ドラえもん のび太とふしぎ風使い

登録日:2016/07/09 Sat 02:51:13
更新日:2024/01/22 Mon 02:11:15
所要時間:約 6 分で読めます





風が友だちを運んできた。

風のドラえもん、はじまる。


監督:芝山努
脚本:岸間信明
主題歌:ゆず「またあえる日まで」

『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』とは、『映画ドラえもんシリーズ』の第24作目及び『大長編ドラえもんシリーズ』第23作目のタイトルである。
2003年3月8日に公開された。
同時上映は『Pa-Pa-Paザ★ムービー パーマン』。

●目次

【概要】

今作は当wikiにも項目のあった「台風のフー子」に登場した人気キャラクター、フー子をメインキャラクターとしている。
コロコロコミック担当だった斎藤満氏の証言によると、本作の出発点は芝山監督の描いたモンゴル衣装を着たドラえもんスケッチからで、これに『台風のフー子』をベースにしたいという小学館の提案が合わさって現在のテーマになったという。
ストーリーその物はほぼ完全なオリジナルであるが、人気作品である原作短編を上手く翻案したプロットを軸に、後述のスネ夫の悪堕ちとそれを追うジャイアンの奮闘を組み込んだことから好評を博した。
そうした要素から原作者藤子・F・不二雄の死後に公開された大長編作品の中でも人気の高い作品である。

主題歌はゆずの「またあえる日まで」。
2002年10月から半年間、テレビシリーズのエンディングとして使用されていた。
当初から映画での使用を前提に楽曲が制作されたのかは不明であるが、歌詞が映画の内容と強くマッチングしており、
映画主題歌としての評価も高い。
ゆずの2人はヤムジン&クンジン役*1で声優に初挑戦した。

なお、オープニングの「ドラえもんのうた」は、当時のテレビシリーズでは東京プリンが歌っていたが、本作では山野さと子が歌うバージョンが使われている。

今作よりセル画からデジタル作画に移行した。
シンエイ動画プロデューサーだった山田俊秀氏は、TVシリーズが先にデジタル化していたので大きな混乱もなく移行できたと語る一方で、映画のデジタル化導入は初めてだったのでスケジュール的には緊張したと、超全集の寄稿にて証言している。


【あらすじ】

スネ夫の家の庭で孵った不思議なタマゴは台風の子ども、フー子のものだった。
のび太たちはフー子のために広大な大草原へと向かうが、そこで風の民と嵐族の争いに巻き込まれてしまう。
首尾よく嵐族を撃退し、しばらくは風の村で楽しく遊ぶが、そこへ嵐族が今度はフー子を狙って襲ってくる。そして嵐族の長の座には、なぜかスネ夫がいた…!


【登場キャラクター】

【メインキャラクター】

ご存じみんな大好き青いフーセンダヌキ
もはや大長編恒例とでも言うべきか、敵側に四次元ポケットを奪われてしまう。

無事ポケットを取り戻した後、マフーガとの対決の際にはビッグライトで巨大化して空気砲で攻撃するが、ほとんど効果なし。
それでもラスボスのタイムマシンを空気砲で撃沈し、物語を締めくくった*2

ご存じ心優しきヘタレ眼鏡。
フー子の飼い主(?)であり、原作短編以上にフー子と心を通わす。
嵐族にさらわれたフー子の身を案じて奔走し、一度はフー子を取り戻すも再び奪われてしまう。
そしてマフーガに一体化したフー子を助けるため、テムジンの助けも借りて封印の剣で分断に成功したのだが…。

今回はやたらと格好いいカットが多く、特に封印の剣でマフーガを分断するシーンは見た目だけなら恐らく全のび太史上最高のイケメン度。
風弾ダーツで素人としては高スコアを記録する、フー子が閉じ込められたカプセルの解除スイッチを狙い撃つなど、射的の腕も生かされる。

ご存じ皆のアイドル。
…なのだが、最初に書いた通り他四人*3がメインなため、本作では特に目立った活躍は無し。

ご存じ歌好きガキ大将。
登場早々フー子に吹っ飛ばされ(ジャイアンパンチは不発に終わる)、スネ夫に唆されてフー子奪取に協力するが、その後はあっさり水に流した。

映画になるといい奴になるのはいつものことだが、特に今回は親友のスネ夫が敵側についたことから一人奮戦。嵐族に潜入し、のび太たちの脱出を助け、終盤でもウランダーを止めようとするなど活躍した。

また小学生離れした身体能力の高さも披露しており、風がっせんバットでカゼスビーに乗った嵐族を叩き落している*4
ウランダーに乗っ取られたスネ夫から「ブタゴリラ」呼ばわりされた。

ご存じスネちゃま。
自分の庭でフー子が産まれ(しかもRCカーまで壊された)、ジャイアンをも吹っ飛ばすフー子のパワーを見て自分の物にしようと画策する。

その後も諦め切れない様子だったが、そのことで目を付けられたのか、敵のボス・ウランダーに身体を乗っ取られてしまうハメに。
映画版のみだが、ドラえもんをネズミの幻覚で無力化するという、味方側の事情を熟知したキャラが敵に回ることの恐ろしさを存分に見せつけた。

