人理定礎/霊子記録固定帯

登録日:2016/12/30 Fri 19:26:20
更新日:2024/01/05 Fri 19:34:28
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人理定礎/霊子記録固定帯とは、Fateシリーズに登場する用語。
初出はそれぞれFate/Grand OrderFate/EXTELLA

●目次

【人理】


神代は終わり、西暦を経て人類は地上でもっとも栄えた種となった
我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの
人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させる為の理――人類の航海図
これを魔術世界では『人理』と呼ぶ



噛み砕いて言えば、真エーテルに満ち意思を持つ自然が権能を振るう神の時代が終わり、
星のルールが「人間が生きる為に最適化した法則」に移った現在において、
人類が最も多様に発展していく"世界の可能性"こそが人理である。

ゆえに、たとえ『全ての選択において正解だけを選んだ幸福な世界』が存在したとしても、完成し可能性が途絶え"ハッピーエンドという袋小路"に陥った時点で、それは人理たりえない。
当然それとは反対に『全ての選択に失敗した世界』も、可能性が途絶えた以上は人理として成立しない。
言うなれば「エンディング」に到達してしまった時点で「その先」は存在しない為、続けることができなくなってしまうのだ。

宇宙はまだ誰も知らない、高次の生命体にも見通せない"未来"のためにこそ膨張し続ける。
先鋭化しすぎた一本道ではなく、成功と失敗の均衡が保たれ、今後多くの分岐を発生させる安定した世界こそが人理なのである。

星の内海に住まう邪竜曰く、そのもう一つの意味としてはこの惑星を覆う敷物として人理というテクスチャがあり、そのテクスチャの上に住まうのが今の人類の世界でもあるんだそうな。

【人理定礎/霊子記録固定帯】


かように宇宙は異なる展開を見せる並行世界(パラレルワールド)を許容する。
しかし、際限なく並行世界を発生させ続けると宇宙の寿命が尽きてしまうらしい。

そこで、一定のタイミングで『もっとも強く、安定したルート』から外れた世界を伐採し、エネルギーの消費を抑える。この事象を魔術的に"人理定礎"、科学的に"霊子記録固定帯(クォンタム・タイムロック)"と呼ぶ。

イメージとしては無限に枝を増やし続ける大樹から、不要な枝を伐採するようなもの。
そのため、メインとなる平均的な世界の出来事を『編纂事象』、伐採され消滅する世界の出来事を『剪定事象』と呼ぶ。
メルブラに例えると、タタリルートが編纂事象、遠野家琥珀無双ルートが剪定事象になる。


もう少し雑に表現すると、ルートが複数存在するギャルゲーなどの後日談的な続編を作る場合において、どのルートの後日談とするかを決めることに近い。
ギャルゲーを作る会社はたいてい全てのルートの後日談を作るような余裕などないため、根幹に近いルートの話の出来事を基準とするしかないのである。
後日談が作られた、いわゆる正史ルートが編纂事象、後日談の作られていないルートが剪定事象ということになる。


この人理定礎を決定できるのは『その時代を生きている人間』のみで、一度固定されたものは過去あるいは未来からの干渉を受け付けず不動のものとなる。
仮になんらかの方法で過去に移動し、人類史に介入したとしても固定帯に到達した瞬間に強制的に復元される。

たとえば「ブリテンが滅んだ」という結果が固定された場合。
時間移動をして「ブリテンを繁栄させ、戦争を終結させ、誰もが幸福になった」という過程を成功させても、固定帯に到達した瞬間「しかし、それでもブリテンは滅びた」という結果になる。
その結果、一人か二人は幸福になるかもしれないが、人類史という大きなうねりを変えることは決してできない。

仮に何らかの大偉業によってこの定礎/固定帯を否定できれば人類史を根底から覆すことが可能だが、それでも「破壊してから先の人類史だけ」を否定するのが限界である。

太陽系においてはおよそ100年に一度ほどの間隔でこの事象は訪れるとされている。


※以下、Fate/Grand OrderとFate/EXTELLAのネタバレを含みます。






【Fate/Grand Orderにおける人理定礎】


作中では主として8つの人理定礎が崩壊し、2017年以降、人類の絶滅が証明されてしまった。
特異点と呼ばれるそれらを修復するためにカルデアに魔術師が集められたところから物語が始まる。
本作においてはそれぞれの人理定礎にランクが設定されている。

