ガラン・シガタール・クライン

登録日:2016/07/01 (金) 00:10:46
更新日:2024/04/14 Sun 14:51:09
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死者の記憶はウソをつきません。
ならば、弁護士など‥‥不要です。


「ガラン・シガタール・クライン」は『逆転裁判6』の登場人物。


■概要

CV:高島雅羅


同作第3話「逆転の儀式」で初めて登場する、クライン王国の現女王。
法務大臣インガ・カルクール・クラインの妻で、レイファの母親。
また、前女王アマラ・シガタール・クラインの妹である。


クライン王国は《霊媒》を使って近隣諸国の相談役を務めた事で
独立を保ってきたという背景があり、《霊媒》のチカラがそのまま《王》の証とされている。
つまり、霊媒ができることが《王》になるための必須の条件とされているのである。
ガランもその例に漏れず偉大な霊力を持つと言われており、
そのチカラに心酔する《ガラン親衛隊》を従えている。


「ウル・ディーハラ・ガラン!」


アマラ政権時代の頃、ガランは法務大臣を務めており、同時に負け知らずの検事でもあった。
しかし、過去に起きた事件でアマラ女王が暗殺されたため、姉に代わって女王となり、
その事件の犯人とされるドゥルク・サードマディが《弁護士》であったことを理由に
弁護罪》を制定した。
王の名のもとに、犯罪者に与したものは、これを等しく同罪とする」というこの法律によって、
国にいた弁護士は殲滅され、クライン王国の法曹界は《御魂の託宣(みたまのたくせん)》のみを絶対の判断基準とするものと化した。


ガランは《弁護罪》について、
「弁護を禁じているわけではない。
 依頼人の無実を勝ち取る自信があるならば、正々堂々と弁護に挑めばいいだけ」、
「検察がカンペキな仕事をこなしていれば、えん罪などありえぬこと」
と断言している。
ちなみに、ガランいわく《弁護罪》を制定後国内の犯罪発生率はいちじるしく低下したそうで、
《弁護罪》を制定したことに後悔はないらしい。

同作第5話「逆転の大革命」の後半で起こるある殺人事件の裁判では、
《検事》としてその姿を現すが‥‥。




※以下、重大な「ネタバレ」あり!



















































■ネタバレ


「ひれ伏せ!」


第5話後半の法廷パートでは、それまでの白を基調としたような服装から一転、
親衛隊のガードの陰で早着替えを成し遂げいかにも悪役めいたファッションで法廷に臨む。*1


そして、彼女は第5話後半に起こる「インガ大臣殺人事件」、
23年前に起きた「アマラ暗殺事件」の真犯人‥‥
つまり、『逆転裁判6』のラスボスである。
ちなみに『逆転裁判』シリーズでは初の女性ラスボスとなる(外伝作は除く)。
また、狩魔冥以来の女性のライバル検事となる。


彼女こそ23年前にアマラの私邸に火を放ち、
王泥喜法介の実の父親・王泥喜奏介を殺害し、全ての罪をドゥルクに擦り付けた元凶だった。
物語がすすむにつれ、
彼女が冷酷無慈悲なクライン王国の独裁者であり民衆を「愚民」と見下し、
目的のためなら身内を殺すことも躊躇わない冷徹な心の持ち主であることが明らかにされていく。
女王になる為に実の姉さえ陥れた自己顕示欲の塊であり、
《弁護罪》を施行したのも偏に冤罪の恐怖による独裁の為。

ただし、アマラを殺すつもりは最初からなく、
ドゥルクに罪を被せる事で命を狙われているとアマラに吹き込み、
危険を避けるために表舞台から退場させ安全な場所に身を隠すという名目で、
ガランは女王の座を乗っ取ったのである。
アマラは、まさか実の妹がそんな悪辣な真似を仕出かしているとは夢にも思わず、
ガランに従って“軟禁”同然の隠遁生活を送っていたが、
ドゥルクはアマラが生きている事を知り、王宮に忍び込んでアマラを救出した。
アマラはドゥルクが犯人ではない事を知ったが、
逃亡生活の中でドゥルクとの間にもうけていた娘ごと王宮に連れ戻されてしまい、
娘を人質に取られた事で、アマラはガランに従わざるを得なくなってしまった。
同様の手口で、ガランはナユタにも服従を迫り、
母と妹の身の安全のためにナユタはガランに従っていた。*2


