SCP-1973-JP

登録日:2016/11/05 Sat 20:53:58
更新日:2024/03/10 Sun 20:08:54
所要時間:約 18 分で読めます





彼こそが一番のヒーローだということに異論を挟む者はいない。


SCP-1973-JPはシェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラス及び項目名などの概要は後述。



前置き

このSCP-1973-JPは人型実体であり、観測対象によって外見・声・口調・言語は異なる。
そしてこれは大概おおよその場合「観測者にとって尊敬・恋慕・愛護の対象となる理想的な人物」に変化する。
これだけ読むとSCP-056SCP-4999と似たような特異性である。

で、こいつの異常性なんだが……

先に実験記録を見てもらおうか。こいつをどう思う?

実験記録


実験記録1973-JP-A

対象: 機動部隊[編集済み]

実施方法: 収容以前に発生した事案

結果: SCP-1973-JPにより機動部隊は全員拘束され無力化。機動部隊隊長がSCP-1973-JPに部隊入りを願い出たことによりSCP-1973-JPの収容に至る。機動部隊は解体済み

分析: 記録されていた機動部隊の対応は財団の標準マニュアルから著しく外れており、SCP-1973-JPに向かい突撃する、カバー等の連携行動をしない、応援の要請やHQへの連絡を行わないなど、非常に稚拙きわまる行動が多かった。
彼はすごい。頭を下げて財団に加入するよう頼んで正解だった —████隊長(当時の機動部隊隊長。現在は記憶処理を受けて現場復帰済み)

最初の実験記録。SCP-1973-JPが収容される際の出来事が記録されている。
ここで注目したいことは二点。
  • なんで機動部隊は本来のマニュアルを逸脱した稚拙な行動を取ったのか?
  • なんで機動部隊隊長は部隊入りを願い出ちゃったのか?

実験記録1973-JP-B

対象: SCP-████

実施方法: サイト-██における収容違反により偶発的に発生

結果: SCP-████は無力化された。SCP-████の報告書は廃棄されており、これは標準マニュアルからは外れている。復元を試みるも著しいデータ破損が生じており、詳細を確認することが不可能である。また、収容違反の原因と思われる事象およびその原因も確認できていない。

分析: 私の記憶が正しければ、SCP-████は収容違反を起こす可能性は全くないオブジェクトはずです。SCP-1973-JPへの調査を申請します。私の思い違いでした、申請は取り下げます。  —ポーラ博士(当時の担当官。現在は記憶処理の後に復帰済み)}

偶然収容違反が起きて、それをSCP-1973-JPは無力化。
だがおかしなことに「無力化した」、つまりNeutralizedのオブジェクトでも本来であれば報告書は保管される*1はずなのに、なんと破棄されてしまっている。
しかもポーラ博士はそのオブジェクトは収容違反が起きるようなものに思えなかったとのこと。
とはいえこの時点では「まあSafeに見せかけたEuclidやKeterなら前例もいるししゃあない」で済ませられただろう。

実験記録1973-JP-C

対象: [編集済み]病

実施方法: SCP-1973-JPに対象の研究補助を行わせる。実験担当者はジェフリー博士。申請者はジーン博士

結果: SCP-1973-JPにより病原体を発見。治療法を世界中へと拡散しウィルスは保存用を除き根絶されたと考えられる。当初ジェフリー博士はSCP-1973-JPを雑務にのみしか使用していたが、徐々に実験に携わるようになり、最終的には1973-JPが実験を指揮していた。

分析: 事前に実施したテストではSCP-1973-JPに医学の知識はなく、課科学的知識に関しても標準以下のテスト結果が出ていた。また、治療法の拡散はO5の承認を得ずに行われたが、実験申請者であるジーン博士の要望により査問委員会は開かれなかった。
ウィルスであるとの見方が強かったのに、光学顕微鏡で見つかるとはどういうことだ。それに病原体の系統も予想とはまったく別物だ。どうなっている? —トレッキー博士

