SCP-2352

登録日:2017/01/05 (木曜日) 12:30:00
更新日:2024/02/14 Wed 14:54:46
所要時間:約 8 分で読めます








少なくとも、私はサイモンに借りがあるのだろう ― こうして彼を巻き込んでしまったのだから






SCP-2352とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『死に体のビデオブロガーと諦めの悪い異次元のファン(A Sorta-Dead Vlogger and Their Clingy Extradimensional Fan)』。オブジェクトクラスは「Euclid」、後に「Neutralized」に指定されている。

SCP-2352は、YouTubeの『SimonM34』というチャンネルに投稿されていた十数本の動画である。

投稿者は、チャンネルの名前からも分かる通りサイモンと言う名の少年であり…なんと現在は死亡している
死因は報告書の中では名言されていないものの、【身体の65%は第二・第三度熱傷に覆われており、この火傷は特に手と顔の周辺において深刻です】と言う死亡時の状況から相当悲惨なものであったことが推測できるだろう。

さて、財団によって『SCP-2352-1』と定義されたサイモン少年の遺体であるが、なんと定期的に蘇生しては動画に出演してまた遺体に戻るという心霊現象まがいのことを繰り返していたのである。

勿論、すでに遺体となっているサイモン少年が自分の姿を撮影し、あまつさえ動画として投稿するなんていう芸当ができるわけがない。
サイモン少年の遺体を一時的に蘇生させて動画に出演させ、YouTubeにアップロードしているプロデューサーがいるのである。

財団によって『SCP-2352-2』と指定されたこのプロデューサーは、恐らくは異世界の住人と思われる水晶に似た構造の体を持った人型の実体である。
顔はのっぺらぼうで体も中性的なこのプロデューサーは、人の目には映らずカメラ越しに見ることで初めてその姿を捉える事が可能な謎の存在だ。
そして、よっぽどサイモン少年が気に入っているのか、彼の遺体が財団によって回収された後もわざわざ警備網をかいくぐってまで遺体安置所にある彼の遺体のそばに現れ、放送を行わせていたのだ。

この異世界から来たプロデューサーが、サイモン少年の額に手を当てる事で死者のYouTube配信がスタートする。
サイモン少年の遺体がむくりと半身を起こし、生前に彼がアップロードしていた動画と同様に特定のテーマに関する話題を話し始めるのだ。
サイモン少年の遺体は、自らの周囲を動き回っているSCP-2352-2以外の存在に反応を示さず、しばらく喋り続けた後ばたりと後ろへ倒れ込んで元の遺体に戻る。
それから数刻後、わざわざレンダリングまでしたと思われる動画がYouTubeにアップロードされるのである。

因みに、財団がこの動画の存在を知ったのはとある動画批評サイトがサイモン少年の動画を特集し、それが財団の運用していた動画監視システムに引っかかったのがきっかけであった。
ゾンビにしか見えない人物が出演している上に、スレンダーマンみたいなやつがチラチラと映り込んでいるこの動画には、視聴者からいくつかのコメントが寄せられていそうなのであるが、なんて書いてあったのか実に気になるところである。

さて、ここから重大なことを書いていこう。

オブジェクトクラスからも明らかのように、現在、このチャンネルは存在していない
かつて動画が投稿されていた時には、財団は異常な内容を含んだ動画をネットから隔離する専用のシステムを用いて、この動画がこれ以上世の中に拡散しないように世間から完全に隔離させていた。

配信されていた動画のうち、特徴的なものをピックアップしてみよう。

番号 放送内容 再生時間
1 テスト投稿だったのか、某アメリカ合衆国大統領のスピーチの暗唱を行っていた。画面内に異常は認められず。 2:41
2 恋人に対する愚痴を投稿。サイモン少年宅の窓の外をSCP-2352-2が通りかかる。サイモン少年が気付いたかは不明。 4:12
8 著作権に対する私見を投稿。SCP-2352-2はすでにサイモン少年宅に侵入しており、彼の自室の半開きになったドア越しに彼の様子を観察。 4:54
29 近所を散策しつつテレビタレントに対する愚痴を撮影。そして、ついに自分を観察し続ける謎の存在(SCP-2352-2)の存在を察知したかのような様子を見せる。 7:58

【 63回目の投稿を行った後、サイモン少年は死亡した 】

64 初めてSCP-2352-2がプロデューサーとなった回。教会の霊安室で棺の中に横たえられているサイモン少年の姿が映し出される。 10:00
65 初めてサイモン少年が蘇生させられる。突然現れたSCP-2352-2に少年は最初は戸惑っていたものの、すぐに気を取り直して葬儀会場に押しかけてデモを行う人々への皮肉を述べる。 2:59

【 前述したように、この動画が財団の目に留まってサイモン少年の遺体は収容された 】

66 財団の一員であるスティーヴンズ研究員が遺体の検死を行っている最中にサイモン少年が蘇生。内部情報が駄々漏れになることを恐れ、財団は動画チャンネルそのものの隔離を決定する。 5:00
85 安楽死に対する批判を述べていたサイモン少年が唐突に黙り込んでしまい、SCP-2352-2に対するやり場のない怒りをため息で見せた後、両手で顔を覆う。 4:30
122 一分間ほどSCP-2352-2を睨みつけた後、声帯の劣化に由来すると思われるかすれた声で「いやだ」とつぶやきつつ、首を横に振るサイモン少年の姿が撮影される。 1:30


その後も何回か動画の投稿は続き…唐突に終わりがやって来た。


それから間も無く、YouTube上からサイモン少年のチャンネルは消滅した。
現在、財団はプロデューサーの素性を調査中である。

余談

この項目での無力化報告書は2016年11月30日に執筆者によって改稿される前のもので、
現在は日付と放送の回数が明記され、プロデューサーが使用した言語が最後の「さようなら、サイモン」の部分を除き、未知の言語となっている。
そのため台詞が大幅にカットされており、プロデューサーの種族やサイモンを蘇らせた理由については不明となっている。

追記・修正はサイモン少年の魂が安らげていることを願える人にお願いします。



SCP-2352 - A Sorta-Dead Vlogger and Their Clingy Extradimensional Fan
by Nyka
http://www.scp-wiki.net/scp-2352
http://ja.scp-wiki.net/scp-2352(翻訳)
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最終更新:2024年02月14日 14:54