SCP-2798

登録日:2016/11/13(日) 14:50:12
更新日:2023/10/24 Tue 16:26:31
所要時間:約 10 分で読めます






世界規模の緊急プロトコルを実行中です。



SCP-2798とは、シェアード・ワールドの一つである怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト

オブジェクトクラスThaumiel
世界規模の危機であるKクラスシナリオが発生した場合のいわば最終兵器的な位置づけであり、同時に財団からしても出来れば使いたくない、毒に対する毒のようなクラスである。

だが、SCP-2798には、財団の奥の手というべきSCP-2000などの他のThaumielクラスとは全く異なる特徴が三つ存在する。
外見や存在形態、ではない。

ひとつは、これは見方を変えると、財団が作り上げたSCPオブジェクトであるということ。
そしてもう一つは、SCP-001に直接関連するオブジェクトであるということだ。



もう一度言う、SCP-001である。



あのSCP初心者殺し、正体不明の存在不明、所在不明で詳細不明、原理不明な意味不明オブジェクトのSCP-001と大きく関わっている、どころかSCP-001ありきのオブジェクトなのである。
そして、三つ目。
ある意味一番重要なこのSCPの特徴、それは、

このSCPオブジェクトは、2016年11月現在、存在しない

ということである。
それはどういうことなのか、そもそもコイツとSCP-001はどう関係しているのか。
以下がその概略である。


概要

まず、SCP-2798というSCPオブジェクトについて説明しておく。
コイツは、1971年から地球の磁場に紛れて存在している特殊なエネルギー場である。ただし、これ自体がSCPオブジェクトになったわけではない。

実はこのオブジェクトは、地球の磁場に紛れて存在している特殊なエネルギーを、1951年からSCP財団が複数のSCPを利用して、ある目的のために1971年に完成させた、地球全体を覆う力場なのだ。
つまりこのSCP-2798とは、収容リストを見ても類を見ない、財団が自ら作り上げたSCPオブジェクトなのである。

それでもSCPには違いないため、特別収容プロトコルが設定されている。
その内容を簡単に記すと、

  • 天然ガスの採掘活動に偽装せよ

に尽きる。SCP-2798はその特性上、財団が独占する一定の技術なくしては観測不可能であるが、地質学・地震学の観点から間接的に存在を知られる可能性は残っている。
さらにこのオブジェクトは、ある副作用を持っている。それはあくまでも副次的なもので、直ちに財団と結び付けられることはないとされており、情報資源は観測の封じこめに優先的に回すよう指示されている。


さて、財団がそこまでして作り上げ収容したSCP-2798。それは、何のために作られたのか。
それは、SCP-001を封じ込めるためである。

ここまで記せばお分かりかと思うが、SCP-2798の報告書には、SCP-001の特性や存在形態についての記述が多くみられるのである。
SCP-001は本Wikiの記事を見ていただければわかると思うが、カノン的には真相を隠匿するためのデコイとして、メタ的にはみんながこれについて書きたがるため、内容の一定しない大量の記事が存在する。つまり、どれが真相でどれがデコイかは全く判別できないのだ。

しかし、これについてはそうも行かない。
SCP-2798は、SCP-001と深くかかわっているが、SCP-001そのものではない。別のオブジェクトである。
そして、財団が認定したオブジェクトクラスが存在し、特別収容プロトコルが設けられ、報告書が正式に存在する以上、SCP-2798は「このSCPはSCP-001を封じ込めるための力場である」と認定され収容されていることになる。

これはとりもなおさず、SCP-001がどういう形で存在しているのか、どういうものなのかを間接的に認めたことになる。
SCP-001そのものについての報告書ならば、今まで通りデコイの海に溶けるのみである。が、「それと関わる全く別のオブジェクトの報告書」という形で、かつSCP-001の「正体」に深く切り込んだ記事は他に類を見ない。

それが真か偽かという論究はここでは行わず、SCP-2798についての解説を続けることにする。


SCP-2798は前述のとおり、SCP-001を封じ込めるため、地球のエネルギーを利用して財団が作り上げた力場である。これにより、SCP-001による干渉を部分的に封じることに成功した。
だがこれは、2005年以降強度が加速度的に低下しており、近い将来消滅すると予想されていた。

さて、このオブジェクトは具体的にどう作用するのか?
箇条書きにしてみる。

  • SCP-001に対し、地球を単一の生命体と認識させる
  • これにより、SCP-001の意思による作用が一点に収束するのを防ぎ、実体を封じ込める。
  • 副作用として、不特定多数の人間にミーム災害が発生している

となる。図らずもこの時点で、「SCP-001が明確な意思を持ち、かつ生命体に敵対的ななにがしかの意識を持つ、地球外の存在である何らかの実体」ということが読み取れる。


プロジェクト・セラピス

SCP-2798を作り上げるこのプロジェクトが立ち上がったのは、SCP-001が発見・分類された1953年のことである。
このSCPを封じ込めるため、緊急指令部によりSCPオブジェクトの利用が許可されたが、これにあたってほとんどがSafeとはいえ実に6つものSCPオブジェクトが駆り出されることになった。

  • SCP-158 - 魂抽出器
  • SCP-310 - 永遠の炎
  • SCP-447 - 緑のスライム
  • SCP-1714 - 無駄を嫌う物理学者
  • SCP-1921 - 黒いわたあめ
  • SCP-2570 - MCA & ハートブレイク

である。
その詳しいプロセスや原理はここでは省略する。重要なのは、このSCPはSCP-001の知覚を妨害し、その実体を実質的に封じ込めるための力場だ、という点である。
ただ、この力場の完成後、世界中の人々や太陽系に影響が表れている。