……気付いた人も少数いるかもしれないがまだ気付いてないふりをしてくれ。

この実験にはツッコミどころしかない。
  • 病気の研究というSCPからしたらカモにできそうな実験に安直に関わらせる
  • 最初は雑務をさせてたのに実験そのものに関わり、最後には主従が入れ替わる
  • 治療法が見つかったが、それは当初想定されていたウイルスではなくおそらくは細菌によるものだった
  • そもそも医学知識がなかった
  • 勝手に治療法を拡散した
  • それなのに査問委員会が開かれなかった

実験記録1973-JP-D

対象: 筆記テスト

実施方法: SCP-1973-JPに筆記テストを行わせる。比較のため医療従事者だったDクラス職員2名に同じ試験を受けさせる。試験はトレッキー博士に参考資料なしで作成させたものを使用した。テストは3回行った。

結果: SCP-1973-JPが3回のテストで満点を取り、Dクラス職員は平均80点だった。テスト自体の難易度は異常に低く、日本における中学3年生程度の問題がほとんどであった。

分析: 問題の内容及びDクラスの点数から、SCP-1973-JPによる現実改変が疑われる。SCP-1973-JPは対象に勝つために周囲の環境を改変する能力があると考えられる。
これが現実改変なのは間違いない。問題なのはその証拠が一切ないことだ。改変前も、改変後もその痕跡が残らない —ジーン博士

ああもうめちゃくちゃだよ。

まず、なんで異常性を調べるための学力テストを参考資料なしで作ってしまったのか。
Dクラス職員も、医療従事者だったくせに中学三年生程度の問題も解けないというのか。
まあ理系だったら社会科とかきついかもしれないけど、それにしたってSCP-1973-JPが勝利しているというのはよくわからない。

で、ジーン博士はこの異常性の正体に気付いているようである。

実験記録1973-JP-E

対象: SCP-076-2

実施方法: 機動部隊Ω-7が補給のためにサイト-██に立ち寄った際、076-2が1973-JPへと突如として襲い掛かり発生

結果: 30分の戦闘の後、SCP-076-2が自殺することにより戦闘は終了。サイト-██の一部が破壊されたのみで、周囲への被害はなし。このことに関するSCP-076-2へのインタビュー全文はクリアランス4/1966-JPを持つ職員のみ閲覧可能。

分析: SCP-076-2が戦闘を仕掛けた理由に関して、Ω-7隊員は「何かにとりつかれているようだった」と証言。また、SCP-076-2の攻撃はすべて偶発的な要因(SCP-076-2のいる地面が崩れる、偶然通りがかった職員が盾になるなど)により妨害が入り失敗している。
SCP-1973-JPと戦闘対象との間に隔絶しがたい実力差があるとこうなるらしい。076-2の自殺は……1973-JPの影響から逃れるためだろうか —ジーン博士

ついにはあのアベルと戦闘を開始してしまった。
ただしどうやらSCP-1973-JPが一方的にボコっており、SCP-076-2は攻撃するたびに「なんらかの偶然」で攻撃が失敗している。
SCP-076-2は「何か」に気がついたらしく、影響から脱するために一回自殺*2

実験記録1973-JP-F

対象: SCP-682

実施方法: SCP-682の終了実験の一環として実施

結果: N/A。実験前に担当者が問い合わせを行い、実験許可の偽造が発覚した。

今度はなんと、あのクソトカゲと戦闘させようと試みた。
……ものの、実験許可の偽造が発覚した。

しかし、実験記録1973-JP-Cでは自然にSCP-1973-JPが実験の主導権まで握っているのになんで担当者は問い合わせを行ったのか。

分析: 問い合わせがSCP-1973-JPと接触する前に行われ偽造が発覚したことから、これまでの偽造が発覚しなかった原因がSCP-1973-JPにあると推測される。なお、問い合わせを行うように指示したのはSCP-682である。SCP-682はこのことに関する質問の回答を拒否している

