しかし、君は、心が痛まないのかな?
仮にも今まで寝食を共にしてきた子供達を、戦火に放り込むことになるが
『彼らは教育も受けず野放しにされた、獣のようなものです。
私はアレルギーがありましてね! 動物は苦手で』
はははははっ! そうかぁ。いや、君は実に面白いな
俺は、面白い男が好きだよ
第30話『アーブラウ防衛軍発足式典』にて、爆破テロを遠目で見ながら鉄華団を裏切ったラディーチェと密談する形で初登場。
同話ラストではタカキと初顔合わせをし、後ろで流れるタカキの不穏なデスポエムと合わせて視聴者を不安がらせた。
第31話『無音の戦争』では彼の戦術家として、そして扇動家の手腕が披露される。
『隊長だって!? 何時からガランさんが鉄華団の隊長になったんだ!?』
『いや、その……なんとなく、最近みんな作戦指揮してんのあの人だから……』
最初は団員からの「隊長」評にキレたタカキだったが、ある日、罠にはまって敵地で孤立したところをガランに救出されるのだった。
この時、駐屯地のアストン・アルトランド達がスクランブル準備に入った時、ガランは待ち構えていたように単機で先行した。
もしかするとこれも彼の仕込だったのかもしれない。
お前にはすまないと思っている。だが、ここが踏ん張りどころだ。
俺達の勝利は近い。もうすぐ家に帰れるぞ。そのためにあと少し、俺の無理を聞いてくれ!
指揮官代理として頼れる者もなく、疲弊しきっていたタカキは完全に洗脳されてしまう。
盟友のアストンも「目の前の敵を倒す」以外の思考が出来ず、ガランを止めるものはいなくなった。
現実の少年兵教育はおろか、ブラック企業でも使われる「情報を与えず、疲れさせてから飴を与える」メソッドに胸糞が悪くなった視聴者も多いと思われる。
何、マクギリスが出た? そうか、しびれを切らしたか!
奴の地位も名誉も帳消しになるまで、何年でも遊んでやるつもりだったが……
第32話『友よ』では、とうとう出撃してきた敵の大将=マクギリスを討つべく、配下とタカキ、アストン機を従えて出撃。
自分たちは護衛機を足止めし、少年兵2人に一番ヤバいマクギリスを押し付ける。
アストンは致命傷を負いながらもマクギリス機を捕縛し、意気揚々と止めを刺そうとするガランだったが、そこに三日月を始めとする鉄華団火星本隊が来襲し、形勢は逆転。ガランたちは即座に撤退するのだった。
(マクギリスの首は取れなかったが……まっ、後はラスタルがうまくやるだろう)
『隊長?』
ん? なんでもない。ここでの仕事はもう終わりだ。傭兵は傭兵らしく、次の戦場へ向かうとしよう!
『望むところです』
(そう。それがラスタルの望みだからな)
なんとSAU領内に作った隠れ家に潜み、アフリカンユニオンへの転進を考えるガランだったが、そこに鉄華団の追撃隊がやってきた。
対等な交渉のためにガランの情報を漁っていたラディーチェが、火星本部に問い詰められ、保身のために場所をゲロったのである。
傭兵団は散開して退却するが、鉄華団の機動力に追いつかれ、合流地点にたどり着いたのはガランだけ。
そして、そこにもアストンを失った怒りに燃える昭弘・アルトランドの
ガンダム・グシオンリベイクフルシティが迫る。
口では常に昭弘を煽りつつ目は常に周囲を警戒するガランと、ただガランだけをにらむ昭弘。
敵の頭部へ火力を集中するゲイレール(倒れ込みながら2連射を命中させている)と、ハルバードや腕でひび割れたカメラを庇い突撃するグシオン。
ホバーブースタを吹かした対ショック防御姿勢でタックルを受け止め、ピッケルで殴るゲイレールと、潔くハルバードを投げ捨てて逆にピッケルを巻き込むグシオン。
ライフルを握りつぶすグシオン。フリーになった右腕で、左腰から何かを抜くと見せつつ、そのまま頭部への裏拳を狙うゲイレール。受け止め、サブアームでタコ殴りにするグシオン。隙を見て腰に一発入れ、離脱するゲイレール。
昭弘が身内(アストン)の復讐のために戦うことを見抜いたガランは、隙を作るためか口撃を続ける。
守るべきものがある、それは結構。敵を討つ、それも結構!
お前は人として至極まともだ。しかしなぁ!!
しかし、かつて人ならざる扱いを受けた昭弘にその言葉は届かない。跳んで逃げるゲイレールを猛追し、地面に叩きつける。
戦場では、まともな奴から死んでいくのが常……!
己が正義を守る為、もがく奴から淘汰されるのだぁっ!!
舞い上がる砂埃。ゲイレールは再び右腕を左側……前腕部に持っていく。今度はシールドを畳み、隠し武器のアックス形態で殴りつける。
だが、その一閃はグシオンの武器を打ち、空しい金属音を立てる。グシオンも隠し武器である大型シザースを展開していたのだ。
《よかったな……あんたはまともで!》
……お褒め頂き、感謝するぜぇ、名も知らぬ小童よ……!
このロートルの死は、必ずやお前の未来の姿となる……! さらばだ!
シザースに挟まれ、容赦なく潰されていくゲイレールのコクピット内で、
ガランは自身を破った昭弘を称賛しながらも、昭弘も自身同様の結末を迎える日が来ることを予言。そして、最後の任務を実行。
それは、ラスタルとの繋がりを記す、ゲイレールのソフトウェアと自分の記憶を消去するため、自爆したのである。
グシオンのシザースの犠牲になった者たちは他のほとんどが潰されていく恐怖に怯え絶叫するしかないのだが、
ガランは眼前の己の死にも最後まで冷静さをなくし切ることなく、潰れゆくコクピットの中で正確に自爆処理を行っていた。
いかに彼の精神力がずば抜けていたかの証左であろう。
数日後、ガランの訃報に接し泣き崩れるジュリエッタを、ラスタルは静かに諭すのであった。
「彼の死を嘆くのはやめろ」「彼は、どこにも存在しない」
「私の活動に裏で協力するため、彼は家も所属も、本当の名前すら捨て、戦いの中で生き、そして死んだ」
「存在しない男の死を悲しめば、そこまで尽くしてくれた彼の思いを、踏みにじることになる」
(……友よ……)
サブタイトルお前が回収するのかよ!
ガラン亡き後、ガランの想いを汲み取ったラスタル率いるアリアンロッドは政敵マクギリス及びガランの仇であるオルガ率いる鉄華団と全面対決、後に『マクギリス・ファリド事件』と呼ばれるほどの激戦を起こす。
その結果、マクギリスとオルガの両名に加え、直接の仇である昭弘も戦死した。
戦後、ラスタルは世界を安定に導いていき、ジュリエッタも後継者として次代を担うことになる。ガランの献身は決して無駄にはならず、悲願も達成されたので自身の死を招いたとはいえ勝ち組である。