アグラヴェイン(Fate)

登録日:2016/11/04 Fri 18:58:10
更新日:2024/04/07 Sun 20:49:01
所要時間:約 12 分で読めます






私は人間嫌いでね。万人に嫌われるのは望むところだ。



Fateシリーズの登場人物。『Grand Order』におけるイラスト担当は武内祟

アーサー王に仕えた円卓の騎士の一人であり、王の補佐を担う秘書官を務めていた。
同時にキャメロットにおける文官の最高責任者であり、事実上のNo.2といえる。

文官でありながらも優れた武勇の持ち主であり、役職の都合上滅多に前線に出ることはないが、一度戦場に出ればどんな強敵が相手であろうとも無傷で帰還する事から、「『傷知らず』『鉄』『堅い手』のアグラヴェイン」と呼ばれている。

原典において、ブリテン崩壊の原因の一端である王妃ギネヴィアとランスロットの不倫を暴いた人物であり、その為に物語においてもっぱら悪役として扱われる人物。

外見は眉間に皺を寄せた仏頂面にオールバックの黒髪、黒い鎧を纏った黒騎士といった男性。
性格は真面目な合理主義者。華やかな武功に興味を示さず、堅実な采配を好む。

シリーズ初出はアーサー王(アルトリア)の生前を綴った物語『Garden of Avalon』。


〇Garden of Avalon

アーサー王の宿敵である妖妃モルガンの実の子であり、同僚である円卓の騎士のガウェイン、ガレス、ガへリス、モードレッドとは兄弟の間柄。
兄弟の中でモルガンに最も近しい人物であり、彼女がアーサー王を破滅させる為にキャメロットに送り込んだスパイと言われている(モルガンはモードレッドを幼少期しか育てず素性を隠させて円卓に入団、ガウェインはそもそも母親との関わりは薄かったという)。

そのいつ裏切るかもしれない素性と、眉一つも動かさずに騎士を死地に送り込む冷徹な采配を行う人柄からか、円卓内においての嫌われ者であった。

モードレッドを除く兄弟達やトリスタン、円卓の良心ベディヴィエールすらも彼を快く思っておらず、本人もその悪評に気付いているが、元来の人間嫌いの気質の為に意に介さず受け入れている。

中でもランスロットとは互いに嫌悪を露わに侮蔑する犬猿の仲。
国よりも人を重視して女性を尊び尊重する事を良しとするフランス騎士を体現するランスロットと、国を重要視する愛国者で女性不信で人間嫌いのアグラヴェインとの相性はまさしく最悪の一言。
そんな彼との相性を当初から見抜いていたのか、アグラヴェインは最後までランスロットが円卓に加わる事に反対していたという。

しかし、周囲からは風評とは裏腹にアーサー王はアグラヴェインに対しては心を許しており、
無口ですが、人を見る目は確かな人物」「誰よりも平等にものをみている」として信用しており、よく彼の提案に耳を傾けたという。

アグラヴェインはそんなアーサー王に対して「人とは価値観が違う超越者」として見ていたようで、モルガンから送られたスパイであったものの、秘書官としての役割は忠実に行っていた。アーサー王伝説において有名な「聖杯探索」も彼が提案したという。

そして、ランスロットとのギネヴィアの姦通に気付いたアグラヴェインは2人の不貞現場に騎士達を伴って乱入。
やはり、でしたか。貴女は始めからアーサー王に相応しくなかったんですよ、ギネヴィア」と軽蔑を露わに吐き捨ててギネヴィアを侮辱するアグラヴェイン。その言葉に常日頃からギネヴィアの苦悩と嘆きを知っているランスロットは激怒。


――ほざいたな、アグラヴェイン……!!


激昂しながらアグラヴェインを切り捨てたランスロット。彼からすれば、秘書官でありながらもアーサー王の秘密を知りつつ利用し、ギネヴィアを脅していた卑劣な男の身勝手な発言にしか思えなかったのである。

そして、この事件をきっかけに円卓の崩壊を招き、ブリテンは滅びへと歩き始める引き金となった。
こうして物語において悪役として扱われる騎士は、結果的にモルガンに与えられた自らの役割を果たしたと言える。


Fate/Grand Order

第六章「神聖円卓領域キャメロット」において登場。獅子王と化したアーサー王に召喚されたサーヴァントの一人。
但し、シータと同じくプレイアブルキャラとして実装されておらず、直接対決を行うことはない。なのでステータスおよびスキルと宝具も詳細不明。

