実験記録1973-JP-A
対象: 機動部隊[編集済み]
実施方法: 収容以前に発生した事案
結果: SCP-1973-JPにより機動部隊は全員拘束され無力化。機動部隊隊長がSCP-1973-JPに部隊入りを願い出たことによりSCP-1973-JPの収容に至る。機動部隊は解体済み
分析: 記録されていた機動部隊の対応は財団の標準マニュアルから著しく外れており、SCP-1973-JPに向かい突撃する、カバー等の連携行動をしない、応援の要請やHQへの連絡を行わないなど、非常に稚拙きわまる行動が多かった。
彼はすごい。頭を下げて財団に加入するよう頼んで正解だった —████隊長(当時の機動部隊隊長。現在は記憶処理を受けて現場復帰済み)
実験記録1973-JP-B
対象: SCP-████
実施方法: サイト-██における収容違反により偶発的に発生
結果: SCP-████は無力化された。SCP-████の報告書は廃棄されており、これは標準マニュアルからは外れている。復元を試みるも著しいデータ破損が生じており、詳細を確認することが不可能である。また、収容違反の原因と思われる事象およびその原因も確認できていない。
分析: 私の記憶が正しければ、SCP-████は収容違反を起こす可能性は全くないオブジェクトはずです。SCP-1973-JPへの調査を申請します。私の思い違いでした、申請は取り下げます。 —ポーラ博士(当時の担当官。現在は記憶処理の後に復帰済み)}
実験記録1973-JP-C
対象: [編集済み]病
実施方法: SCP-1973-JPに対象の研究補助を行わせる。実験担当者はジェフリー博士。申請者はジーン博士
結果: SCP-1973-JPにより病原体を発見。治療法を世界中へと拡散しウィルスは保存用を除き根絶されたと考えられる。当初ジェフリー博士はSCP-1973-JPを雑務にのみしか使用していたが、徐々に実験に携わるようになり、最終的には1973-JPが実験を指揮していた。
分析: 事前に実施したテストではSCP-1973-JPに医学の知識はなく、課科学的知識に関しても標準以下のテスト結果が出ていた。また、治療法の拡散はO5の承認を得ずに行われたが、実験申請者であるジーン博士の要望により査問委員会は開かれなかった。
ウィルスであるとの見方が強かったのに、光学顕微鏡で見つかるとはどういうことだ。それに病原体の系統も予想とはまったく別物だ。どうなっている? —トレッキー博士
実験記録1973-JP-D
対象: 筆記テスト
実施方法: SCP-1973-JPに筆記テストを行わせる。比較のため医療従事者だったDクラス職員2名に同じ試験を受けさせる。試験はトレッキー博士に参考資料なしで作成させたものを使用した。テストは3回行った。
結果: SCP-1973-JPが3回のテストで満点を取り、Dクラス職員は平均80点だった。テスト自体の難易度は異常に低く、日本における中学3年生程度の問題がほとんどであった。
分析: 問題の内容及びDクラスの点数から、SCP-1973-JPによる現実改変が疑われる。SCP-1973-JPは対象に勝つために周囲の環境を改変する能力があると考えられる。
これが現実改変なのは間違いない。問題なのはその証拠が一切ないことだ。改変前も、改変後もその痕跡が残らない —ジーン博士
実験記録1973-JP-E
対象: SCP-076-2
実施方法: 機動部隊Ω-7が補給のためにサイト-██に立ち寄った際、076-2が1973-JPへと突如として襲い掛かり発生
結果: 30分の戦闘の後、SCP-076-2が自殺することにより戦闘は終了。サイト-██の一部が破壊されたのみで、周囲への被害はなし。このことに関するSCP-076-2へのインタビュー全文はクリアランス4/1966-JPを持つ職員のみ閲覧可能。
分析: SCP-076-2が戦闘を仕掛けた理由に関して、Ω-7隊員は「何かにとりつかれているようだった」と証言。また、SCP-076-2の攻撃はすべて偶発的な要因(SCP-076-2のいる地面が崩れる、偶然通りがかった職員が盾になるなど)により妨害が入り失敗している。
SCP-1973-JPと戦闘対象との間に隔絶しがたい実力差があるとこうなるらしい。076-2の自殺は……1973-JPの影響から逃れるためだろうか —ジーン博士
実験記録1973-JP-F
対象: SCP-682
実施方法: SCP-682の終了実験の一環として実施
結果: N/A。実験前に担当者が問い合わせを行い、実験許可の偽造が発覚した。