特異点F:AD.2004年 冬木市


冬木市で行われた聖杯戦争
「stay night」等の他シリーズとは異なり、「Grand Order」の歴史では2004年に冬木市で開催された聖杯戦争が第1回とのこと。
また、最終章で語られたように、本来であれば後のカルデアの初代所長となるマリスビリー・アニムスフィアと彼が召喚したキャスターが勝利し、『研究を成すための資金』『人間になる』というマスターとサーヴァントの願いが叶えられたはずだが、この特異点においては勝者がセイバーに、またキャスターも別の英霊に置き換わっている。
それ以外にも、
  • 聖杯を何者かから「守っていた」かのようなセイバーオルタ
  • 「縁を結んだ」にもかかわらず最終決戦に現れなかったクー・フーリン
  • そもそもなぜ冬木市が炎上しているのか、死んだのではなく「消えた」住民はどこにいったのか
等、ストーリー第1部が完結した現在においても未解決の謎がこの特異点には多く残されている。

そもそも、第一部の黒幕が作り出した特異点は7つであり、ここは黒幕が作り出した特異点にはカウントされていない。
そのためか、人理定礎値のランクもない。


第一特異点:AD.1431年 フランス オルレアン

人理定礎値 C+

ジャンヌ・ダルクの処刑、及びヘンリー6世の戴冠式が行われた。

ジャンヌによってフランスが勝利し、大陸からイングランド勢力を駆逐した百年戦争によって王権が強化され、1494年のイタリア戦争からイタリア統一運動、オーストリア=ハンガリー帝国の成立、果ては第一次世界大戦の火種へと繋がっていく、ヨーロッパ世界史の重要ポイントである。

ちなみにジャンヌ・オルタに殺されたピエール=コーションは正史では1442年に没している。



・AD.0060年 ローマ帝国 セプテム

人理定礎値 B+

ユリウス・クラウディウス朝のネロ皇帝統治時代。
この後64年に行われた貨幣鋳造は150年先まで受け継がれる貨幣制度の基盤となった。68年のネロ自殺後、ローマ内戦(四皇帝の年)、フラウィウス朝を経て『ローマの平和』ネルウァ=アントニヌス長(五賢帝時代)に突入。

ローマ帝国はその後分裂し、西ローマは476年、東ローマは1453年に滅亡するが、オスマン帝国、ロシア帝国、神聖ローマ帝国、ルーマニア、イタリアなどにその文化は継承され、ヨーロッパ文明の基盤となったのは間違いない。



・AD.1573年 オケアノス

人理定礎値 A

フランシス・ドレイクがパナマから金銀を運ぶラバ隊を襲撃して多額の財を得た時代。

この後、ドレイクはゴールデン・ハインド号を旗艦とした艦隊で3年かけて艦隊指揮官として人類初の生きたまま世界一周を達成。
当時の英国国庫歳入を上回る30万ポンド相当の財宝を王室に献上し、『太陽の沈まない国』大英帝国の発展の足掛かりとして大きく貢献する。



・AD.1888年 大英帝国 ロンドン

人理定礎値 A-

産業革命とその公害により揺れ動くイギリスにて、切り裂きジャックの連続殺人事件が発生。
シャーロック・ホームズの相棒ジョン・H・ワトソンが結婚しベイカー街221Bを去ったのもこの年とされている。

なお、正史ではチャールズ・バベッジが死去したのはこの18年前の1871年である。
また当時オールド・バーリントン通り(ピカデリー、リージェントストリートの近く)にはナイチンゲールの住居兼オフィスが存在した。



・AD.1783年 アメリカ

人理定礎値 A+

パリ講和条約によってイギリスがアメリカ合衆国の独立を承認。
後に唯一の超大国と呼ばれ、政治・軍事・文化ほか人類史のあらゆる面において多大な影響力を有する国家の誕生した年であるが…。


・AD.1273年エルサレムキャメロット

人理定礎値 EX

前年の1272年まで第9回(区別せず第8回とも)十字軍侵攻が行われていた。
キリスト教ユダヤ教イスラム教の三つの宗教において聖地とされている重要な場所。
その起源は紀元前30世紀にまで遡るとされ、BC.1000年頃にダビデ王によってヘブライ王国の都と定められた。

しかしこの時代の特異点は人理定礎値EX(評価不可能)として特殊な扱いをされている。
他の特異点(7章さえも含む)は人理定礎が敵対者によって破壊される危機にある状態だったが、
この特異点に於いてはすでに獅子王を首魁とする円卓の軍勢によって人理定礎が破壊されており、特異点の在り方が変貌し中核となる地域・特異点名称すらも変わってしまった。もはや計測する数値が存在しないためのEXランクである。

(メタ的な事情としては、リリース当時の6章タイトルは「神聖円卓領域エルサレム」だったが、5章リリース後に6章シナリオ担当の奈須きのこが設定変更を行って6章シナリオを一から作り直したちゃぶ台返しの影響と思われる)


