外なる神(クトゥルフ神話)

登録日:2016/08/26 Fri 23:42:17
更新日:2023/07/28 Fri 17:46:29
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永劫の過去、宇宙の深遠。そこに宇宙を統べる外なる神が存在する。


外なる神(Outer God)はクトゥルフ神話における神格の分類の一つ。
クトゥルフ神話において「神」と称される存在、所謂旧支配者は、厳密には本当の神ではない。
個体にもよるが、あくまで彼らは「人間の目線からすればまるで神のような力を有する異星・異次元の生物」であって、真に全知全能の超越者や、自然現象や概念が神格化された存在ではないのだ。
実際に、いくつかの旧支配者は過去人間の手によって撃退されている例もある。*1

しかし、外なる神に分類されるこれらの存在は違う。
彼らは外宇宙もしくはアザトースの宮廷に住まう本物の神であり、多くの外なる神は旧支配者すら歯牙にもかけぬ、この無情な宇宙の法則を体現・擬神化した超常的存在といった位置付けになっている。

そのため普通の人間がこれらの存在と関わる事はほとんどない。その有する力の強大さ故に、外なる神々が矮小な生物を認識する事自体が稀だからである。割とホイホイ人に呼ばれて現われたりするが
もし仮に関わってしまった場合、その人間は大抵気が狂うか死ぬか、もっと悲惨な目にあう。一部の狂人や魔術師が彼らの力を借りるためにアプローチをしようと試みる事もあるが、それらは常に破滅の危険が付きまとう。

旧支配者と同じく崇拝の対象にもなっており、狂人や異星生物が彼らを崇めるために生贄を捧げたりする例も珍しくなく、それら邪悪な儀式を巡る人間達の戦いや悲劇を描いたクトゥルフ神話作品も少なくない。

ただし、この分類は元々クトゥルフ神話の創始者ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説には 存在していない。
元々この「外なる神」という呼称はヨグ=ソトースの異名の一つとして挙げられたものであり、現在のように一部の神々を旧支配者と分けるための概念ではなかった。
外なる神がこうした神々の分類として使われるようになったのは、TRPG『クトゥルフの呼び声』から始まったものであり、クトゥルフ神話の歴史としてはごく最近の話である。

こうした背景もあって、クトゥルフ神話ファンの中には超自然的な存在であるクトゥルフ神話の神々を分類付けする事自体好まない人もいるので注意すべきであろう。
初出こそTRPGであるがクトゥルフ神話の神格を作品に出す際にこの概念を取り入れたものも多く、例えばアニヲタwiki的にも有名なカードゲーム遊戯王OCGではクトゥルフ神話由来のカードを旧神、古神、外神と割り振っている。


◆クトゥルフ神話TRPGにおける外なる神

上記の通り外なる神という分類を採用したのはこの『クトゥルフ神話TRPG』が初である。旧支配者をも越える外宇宙の怪異としてデザインされているだけあって、その力はゲーム的なデータにも反映されており、基本的に人間がどうこう出来る存在ではない。
一例を挙げると…
といった具合である。
このような有様でゲームが成立するのかという疑問を持つかも知れないが、そもそも『クトゥルフ神話TRPG』は基本的に外なる神ではなくとも神々と真っ向から戦うゲームではなく、シナリオにもよるがこういった化物がホイホイと出てくる事もない。
よって外なる神が関わってくるシナリオだと、探索者(プレイヤーキャラ)は大体それらの怪異の召喚・具現化をさせないために奔放する事になる。
つまり、神と相対する事になった場合は怪異を止められなかったか、選択を致命的に誤った結果という事になる。

他にもシナリオを彩るフレーバーとして仄めかされるだけの登場だったり、メタ読みを行うプレイヤーに対するブラフとしてこれらの存在をキーパーが匂わせる事もある。APP(容貌)が最高値の黒人NPCなどはブラフの鉄板ネタである。
ただし、これらの外なる神のゲーム上における扱いはあくまで一例であり、全てはシナリオと卓を囲む人間達次第である事を忘れてはいけない。


◆外なる神の一覧

外なる神々の総帥。
白痴の魔王。万物の王。沸騰する混沌の核。
ヨグ=ソトース、シュブ=ニグラス、ニャルラトテップといった外なる神を生み出した存在で、全ての始まり。
今では自身の宮廷で黒い玉座に座し、多数の外なる神の踊りと従者の奏でるフルートの音色に合わせて、白痴の夢の中で微睡みながら冒涜なる賛辞を撒き散らしている。
詳しくは当該項目参照。

外なる神々の副王。
無名の霧。一にして全、全にして一。門にして鍵。
総帥であるアザトースがご覧の有様のため、実質的にこのヨグ=ソトースが外なる神の王と言ってもいいかもしれない。
元より「外なる神」とはこのヨグ=ソトースのみを指す言葉だった。
詳しくは当該項目参照。

闇の聖母。千の仔を孕みし森の黒山羊。万物の母。黒き豊穣の女神。
ヨグ=ソトースの妻であり、豊穣の女神としての側面も持つ神。外なる神の中では比較的人間に好意的である。
詳しくは当該項目参照。

無貌の神。這い寄る混沌。
外なる神々に仕える使者であり、「千の貌を持つ」とされる程の膨大な化身を有する神。
一説によると外なる神の中で魂というものを持っているのはこの神だけらしい。
神々の命を受けそれを直ちに遂行する。実は苦労人なのかもしれない
……が、同時に人間はもとより他の旧支配者達や自身の主である外なる神々を冷笑し続けているという。
詳しくは当該項目参照。