一応、作中描写と円卓の騎士は皆超一流のサーヴァントと発言されているので相応に高い能力値であると思われる。
また作中において、サーヴァントを縛る黒い鎖を使用しているので、これが宝具だと推察される。或いは、『堅い手』『傷知らず』の呼び名から何らかの削減系や防御能力の宝具を持つと予想する声もある。

白亜の城キャメロットの守護を担う騎士であり、生前と同じくアーサー王の補佐をし、同僚の円卓の騎士達の指揮を引き受けている。
秘書官であるアグラヴェイン以外の人物がアーサー王に取りつぐことは許されておらず、円卓内における重要な役割を与えられているが、この為かランスロットを含む一部からは王を影から操る黒幕と見られている。

一方でモードレッドには信頼されており、不仲とされている兄であるガウェインが失態を犯した際には弁明の余地を与えようと提案したり、処罰受けた際に思わず彼の安否を心配したりするなど陰ながらの配慮が垣間見える。

しかし、ランスロットとの仲は生前同様に最悪で、いまだにランスロットを信頼するアルトリアにも不満を抱えている様子であり、休む暇もなく彼に指令を出すなど采配にも影響を与え、
更に生前の行いを「不貞を行った上に逆ギレして宮殿から逃げ出した愚か者」と吐き捨てる程に露骨に嫌っている。

ランスロットの方も依然として嫌悪感は変わらないようで、アグラヴェインを「王の陰にて私欲を満たす卑劣漢」と侮蔑していて、獅子王の非情に思える判断も彼の仕業ではないかと疑いの目を寄せていた。

中盤に敵対する山の翁の一人である静謐のハサンの拷問を行い、その救出に現れた主人公達と交戦。
自らは戦わないものの、粛清騎士とそれを指揮するその堅実な手腕と物量を主にする戦術から主人公たちを苦しめた。

その際に三蔵の見識の深さと観察眼を高く評価しており、円卓に勧誘するなど敵対し苦手な女性であろうとも優れた人物なら私情を捨てられる柔軟な一面を見せたが、同時に王が円卓に行った強化術『ギフト』を受けていない事が判明。*1
本人曰く「ギフトとは獅子王との契約、そんなものを受けてしまえばいざという時に困る。王に対して何も出来なくなるだろう」との事。王への反旗のため、とも思える言葉だがその真意は不明。

そして終盤、主人公達がキャメロットに攻め込んできた際には主人公達に寝返ったランスロットと対峙。
奇しくも生前から続く二人の因縁だが、円卓最強と言われる圧倒的な力量を誇る彼によって、配下の粛清騎士達は全滅、彼自身も窮地に追い込まれるが自らを裏切り者と罵る彼の言動に胸に秘めていた怒りが遂に爆発する。

裏切り者だと……私が? お前と同じ?
はは、ははははは。
はははははははははははは
……笑いが止まらぬとは、この事だ

様子が一変したアグラヴェインに動揺するランスロット。それを意に介さずに自らの生い立ちを呟く。
母親は、モルガンは狂っていた。いつかブリテンを統べる王になると野望の言葉を幼い頃の彼に囁き続けた。
アグラヴェインはモルガンが王になるために使える道具にしか過ぎなかった。

そしてアグラヴェインもその言葉に同意した。ブリテンの存続は彼にとっても有意義な目的だった。それを叶える為に必要なのはより優れた王の存在であると悟っていた為に。
円卓の座にも興味もなく、誰が王であろうと関心もなかった。
必要としたのは自身にとって都合のいい操り人形にすぎない王であり、そのためにアーサー王を利用する事を企んでいた。
しかし、王は彼の想像を遥かに上回るほどに立派な人物であった。

清廉潔白、心身共に国へ尽くし、国を守る為に文字通り眠る時間すらなく責務に務めるアーサー王。
彼の王こそが、モルガンよりもブリテンをより存命させられる人物であるとし、母親との決別を決意した。

しかし、彼はある時王の苦悩を知ってしまう。
彼は女は嫌いだった。関わった女性達は醜く淫蕩で、清らかさを謳いながらも不貞を行うような人物ばかりだった。
彼女達を見ている内に人間という存在に、軽蔑すらも覚えた。

