だいらんど

登録日:2016/06/14 (火) 16:00:00
更新日:2023/04/13 Thu 19:20:27
所要時間:約 6 分で読めます





ぼくは「だいらんど」が大好きだ! でも…ここにいちゃいけない気がする……こんなに好きなのに……

そうだ…ぼくはここにいちゃいけないんだ………だって……







だいらんど(DIELAND)』は、『ヤングキングアワーズ』にて1998年6月号から1999年9月号にかけて連載された漫画作品。作者はがぁさん。
作中では『オズの魔法使い』『青い鳥』『不思議の国のアリス』といった童話のパロディが頻繁に登場している。
単行本は大都社のハードコミックスから全1巻で出版されたが、相当古い作品であり知名度も低いのでほぼ絶版状態。
現在では実物を手にするのは難しいが、『マンガ図書館Z』において無料で閲覧可能なのでよければこの機会にどうぞ。





◆あらすじ

36歳を迎えた中年ヤクザ・正雄。彼はそんな歳でありながらそれまで何も積み上げておらず、冴えない人生を送っていた。
彼の上司はそんな正雄に思うところがあったようで組の敵対勢力の要人暗殺を正雄に命じ、成功すれば幹部入り、失敗すればヤクザをやめてしまえと発破をかける。
しかし正雄は任務に失敗し、夜の街を独り逃走。追いつかれたヤクザから囲まれ撃つか撃たれるかという最中、彼は異世界「だいらんど」に迷い込んだ。





◆だいらんど

「昼の国」「大人の国」「子供の国」「動物の国」「海の国」「夜の国」による6つの国から成っており、国を移動するためには黄色いレンガ道を通りパスポートを手にする必要がある。パスポートを持たずに国外に出ようとするか、例えば順路を外れて「昼の国」からいきなり「夜の国」に進めば「昼の国」へ強制送還させられる。誰でもスタート地点は「昼の国」だが、迷い込んだ人間が国に馴染めなかった場合は他の国へ居を移せる。
またこれらの世界はそれぞれ平面であり、次の国に進むためには世界の端から足をつけることで移動する。切り立った端から飛んでも、次の国の重力に引っ張られて軽く落ちる程度で済む。
旅人が国に馴染んだ時は世界への違和感が完全に消失し、画風も同じ住人の1人として取り込まれる。その際にはそれまでの記憶も失ってしまう。

「だいらんど」に人間が訪れるのは、「夜の国」に住む夜の王様の仕業であるらしいが…?



  • 昼の国
絵に描いたような平和な世界で、太陽が沈まない。太陽から木まであらゆる物体に顔があり陽気に喋る。
暴力は存在せず、外から持ち込まれても意味を為さない(銃を撃ち込まれても首がくるくる回るだけで済むなど。住人の造形はこの国が最もデフォルメが効いているので表現は柔らか)。


  • 大人の国
住人は昼の国でパスポートを得た旅人を王と定め、規律を求める。


  • 子供の国
子供しかいない国であり、童心に帰って友達と遊べる。
そして住人となった子供には優しいお母さんが迎えに来てくれる。


  • 動物の国
住人は動物。旅人は尻尾をつけて動物に扮しなければオリに入れられてしまう。
動物と言っても思考はほとんど人間で、ビジュアルも着ぐるみを着た人間といった感じ。尻尾を取られると人間に戻る。


  • 海の国
水中の国。住人は「海のお母さん」なる存在に包まれ、安らかな気持ちになれる。
彼女は単純に子供を甘やかすだけではなく、真に子供のことを案じている。


  • 夜の国
入国するとすぐさま骸骨の兵士と「夜の王様」との戦いが始まり、倒すことで現実へ戻れる。
その世界では本当の現実では絶対に手に入らない、リアリティを残した上での自分の望んだ生活を送ることが可能。もしそれが夢であると自覚し目覚めた場合、一面に広がっているのは眠り続ける人々の姿。






