PlayStation3

登録日:2016/08/31 Wed 13:35:06
更新日:2024/03/31 Sun 12:19:41
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Play Beyond


PlayStation3とはソニー・コンピュータ・エンタテイメント(SCE)が開発したコンシューマ向けゲーム機。
PlayStation2の後継機に当たる。

略称は「プレ3(スリ)」、「プレステ3」、「PS3」等。


【概要】

2006年11月11日に発売。PS2と異なり丸みを持った流線形のボディが特徴。横置き・縦置きどちらも出来る所は同じ。
当時、次世代DVDと称されたHD-DVDと争っていた「Blu-ray DISC」を対応ドライブに採用。
これによりBlu-rayビデオを再生する事が出来る他、HDMI端子も搭載している。
またPSやPS2で使われていたメモリーカードは廃止され、各ソフト毎のセーブデータはXbox同様の内蔵HDDに保存する方式に変更になった。*1

ただし発売当初はその高性能が仇となり、価格が49800~59800円と高額となってしまい、一部で不安視されていた。おまけに製造コスパを考慮する場合はこれでも赤字であった。
PS2では大ヒットの呼び水となった「DVDメディア再生機能」の踏襲であるBlu-rayメディアプレイヤー機能も
当時の映像ソフト界隈ではまだDVDの容量や解像度で十分だった為映像ソフト類はラインナップも少なく逆に足枷となった*2
また部品調達に由来する発売当初の供給本数の不足は勢いを削ぐ形となり、さらに頼みのサードパーティーも当初は一足早く発売されたXbox360に注力を注いでいたため、前世代機であるPS2程のセールスを記録する事は出来なかった。おまけにXbox360はPS3とCPUコアが「PowerPC」で統一されていたため、どちらで開発すれば楽なのかは言うまでもない。
そこに加えて、任天堂のWiiが爆発的かつ予想外の大ブームを起こしたことで、PSから続いたハードシェアトップの座から国内外で引きずり落された。
CPUの「Cell B/E」を原因とする開発難易度の高さもあって、結果的にPS3発売初期は前世代機であるPS2がバリバリの現役として働く始末となる。

その後、モデルチェンジやアップデートを繰り返し、普及数も着実に上げていきサードパーティーも充実。
次世代機であるPlayStation4が後方互換性を撤廃した事や縦マルチソフトが現在も多く発売されている事もあり
結果的に10年に亘って展開していた息の長いハードとなった。
2017年3月に「出荷終了になる」との話がネットに流れ、同年5月に公式に「出荷終了」の文字が公式サイトの製品ページに載った。
前世代機のPS2と、次世代機のPS4に挟まれながら、約10年に渡る激動の歴史に幕を下ろした。しかし、Blu-ray Discの暗号化キーの都合からいまだに本体OSが毎年一回以上アップデートされる運命にある。


【性能】

CPU 「Cell Broadband Engine」3.2GHz 演算性能:230GFlops
GPU 「RSX」500MHz 演算性能:192GFlops
RAM XDR DRAM 256MB 転送速度:25.6GB/s
VRAM GDDR3 256MB 転送速度:22.4GB/s
内臓ストレージ 2.5インチ SATA HDD ユーザーによる交換可能

前述の通り、Blu-rayに対応しているためBlu-rayビデオが再生可能。
また、BDメディアであることからPS2のDVDメディア以上の大容量を活かしたゲームの作成が可能となった。しかし、同時移植を考慮したソフトが大半であるため、DVD-ROMの限界容量である8.5GB以内に容量を抑えるケースが多かった。
無線LANとUSB端子とHDDを標準搭載している他、HDMI端子を備えているためHD画質でゲームをプレイする事が出来る。

なお、フルHD(解像度1920×1080)に対応しているのだが処理に過負荷がかかるため、ほとんどのソフトがHD(解像度1280×720)以下のサイズで制作されている。*3

コントローラはBluetooth(無線)で通信されるが、USBケーブルを使えば有線で使うことも可能。
ローンチ当初は振動機能を備えていなかったが、後に振動機能を備えたモデル「DUALSHOCK3」が発売されている。



【歴代モデル】

大雑把に分けると三型に分けられる。モデルチェンジする度に省電力化とスリム化がされていく。

◎初期型

当初は60GBと廉価版の20GBモデルが発売。「PlayStation3」のプリントロゴが特徴。
このモデルのみPS1とPS2両方の互換性を持っている他、20GBのみ無線LANを搭載していない。
発売当初はPS2互換の一部作品に不具合があったが、開発陣がOSにゲームディスクのメタデータを上書き修正させるパッチを入れることで強引にほぼ全作が動作するようになった。なぜか一部のUSB周辺機器、サラウンド音源の出力やオンラインプレイも互換が取れている。
後にPS2の互換を廃し、消費電力・重量・騒音を軽くした40GBモデルも発売された。
問題点としては、本体を熱暴走させっぱなしのまま起動し続けると突然YLODと呼ばれる症状が発生し、二度と本体を起動できなくなるリスクがこれらのモデルで非常に高い。YLODが発生した本体は売値も下がるのでまさにトラウマ。そのため今からこれらのモデルを買う場合はYLODを発症済みの本体を買わないようにし、熱暴走対策も必須であろう。