・BC.2655 シュメール バビロニア

人理定礎値 A++

シュメール初期王朝時代第Ⅱ期末期、ウルク第1王朝第5代目王として『ウルクの城壁を建設したる者』ギルガメッシュが統治していた時代。

この後、四つの王朝を挟んで成立したウルク第2王朝の初代(アッカド時代に近い終盤とも)エンシャクシュアンナ王は人類史において最初の『国土の王』(=都市ではなく、領域に対する王権)の称号を用いた。



新免武蔵守藤原玄信


人理修復を終え、年越しを迎えた主人公が消えゆく鬼ヶ島で出会った女性。
通称は「宮本武蔵」――そう、日本最強の剣豪と名高いあの武蔵である。

しかしこの人物は女性。Fateシリーズの女体化ではなく、『彼女の世界』において、宮本武蔵は女性である。
というのも、彼女は本筋たる編纂事象から外れに外れた、「宮本武蔵が女性として生まれた」微小な可能性を有した剪定事象の世界の武蔵である。

彼女が本来いるべき世界はすでに剪定されてしまっており、帰る世界のない風来坊としてあちこちの世界を転移しながら旅をしている。





【Fate/EXTELLAにおける霊子記録固定帯】


メインシナリオではネロ編、玉藻編、真ネロ編が『編纂事象』、アルテラ編のみ『剪定事象』に該当する。
(分類はシナリオ開始時に表示される)

ムーンセルの記録から遊星ヴェルバーの存在を知ったソロ・サーヴァントのアルキメデスが主人公を謀り、『未明領域』に存在する巨神アルテラと遭遇。
突然アルテラに鷲掴みにされたところから脱出しようと、主人公がレガリアの権限を使い自身を精神・魂・肉体に三分割した時点が固定帯A。

その後、アルキメデスはヴェルバーの銀河系到達をジャミングしているムーンセルの破壊を目論み、固定帯が訪れる前に「ムーンセルが壊れた世界」を確定させようと暗躍する。

霊子構造体であること、ヴェルバーのヴォイドセルからの浸食を受け入れ自身の霊子を強化したことで、アルキメデスは本来閲覧が限界である並行移動(スライド)を並行世界への移動手段として利用し、セファールが撃破されても固定帯として確定する前に並行世界を移動することで確定を先送りにし続けていた。

余談だが、並行移動した場合その世界に本来存在した自分は弾き出されよく似た世界の自分と統合され、類似した世界がない場合はより「強い」自分に統合される。
さらに余談だが、Fate/Grand Orderにおいても、その時代に生前の自身が存在するサーヴァントがレイシフトすると、元いた生前の自分が弾き出されるようになっている。

最終的に肉体の主人公は、自身の犠牲、それによる剪定事象化も厭わぬ決意で記憶を固定帯Aに送り届け、アルキメデスの陰謀にヒビを入れることに成功する。
そしてアルキメデスが仲間に引き込んだエリザベート・ヴォイドの茶々入れが陰謀を打ち砕くに至り、
最後はアルテラの剣を憑代に神威を取り込んだネロによってムーンセルの『未明領域』に封印されていた星舟を破壊される。

この結末が「平均的かつ、今後もっとも広がりのある世界」である霊子記録固定帯Bとして認められ、以後アルキメデスが何をやっても『ムーンセルは壊れない』結末が確定した。
なお、このAとBの間は約1か月。定期的なのかそれとも分岐する可能性の数に反比例してサイクルが縮まるのかは不明だが、結構な早さである。

ちなみに、上記の通りアルキメデスがヴェルバーに汚染されたのはAよりも前。また、A-B間でも特に汚染の除去などは行われなかった。さらに、星舟が消えても汚染はそのままのはずである。
にもかかわらず、続編でありBよりも後の時間軸、つまりBからの流れを汲むLinkにおいて、アルキメデスはヴェルバーに汚染されてはいない*1
このアルキメデスは暗躍していた彼とは別の個体*2であるが、A以前から汚染されている以上は彼も汚染済みのはずであるが、きっちり汚染が解除されている。
おそらく、ムーンセルにとっての敵であるヴェルバーの情報だけは例外扱いされたと考えられる。



追記・修正は人理定礎を修復したマスターにお願いします。

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最終更新:2024年01月05日 19:34

*1 よく見ると、服の隙間から見えていた体の異常もなくなっている。

*2 暗躍していた方がBの流れの世界に来たため、元々その世界にいた方のアルキメデスは別の並行世界に飛ばされている。