当時の児童誌などではウランダーに憑依された状態のスネ夫を「スネンダー」と紹介していた。
嵐族には最後までウランダーだと勘違いされていたため、風の民と嵐族との争いに終止符を打つ役目は果たせたが…。

なお、映画のキャスト紹介では、普段ではしずか・ジャイアンとひとまとめに紹介されているが、今作では銀河超特急と比べてもかなり長い時間敵サイドにいたためなのか、ドラえもんとのび太に次いで単独で紹介されている
ちなみに本作でスネ夫がクローズアップされたのは、芝山監督のお気に入りキャラであったためであると超全集の寄稿で明かされている。



【ゲストキャラクター】

  • フー子

本作のメインキャラクター。すでに書いたとおり初出は短編・「台風のフー子」。
台風の子らしく元気な暴れん坊で、ちょっと女の子っぽいところもありヤキモチ焼き。*5
風を使って様々なことができる。

原典では「気象台の学者が実験のために作った台風のたまご」であったが、本作では「台風の子のようなもの」以外の詳細は不明だった。
実はマフーガが封印の剣により分断された球から産まれた存在。*6
そのためウランダーに付け狙われ、最後はマフーガと一体化してしまうが、のび太たちの活躍もあって無事元通りに。
しかし…!

普段着ているぬいぐるみは『ドラコッコ』という漫画を元にドラえもんが「フリーサイズぬいぐるみカメラ」で作り出したもの。これはこれで可愛いが、卵から出てきた時のモフモフ感や、オリジナルの無生物的な感じがよかったという意見もチラホラと…。ま、どっちにせよカワイイ。
なお、後述の絵コンテ集によると当初はぬいぐるみを人間とし、少女のキャラクターにする計画だった。

  • テムジン
CV:愛河里花子
ドラえもんたちが風の民の村に始めてやってきた時に出会った少年。チンギス・ハンではない。
村きっての風船ダーツの名手であり、奪われた四次元ポケットを取り戻したほか、終盤にはのび太をサポートしてマフーガを封印の剣で分断した。

  • スン
CV:西原久美子

テムジンの妹。

  • ヤーク
CV:小林修

風の民の村の山神であり、のび太曰く「でっかい牛みたいな動物」。種類は見た目や名前からして多分ヤクであろう。
雪山で遭難しかかっていたのび太とフー子を助け、過去に起きたマフーガやウランダーの来歴をのび太に伝えた。

  • 嵐族
CV:田中一成、高戸靖広、堀之紀、広瀬正志、小関一、稲葉実

今作の敵。風を悪用する悪党集団。実際にはストームに利用されていたに過ぎず、映画ではマフーガとフー子が戦う際にはフー子を応援していた。

  • ウランダー
CV:小林清志

遥か古代の嵐族の族長。呪術によりマフーガを生み出すが、風の民の長ノアジンにより封印の剣で倒され、マフーガの珠とともに封印されていた。
しかし、ストームの暗躍により復活。スネ夫に乗り移ってフー子を奪い取り、マフーガを復活させる。
…が、実際にはストームに利用されていただけであり、「四次元ペットボトル」で吸い込まれて敢え無く退場。
マフーガが倒された後も四次元ペットボトルに封印されたまま物語は終わったが、どう処置したのか気になるところである。

  • マフーガ
ウランダーの生み出した東洋の龍のような怪物。封印の剣により三つに分断されており、フー子やゴラドもその一部である。のび太の活躍によりフー子は切り離されるが、残り二体となっても活動を再開し…。

  • ストーム/Dr.ストーム

嵐族の現族長。嵐族を纏め上げてマフーガの復活に乗り出す。
その正体は22世紀の考古学者*7であり、復活したマフーガを用いて破壊からの自身の理想郷創造を目論む今作のラスボス。それにより自身の存在が消滅するリスクに怯えるどころか、「このけがれきった世界を洗い清め、新しい時代をこの俺が造るのだ!」と豪語するなど、映画ドラえもんの悪役の中でもトップクラスで危険な思想の持ち主
ウランダー復活後はそれに付き従う様子も見せたが、実際は利用していただけだった。そしてウランダーを閉じ込めた後は、マフーガによる破壊を高みの見物と洒落込むも、ドラえもん(映画ではジャイアン)に空気砲で撃墜され、タイムパトロールによって御用となった。
屋良氏が映画ドラえもんのラスボスを演じるのは宇宙小戦争のドラコルル長官に次いで二度目。あちらもドラえもん一行を追い詰めた最強クラスの頭脳派悪役である。


  • ゴラド
マフーガから分断された三つの珠のうち一つから産まれた風獣。
フー子の兄弟のようなものだが、性格は似ても似つかずかなり凶暴。
また風の性質も異なるらしく、テムジン曰く「ジメジメしていやな風」。

