SCP-231

登録日:2016/12/26 Mon 00:31:39
更新日:2024/03/19 Tue 20:34:17
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昨日 俺は尊敬すべき男が撃たれて死ぬのを見た。与えられるべきではなかった傷でボロボロになった女の子に薔薇を残すためにそいつは死んだ。
今日 その子はそのことを覚えていない。三つの防音室が閉まっても俺は彼女の悲鳴を聞くことができる。





SCP-231はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)。
オブジェクトクラスはKeter。
一応の収容はできているのだが、本質的な危険には対応できているとは言いがたい状況である。

担当要件

項目名は「特別職員要件」となっている。
このオブジェクトはその特別収容プロトコルと概要の前に「オブジェクトを担当する職員の要件」が定められている。

このオブジェクトに携わる担当職員は複数の手段でサイト-19を出発して収容場所に搬送される。
この時目隠しをさせられ、外すことは即時の終了理由となる。つまり財団内ですら収容場所は機密事項。
また服従度検査で少なくとも72点を得点し、未婚であり、子を持たず、何よりも財団に対し完全な忠誠を示していなければいけない。

このせいで 「SCP-231担当にされるということは自分の忠誠度をテストされている」 という噂まで立っているがO5は(一応)否定している。
2ヶ月務め上げた後は1ヶ月心理カウンセリングを受けることになる。よほど精神的に堪えるんだろうか。
しかも情報を他者に漏らさないことが求められ、担当職員は公的に記録されず、人事ファイルに携わったことが記録されることもない。

どうやらSCP-231-7を直接取り扱うのはDクラス6名のようだが、その処置がどうにも一般職員からは
「SCP-231-7を救い出したい」と思わせるようなものらしい。救おうとした奴は即刻終了させられる。

収容プロトコル

現在、SCP-231-7は病院用寝台に拘束され、給餌は栄養管を通して行われる。
そして24時間に1度、拘束を解かれ、何らかの 苦痛 を伴う処置 「110-モントーク」 をDクラス職員6名によって受ける。
ただし、この処置を含めたいかなる状況においても、催眠剤、麻酔剤、その他認可されていない薬物はSCP-231-7に投与されない。
そのため 悲痛な声 を上げるらしく、別室で監視するセキュリティクリアランス4の職員は、悲鳴に耐えられなければ音声をカットしてもよいとされる。

概要


殺せばいいならそうしたかったさ。


……で、SCP-231-7はなんなの? 生き物ってことくらいしかわからないよって?

SCP-231-7は人間の女性である。

最初から話そう。

もともとSCP-231は、SCP-231-1からSCP-231-7までの年齢もバラバラな女性の総称である。
この7人の女性は「緋色の王の子ら」という宗教組織にとらえられており、その倉庫を警察が襲撃したことによって救出された。
しかし、メディアが組織を「セックスカルト」と報じたことを裏付けるように、彼女らは子供を身籠っていた。
そのうちSCP-231-1は、救出直後に出産。子供の父親をめぐって問題が噴出…… することはなかった。
出産にともない何らかの異変(██████████事案)が発生。恐らくは 3桁に及ぶ犠牲者を出す、大惨事に発展 したのである。

どうやらカルトの連中はこの事案を封じ込めるために7人を拘束していたらしく、そのため警察が彼女たちを救出したことがかえってアダになってしまったようだ。ちなみに出産した胎児は不明だが、妊婦SCP-231-1はこの時点で亡くなっている。
残るSCP-231-2~SCP-231-7は財団に収容され、またカルトの残した文献をもとに処置110-モントークが制定された。彼女らについては以下に列挙する通り。

SCP-231-2
財団により胎児の摘出が実施された。
出産を経なければイベントを回避できるのか、それとも胎児の形で眠っている化物を殺そうとしたのかは不明。
しかし結果として摘出は失敗。何らかの原因によって母胎が死亡してしまい、それにともない事案が発生。死傷者を出した。