◆登場人物

正雄
この物語の主人公で、ひょんなことから「だいらんど」に迷い込んだ中年ヤクザ。「夜の王様」と会って現実へ戻るため「夜の国」を目指すことに。ヤクザにはまるで向いていない性格だが、かといって真面目に生きられる人間でもない。童話の知識が豊富。メリーアン姫のことは当初鬱陶しがっていたが、旅を続けると同時に愛情を抱くように(「夜の国」での描写が一番わかりやすい)。
実は「海のお母さん」は彼が子供の頃に書いた童話を元にしたものであり、現実における彼の母親は正雄を愛してはいなかった。ラストでは本当の王子様となった。

メリーアン姫
「昼の国」のひまわり城の王女。22歳。巨大ハンバーガーに押し潰されていたところを正に助けられて以降、正に懐き始め王様の取りなしで彼の妃になった。正雄が「昼の国」を離れる際には彼女もついていくことに。世界を渡るごとに人間味を増していき…?

ルーシー
「大人の国」の大統領補佐官を務めていた女性。正雄を気に入り、その後もメリーアン姫と同じく帯同する。実は一度「夜の国」まで辿りつき、夜の王様と会っている人間の1人。ラストは彼女のアシストが無ければあの結末には辿りつけなかった。

ジャック
夜の王様の忠実な家来を名乗る、下半身のないピエロの人形。各世界の紹介をしつつ、「だいらんど」に迷い込んだ者の望みを叶える役目を担う。

夜の王様
「夜の国」に住み、だいらんど全体を司る存在。彼に会えば元の世界へ帰れるとされている。



以下ネタバレ
































◆真相

「だいらんど」に招かれる人間は死の数秒前で時間を止められ、意識だけを「だいらんど」に飛ばされた存在。
即ち彼らは「だいらんど」から出れば時間が動き出し、避けられない死を迎える。
メリーアン姫の場合は現実でもお姫様で、パレードで馬車に乗っていたことが最後の記憶であり死んでしまったことは確かだが、何が死因だったかは彼女も覚えていない。

「夜の王様」の正体もジャック本人であり、彼は六面でできた「だいらんど」の内側で世界を運営していた管理者。
「Jack in the box」…つまり「だいらんど」は巨大なびっくり箱で、死(die)の国であると同時にサイコロ(dice)の国だったのだ。


ボクは…神様じゃないから…現実世界をいじることは許されていないんだ…


だから「だいらんど」を作ったんだ ここならボクの自由にできるからね

そしてみんなを連れてきた……喜んでくれると思ったんだ! 楽しく暮らしてくれると……


記憶を奪われ…この世界に取り込まれてな!


しかたがなかったんだよ! ボクだってほんとはこんなことしたくないんだ!

でも……連れてきた人たちは…みんなひどく疲れてるんだよ。いくらゆっくり休める国を作ってあげても…はじめは楽しんでくれてても……だめなんだ! ひとつひとつ国をたどって…深い方へ深い方へ…そしてここまで来ていうんだ……イヤな思い出しかないはずなのに…


現実へ……帰りたいと……


………どうして…どうしてみんな行っちゃうの? そんなに「だいらんど」がキライ? ボクのことがキライ? わからないよボク……どうして……


おまえはよくやっているさ! 実をいやあ俺も結構楽しませてもらったよ! ただな……


遊んでばかりいると……大人は不安になっちまうのさ!





そして正雄、メリーアン姫、ルーシーの3人は現実世界に繋がる扉の前へ立つが、ジャックは最後に1つ忠告する。
「君たちが帰るのはそれぞれの『自分の時間』。当然だけどみんな同じ場所と時間に出られるわけじゃないんだよ」

正雄との別れに動揺するメリーアン姫へ、ジャックは忘れようとしなければ思い出せる程度の記憶消去をかける。
それを確認した正雄は必ず連れて行くと約束した彼女を残し、1人現実の修羅場へ戻るが……




2人の物語の結末は、是非あなたの目で直接確かめてほしい。













追記・修正は、未来に目を向けてからお願いします。

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最終更新:2023年04月13日 19:20