  • ウボ=サスラ
自存の源。始原にして終末。アザトースの兄弟ともされる。
地球のどこかにある暗く淀んだ洞窟に住まうとされている。地球の生命の原型と称されるスライムのような無形の塊であり、地球上の生命はウボ=サスラから生まれ、ウボ=サスラに帰るとも言われている。
…特筆すべきはウボ=サスラそのものよりも、彼?の近くのあるとされる 旧き鍵 という石版だろう。
この石版には旧神達によって、宇宙の構造すら容易に捻じ曲げる事ができる天地開闢以前の秘術が記されているとされる。
そんな石版がなぜウボ=サスラの近くにあるのかは今もって謎であり、一説によるとウボ=サスラがまだ肉体と知性を持っていた頃、旧神達からそれらの力を源を奪い取り石版という形で残したのだという説もある。
この旧き鍵の力を求めてウボ=サスラの元に向かった魔術師は数いるが、そこから戻ってきた者は殆どいない。
ほぼ唯一の例外がスミスの『七つの呪い』などに登場する魔術師ハオン=ドルであるが、彼は旧き鍵に象形文字で書かれた宇宙の真実を知ってしまい、SAN値直葬寸前にまでいたっている。


  • アブホース
不浄の源。
今は亡き、ヒューペルボリアのヴーアミタドレス山の暗黒洞窟の水溜まりに住まう。
生息地こそ地球であるが、外なる神である事を考えると恐らく生まれはアザトースの宮廷であると思われる。
アブホースは絶えず膨張、分裂、変形を繰り返す灰色の巨大な汚濁であり、そこから名状しがたい奇怪な落とし仔を絶えず産み出している。その落とし仔はまたアブホースの汚濁に飲み込まれ、また産み出され…という無限ループになっている。
時々、この不浄のサイクルから外れる落とし仔がおりそれらは自身で地上へと這い出てくるようだ。
ウボ=サスラと似た設定であるが、一部設定ではウボ=サスラの別名、もしくは子であるとされている。

  • トゥールスチャ
アザトースの宮廷に住まう、燃え上がる緑の焔という姿を持った外なる神。
死と腐敗を糧とし、四季ごとに星辰が重要な位置にある時に儀式によって呼び出される事があるという。 以上。
一応、ラヴクラフトの「魔宴」という作品にそれらしき存在の記述があったりする。

  • トルネンブラ
生きている音。
ラヴクラフトの短編『エーリッヒ・ツァンの音楽』における奇怪な調べの正体だとされる事もあるが、そもそもこの作品自体がクトゥルフ神話作品だと数えられていなかった時期もあり、完全に後世の作家による後付けである。
姿形という実態を持たない、常軌を逸した「音」として顕現する奇怪な神格。才能を持つ音楽家の下に現れて歌いかける。
トルネンブラに憑かれた音楽家は正気と引き換えに、この世のものとは思えない音楽の技量と知識を得る。
ただし、最終的にその音楽家の魂はアザトースの宮廷に連れ去られ、外なる神の総帥を宥めるべく永遠に音楽を奏でる事になるという。

  • グロス
破滅の凶兆。
亀裂や断層から一つ目が時折見れる、赤錆色の巨大な星のような形で宇宙に顕現する。
旧支配者を目覚めさせ、銀河を終末に導くためにアザトースの宮廷から解き放たれる執行者。
特殊な音波という形で星々に干渉し、星辰の巡りを変え旧支配者を目覚めさせる存在。
この音色はその惑星の自然を大きく捻じ曲げ、世界規模の災害を誘発する。

  • ミゼーア
ティンダロスの大君主。
この存在は他の外なる神とは少々毛色が異なる。姿は人間が認識できる物ではないが、人間の目から見れば恐らく狼に似たものとして写るだろう。
外なる神の副王ヨグ=ソトースの支配する「曲がった時空」とは別の時空に住まうものであり、根本的に外なる神とは違う存在である。
ではなぜこのミゼーアが外なる神として扱われているかというと、その力があまりにも規格外であるため。
要するに、 外なる神でもないのに、外なる神に匹敵する力を備えている という正真正銘の化物である。
北欧神話の魔獣、フェンリルの原型となった存在であり、ヨグ=ソトースとそれが支配する「曲がった時空」に属する全ての存在を強く憎んでいる。
遥か昔、もしくは遠い未来にティンダロスとミゼーアはそれら全てを飲み込むとされ、ミゼーアとヨグ=ソトースの凄まじい戦いは永遠に続くとされる。

  • ダオロス
ヴェールを剥ぎ取るもの。
異次元に住む外なる神で、銀色の半球と可塑性の棒が連結され複雑に入り組んだ幾何学的な存在らしい。
非常な危険な神格であり、この存在を目で追おうとすると発狂する。よってこの存在を見る時は暗闇の中でなければならない。
一部の占星術師や魔術師によって崇拝されており、ダオロスの祝福を受けた者は、現実を覆っているヴェールを破り、真の現実世界の構造を認識できるようになるとされる。……その正気を代償として。
召喚されるとアザトース同様、永遠に膨張するため何らかの対策なしに決して召喚してはならない。
この存在に触れた者は異世界、超次元、時間流の只中に巻き込まれ二度と現実世界に戻る事はない。



追記・修正は外なる神の召喚を食い止めてからお願いします。

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最終更新:2023年07月28日 17:46

*1 そもそもクトゥルフ神話の元祖とも言えるHPLの小説『クトゥルフの呼び声』の時点で、旧支配者のトップ的存在であるクトゥルフがただの大型船の突撃で撃退されている。