SCP-231-3
処置110-モントークに耐えかねて自己終了(自殺)した。
この場合もSCP-231-2と同様に、やはり大惨事を引き起こしたようだ。

SCP-231-4
SCP-500『万能薬』を投与。
かの赤い錠剤は期待に見事応え、母胎に損傷も影響も残すことなく、その胎児を排出することに成功した*1……
が、その残骸がやはり事案を発生させ、母胎含む多数の犠牲者を出してしまった。

SCP-231-5
処置110-モントークの失敗で出産。
死傷者のみならずサイトの崩壊まで引き起こした。母胎については書いていないが、おそらくここで死んだと思われる。
どうもDクラスがなにかやらかしやがったらしく、Dクラスの選定方法が定められた。

SCP-231-6
前述のように、処置110-モントークは並の精神では耐えかねる悲惨な処置らしく、それに心を痛めた 一人のエージェントが、SCP-231-6を連れて脱走。
エージェントはその場で機動部隊に撃ち殺されたが、その際に逸れた弾丸によってSCP-231-6も死亡。
やはり1~3の前例と同じく、事案を発生させてしまった。

SCP-231-7
唯一、収容の継続に成功している例。
いかにして彼女を生存させ続けるか。処置110-モントークを継続して受けさせ、出産を先延ばしにするかというのが現在のSCP-231の要点である。

なお、それぞれの胎児については「SCP-██」と呼び表されている。別個のSCPナンバーが割り振られているあたり、恐らくは本来「産まれてきてはいけないもの」なのだと思われる。

……さて、ここでSCP-231-7を振り返ろう。彼女は現在ただ唯一の生存者である。
財団の理念は「確保」「収容」「保護」であり、SCPオブジェクトを破壊することではない。ましてや、O5によれば事案は発生のたびに規模を拡大しており、カルトの残したノートによれば、7度目の事案の発生がXKクラスの世界崩壊シナリオを引き起こす可能性が高い。
彼女を死なせてはならない。そしてどうやら処置110-モントークは非常に非道なものなのだろう。
自殺もさせてはいけない。となるともうやることは決まっている。


彼女をガッチガチに拘束してしまうしかない。


よって人権もなにも無視して彼女を拘束し、24時間に一度処置110-モントークを行い、彼女をひたすら苦痛に晒すことが収容プロトコルになっているのである。
エージェントが脱走を企てたり、担当の博士が自殺したりするわけである。

また、収容を継続するにつれて新たな問題が浮上してきた。
いくら非道な行為とはいえ、SCP-231-7が処置110-モントークに慣れてきてしまったのだ。
どうやらこの処置は手順そのものではなく、それに伴う恐怖などの感情が重要となるらしく、このままでは処置の効果消失が懸念された。
そこで博士が提案したのは……
  1. 処置110-モントークよりもさらに大きな感情を引き起こす処置を開発する
  2. クラスA記憶処理を施し、毎回全てを忘れた状態で処置110-モントークを受けさせる
……採用された選択肢は、2.であった。
財団は冷酷だが、残酷ではない。暗闇から人類を守るためには、いかに人道から外れた行為だろうと甘んじて受け入れる必要があるのだ。

なお、後に再び博士から提案がなされている。

「毎回記憶を消去するのではなく、何回かの処置は、記憶があるままで実行すると以前より良い。
 何が行われるのか知っていることへの恐怖心が、情動反応を高めるようだ

財団は冷酷だが、残酷では……。


SCP-231の謎

このオブジェクトはいくつかの謎を残している。

  • 結局何が生まれてくるの?
わからない。人型なのか、あるいはそうでないのかすら分かっていない。
あるいはSCP-682が産まれてくるのかもしれない。
生まれてきた赤子が何かするのか、それとも出産することをキーとして何らかの災害が起こるのかも不明。
ただお母さんが死のうが事案は発生してしまうらしく、お母さんを生かして押しとどめるしかないようだ。

