ロスト・ワールド(1925年の映画)

登録日:2017/01/09(月) 15:22:43
更新日:2022/09/30 Fri 23:59:02
所要時間:約 4 分で読めます





ロスト・ワールドとは1925年2月2日にアメリカで公開された恐竜映画である。日本では同年8月5日に公開された。
モノクロ・サイレント106分。




【概要】


レイ・ハリーハウゼンの師匠ウィリス・オブライエンの出世作にして初の長編映画で、
『恐竜とミッシングリンク』や『有史以前の家禽』などで磨かれていた彼の手腕が光る作品となっている。

原作はアーサー・コナン・ドイルの『失われた世界』であるが、おそらく同作の世界で初めての映像化であり、全ての恐竜映画の原点である。
当時存命であった原作者のドイルも拝見し、出来栄えを絶賛したという。
日本でも公開時には大ヒットし、映画館が独自にグッズを作ったり、当時の文化人がネタにしたりもした。

なお同作が作られたのは1925年で、これはかの『キングコング』よりも早い。
というよりも、本作から発展した映画こそが『キングコング』であり、さらにその『キングコング』があの『ゴジラ』へ、そして世界の特撮映画へと発展するのだ。
キングコングに比べてやや知名度は低いが、本作も特撮史上欠かせない一作品である。

本作の特撮はゴム製の人形を用いたストップ・モーションアニメを主体にしており、撮影までに7年もかけただけのことはあって非常に説得力のある映像に仕上げている。
今の目で見ると描写などに至らない面もあるが、90年以上前にこれほどの出来栄えの作品を作ったオブライエンの腕前には驚嘆するしかない。

また本作のクライマックスで暴れるブロントサウルスは、おそらく世界で初めて大都市を襲撃した映画怪獣であろう。

非常に残念なことにオリジナルのフィルムは現在は現存せず、部分的に残されたフィルムをつなぎ合わせた68分や55分のバージョンが出回っている。
最近ではジョージ・イーストマン・ハウスが1998年に100分のフィルムを復元したが一度もソフト化はされていない(発売してくれよ)。



【物語】


※以下ネタバレ注意

探検家メイプル・ホワイトの残した日記に恐竜との遭遇が書かれていることを発見したチャレンジャー教授は、自ら恐竜を探すべく南米を探検することを宣言。
講演会でメンバーを募り、結局サマリー教授とロクストン卿、ホワイトの娘ポーラ、若き新聞記者のマローンがこれに同行することとなる。

探検隊は南米奥地でプテラノドン、ブロントサウルス、ステゴサウルスなどを発見しホワイトの記録が嘘ではなかったことを確認するも、
近隣の火山の噴火と猿人の襲撃を受け窮地に追い込まれる。
辛くも脱出した一行は、恐竜の生存証明のために沼地で動けなくなっていたブロントサウルスを生け捕りにしてロンドンに持ち込んだが、
結局脱走されてしまいロンドンは大騒ぎに。

その後ブロントサウルスは建物を破壊しながら前進し、ロンドン橋を渡ろうとしたところで歌の通りに橋が崩落しテムズ川に転落。
そして泳いで姿を消してしまうのであった。


原作との主な違いは以下。

◆原作ではいなかったヒロインが追加された。

◆一行が持ち帰る古代生物が翼竜からブロントサウルスに変更された。

◆インディアン部落、猿人部落のシーンの削除。




【登場人物】

◆チャレンジャー教授

英国の学者。野心家な一面がある。
恐竜の存在をホワイトの手記で確信し、探検隊を組織する。

◆サマリー教授

英国の学者。眼鏡をかけている。
チャレンジャーの主張には否定的。

◆ポーラ

ホワイトの娘。原作には登場しない。
最後はマローンと結婚した。

◆マローン

英国の若き新聞記者。最後はポーラと結婚した。

◆ロクストン卿

英国貴族でスポーツマン・探検家として有名。
恐竜の存在は否定していない。


【恐竜・古代生物達】



肉食恐竜で、複数登場。トラコドンやスティラコサウルス、プテラノドンを捕食した。


探検隊が最初に目撃した古代生物。イノシシか何かを加えて一行の前に飛来した。
おそらく映画に初めて登場した翼竜だと思われる。

◆ブロントサウルス

植物食であるが性格は狂暴で、俊敏に動き回り猛然と噛みつく。アロサウルスに襲われた時には果敢に反撃した。
一頭がロンドンに連れていかれたが、逃げ出し大暴れ。
ちなみに『キングコング』に登場するブロントサウルスもやはり狂暴だった。


画面に小さくしか映らない。ただのそのそ歩いているだけなので印象も薄い。


子連れで登場し、子供を思いやる恐竜として描かれている。
また、アロサウルスにも動じることのない勇猛さを持っている。

◆アガタウマス

現在では未記載種の植物食恐竜。1897年にチャールズ・ナイトが描いたイラストを参考にしている。
一回はアロサウルスを倒すも、もう一頭現れたアロサウルスに倒されてしまった。
資料によってはスティラコサウルスと表記されているものもある。

◆トラコドン

現在の名前はアナトティタン。アロサウルスに襲われ絶命。

◆猿人

一行の妨害をした本作の悪役。最後は銃で撃たれて死亡。ポーラの父ホワイトは彼らに食い殺されたようだ。


ちなみに撮影用の恐竜モデルを制作したのは、メキシコ人彫刻家のマーセル・デルガドで、
彼はのちに『キングコング』でコングを作ることになる。



【本作公開後の余談】


本作は世界的に大ヒットし、気をよくしたオブライエンは続編『Creation(創世)』の製作に取りかかることとなった。

これもストップモーションで動く恐竜が多数登場するものであったが、費用が掛かりすぎるという理由で1931年に製作中止となってしまう。

しかし作成されたフィルムを見て感銘を受けたクーパー監督によってオブライエンはある映画の特撮スタッフとして起用されることとなる。

それは何を隠そう『キングコング』であり、オブライエンは本作とコングでその名声を不動のものにすることとなった。

残念ながら本作も現在ではフィルムが散逸してしまっており、俳優とトリケラトプスが絡む数分のシーンしか視聴は不可能になってしまっている。

『Creation』で使われた恐竜モデルのいくつかは『キングコング』で使用された模様。




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最終更新:2022年09月30日 23:59