分析: 問い合わせがSCP-1973-JPと接触する前に行われ偽造が発覚したことから、これまでの偽造が発覚しなかった原因がSCP-1973-JPにあると推測される。なお、問い合わせを行うように指示したのはSCP-682である。SCP-682はこのことに関する質問の回答を拒否している
SCP-1973-JPの異常性の1つは、SCP-1973-JPが「勝負」を行った場合、SCP-1973-JPが勝負の相手(以降対象)に必ず「勝利」することです。「勝負」は一般的な戦闘のほか、弁論や研究、競争など大よそ「勝ち負け」が発生するすべての事象が含まれ、「SCP-1973-JPが対象より優れている」結果を示し「勝利」する形で終了します。どの程度からSCP-1973-JPとの「勝負」の範囲になるのかは実験の困難さや予想される被害から、特別な理由がない限り禁止されています。
現実改変の理由として、過去の戦闘記録においてSCP-1973-JPの「勝利」につながる「偶然」が発生する点が挙げられます。これは過去の戦闘記録を視聴した機動部隊員が「SCP-1973-JPの動きが素人であるが、相手があり得ないようなミスしている事例が多すぎる」と指摘したことで発覚しました。いくつかの小規模な確認実験の結果、主に対象やそれに付随する環境に対して現実改変を行っていることが推測されました。SCP-1973-JPそのものの実力はそう高くないと考えられています。
概要: サイト-██において行われた実験です。前述の事案により実験の多くは非許可あるいは許可を偽造して行われています。
対象: エノビー博士
インタビュアー: ジーン博士
付記: SCP-1973-JP担当スタッフが、SCP-1973-JPと他のSCiPとのクロステスト許可を偽造し実験を繰り返していました。実験に関わったスタッフの多くが影響者Aであり、エノビー博士はクロステストを主導した主犯格として尋問を受けています。
<録音開始>
ジーン博士: インタビューを開始する。エノビー、君は[エノビー博士に遮られる]
エノビー博士: 離して! 私が拘束される理由なんてないわ!
ジーン博士: あー、エノビー。クロステストは基本的に禁止だし、ましてそれを行うための許可も偽造しているんだ。拘束される理由としては十分だと思うが?
エノビー博士: そんなの、彼の活躍に比べたら些細なことよ! こんなことをしたら、彼が許さないわよ!
ジーン博士: 1973-JPのことかい? 感情移入のしすぎだ。いくら彼がすごくても、彼がSCiPであるという事実に変わりはない。彼は無事でも、他のSCiPに何かあったらどう責任を取るつもりだったんだ?
エノビー博士: そんなことはどうでもいいのよ! 彼のおかげでどれだけ有用なデータが取れたと思っているよ、彼に感謝しなさい!!
ジーン博士: それは………[深いため息]。よし、わかった。エノビー、彼がどう凄いのか、具体的に教えてくれ。もし私が彼の有能さをわかったら拘束を解こう
エノビー博士: ええ、いいわ。わからせてあげる。彼はねぇ、これまで11人の現実改変能力者を終了したわ。しかも彼1人でよ!
ジーン博士: それは財団エージェントでもできる。しかも彼は直接戦闘を仕掛けてだ。周囲への被害や近隣へのカバーストーリーにいくらかかったと思う? しかも中には協力的な奴もいたそうじゃないか。本当に殺す必要はあったのか?
エノビー博士: それは……げ、現実改変能力者にまともな奴なんていないわ! 今は良くてもいずれダメになる、その危険性の芽を摘んだだけよ!
ジーン博士: それを言うなら彼も現実改変能力者である疑いがある。君の言うことが正しいなら、彼も危険性の芽を摘むために終了するべきだと思うが?
[以下、同様のやり取りが続くために省略。エノビー博士のSCP-1973-JPを支持する主張はジーン博士によりすべて棄却される]
エノビー博士: なんで……なんでわかってくれないのよ?
ジーン博士: エノビー、君もわかってくれ。彼がいくら優れていようと、それが世界を壊す結果になったら本末転倒なんだ
エノビー博士: それでも……それでも彼は……
ジーン博士: なぁ、エノビー。1973-JPは君が入れ込むほどに魅力的な人物なのか?
エノビー博士: ……どういう意味よ、それ!?
ジーン博士: さっきから君が1973-JPについていかに素晴らしいかを聞かせてくれたが、その人柄というものが全く見えてこないんだ。君は彼の活躍については話してくれるけど、「君が彼を素晴らしいと思った理由」については全く喋ってくれていない。もう一度聞くよエノビー、どうして彼を素晴らしいと思ったんだい?