今となっては抽選販売やコロナ禍で起こりにくくなったが、この初期型の発売日には各販売店で長蛇の列が出来、TVのニュースでも取り上げられた程。
その際に列に並んでいたオジサンの「物売るっていうレベルじゃねえぞ」という叫びはあまりにも有名。

◎中期型

120GBと250GBモデルが発売。「PS3」のロゴが特徴。前後の長さがPlayStation5を超える程、本体がやけに面積を取るが、形状的には非常に設置しやすくなった。この頃地デジレコーダーをPS3ですべて肩代わりできるTorneとTorne専用地デジチューナーが発売されたのでHDD容量が大きいモデルの方がTorneを使いやすい。
後にHDD容量が増加した160GBと320GBモデルが発売された。
値段も24980~34980円とお求め安くなった。
CECH-3000以降はさらに本体の一部外面が簡素化され、HD映像のうちBlu-ray DiscとTorneに関連した映像がアナログ端子でHD出力できなくなった。


◎後期型

250~500GBモデルが発売。さらに圧縮したのでディスクドライブがトップローディングになっている。機能面はほとんど中期型と変わらないので、容量以外はどちらを購入してもゲームプレイに支障は出ない。
欧州でのみHDDをフラッシュメモリに変えたモデル*4が発売されている。
値段は24980円~29980円。最終型となるのは型番CECH-4300C、価格25980円のマイナーチェンジモデル。
最終型は約3年間の販売となった。



【PSN】

ゲームのネットワークサービス。
PS3用ゲームの他、PSP・PSVita用ゲームのダウンロードも可能(当然プレイは出来ないため、各機種にインストールする必要がある)。
また、ビデオやミュージック、アプリの配信も行われている他、後述のゲームアーカイブスもここで配信される。
2024年時点ではビデオを買うサービスが全面終了したので、Spotify、Youtube、Torneなどをちまちま使用できる程度。



【ゲームアーカイブス】

Wiiのバーチャルコンソールとほぼ同じ過去に発売されたゲームのダウンロード配信サービス。
当初はPS1のみだったが、PCエンジン、ネオジオ、PS2と徐々に配信ゲームが増えていった。

PS2以外はPSP及びPSVitaでも遊ぶ事が出来る上にセーブデータの共用が可能(当然ながらデータ移動は手動)。
このため外出先はPSP、家で遊ぶ時はPS3という遊び方が出来る。

なお、当たり前の事だがPS1及びPS2のゲームで遊ぶ場合、コントローラがほぼ同じなため操作性も据え置きとなっている。
画質の粗さを軽減するバイリニアフィルタリングにも対応している。



【Cell Broadband Engine】

PS3最大の特徴と呼べるCPU
SONY、東芝、IBMの共同開発による、当時としては珍しいヘテロジニアス(非対称型)マルチコアプロセッサ。

PS3のCellは普通のCPUのように汎用的な演算をさせる「PPE(Power Processing Element)」が1コア、浮動小数点の演算を担当させる「SPE(Synergistic Processing Elements)」が8コア搭載されている。
ただSPEのうち1コアは万が一不良が出たとしても問題なく動作できるように休ませている。(要するに補欠要員。)

ネットワーク経由での分散処理に最適化されており、当初はこのCellをPS3以外(TVとか)にも搭載する予定だった。しかしゲーム向けにしては極端すぎるスペックなので結局割と普通の規格で開発されたNVIDIA製GPUの"RSX"も搭載された。*5

詳しい解説は省くが、発売当初のPS3の値段を高騰させた原因の1つ。
またCell自体の仕様もゲーム向きではないと言われていたなど、厳しい意見が多かったのも事実。
一応コードをPS3専用に書けばきっちり性能を発揮出来たものの、PCやXBOX360のコードを流用する形だととにかく処理落ちしまくる傾向にあったので、プログラミングが異様に難しかったとされている。
例としてXbox 360で先行して発売された「BAYONETTA」や「NINJA GAIDEN 2」のケースを挙げると、BAYONETTAは上記の理由により移植に苦労しテクスチャが簡略化・フレームレートが60fpsから30fpsに低下。
NINJA GAIDEN 2は逆に60fpsをキープしつつグラフィック向上*6を果たしたが360版のコードをバッサリ切り捨ててPS3向けにゼロから作り直したというエピソードがある。
ハード初期~中期ではSCEのセカンドパーティが製作したソフトは高いパフォーマンスを発揮していたのに対して、サードのマルチソフトはよくPS3版がパフォーマンス面で見劣りするケースが多かったため、メーカー直系のゲームスタジオしかPS3専用のコードを使いこなせなかったとも言われた*7
その影響もあってか次世代機のPlayStation 4ではCellアーキテクチャは切り捨てられ、AMDの汎用プロセッサ「Jaguar」のセミカスタマイズ品が採用されている。
このCellに関する構想に費やした金銭の負担はソニー自体にも大ダメージを与えてしまった。
SCEがSIEに転換されたのもこのプロセッサの開発費で大幅債務超過になった影響があまりに長引きすぎたからだと考えられる。