そう、あのクソトカゲは「何か」を事前に察し、「おい待て、本当にそいつと我とのクロステストの許可が出ているのか」と問い合わせしろと命じたのである。
アベルすら(まあそのサイトに行っちゃったので仕方ないのかもしれないけど)逃れられないこいつから逃れるあたりは、さすがぼくらのクソトカゲである。*3


解説


SCP-1973-JP

メアリー・スーの怪物



オブジェクトクラスはKeter。

アニヲタならば、メアリー・スーという単語はもちろん目にしたことがあるだろう。
簡単に言えば、SCP-1973-JPは「自分が理想的な主役(メアリー・スー)になれるように、周囲の人間や環境に影響を与える」オブジェクトなのである。そら貫禄のKeterだわ。

こいつを放置しておくと、いつの間にかその周りの人間は「モブ」となり、彼の一挙手一投足を持ち上げるためだけの存在になる。
さらに言うなら、「ひたすら賞賛してくれる味方」と、「自分の英雄譚のためのかませにされる敵」に分かれる。

そして、彼の思い描くような世界は大抵、もしも小説として提示されるならばおそらく「稚拙」なものとなる。
というのも、こいつの引き起こす現実改変は以下のような特徴を持つからである。

SCP-1973-JPの異常性の1つは、SCP-1973-JPが「勝負」を行った場合、SCP-1973-JPが勝負の相手(以降対象)に必ず「勝利」することです。「勝負」は一般的な戦闘のほか、弁論や研究、競争など大よそ「勝ち負け」が発生するすべての事象が含まれ、「SCP-1973-JPが対象より優れている」結果を示し「勝利」する形で終了します。どの程度からSCP-1973-JPとの「勝負」の範囲になるのかは実験の困難さや予想される被害から、特別な理由がない限り禁止されています。
現実改変の理由として、過去の戦闘記録においてSCP-1973-JPの「勝利」につながる「偶然」が発生する点が挙げられます。これは過去の戦闘記録を視聴した機動部隊員が「SCP-1973-JPの動きが素人であるが、相手があり得ないようなミスしている事例が多すぎる」と指摘したことで発覚しました。いくつかの小規模な確認実験の結果、主に対象やそれに付随する環境に対して現実改変を行っていることが推測されました。SCP-1973-JPそのものの実力はそう高くないと考えられています。

実際、上記の実験記録は大概おかしい。
「機動部隊が本来のマニュアルを無視した行動を取り、結果しょぼい負け方をする」
「収容違反を起こすようなオブジェクトではない者が収容違反を起こしている」
「医学知識がなかったのにあっさり治療法を見つける」
「なぜかテストは満点を取れるような内容のものが出題される」
「日本支部の管轄でありながら、さも当然のように本部の、それも最凶クラスの戦闘力を持つオブジェクトと戦闘し、そして勝つ(もしくは未遂)」

そして、この実験記録自体にも秘密がある。

概要: サイト-██において行われた実験です。前述の事案により実験の多くは非許可あるいは許可を偽造して行われています。

実はこれらの実験、最初からまったく許可が出ていない。
前述の事案とは何かというと、この実験記録の前に、ジーン博士はインタビューを載せているのだ。
以下、読んでいて頭痛がするインタビュー全文をどうぞ。

対象: エノビー博士

インタビュアー: ジーン博士

付記: SCP-1973-JP担当スタッフが、SCP-1973-JPと他のSCiPとのクロステスト許可を偽造し実験を繰り返していました。実験に関わったスタッフの多くが影響者Aであり、エノビー博士はクロステストを主導した主犯格として尋問を受けています。

<録音開始>

ジーン博士: インタビューを開始する。エノビー、君は[エノビー博士に遮られる]

エノビー博士: 離して! 私が拘束される理由なんてないわ!