後に、実権を握られている事に不満を持っていたインガが“クーデター”を企てていたことを知り、夫である彼を殺害*3
インガの“相貌失認(そうぼうしつにん)”を利用してドゥルクに罪を着せ、《革命》の気運を全て消し去る事を目論む。
その為にアマラに命じて“事後工作”を行わせ、
実の父を裁く事を躊躇うナユタに代わって自ら検事を担当し、
女王の権力を悪用して、裁判中に《法律を書き換える》というオキテ破りの戦法で王泥喜たちを苦しめる。


しかし、王泥喜と成歩堂の手によって、アマラが今も生きている事を暴かれてしまう。
証言台に立ったアマラは「自分がインガを殺した」とウソの自供を行ったが、
ボクトが隠し撮りしていたある写真によって、逆にガランの“アリバイ”が崩れてしまった。
それに対し、ガランは親衛隊に命じてアマラを銃撃し、それを“親衛隊の独断”として処理。
更に、ナユタにウソの自供をさせる事で強引に審理を終わらせようとする。
しかし、23年前に奏介を殺害した事が仇となり、
《御魂の託宣》によって23年前の暗殺事件の犯行まで暴かれてしまった。


ガランこそが自分達家族をズタズタに引き裂いた元凶だったことを知ったナユタは、“自白”を撤回して離反。
だが、犯罪者として告発されそうになったガランは《弁護罪》を持ち出し、
ウソの自白をした‥‥つまり、“真犯人のために偽証をした”ナユタも同罪になると主張。
それでも自分を告発するというのであればとガランはさらに、
「王の地位を脅かす者はいかなる理由があれど、女王の命により、その場で即刻、死刑を執行できるものとする」という新たな《法》を定める。
王泥喜たちは親衛隊に銃を向けられ、一歩間違えれば即処刑されるという、最悪の状態に追いつめられてしまった。


しかし、死がちらつくその中で、
王泥喜は成歩堂から教わっていた《弁護士はピンチのときほどふてぶてしく笑う》を実践。
ガランが「王の名のもとに《弁護罪》を定め、処刑を執行する」のであれば、
最後の手段はただ1つ。
ガランをその場で《王》の座から引きずり下ろし、彼女が定めたすべての《法》を無効にするしかない。
尋問すら許されない絶体絶命の中、王泥喜は最後の逆転の手段を探った。


そして、王泥喜はアマラに《霊媒の儀》を代行させていた事、
《王》であり“霊力”を持っているはずのガランが、絶大な霊力を授かれるとされる《始祖の宝玉》に強い関心を寄せていた事から、
ガランはじつは霊媒が出来ない」という致命的な事実を、法廷内で暴露する。


霊媒ができないガランは、アマラを“殺さなかった”のではなく、
どうあっても“殺せなかった”のである。
もし、アマラがいなくなれば、クライン王国の権勢を保つ《霊媒》の力は失われる事になり、
自分も《王》の座に居座りつづけることはできなくなってしまう。
ガランの女王の座への執着心は、霊力を持つ姉への劣等感と、権力への執着から来るものであり、
それは、旧作に登場していた“あの女性”に近しいものであった(ただしこの人物は居住地の閉鎖的な環境故に生き方を選び難い部分があるため心情を酌むこともできなくはないが、ガランは後述のことから同情の余地は皆無である)。


しかし、王泥喜の主張に「不敬な言いがかりだ」と反論しまだ抵抗するガランに、
王泥喜は、「今すぐこの場で霊媒ができることを証明してみせろ」と、彼女がずっと求めていたある証拠品をつきつけて、トドメを刺す。
ガランは、衆目の前で《霊媒》をせざるを得ない状況に追い込まれ、とうとう後に引けなくなってしまった。


「いいだろう。霊媒くらいやってやろうではないか」

「とくと見るがいい。偉大なる霊媒の力をっ!」


「おおおおおおおおおおお!」
「ガラン様ぁああああ!」


「冥界におわします偉大なる始祖の御魂よ…」

「宝玉に秘められし密約に従いて…今こそ現世に蘇りたまえ」


「おお…」
く、くるぞ…


「ぬううううううううう」

「……………………………………………………………………………………………………………………ッ!」


「どうしたんだ?」
調子が悪いのかな?


