ファイアント(ウルトラ怪獣)

登録日:2016/07/19 Tue 21:17:38
更新日:2022/10/16 Sun 14:01:44
所要時間:約 6 分で読めます





ファイアントは、内山まもるの漫画版『ウルトラマンタロウ』に登場した怪獣である。
登場したのは『小学二年生』連載版、1974年2月号に掲載された第12話(連載最終話)「地球が沈む!タロウ最後の戦い!」。
内山氏による『タロウ』漫画のオリジナル怪獣では、小五版のインベーダーと『かがやけ ウルトラの星』のウルトラキングが存在するが、
前者は終始人間体、後者も正体は既存のウルトラ怪獣であるため、実質唯一のオリジナル怪獣といっても過言ではない。
肩書は「熱怪獣」。


◆概要
外見的にはトローンとした眼にだらしなく開いた口、そこから除く出っ歯……と、映像作品のギャンゴヤメタランス辺りを彷彿とさせる間抜けな外見をしているが、
このファイアントはそれら同様のコミカル系怪獣という訳ではなく、むしろ真逆の相当危険な類の強敵である。
サイズは割とヘビーサイズで、一般のウルトラ戦士よりも一回りほど大きい。

肩書や、「ファイア」から取ったと思われる名前から察しが付くように、ザンボラー等と同様の高熱系統の能力持ちで、このファイアントは全身から強烈な高熱を放射する事が可能。
恐るべきは尋常でないその火力で、ZATが放ったミサイルが接近すると直撃前に融解する現象が作中で発生、
更にファイアントが本気を出せば、周囲のウルトラ戦士すら自然発火で焼いてしまうほどの威力まで見せる。
攻撃面のみならず耐久力もかなりのもので、数十人規模のウルトラ戦士が一斉発射したウルトラフリーザーにすら耐えるほど。

これだけでも極めて厄介な難敵なのに、作中ではよりにもよって南極大陸の氷上に出現するという恐ろしい状況であり、
もし倒すことができなければ、下手すれば『新世紀エヴァンゲリオン』や『宇宙戦士バルディオス』のような
地球規模の大惨事を引き起こしていた可能性は高い。
ゾフィー隊長を筆頭とするウルトラ軍団が総出で退治にかかったのも、頷ける話と言えよう。


◇『地球が沈む!タロウ最後の戦い!』あらすじ

※以下、雑誌掲載当時の柱に書かれていたコメントは青字で表記。

宇宙大怪獣アストロモンスとの戦いで、ウルトラマンタロウとして蘇った東光太郎
その後もライブキングバードンメフィラス星人テンペラー星人タイラント……
数々の凶悪怪獣から地球を守ってきたタロウ、その最後の戦いが始まろうとしていた。
せかい中がこう水だ。さあ、タロウさいごのたたかいがはじまるぞ。すぐ読もう。

突如、日本の海辺沿いの漁村を、近年稀に見る大津波が襲来するという前代未聞の事件が発生。
山をも呑み込まんとする規模の津波を前に、パニックに陥った住民達の避難誘導を懸命に行うZAT
一方その頃、朝比奈隊長はスカイホエールで南極大陸にまで赴き、この大惨事の原因を突き止めていた。
つなみだ。にげろ。たいへんなことがおこったぞ。おそろしい怪獣があらわれたのだ。

大津波を引き起こした犯人は、南極の氷上に突如出現した怪獣、ファイアント
全身から高熱を発するこの怪獣が、南極の氷を次々と融解させていたのが原因だったのである。
隊長は僚機にも攻撃命令を出し、ファイアントに向けてミサイルを連射するが、
怪獣の高熱によって近づいたとたんに融解、ダメになって次々と墜落していってしまう有様。
このまま氷が解け続けてしまえば、地球の海面水位は急上昇し、日本列島などすぐに水没してしまうだろう。
既に戦闘機の中すらも耐え難い猛暑に包まれ、もはや人類に打つ手はなしかと、光太郎らZATの面々が絶望した時、
遥か水平線の彼方の空より、無数の人影らしきものが大挙して近づいてくるのに彼らは気付く。
遠くの方からたくさんのかげが近づいてくる。いったいだれだ。てきかみ方か。