そんな彼が唯一嫌われたくないと怖れ、心底から尊敬した人物こそがアーサー王であった。
綺麗事ばかりでは物事はうまくいかない。王を支える為に必要ならば、嫌われ役も進んで引き受けた。

同僚達にも疎まれたが構わなかった。元々人間嫌い、アーサー王にさえ嫌われなければそれでいい。そう考える程に彼は王への忠誠心を深めていった。
幸いにも王は男性、嫌悪する女性ではない、その事に胸を撫で下ろしさえもした。

だが、ギネヴィアとランスロットとの不倫をキッカケに王の秘密を察してしまう。その瞬間の衝撃は心に空白すら覚えた程であった。


初めて。嫌われる事を恐れた者が、男性であった時の安堵が、お前に分かるか?
……それが貴様とギネヴィアのふざけた末路で、王の苦悩を知った時の、私の空白が、お前に分かるか。


淡々と、しかし激情に染まった形相で積年の憎悪をぶちまけたアグラヴェインは二度に渡って敬愛する王を裏切ったランスロットに再び切りかかる。


―――報いを受けろ。 貴様はまた、我が王を裏切った。


六章のエピローグ。獅子王と主人公達との最終決戦直前の舞台。そこには闘いを制したアグラヴェインが獅子王の元に訪れる。因縁の相手を執念の力で打倒したものの、手足は砕かれ、胴は裂かれ、片目は潰されるというまさに死に体の状態であった。
死にかけの身体を引き摺り、尚も王への忠義を尽くそうするも、力尽きることを悟った彼はまたしても目的を果たせなかった事を獅子王に謝罪する。

彼の目的は「生前は叶わなかったアルトリアが欲する理想の国を今度こそ献上する」事だった。

その気持ちを汲みとったアルトリアはアグラヴェインを責める事はせずに労わり、アグラヴェインは最期まで王への忠義を貫いたまま消滅していった。

こうして、第6章は幕を閉じた。


もう休むがいいアグラヴェイン。 働きすぎなのが貴公の唯一の欠点だった

まさか――――貴方に比べれば、私など。




〇余談

そのしかめっ面から誤解されやすいが、見かけに反して若い。
少女とも形容される三蔵法師と変わらないぐらいの歳頃といわれているので、二十代前半、下手すればそれ以下もあり得るというかなりの老け顔。
この事を追及された際には部下の騎士達もギョッとしながら驚いていた。円卓で彼よりも実年齢が若いのは、モードレッドやギャラハッドぐらい。
昔は今ほど老けてはいなかったが、トリスタン曰くものすごいストレスが原因でカエサルの激太りと同レベルの変貌を遂げたらしい。
まあ「I Can Fly」と言いながら空を飛んだり女の尻を追い掛け回していたという奇人変人が在籍する円卓の中での常識人なので常に頭を悩ましていたのであろう。

2015年のクリスマスイベントでサンタオルタから「アッくん」という愛称で呼ばれており、いつも良いアドバイスをしてくれると言い、彼女から親しまれている。
…が、いがみ合う騎士の仲裁に彼の進言を採用した結果「罵り合うことは無くなったが笑い合う顔にはいつも青筋が立っていた」とか。
その他、主君の狩りの供をした際には、山の陰や見晴らしの悪い森に隠れた獲物をいぶり出すために聖剣をぶっぱなして周囲をすっきりさせた王に対して、死んだ魚のような目をしつつ「さすがは陛下。全力ですな。」という讃辞(?)と拍手を贈ったらしい。

また『カルデアサマーメモリー』でのアルトリアの台詞で「王としての責務は執務室に置いてきた」と言うものがあったり、円卓礼装のイラストでアグラヴェインのみイラストからハブられていることから、
「王を始め主立ったメンバーが休暇で海に行っている間、一人だけ執務室に残って業務をこなしている」等とネタにされることも。
これらのネタやストーリー中でのワーカホリックぶりから、完全に円卓の苦労人ポジが定着している。

竹箒日記によると元々当初のシナリオには登場せず、シナリオ担当変更の際に追加されたキャラであるようだ。

本格的に登場したFGOでも戦闘無しのNPCだったため長らく担当声優がいなかったが、第六章アニメ化に際して安元洋貴氏がキャスティングされた。



追記・修正は仕事を五つばかり片付けてからお願いします。

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最終更新:2024年04月07日 20:49

*1 竹箒日記に掲載されている前日譚で受け取るのを辞退している。