「ぬうううううううう」

「はあああああああああ…」

「始祖の御魂よ!さあっ!我が身に舞い降りよ!」

「この身に……!今こそ……!」

「舞い降りよっ!来いッ!お願いだからっ!」

「はあああああぁぁあ……えいいいいいいいいいいいやあああああッ!」



しーーーーーーーーーーーーん……


‥‥‥‥こうして、ガランは持つべき力を持たずしてその玉座に座して、
20年以上もの間クライン王国の国民をあざむいていたことが露見した。
その結果、霊力に心酔していた親衛隊からは銃を向けられ、
なおも必死の弁明を見せたり、気合を入れてお経を唱えたりして頑張ってみたものの…


「悟らぬ穢れた魂よ、始祖様の顔も三度まで!」

「魂負けども始祖様の顔、三度も穢したまま!」


「き……………た………」


奇跡が起こるわけでもなく、ついには精神が崩壊し白目をむいて気絶。
彼女は法廷の水鏡の上で大の字になって倒れた。*4


ガラン逮捕後の報告によれば、プレッシャーで頭をやられてしまったらしく、
自分のことを始祖だと思い込むようになってしまったらしい。


そして、ガランが玉座から落とされたことによって、
彼女が“王の名の元に定めた全ての法”は無効となり、
ドゥルクの悲願であった《革命》は、ついに成し遂げられたのであった。


■余談

開発スタッフによると、初期のころから今作のラスボスは検事にしたいと決めていたそうで、
今作の物語が女性に焦点を当てたものでもあるため、女性の検事にしたという。
クライン王国の女王という“花”に擬態し、霊媒という“”をしばる存在として、
クモ”のイメージでデザインされたとのこと。


クライマックスシーンのシンエイタイ達の挙動は、
ネット上で有名?な、某外人の四コマ的な人気を獲得することに成功した模様。
ガランの霊媒に期待しての拍手や、上述の会話で無自覚に集団でプレッシャーを掛けていく様子のほか、
王泥喜の終盤の指差しアクションを受けて、まとめて吹っ飛んで行く様はシュールである。


ちなみに、第5話の序盤に登場する春美によると、
霊媒の術を会得するには《血筋と才能》《厳しい修行》が欠かせないとのこと。
また、『逆転裁判2』の第2話「再会、そして逆転」では、
「霊力はふつうは長女のほうが強い」という描写がある。
ガランがなぜ《霊媒》できなかったのかについては描写されていないが、
なんにせよ《霊媒》はそう簡単に会得できる能力ではないようだ。


『強い霊力を持つ姉と霊力を全く持たない妹』という構図はクライン王国の始祖とその妹である鳥姫と全く同じであった。
ただ、鳥姫は王となった姉に対して、国の影となり支える道を選んだ結果、始祖と並ぶ伝説の人物としてクライン王国の伝承に名を残すこととなった。
ガランも鳥姫と形は異なり多少の後ろ暗さこそあれど、「検事」として腕を振るい、一定の評価を得ていたわけであり、検事として姉アマラを支える道を選んでいれば、国民から慕われて歴史にその名を残したかもしれないが権力欲に取り憑かれた結果、悪い意味で名を残すようになってしまった。

霊力の差による姉妹同士の亀裂による犯行と言うのは奇しくも日本の綾里家と同じことが起きているが、あちらとは姉と妹の立場が見事に逆転している。

逆転裁判に出て来る兄弟姉妹の中では綾里姉妹を除けば何かと兄や姉の方が性格が悪いケースが多かったりするので、妹側が闇堕ちしたケースは珍しい。


「王の地位を脅かす項目はいかなる理由があれど、冥殿の命により、その場で追記、修正を執行できるものとする」

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最終更新:2024年04月14日 14:51

*1 アメコミのヴィランだとか、『ストⅡ』シリーズのローズだとか言われたりするレベルである。また、髪の分かれ方と赤いアクセントの装飾の都合で、頭部が蜘蛛に見えるという解釈も有力である。

*2 エピソード選択画面で表示される第5話のイメージイラストは、遠目に見ると「蜘蛛の巣にかけられたようなナユタ」という構図に見える。おそらくは、これの暗喩だろう。

*3 シリーズ経験者でなければ理解がおぼつかない、そんな勢いのトリックに挑むこととなる。

*4 ボクトいわく、この水鏡に無闇に入ると罰が当たるとのこと。ガランはそれを蜘蛛の巣にかかった獲物のごとく最後に体現したのであった。