ベレッタM92

登録日:2011/03/15 Tue 15:43:16
更新日:2024/01/06 Sat 08:53:27
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Beretta(ベレッタ) ()modello(モデッロ) 92


カタログデータ
全長 217mm
重量 975g
使用弾種(装弾数) M92 9mm×19(15+1)
M98 9mm×21(15+1)
M96 .40S&W(11+1)
メーカー ベレッタ社(イタリア)

ベレッタM92とはイタリアのベレッタ社が1975年に開発した自動拳銃である。アメリカ軍の制式拳銃でもあり、アメリカ軍内では「M9」というモデル名で呼ばれている。
日本では専らM92と呼ばれるが、実はベレッタ社に於ける正式名称は『ベレッタ92』であり、『ベレッタM92』表記は正確には誤り
実際にベレッタ社公式サイトの製品カタログでは(M9は別としても)『Beretta 92 Series』92A192FSなどと表記されている。
「modello 92」なのでMがどこからか急に出て来た訳ではないが。

開発から30年たった現在でも複数のモデルやバリエーションが作られ、世界中の警察や軍隊で広く使われている。
豊富な実戦経験と実績に裏付けされた実用性、信頼性の高さとデザインの美しさを兼ね備えている為、銃の出てくる洋画から邦画、ドラマ、ゲーム、アニメには必ずと言っていいほど登場する知名度の高い銃である。


○歴史

本銃は1970年、同社のM1951の後継機として開発され始めた。
1978年から始まったアメリカ軍による3回のトライアルを経て制式拳銃の座を射止める。

トライアルの目的は「コルトガバメントに替わる、NATO標準の9mmパラベラム弾が使用できる拳銃の選抜」
第一回トライアル(1978〜80)
空軍限定トライアルだが最優秀で合格。後に全軍トライアルに拡大する為に合格は白紙となる。
第二回トライアル(1981)
ここでは、要求の高さもあり4社(SIG、S&W等)とも×
第三回トライアル(1984〜85)
P226、シュタイアーGB、ワルサー社のP5等7モデルが提出される。
最終的にM92とP226の一騎打ち*1となり、M92が「米軍御用達」の称号を得た。

コスト面で勝るM92だが性能と操作性ではP226に劣るとされる。「より良いもの」か「より安い方」を取るかは悩ましいが、軍用銃はコストが第一であり、サイドアームであることや米軍そのものの規模も手伝ってコストが優先されたものと思われる*2

採用後は米軍に321,260丁を納入、フランス軍とは110,000丁ものライセンス契約を結んでいる。


○主な特徴

  • 大きく切り開かれたスライド
これはベレッタ社が昔から採用しているデザインであり、イタリアの銃器デザインの一つの到達点とも言われている。(しかしこれが後に事故を呼ぶ事となる)
切り取ったことにより軽量化されスライド後退時の衝撃を和らげる効果がある。排莢口が大きくなりジャム予防にもつながった。

  • 9パラとダブルカラム
欧州の主流である9mm弾の使用で反動の軽減に成功している。
コルトガバメントのマガジンには7発しか入らなかったがダブルカラム*3という弾薬を2列に並べて収める収納方式を採用し15発と倍増させることに成功している。
グリップが太いため手の小さい人だと若干握り難く持てあまし気味。
実際海外で試射してみた日本人からは大き過ぎて収まりが悪いという感想を聞く事も少なくない。

  • 複数の安全措置
これは、シングルアクションでも比較的遊びが大きいトリガー、スライドセイフティがグリップから遠い、などである。これは迅速な射撃を妨げる要因ではあるが、事故を防ぐという面でプラスである。逆にP226はトリガープルも軽く迅速な射撃に重きを置いている。
この為、十分な訓練時間が割ける特殊部隊ではP226、一般兵(拳銃を重要視しない兵)や将校の護身用にはM92というように住み分けがされている。

  • 利き手選ばず
安全装置は左右に付いているアンビセイフティで、マガジンキャッチボタンの向きを左右に変えられるなど左利きにも優しい作りになっている。排莢方向は真上なので左右どちらの利きでも問題無く当時の中では格段に使いやすい銃であった。

ダイハードシリーズのジョン・マクレーンのように左利きの人も多く使用している。



○スライド破損事故

大きく切り開いた為スライドの強度が不足し、二年間で三件の事故が発生している。ベレッタ社は「特殊部隊による過酷な状況下での使用と強力な(基本的にSMGでの使用を前提とした)弾を撃った為」と弁明した。
しかし、後に熱処理を施し、スライド破断事故防止の突起を付けたモデルも登場しているため、配慮はしている模様。
事故後、特殊部隊(SEALs)ではP226を使用している。



○現在の状況

マイナーチェンジを施したM92FSにアップデートされた。
スライド破損事故に対応したブリガディアスライド(スライドに補強突起)に変更したEliteなどがある。
他にもステンレスモデル、短銃身モデル、海兵隊向けモデル等々多くのモデルが発表されており、一大グループを形成している。確認出来るだけでも14ぐらいある。
立て主含め素人目には違いがさっぱりである。
イタリアやフランス軍でも採用されているが、ブラジルのタウルス社の独自モデルや、南ア、台湾、中国などのデッドコピーも含めると生産・採用国は数知れない。
登場から30年が経過し、コンパクト化やポリマーフレーム化は構造上困難であり、他の拳銃に押され気味である。
その為改良型の90-Twoや回転バレル式に変更した新形式のM8000やその発展型であるPx4などを投入しているが、制式である以上M92の王座は揺るぎそうにない。

2017年、米陸軍はシグ・ザウエルP320をM9の後継とする事が発表されており、30年超の歴史に幕を下ろす事となった。


○登場作品

仲村ゆりが使用。

リブリアM92Rのベースとなっている。

レヴィが使用の「ソード・カトラス」のベース。

ジョン・マクレーンが使用したが、4ではSIG社のP226に。

初代では「M92FS」、3初代リメイクではカスタムを施したゲームオリジナルモデル「サムライエッジ」が登場。

麻酔弾&スライドロック機構搭載。専ら「M9」表記。

シャムに拾われ修行中のカナンが派生モデルを使用。

遠山キンジがフルオート&3点バーストの違法改造仕様 通称「キンジモデル」を使用。

10巻の裁判の際に証人の警官がM92Fを使用したことが判明。

主人公ジョナサンが愛用。

T-1000が警官から奪ったものを以降もそのまま使用。

CoD4MW2に「M9」名義で登場。
どちらもキャンペーンではアメリカ軍兵士がサイドアームとして所持している。
MW2ではハンドガンを所持していないときにラストスタンド状態になると、強制的にこのM9を装備する。

一部のシリーズに「92FS-9mm」名義で登場。
大抵終盤で入手できるハンドガンで弾薬数と精度が優れている。



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最終更新:2024年01月06日 08:53

*1 要求はM92もP226もクリアしている

*2 P226を作ったSIG社はNATO非加盟国であるスイスの企業、ベレッタ社のイタリアはNATO加盟国で米軍基地を作る計画があったことから「政治的な要因が影響したのでは」という説も根強い。

*3 カラム=「列」。ダブルカラム自体が直訳して「2列」の意味。