ジーン博士: あー、エノビー。クロステストは基本的に禁止だし、ましてそれを行うための許可も偽造しているんだ。拘束される理由としては十分だと思うが?

エノビー博士: そんなの、彼の活躍に比べたら些細なことよ! こんなことをしたら、彼が許さないわよ!

ジーン博士: 1973-JPのことかい? 感情移入のしすぎだ。いくら彼がすごくても、彼がSCiPであるという事実に変わりはない。彼は無事でも、他のSCiPに何かあったらどう責任を取るつもりだったんだ?

エノビー博士: そんなことはどうでもいいのよ! 彼のおかげでどれだけ有用なデータが取れたと思っているよ、彼に感謝しなさい!!

ジーン博士: それは………[深いため息]。よし、わかった。エノビー、彼がどう凄いのか、具体的に教えてくれ。もし私が彼の有能さをわかったら拘束を解こう

エノビー博士: ええ、いいわ。わからせてあげる。彼はねぇ、これまで11人の現実改変能力者を終了したわ。しかも彼1人でよ!

ジーン博士: それは財団エージェントでもできる。しかも彼は直接戦闘を仕掛けてだ。周囲への被害や近隣へのカバーストーリーにいくらかかったと思う? しかも中には協力的な奴もいたそうじゃないか。本当に殺す必要はあったのか?

エノビー博士: それは……げ、現実改変能力者にまともな奴なんていないわ! 今は良くてもいずれダメになる、その危険性の芽を摘んだだけよ!

ジーン博士: それを言うなら彼も現実改変能力者である疑いがある。君の言うことが正しいなら、彼も危険性の芽を摘むために終了するべきだと思うが?

[以下、同様のやり取りが続くために省略。エノビー博士のSCP-1973-JPを支持する主張はジーン博士によりすべて棄却される]

エノビー博士: なんで……なんでわかってくれないのよ?

ジーン博士: エノビー、君もわかってくれ。彼がいくら優れていようと、それが世界を壊す結果になったら本末転倒なんだ

エノビー博士: それでも……それでも彼は……

ジーン博士: なぁ、エノビー。1973-JPは君が入れ込むほどに魅力的な人物なのか?

エノビー博士: ……どういう意味よ、それ!?

ジーン博士: さっきから君が1973-JPについていかに素晴らしいかを聞かせてくれたが、その人柄というものが全く見えてこないんだ。君は彼の活躍については話してくれるけど、「君が彼を素晴らしいと思った理由」については全く喋ってくれていない。もう一度聞くよエノビー、どうして彼を素晴らしいと思ったんだい?

エノビー博士: [不明瞭な呟き]

ジーン博士: ………エノビー?

エノビー博士: ………彼は素晴らしいのよ、なんで認めてくれないの。素晴らしいのに、かっこいいのに。どうして、どうして。なんで認めてくれないのよ[以下同様の発言が続く]

ジーン博士: ……インタビューを終了する

<録音終了>

終了報告書: エノビー博士を始めとするSCP-1973-JPに関わったすべての職員は全員尋問の後にクラスF記憶処理を施しました。SCP-1973-JPに直接携わる職員はすべて疑似記憶を植え付けたDクラス職員へと入れ替わりました。

ジーン博士の指摘通り、エノビー博士は全くと言っていいほど、「彼がすごい」根拠を主張できていない。
ひたすらすごいすごいと言いながら、結局どうしてそこまでエノビー博士が惚れ込むのかが全くわからないのである。
しかも、「現実改変者にまともなのはいない」とエノビー博士が主張するのも、ジーン博士の指摘通り、「こいつも現実改変者じゃねえか」というツッコミで終わる。

しかしそのジーン博士にしたって、彼の側だと影響を受ける。実際受けてる*4
よって、SCP-1973−JPから離れた場所に居ないと冷静にこいつを捕らえることができない。
……ぶっちゃけジーン博士よく気付いたなこれ。それ以上にクソトカゲもよく気付いたなって感じあるけど*5