【ひみつ道具】

  • フリーサイズぬいぐるみカメラ
写したもののぬいぐるみを作るカメラ。
ドラコッコのぬいぐるみを作ってフー子の身体にした。

お馴染みの空を飛べる道具。
のび太に𠮟られて家出したフー子を探すために使用。

  • 分析機
何でも分析する機械。
フー子が何者かを分析する際に使った。

宇宙に存在するありとあらゆる情報を知ることができる端末。
台風が暖かい空気を好むことを調べた。

  • ふつうのドライヤー
フー子に暖かい空気を食べさせるために使用。

のび太『なんでそんなもの持ってるの?』

ドラえもん『持ってたっていいでしょ(くしで頭をとかしながら)』

フー子を広い原っぱで遊ばせようと使用されたが、通じた先は偶然にも風の民の村だった。
中盤、嵐族によって壊されてしまった。

  • 上昇気流マット
上向きの空気の流れを発生させ、落下物をふわふわと優しく受け止めるマット。
嵐族に襲われて転落したスンを助けた。

お馴染みの旅のお供に最適なアイテム。
テムジン達風の民と話すために使用。

  • ドラ・で・カイト
ドラえもんがみんなで空を飛んで遊ぶために出した巨大なやっこ凧。
ドラえもんの顔が大きく描かれている。
終盤では嵐族を追う際にも役立った。
ちなみにこの凧、映画公開を記念したキャンペーンで実際に作成された四十畳ほどの巨大凧である。人間は乗らない

  • とりよせバッグ
欲しいものをなんでも取り寄せることができるカバン。

  • たつまきストロー
ふくと小さな竜巻がおこるストロー。
嵐族を吹き飛ばす際に使用。

  • お祭りうちわ
仰ぐとだれでもお祭り気分になって踊ってしまううちわ。
風神うちわと間違えて出してしまったが、嵐族を戦意喪失させたので結果オーライに。

  • コケお手投げ弾
投げると物凄い音と光で相手を脅かす爆弾だが、殺傷能力はない。
テムジンとしずかちゃんが使用して、その隙にのび太がフー子を救出した。

  • おばけつづら
お化け屋敷ごっこに使う、お化けロボットの詰め合わせセット。
のび太が慌ててポケットから出し、嵐族を驚かせた。

  • 空気砲
お馴染みの武器アイテム。
マフーガとの対決に使用。
ストームのタイムマシンを撃沈させる大金星を挙げた。

  • ビッグライト
お馴染み対象を大きくできるライト。
ドラえもんが巨大化してマフーガに立ち向かった。

【用語】

  • 風の民の村
本作の冒険の舞台で、地球上のどこかにある大草原。
峻険な山稜により周囲から隔絶され、風を有効利用した独自の生活が営まれている。
文化や風俗を見るにつけ、モチーフはチベットやモンゴルの遊牧系民族であろう。

  • ブンブン
風の民の扱う道具。
つむじ風を起こす道具だが、礫にして相手にぶつける(「風弾ダーツ」とも呼ばれる。ドラえもんの空気砲を相殺する威力)、カゼスビー(フリスビーのようなもの)に乗って空を飛ぶ、草を刈る、洗濯をする、等々なんでもござれ。ドラえもんのひみつ道具もビックリな汎用性の高さを誇る。
大型のブンブンは船を飛び上がらせることもできる。




【余談】

公開後に発売された「映画ドラえもん のび太とふしぎ風使い 絵コンテ集」ではラフ画とはいえない、綿密な芝山監督の画力が堪能できる。
その他にも、イメージボード集・ラフデザイン集・架空の実写版の撮影メイキング等サービス精神と遊び心も満載。

反面、10分で方が付く短い日常回をどの様に子供向け90分映画に膨らますか、
季節性が絡むトラブル・世界観が異なるキャラ達をどの様に違和感なく馴染ませるかに苦心した等ある種の大人の事情の暴露本と取れる部分もある。

前売りプレゼントとして『ドラスビー』*8、入場者プレゼントとして『あおいでドラ』*9が配布された。







「追記・修正依頼をみると、つい思い出しちゃうんだ。アニヲタのことを」

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最終更新:2024年01月22日 02:11

*1 双方共、テムジンの友人。

*2 映画版ではその役目はジャイアンに譲っている。

*3 念の為に書いておくと、のび太、ジャイアン、スネ夫、そしてフー子。

*4 漫画版のみ。映画版では敵になったスネ夫に何度も呪術で翻弄されており、隠密行動能力の高さは見せたがパワーファイターとしては役立ってない。

*5 ちなみに「フー子」の名付け親はのび太だが、「メスなの?」とドラえもんにツッコまれている。

*6 なぜその球がスネ夫の家の庭にあったかは不明。

*7 ドラえもんを未来のロボットと見抜いてポケットを奪う、フー子を閉じ込めるカプセルが未来のもの、移動にタイムマシンを用いるなど、伏線は張られていた。

*8 ドラえもんのイラストが描かれたフリスビー。風に乗せて遠くに飛ばせる。

*9 尻尾のネジを巻くとドラえもんが団扇を仰ぐゼンマイ式のおもちゃ、頭にはキーチェーン付きで全7色。