謎の大群……その正体は、遥々M78星雲・ウルトラの国から駆け付けてきたウルトラ軍団
ゾフィーを筆頭に、初代マンセブンジャック(新マン)エースら5兄弟も揃ったその規模は、およそウルトラ戦士数十人……
地球に出現したファイアントの脅威は、彼らにとっても決して見逃せないレベルの存在だったという証左なのだろう。
南極に到着し、すぐさまファイアントを包囲する形で展開したウルトラ軍団は、
ゾフィー隊長の指示のもと、一斉にウルトラフリーザーを放ち、ファイアントを冷却しようとする。

……だがしかし、ファイアントの高熱は想像以上に強力なものであった。
数十人規模のウルトラフリーザーにすら耐えたファイアントは、気の抜けた顔に怒りの表情を滾らせると
高熱を更に強化させ、周囲のウルトラ戦士を自然発火させるという手段で反撃。
ゾフィーは、自分たちが今退いてしまえば、地球は大洪水で完全に滅んでしまうとウルトラ軍団を鼓舞。
怪獣の放つ熱線で思うように接近が敵わないものの、ウルトラフリーザーで溶けた海面を再凍結させて
ファイアントによる被害を可能な限り抑えようとするが、そうする内にもウルトラ軍団は次々と熱線でやられていく。

事態を見かねた光太郎は、自身の操縦するスカイホエールをファイアントに向かって急発進させる。
それを目にしたウルトラ戦士たちが驚く中、光太郎はファイアントの熱を受けてスカイホエールが徐々に融解するのも構わず
ただただ、ひたすら怪獣に向けて突撃してゆく。
光太郎、どうしようというんだ。あのねつの中へはいっていけばしんでしまうぞ。

スカイホエールはファイアントの目前にまで迫るも、あと一息のところで爆散。万事休す……
……が、その爆炎の中で光太郎はウルトラマンタロウへと変身、そのままの勢いでファイアントに突撃し、
決死の必殺技・ウルトラダイナマイトを仕掛ける。
流石のファイアントも、至近距離でこれを受けては敵わず、あえなく氷山もろとも木端微塵に吹き飛ぶ末路を迎えるのだった。

だが、流石のタロウもこんな無茶をしては無事では済まず、彼もまた力尽き倒れる結果を迎えてしまった。
ゾフィーはギリギリのところで命を繋いでいたタロウを助け起こすと、傷ついた彼にウルトラの国へ帰るよう勧める。

ファイアントが斃れ、津波が収まったことに安堵する漁村の人々は、タロウを連れて帰還するウルトラ軍団を見かけた。
地球のために懸命に戦い、その命を賭して危機を救った勇者を、彼らは感謝の気持ちを込めて見送るのだった……
こうしてタロウたちは、ウルトラの国へ帰っていった。さようなら、タロウ。
長い間、おうえんしてくれて、ありがとう。いつかまたタロウと会えるかもしれません。


☆総括
『小学二年生』連載版の最終話を飾ったこのエピソードは、TVシリーズの最終話「さらばタロウよ!ウルトラの母よ!」とは全く異なり
戦いで傷ついたタロウ=光太郎が、ウルトラの国に帰還して地球から離れるという、
ウルトラセブン』や『ウルトラマンパワード』の結末を彷彿とする展開になっている。
内容も、ウルトラマンとしての力をあえて否定し、人間の力だけで侵略者を撃退したTVシリーズとは真逆のものとなっているが、
ある意味、映像作品以上にウルトラ兄弟路線を打ち出した内山版ならではの展開といえるかもしれない。

なお、恐らく当時本話を読んでいたであろう対象年齢の児童は、恐らく『小学三年生』に移行したと思われるが、
そちらで連載された内山版『ウルトラマンレオ』では、戦いを終えた後の東光太郎=ウルトラマンタロウを描いた
いわば『ウルトラマンタロウ ジ・アフター』とでも言うべきエピソードが、地獄星人ゴルゴの回で展開されている。
もっとも、そちらにおける光太郎の顛末は、映像作品の流れに準拠したものを採用しており、
『小二』連載版とは繋がらない内容ではあるのだが…… まぁコミカライズ作品ではよくあることなので、気にしたら負け。




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最終更新:2022年10月16日 14:01