SCP-1999-JP

登録日:2016/11/15 (火) 15:32:10
更新日:2024/04/12 Fri 15:17:23
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こうして舞台は整った。


SCP-1999-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。

項目名は『杞憂の終末論』。オブジェクトクラスは「Euclid」に指定されている。またJPのコードが示す通り日本支部の管轄である。


◆概要
SCP-1999-JPは現実改変型SCPの一つであり、黒子の姿を取り、木片と泥を編み上げて構成された人型実体SCP-1999-JP-Aと、それによって生成されるSCP-1999-JP-Bから成る。

Aは複数体存在しており、特別収容プロトコルによって財団所有の無人島に建設された、多重構造型特殊人型オブジェクト収容サイトに一体ずつ収容・封印されている。
さて、コイツらはどんな手段で現実改変をするのかというと、ずばり演劇である。

Aは左官鏝(大工さんが壁塗りに使うアイロンみたいなアレ)で自身を構成する泥を掬い、塗るような動作を行うことでその接触面のみという極めて局地的な範囲に現実改変を行う。そしてこの改変によって、舞台や生物、各種道具などといったもの=SCP-1999-JP-Bを生成するのだ。
生成されたBの中には実在の文化財などもあるが劣化しておらず、完成当時のそのまんまを再現している。

で、舞台が整い、役者がそろえば暴走が始まる……もとい、演劇が始まる。
その脚本はどこにあるかというと、Aの額に張り付けられている。

Aの出現要因はわかっていないが、何者かによる指定を受けているのではないか、という推測がある。

Bの内部は現実改変の影響下であり、立ち入れば生物非生物を問わず脚本の影響下に落ちる。某ひみつ道具に「オートアクション・プロンプター&脚本カセット」というのがあるが、ご存じならばアレが登場した回を思い出してもらいたい。ちょうど似たような感じである。

ただ劇をするだけなら無害では? と思ったのならば甘い。現実改変型SCPをナメてはいけない。
生成された舞台Bは拡大を続け、規模が一定を超すと周囲を破壊してしまうのである。
そのため、基本的にはミサイルなどで遠距離から攻撃することで対処するようプロトコルが組まれている。


◆脚本の中身
現状、「上演」の回数は49回に上るが、確認されているのは以下の7つである。

ナンバー タイトル 結果 考察
01 源氏供養 普通に終演。Bは消失した。 劇が終わると舞台と舞台装置は消える。
07 平城京 終演に伴いBは消失。ただし巻き込まれたのはニホンザル。 人間以外の生物にも脚本の影響が及ぶ。
15 曽根崎心中 本来は人形劇だが巻き込まれた人間が再現。結果お初役の女性が死亡。 大体の内容は同じだが、語りが杜撰だったり心中の理由が改変されていたり、と上辺しか再現できていない。
26 愛の黒子 いわゆる学園ハーレムものだが、エージェントが突入した瞬間掌返しが発生。 後から入ってきた人間も対象内。またアドリブの発生も確認。
43 『[編集済み]町へようこそ!』 昭和の町を扱う新喜劇だが、再現された町の中で「ツッコミ」による死者が続出。舞台は破壊され、Aは隔離された。 Bの規模は要求された脚本の舞台に応じて大きくなるらしい。世界観が大きければその分大きくなる。
49 [編集済み] [編集済み] [編集済み]


◆実験
脚本と上演の内容を見ればわかるだろうが、他のSCPの例に漏れずコイツも危険である。省略したが、巻き込まれた「役者」の肉体的コンディションは一切考慮されないため、最中に死亡することも珍しくない。
そこで、Aを同じサイトに集め、改変合戦に持ち込もうという試みがなされた。が、結果は失敗。

最初のうちはうまく進んでいたが、個体の数が増えると改変自体が起きなくなった。
それからどんどんAを増やしていくと、突然Aを飲み込む黒点が発生。計器は正常に作動せず、重力異常も感知できていない。時空間異常か否かもわからない、飲み込まれたAも戻ってこない、ということで現状放置するしかなくなっている。

これに伴い、財団のスタッフはSCP-1999-JPに限らず、現実改変の仕組みについてこんな考察を述べている。

まず前提として、ヒュームは4次元以上の高次元に干渉するエネルギーであるという仮説が存在しています。
そしてこれを下敷きにして今回の事例を解釈すると、現実改変は高次元への、比喩としては「引延ばして整形する」ようなものであると推察されます。
SCP-1999-JP-A群の現実改変が重複したときの互いの食いつぶしあいは、2方向以上に同時にゴムを伸ばしたときの弾性のように、捻じれがお互いの作用力を相殺している結果なのだと考えられます。
そしてその後発生した特異点事象、これは捻じれが相殺する以上に大きかった結果破綻してしまったもの、先ほどのゴムの比喩を流用するのなら、ゴムをお互いが強く引きすぎたがために千切れてしまったようなもの、重複させた時空があまりにも乖離していたことが原因であると考えられます。
これらの仮定が事実だとすれば、SCP-1999-JP-Aは不用意に一つの箇所に集めるべきではないでしょう。