しかし浮動小数点の演算能力が高い事を活かして、控えめなGPUの性能*8をカバーするべく、グラフィック処理の補佐を担当させる使い方がメーカーの間で盛んに行われた。
上記したCellのSPEコアはGPUコアのような振る舞いをさせることができる特徴を持っており、特にポリゴンの頂点位置を計算させる「頂点シェーダ」の性能が高かった。
故にハード後期のソフト程グラフィック処理のほとんどをCellに任せるソフトが増えていったそうな。
例として「ソニックワールドアドベンチャー」ではスキニング*9のパフォーマンスがGPU単体で処理させたときよりも10倍程度向上したいうエピソードがある。
*10
GPU代わりにすること以外にもマルチスレッド処理が得意という点を活かして、グラフィック処理の他に物理演算やサウンド処理等も同時にCellに行わせる使い方も盛んに行われた。
SCEのセカンドパーティはCellのパワーを存分に引き出して「アンチャーテッド」シリーズや「GOD OF WAR Ⅲ」、「グランツーリスモ」などで当時としては圧倒的なグラフィックを実現していた。
特に「グランツーリスモ6」ではCellのパワーをフル活用して本来DirectX11世代以降の技法である「テッセレーション」*11をDirectX9世代のPS3で実現させたというエピソードが残っている。

初期こそ辛辣に言われていたものの、引退した現在、ハード人生を振り返って見れば、PS3がここまでの表現を実現出来たのも、第七世代の据え置きゲーム機でもっとも長く活躍できたのもCellがやや先進的なシステムだったおかげと言っても過言では無いだろう。
上記した様に発売当初「ゲーム向きではない」と言われていたアーキテクチャながらも各ソフト開発会社の意地によってちゃんとゲーム機らしい性能を引き出せたのも見過ごせない点である。

余談としてマサチューセッツ大学で16台を連動させて重力波やブラックホールの観測に役立てたり、米軍がPS3を2016台(!)連動させてスパコンにしたりしている。
関係者曰く「性能に比して格安でシステムを構築できる」とのこと。



【システムソフトウェア】

従来のゲーム機と異なり、システムソフトウェア(パソコンで言うOS)のアップデートが可能。
ネットワーク経由が基本だが、ゲームのディスクに入っていたりパソコンでダウンロードしてUSBメモリに入れてもアップデートできる。
内容はほとんどバグの修正だが、トロフィー機能やFacebook対応など新たな機能が多数追加されており、それでいてメモリ消費は発売当初より減っている。
また、純正のシステムソフトウェアである「Game OS」以外のOS(Linuxなど)もインストールできた。逆に言えば合法カスタム・フォームウェアである。
この機能により先に述べたように純粋な演算・解析用途にも使われるようになったが、後にセキュリティ上の問題から廃止されてしまい、集団訴訟にまで発展した。
結果はソニーが賠償金を支払うという敗訴に近い和解で終わった。



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最終更新:2024年03月31日 12:19

*1 ただし、メモリーカードのシステムをPS2のゲーム内で完全廃止することはできず、「仮想メモリーカード」を経由してPS3内でセーブさせる必要が出てしまった。全てのPS2ゲームが8MB以外のメモリーカードの挙動を想定しているわけではないためである。

*2 余談になるがブルーレイ系のメディア代替わりはその後の地デジ化によるハイビジョンTV系視聴環境の普及の方で、BDレコーダーやHDMI対応テレビの増加で2010年代が終わる前におおよそ普及しきった。

*3 これは競合機のXbox 360及びWiiの次世代機のWii Uでも言えることである。

*4 欧州ではPSNの様なネット通信でのソフトウェア配信が日本よりも早く発達していた為、余談だがノートPCでも日本仕様では標準装備なCD・DVD等の光学ドライブを載せてない(代わりにHDDなどが載せられている)モデルが売られていたりした

*5 そうして多数のCellをバラ撒き、それらを連携させて分散処理、ただのゲーム機にあるまじき処理能力でコンピューター業界を席巻しよう…という計画を立てたが、絵にかいた餅に終わった。

*6 解像度が1120×585から1280×718に増え、光源処理も強化された。

*7 ただし多くのサードハーティは開発コストを抑えつつ360とマルチで発売するためにPS3に極度に最適化させたコードを書けないという台所事情もあるが

*8 GeForce 7800GTXがべースだったが、単純な演算性能は7600GS並だった。ただピクセルシェーダの性能は高かった。

*9 キャラクターの動きにあわせてポリゴンを皮膚のように滑らかに変形させる技法

*10 出典:https://game.watch.impress.co.jp/docs/series/3dcg/110682.html

*11 カメラと物体との距離に応じて物体のポリゴンがリアルタイムで微細化される技法。DX9でも出来なくはないが、かなりのマシンパワーを要求される。