  • 超越性同一性障害
ミーム汚染の変種と思しきこの症状は、60年代からたびたび観測されている。
どういう症状かというと、全く別の個人に由来する記憶、感情、経験、思考、感覚を定期的に共有するというものだ。
症例の大部分はザンベジ超深度掘削坑に偽装されたサイト-2の周辺で起きているが、治療法は現状存在しない。

  • 組織的行動に関わる信念の減衰
SCP-2798の強度変動に連動するようにして、各地で社会的不安に端を発するとみられる政治異変が多発している。
SCP-2798の将来的な消失に伴って沈静化すると予想されていたが、2010年以降はどうも恒久的に影響を与えているらしいことが判明している。

  • 異常エネルギー場の他天体への伝播
SCP-2798を観測・検出するための機器があるのだが、この機器が太陽系内に微弱ながら同種のエネルギー場を観測している。
79年に月、81年に火星、92年には土星にも観測されている。
しかし、2005年になって月のエネルギー場が急速に減衰、消失した。原因は不明。


機密情報

SCP-2798はその副次効果に伴い、情報漏えいのリスクを多数発生させている。これは、強度が強くなった際に多く見られる現象であり、SCP-2798の遍在性(ざっくり言うと「どこにでも存在する」)と集合意識における不明な作用が原因とみられている。
以下にその一例を示す。




事例はもう一つあるが、内容が内容なのでここでは省く。
それも含めて共通しているのは、何がしかの啓示を受けたかのような言動や行動であり、神的・霊的な何かの干渉を思わせるものがある。さらにそれらの内容からは、いわゆる終末論に類する思考が見て取れる。

SCP-2798がなくなった後、SCP-001にどう対処するべきなのか、とO5評議会は何度も会議を行っている。
が、

  • その1:近隣の惑星への避難
→「技術的に無理です」というわけで否決。

  • その2:SCP-001と交渉する
→「意味がありません」というわけで否決。

  • その3:体系的な異常存在兵器化計画
→2015年12月には一旦承認されたが、翌年1月に全会一致で「無理ですから! 出来ませんから!」というわけで否決。

  • その4:プロジェクト・セラピスをやり直す
→「副作用が収拾不可能なレベルになるから無理です」というわけで否決。

  • その5:全世界への青酸カリ散布
→投票保留中。

……SCP-001はかなりヤバい代物のようだ。




そして、対応策の見つからないまま迎えた、2016年11月2日。




SCP-2798は機能を停止しました。SCP-001は未収容です。世界規模の緊急プロトコルを実行中です。



ついに、SCP-2798は消滅した。


O5評議会はただちに議会を招集したが、世界人口に対する効果的自殺手段の配給と、それに伴うSCP-001との利害関係を持つ一般人の救済計画については、賛成7、反対4+棄権3という形で動議否決となった。

彼らがそこまでして警戒しおびえるSCP-001とはなんなのか?
それについてのレポートは存在するが、SCP-001の記事の一つに「Kalininの提言」として紛れ込んでいるためその真偽を判別することは不可能となっている。



+ メタな説明、あるいはスポイラー
「分からない」で締めるのも何なので、ここからは作者視点の情報をふんだんに交えて、SCP-2798とKalinin氏の001提言の関係についてさくっと解説する。ちょっとしたスポイラー(楽しみを台無しにするもの)なので注意。

まず、上で赤字黒地でデンと書かれた「SCP-2798終了のお知らせ」だが、じつは投稿当時の記事とは内容が変わっている。元のテキストはこんな感じ。

あと○日×時間△秒
システムメッセージ:機能不全が差し迫っています。障害対策手続きのためサイト司令部に報告して下さい。

当時、このSCP-2798終了のカウントダウンはリアルタイムで進行していて、2016年11月2日ちょうどを目指していた。なお、この記事が(本家英語wikiで)投稿されたのは2016年1月28日。
そしてカウントダウンが0になった2016年11月2日に、作者のKalinin氏はSCP-001提言を投稿した。
平たく言ってしまえば、SCP-2798はKalinin氏の001提言の「予告編」のようなものでもあったということだ。
本家のディスカッションページでは、残り時間が0になる時を今か今かと待ちかねている狂気の財団職員らのコメントが確認できる。

で、そのKalinin氏のSCP-001の内容だが……みんなの期待(?)通り、人類の終末である。僅か24時間で過去5年間を合わせたよりも多くの死者が出たのが序の口である、と言えば察してもらえるだろうか。
この001提言はとりわけ大掛かりなもので、時系列に並んだ9つの物語 or 報告書で構成されている。
そしてこれら9つも一週間程度の期間をかけ、作中で描かれる日時とだいたい同じ日時に投稿された。つまり、当時の本家メンバーはリアルタイムでの終末体験を楽しめた(?)ということになる。

現在、このwikiのSCP-001のページにはKalinin氏の提言についてもうちょっと詳細が書かれている。当然ながらこれ以上のスポイラーなので気をつけて欲しい。





SCP-2798 - This Dying World (この死にゆく世界)





追記・修正はSCP-001の対応策が可決されてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2798 - This Dying World
by Kalinin
http://www.scp-wiki.net/scp-2798
http://ja.scp-wiki.net/scp-2798

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP
  • SCP財団
  • SCP Foundation
  • Thaumiel
  • Kalininの提言
  • 財団製SCP
  • Kalinin
  • SCP-2798

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年10月24日 16:26