つまり実験における黒点の出現とAの消失は、方向が全然違う現実改変を無理やりに重ねた結果、因果律が壊れて改変自体がなくなってしまった、ということのようだ。

一応収容手順は確立しており、また収容もされているとはいえ、まだまだ油断のできないSCPである。





















職員コード Site:81██Director ██████|
パスワード ・・・・・・・・


コードを確認しています…



コードを確認しています…




コードを確認しています…










特例区画監視担当職員であることを確認…








…認証されました








上記の表の中で、49番だけ全ての情報が編集済みになっているのには理由がある。
SCP-1999-JP-B-49とナンバリングされたこの舞台は、1999年7月をもってThaumiel影響区画に指定されているのである。

Thaumiel影響区画とは何かというと、その名前が示す通り、「財団の最終兵器」と位置付けられるThaumielクラスのSCPの影響下に置かれている一定のブロックのことである。
つまり、このSCPが生み出した49番目の舞台はそれほどヤバい代物だったのだ。

では、その舞台はどこにあるのかというと、これは当然ながら日本である。
ならば、それはどんな舞台なのか?


日本である。





日本である。






もう一度言う、日本列島である。






つまり、日本列島がまるまる全て、SCP-1999-JP-B-49としてThaumiel影響区画に指定されてしまっているのだ。
なんでまたそんなことになってしまったのかというと、49番目の脚本が原因だった。
そのタイトルと内容がこちら。


題名 内容
『杞憂』 1999年7か月、空から恐怖の大王が来るだろう、アンゴルモアの大王は蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配するために。されど果てた世界は終わらない。終末は眉唾語りとなり果てる。


……日付とこのSCPのナンバーで勘付いた諸兄もいるかと思うが、この脚本はあの「ノストラダムスの大予言」である。
今でこそ予言でもなんでもないと結論されているが、SCP-1999-JPは、よりによってコイツをそのまんま脚本として、日本全土を舞台に「上演」しやがったのである。
その結果何が起きたのか?

1999年7月某日、日本列島上空に巨大な時空間異常と恐るべき規模のミーム汚染、国土の崩壊が発生した。
この結果、ミーム汚染を受けた生物による暴動や殺人が相次ぎ、国土の52%が消えてなくなるという大惨事に陥った。
だが異常発生から10分後、総数不明のAが出現し、日本全土がBへと置き換えられてしまった。

SCP-1999-JPが発生させたこの「舞台」は、「上空に巨大な時空間異常と恐るべき規模のミーム汚染、国土の崩壊が発生しなかった日本」を模倣したものであるが、通常通りに時間が流れていること、内部に相当数のBを内包しているにも関わらず目立った異常がないなど、他のBとは異なる点が多くみられた。

Aはその後、5体を残して全て消え去ったが、SCP-1999-JP-B-49には変化は起きていない。
これら5体は現在、財団の管理下にある日本近海の孤島に1体ずつ収容されている。

また、その後の調査で、SCP-1999-JP-B-49に大きな破滅的影響をもたらす事態が発生した場合、それをモチーフとした終末論が流行、元ネタの事象の影響力を減衰、あるいは消し去るという特性が判明。
世界崩壊シナリオに対する強大なカウンターとなるのではないか、という推察から、財団の最終兵器の一つとしてThaumiel影響区画と指定されているのだ。



……ところで、この部分の記述には、このオブジェクトに関する記録を収めているはずの「日本支部」が全く出てこないことに気付いただろうか?
それは、SCP-1999-JP-B-49内部における、置き換え前と比べて大きく変化した点が関係している。

つまり、「本当の日本」に比べ、SCPや要注意団体がとんでもない規模で確認されているのである。
本来、極東の島国である日本は東アジア支部の管轄だったが、改変後にデータベースを浚ったところ、なぜか「日本支部」という存在の管理下に置かれていることが判明した。

本部のデータベースには日本支部なんぞ存在しないが、アジア区域では日本支部の存在が当たり前のものと認識され、さらに以前からの活動記録もしっかり残されていた。
財団本部もこれには困り果てたが、日本国内にSCPや要注意団体が多すぎることから、とりあえず財団の一部として扱い、他の支部同様の権限を与えられている。

しかし、出所が出所だけあって警戒を解くわけにも行かず、この情報は日本支部に対しては徹底的に秘匿され、その活動は常に本部の監視下にある。





要するにどういうことかって?


つまりSCP財団の日本支部そのものが、現実改変型SCPの生み出したものだったんだよ!!
な、なんだってー!?


本Wikiオブジェクトクラスの記事には「本部職員をして日本にはSCPを生み出すSCPがいると言わしめたほど」とあるが、まさにこのSCP-1999-JPこそがそれに当たると言えるだろう。







追記・修正は「日本支部」に就職してからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1999-JP - 杞憂の終末論
by hata_suke
http://ja.scp-wiki.net/scp-1999-jp

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最終更新:2024年04月12日 15:17