的なオブジェクトも少なからず存在している。

また、このようなケースとは反対にオブジェクトの暴走などによって財団世界では既に手遅れな状態となっており、
第四の壁を超えた我々にのみ真相が見えているオブジェクトも存在している。


SCP-240-JP(通称・0匹のイナゴ)
農家さんへの嫌がらせか、自らが駆除されたという事実を過去改変によって「なかったこと」にしてしまうイナゴ。

SCP-522-JP(通称・空気中フランスパン濃度測定所)
謎の概念を測定する装置…のように見えて、実は!?(続きは当該項目で)

SCP-411-JP(通称・尊い犠牲)
手を触れた相手に永続的な疼痛を発生させる…だけではなく、【死と苦痛が無常の喜びである】という恐るべきミーム災害をばらまく人型のオブジェクト。
財団は、ミーム災害にかかった犠牲者たちの行動を先読みする事でこの怪人を封印することに成功した…自らの存在そのものと引き換えに。

オブジェクトの考案者たちは、時に第四の壁すらネタとして利用してくるため油断は禁物である。

繰り返すが、「伊る」も「佐う」も、そして『@抜き言葉のすすめ』の項目でさり気なく触れられている「 」も、
第四の壁の向こう側にいる我々の世界には初めから存在していないのでどうか安心して頂きたい。

あと、フランスパン濃度もーー




追記・修正は、次はどんな『財団世界のみに存在する概念』が登場するのか予想しながらお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-161-JP – 伊れない病
by undercat
http://ja.scp-wiki.net/scp-161-jp

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最終更新:2024年03月18日 15:18