ちなみにエノビー博士は「味方」サイドだが、こいつの特性上、「敵」サイドもいなければならない。
敵側に認定された人は逆に「あいつの特別収容プロトコルはゆるすぎる」「あんなのをありがたがっちゃいけない」「即刻終了*6させろ」と発言する。
しかし前述の通り、「戦いを挑むと必ずSCP-1973−JPが勝つ」ように全ての事象が仕向けられるため、終了させようと突っ込むと死ぬ。

つまりは項目名「メアリー・スーの怪物」の通り、SCP-1973-JPはあからさまにメアリー・スーそのものなのである。

ジーン博士は明らかにこのSCPは放っておくわけにいかない、と考え、ある収容手順を考案する。
それは……
  • 疑似記憶を植えつけたDクラスたちをとあるサイトにぶち込む
  • そこにSCP-1973-JPを収容する
  • Dクラスたちは自分たちがDクラスであるとは気付いておらず、C以上の職員だと思い込まされ、そこで職務に励む
  • そのサイトがSCP-1973-JP専用の収容施設であることは、そのサイトの職員は一部以外知らない
  • 当該サイトの職員は基本サイト内でしか働かず、サイト外に出たあとは記憶処理を受ける
  • サイト内には常に偽情報が流される(もともとDクラスだった連中だから当たり前である)
  • SCP-1973-JP担当のサイト外のエージェントや研究者がおり、彼らの指示の下そのサイトの職員は実験を行う
  • もちろん「勝ち負け」が発生するものは禁止


我々に勝利はない。あいつを殺すことはできないし、特異性の原因を突き止めることもできないだろう。
ただ、「敗北」の結果をより小さなものにするしかない。永久に終わらぬ勝負を続けられる、そんなわずかな可能性にかけるしかないのだ。 —ジーン博士


余談

このSCPは日本のオブジェクトなのにやたら横文字の人名が目立つことに気付いただろうか?
これは全部「メアリー・スー」に関係する名前である。
  • ポーラ博士:メアリー・スーが主人公の作品『A Trekkie's Tale』の作者ポーラ・スミス。現在でもスタートレック二次創作の重鎮だという。
  • ジェフリー博士:スタートレックパイロット版のエンタープライズ号船長を演じた人物の名、ジェフリー・ハンターから。 いえいえ
  • ジーン博士:ジーン・ロッデン・ベリーから。スタートレックの生みの親であるからか、このSCPのネタの中では比較的優遇されたポジションにいる。
  • トレッキー博士:トレッキーとはスタートレックオタクのこと。『A Trekkie's Tale』も「スタートレックオタクが書いた小咄」という意味である。
  • エノビー博士:「史上最悪のハリー・ポッター二次創作」と称される『My Immortal』の登場人物・Ebony。作者がしばしばタイプミスするため「Enoby」が通称になっている。メアリー・スーはポーラ・スミス氏が意図的にチートキャラとして描いている(じゃないと「こんな二次創作が氾濫してやがるぞ!」という警告にならない)のに対して、Ebonyはマジモンのアレな奴。作者は「エボニーだよ!エノビーじゃないよ!メアリー・スーじゃないよ!」とブチ切れている。
  • ちなみに1973という番号自体もネタ。『A Trekkie's Tale』の発表年が1973年なのである。

また『A Trekkie's Tale』においてメアリー・スーは最終的に「周囲に惜しまれながらも」あっさりとラストには死んで大局に何の影響や結果も出すことなく終わってしまう。
徹底したメアリー・スーの怪物であるこのオブジェクトには、手出しができない一方で財団にとって常にあっけない終焉で済む可能性も残り続けているとも言える。