エノビー博士: [不明瞭な呟き]
ジーン博士: ………エノビー?
エノビー博士: ………彼は素晴らしいのよ、なんで認めてくれないの。素晴らしいのに、かっこいいのに。どうして、どうして。なんで認めてくれないのよ[以下同様の発言が続く]
ジーン博士: ……インタビューを終了する
<録音終了>
終了報告書: エノビー博士を始めとするSCP-1973-JPに関わったすべての職員は全員尋問の後にクラスF記憶処理を施しました。SCP-1973-JPに直接携わる職員はすべて疑似記憶を植え付けたDクラス職員へと入れ替わりました。
送信ID: dcs2554
ログイン(*7)
ファイル : 12の添付ファイル
連絡が遅れたことをまずはお詫びします。私たちは失敗しました。SCP-1973-JPはもう間もなくサイト-██の外に出てくるでしょう。
サイト-██はやつの汚らわしい欲望に汚されました。かつて研究者たちが世界を守るために日々戦い続けていた戦場は、SCP-1973-JPを称賛し彼を中心とする壊れた世界になってしまいました。財団の理念を胸に秘めた勇敢な職員は、今や彼の栄光を称えるための人形にすぎません。
今、サイト職員は2種類に分類できます。栄光の木漏れ日を受ける人形と、栄光の陰に蝕まれるガラクタです。私たちはそのどちらかにならざるを得ませんでした。恐らく、これが1973-JPの現実改変なのでしょう。私たちは例外なく人格を蝕まれ、ただ奴の栄光に記される”モブ”になるのでしょう。一部の職員は彼の隣に立つことが出来ますが、彼らすらもただの人形にすぎません。このサイトでは1973-JPが全てであり、世界の中心です。男性職員は奴を貪り、女性職員は奴の食い物にされ、彼に批判的な職員が奴隷的な扱いを受けています。全員自分たちがどんな組織に所属し、どんな職務についていたか、そして自分がどういった人間だったか覚えていません。私も、自分がサイト管理者であり、奴をコントロールしないといけないということ以外記憶が曖昧です。ただ、1973-JPの寵愛を受け、迫害から逃れることにすべてを注いでいます。私も記憶処理薬と記憶再起薬を何度も使用して、ようやくこのメールを書きあげています。
どうか、SCP-1973-JPを殺してください。奴を制御するのは不可能です。もう、私たちは限界です。
ログイン(*8)
宛先ID : geen2545
ファイル : (添付ファイルなし)
サイト管理者役であるD-2554からのメッセージが届きました。予想されていた時期より若干早めですが、添付ファイルの数、暗号メッセージからまだ余裕はありそうです。「助けてくれ」はおそらくフェイクでしょう。
推測な上未発表のものですが、ジーン博士の予想は正しいでしょう。職員向けカバーストーリーFGH-0”杞憂の世界”は成功しているとみていいです。とりあえずの対抗策として、プロトコルSUE-1973は有効であると考えられます。より強い記憶誘導剤を使用すれば確実になると思われます。
このままプロトコルSUE-1973を特別収容プロトコルに組み込むことを上層部に提案します。完全とは言えませんが、SCP-1973-JPの興味が外へ行くのをだいぶ遅らせることが出来るはずです。
*1 無力化したとはいえ元々は異常物品であったのだから、いつまたぶり返すかわからないという理由から保管されるのが通例であろう
*2 SCP-076-2は死んでも時間が経つと復活するため、死んで逃げることが可能
*3 SCP-1973-JPが敗北しないために戦闘を回避、つまり「クソトカゲが問い合わせを指示する」現実改変を受けた可能性も指摘されている
*4 もう一度実験記録1973-JP-Cのくだりを読んでみよう。査問委員会を開かないように要請したのは当のジーン博士である。
*5 アベルは突っ込んじゃったが、アベルは近くに寄っちゃったのに対してクソトカゲは遠くにいたからとフォローできなくはない。遠くにいる時点でその特性を本能的に感知するクソトカゲに比べるとアベルがかわいそうになるけど
*6 財団では対象者を殺すことをこのように表現する。英語のTerminateの直訳であるが、財団らしさが出ていて面白い表現である
*7 元ページでは、Wikidotアカウントを持っている場合に限りそのアカウント名を表示する。つまりこのメールを受け取っているのはあなたである
*8 同上