  • 処置110-モントークってなんなの?
ド素人が代役やってるロッキー・ホラー・ショー

SCP-231に乾燥したチョコチップクッキーを1皿分与えるのです - それもミルク無しで。
封じ込め処理に必要な残りの人員すべては彼女を見て笑います。

えーと、まあ、最初にゾウがトランペット吹き始めるまで[編集済]してください、そんで生きたコブラの上へ彼女を仰向けに寝かしつけたまま激しく[編集済]、そこで[編集済]なんですが、全長17フィート越えの[編集済]バーブラ・ストライサンドの"Greatest Hits"が3[編集済]以上でないことを確認してください、でも慌てる状況じゃありません、だってホッチキスの針取り器はフェザーボアが黒くて暗い青色でない事に対して万全を期して[編集済]、他にもあなたはあえて[編集済]してみた後に[編集済]までプルトニウムの原子分離へと続きます。それでおしまい、ほんとに。

AdminBright氏(ブライト博士の中の人)はFAQでこのように述べている。
SCP-231はもともとDrClef氏(クレフ博士の中の人)が書いたのだが、彼は多くのメンバーが「処置110-モントークってなんなの?」って尋ねて来るのを見て笑っていたという。

処置110-モントークが行われている様子を見なくてはいけなくなった男のTale『ひとりっきりで怯えてろ』では、実際には「SCP-231-7(作中ではキャサリン)が絵本を読んでもらって寝る」という、処置110-モントークの平和な実態を目撃し困惑するという様子が描かれる。
「処置110-モントークで怯えるべきなのはキャサリンではなく、報告書を読んだお前のほうだ」というオチである。*2

覚えておくことは、彼女に起こっているとあなたが思っていることは、あなたが彼女にしたことの一つなのです。
あなたが頭の中で考えたようなことをね。あなたは哀れな少女を痛めつけるゲス野郎です。
それこそがこの記録の重要な本質なのです。

つまるところ、 「あなたが『女性にやってはいけない非道なこと』としてイメージしたそれ」 こそが『処置110-モントーク』である。
Dクラスによるレイプをイメージしたのなら、それがあなたのヘッドカノンに置ける処置110-モントークであろう。

しかし、読者の多くにレイプを想起させたであろう「セックスカルト」という単語も、実はあくまで 新聞上の表現 であり、元の宗教組織に対する財団側の見解がそうだとは書かれていない。
「7人もの不自然に妊娠した女性」「メディアはセックスカルトと伝えた」「死刑囚6人による女性への非道な行為」という3つの要素から我々が勝手に想像しているだけで、 事実そうであるという根拠は記事のどこにも存在しない のだ。
読者の悪意を浮き彫りにする叙述トリック、それこそがSCP-231という作品の本質といえよう。

  • SCP-231の年齢層は?
伏せ字になっているため上はわからないが、下はひとけたなので「10歳に満たない少女がいる」ことはわかる。
SCP-231-7が少女だった場合、そしてAdminBright氏が指摘したあなたの心の闇の内容如何によっては、
「Dクラスの男どもによって幼女がレイプされる」なんていうシナリオになってしまう。

余談

実はこのオブジェクトの報告書のページにはソースにある詩が隠されている。


どうやら編集済だらけで判明していない部分を詩の形で隠喩的に表現しているようだ。
――財団は何をしようとしているのだろう?




彼らが彼女を助けようとしているなどという言葉を信じるな。何を悩む必要がある?彼らにとってはあるべきものがあるべき場所にあるんだぞ。




俺が望んでいることのすべては、短い時間でもいいからあの子に知ってもらいたいということだ……だれかが人としての彼女を気にかけていると。


+ その他もろもろ
SCP-231-7とSCP-999-JP-Jをクロステストさせた結果…


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最終更新:2024年03月19日 20:34

*1 SCP-500はかなり柔軟な治療に対応してくれるものだが、胎児の治癒といった記述が見られないことから、この胎児は正常な母胎に宿るべき胎児ではなかったということか。

*2 皮肉めいて書かれたTaleだが、一応このTale世界内では正しい収容法として確立されている