ということで、追記・修正はSCP-1973−JPの影響のないところでお願いしております。









新着メッセージが1件届いています。






「おっ、メールが届いてるな、どれどれ」
カチカチッ

送信ID: dcs2554

ログイン
*7

ファイル : 12の添付ファイル

連絡が遅れたことをまずはお詫びします。私たちは失敗しました。SCP-1973-JPはもう間もなくサイト-██の外に出てくるでしょう。
サイト-██はやつの汚らわしい欲望に汚されました。かつて研究者たちが世界を守るために日々戦い続けていた戦場は、SCP-1973-JPを称賛し彼を中心とする壊れた世界になってしまいました。財団の理念を胸に秘めた勇敢な職員は、今や彼の栄光を称えるための人形にすぎません。

今、サイト職員は2種類に分類できます。栄光の木漏れ日を受ける人形と、栄光の陰に蝕まれるガラクタです。私たちはそのどちらかにならざるを得ませんでした。恐らく、これが1973-JPの現実改変なのでしょう。私たちは例外なく人格を蝕まれ、ただ奴の栄光に記される”モブ”になるのでしょう。一部の職員は彼の隣に立つことが出来ますが、彼らすらもただの人形にすぎません。このサイトでは1973-JPが全てであり、世界の中心です。男性職員は奴を貪り、女性職員は奴の食い物にされ、彼に批判的な職員が奴隷的な扱いを受けています。全員自分たちがどんな組織に所属し、どんな職務についていたか、そして自分がどういった人間だったか覚えていません。私も、自分がサイト管理者であり、奴をコントロールしないといけないということ以外記憶が曖昧です。ただ、1973-JPの寵愛を受け、迫害から逃れることにすべてを注いでいます。私も記憶処理薬と記憶再起薬を何度も使用して、ようやくこのメールを書きあげています。

どうか、SCP-1973-JPを殺してください。奴を制御するのは不可能です。もう、私たちは限界です。


「…」


カタタタ…



ログイン
*8

宛先ID : geen2545

ファイル : (添付ファイルなし)

サイト管理者役であるD-2554からのメッセージが届きました。予想されていた時期より若干早めですが、添付ファイルの数、暗号メッセージからまだ余裕はありそうです。「助けてくれ」はおそらくフェイクでしょう。
推測な上未発表のものですが、ジーン博士の予想は正しいでしょう。職員向けカバーストーリーFGH-0”杞憂の世界”は成功しているとみていいです。とりあえずの対抗策として、プロトコルSUE-1973は有効であると考えられます。より強い記憶誘導剤を使用すれば確実になると思われます。
このままプロトコルSUE-1973を特別収容プロトコルに組み込むことを上層部に提案します。完全とは言えませんが、SCP-1973-JPの興味が外へ行くのをだいぶ遅らせることが出来るはずです。



「…よし、送信っと…あとは明日出す提案書作ったら録画してた深夜アニメを消化しようかね…」




CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1973-JP - メアリー・スーの怪物
by jet0620
http://ja.scp-wiki.net/scp-1973-jp

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最終更新:2024年03月10日 20:08

*1 無力化したとはいえ元々は異常物品であったのだから、いつまたぶり返すかわからないという理由から保管されるのが通例であろう

*2 SCP-076-2は死んでも時間が経つと復活するため、死んで逃げることが可能

*3 SCP-1973-JPが敗北しないために戦闘を回避、つまり「クソトカゲが問い合わせを指示する」現実改変を受けた可能性も指摘されている

*4 もう一度実験記録1973-JP-Cのくだりを読んでみよう。査問委員会を開かないように要請したのは当のジーン博士である。

*5 アベルは突っ込んじゃったが、アベルは近くに寄っちゃったのに対してクソトカゲは遠くにいたからとフォローできなくはない。遠くにいる時点でその特性を本能的に感知するクソトカゲに比べるとアベルがかわいそうになるけど

*6 財団では対象者を殺すことをこのように表現する。英語のTerminateの直訳であるが、財団らしさが出ていて面白い表現である

*7 元ページでは、Wikidotアカウントを持っている場合に限りそのアカウント名を表示する。つまりこのメールを受け取っているのはあなたである

*8 同上