モンテ・クリスト伯

登録日:2016/04/09 Sat 12:09:09
更新日:2023/11/29 Wed 16:00:50
所要時間:約 17 分で読めます




モンテ・クリスト伯(Le comte de Monte-Cristo)



大デュマことアレクサンドル・デュマ・ペールの長編小説。1844年から1846年にかけて書かれた。
『三銃士』と並ぶ大デュマの代表作であり、シェイクスピアの『ハムレット』と「世界一有名な復讐劇」の名を二分する名著。

イギリスに出没する這い寄る混沌さんも唯一の愛読書だと称している。


日本では明治時代に黒岩涙香が訳した邦題『史外史伝 巌窟王』から『巌窟王』の名で有名。
『巌窟王』では登場人物等の名前が和風にアレンジされている(「エドモン・ダンテス」→「團友太郎」など)。

2018年4月には『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』のタイトルでTVドラマ化。
こちらも登場人物と舞台が2003~2017年の現代日本にアレンジされている。
放送後、主要キャストの不祥事により再放送は絶望的になっているため、見たい方には円盤を勧める。


後世に残した影響力は計り知れず、世界中でこの作品をオマージュ、あるいはモチーフにしたものは枚挙に暇がない。
『吉田岩窟王事件』のように、冤罪の代名詞として使われることもある。


舞台設定が現実世界であること、劇中に登場するファリア神父が実在していたことなどから、
完全なフィクションではなく、実話もしくは実在の人物がモチーフなのではないかと推測されている。


現在ダンテスのモデルとして有力視されているのは、19世紀末のフランスで靴職人をしていたピエール・ピコーという人物で、
裕福な女性と婚約していたが、それを妬んだ友人が自身の店の客と共謀し、ピコーは彼にイギリスのスパイだという虚偽の告発をされ、
結婚式当日に逮捕され、7年間も投獄された上、婚約者も嘘の告発をした友人に奪われてしまった。

投獄中に知り合った裕福な神父*1から、彼の死の間際にミラノの隠し財産の在処を教えられたピコーは、
釈放後にその財宝を手に入れ、件の友人の陰謀を知りつつ、見て見ぬふりをしたもう一人の友人に別人を装って接触。
彼から7年前の陰謀と、自身を陥れた者たちの現状を聞き出すと、元凶である友人の店に店員として潜り込み、復讐を開始。
自分を陥れた人物やその関係者を、時には直接手を下し、時には精神的ショックを与えるなどして間接的に殺したり、陥れたりしていった…という、
関係する人物含めてほとんど巌窟王そっくりの人生を送った*2*3とされる。



あらすじ

1815年。マルセイユの若くして優秀な航海士エドモン・ダンテスは船主のモレル氏から次の船長に抜擢され、恋人のメルセデスとも婚約が決まるなど人生の絶頂にあった。
しかし彼の幸福を妬んだ会計士のダングラール、隣人のカドルッス、メルセデスの従兄フェルナンにより、嘘の告発をされてしまう。
さらには担当した検事代理のヴィルフォールが、ダンテスが亡き船長から預かったナポレオン軍の上陸を知らせる手紙が父ノワルティエ宛てであると知るや、
手紙を燃やしてダンテスを政治犯を収容するシャトー・ディフに投獄させてしまう。

自分がなぜ投獄されたのかもわからず、自殺しようとさえしたダンテスだったが、偶然にも脱獄を企てていたファリア神父と出逢う。
博識であり不断の努力のひとであったファリア神父からダンテスは多くのことを教わりつつともに脱獄を計画。その中で、ダンテスの身の上を聞いた神父は四人がダンテスを陥れたのではと推測する。

しかし計画の途中でファリア神父は持病の発作で亡くなってしまう。悲しみに暮れるダンテスだがその死体と入れ替わることで脱獄を図る。
土に埋めるのではなく海に投げ入れるという埋葬法で死にかけるもののなんとか脱獄。近くを通った船に救助された時、ダンテスは自分が丸14年も投獄されていたことを知る。

ファリア神父から聞かされていたモンテ・クリスト島の財宝を探し出したダンテスは、その莫大な資金で恩人たちに報恩するとともに、
ファリア神父の推測が正しかったことを調べ上げ、復讐の計画をさらに9年かけて準備し、モンテ・クリスト伯を名乗るようになる。

ローマで出会ったフランツとアルベールという二人の青年の伝手でパリの社交界に現れたモンテ・クリスト伯は、その財力と博識さ、人柄的な魅力で時の人となる。
そうして標的に近づき、時に隠されていた過去を暴露し、時に他の者の悪意を煽ることで復讐を成し遂げていく。

しかし、その過程で罪のない幼い子供を巻き込み死においやってしまったことで最後の一人の命は助け、
復讐を完遂したダンテスは、モレル氏の息子マクシミリヤンと恋人でヴィルフォールの娘ヴァランティーヌにパリでの財を分け与え、自分に愛を告白したエデとともに旅立って行った。



登場人物

◆モンテ・クリスト伯とその協力者

◎エドモン・ダンテス/モンテ・クリスト伯
この復讐劇における主人公。マルセイユ出身。
実直で才気にあふれる好青年で、船主のモレル氏から19歳にして乗船していたファラオン号の次期船長の座を約束され、恋人のメルセデスとも婚約が決まると人生の絶頂であった。

しかし、航海中に亡くなった船長から受けた遺言によりエルバ島で革命派のノワルティエという人物宛ての手紙を預かったことで、彼の幸福を妬む三人の男から匿名の告発を受けてしまう。
さらに運悪く、そのノワルティエが担当した検事代理の父であったことから口封じのためにシャトー・ディフに幽閉されてしまい、絶望から餓死自殺すら考えるようになる。

偶然にも脱獄のための坑道を掘っていたファリア神父に気付き、自分からも穴を掘って出会い、様々な知識や不撓不屈の精神を教授されていく。
一緒に脱獄を誓っていたが、ファリア神父は病死。その直前にモンテ・クリスト島の財宝を託され、その死体と入れ替わることで脱獄を成し遂げる。

脱獄後、すぐにモンテ・クリスト島に上陸する機会を得て怪我をしたふりをして独り島に残り探索。現在の日本円にして60億円に相当する宝石や金貨を発見する。

財宝を手に入れてからは自分が投獄されていた14年間の知人の動向を調べ、父が飢え死にしたこと、自分を陥れた者がいることを確認し、破産寸前だったモレル一家を救ってからは復讐者になることを決意する。

ファリア神父の授業によりフランス語以外にも英語やイタリア語、ギリシャ語やアラビア語に堪能で、剣や銃の扱いにも長け、多くの分野に豊富な知識を有し、
人情にも厚い魅力的な紳士モンテ・クリスト伯を名乗るようになり、パリの社交界ではデビューしてすぐに話題の人物になる。
一方でモンテ・クリスト島を根城にする海賊やローマ周辺の山賊を手懐け、電信士に袖の下を渡して嘘の情報を送信させるなど復讐のためならば社会通念に反することすら平然と行う。
また、想定外の出来事には狼狽するなど人間的な部分も少なからず残っている。

『自分の復讐は神の思し召し』という信念を持っていたが、ヴィルフォールの息子エドゥワールを巻き込んでしまってからは復讐の使徒としての領分を越えてしまったと後悔し、最後に残ったダングラールの命だけは助けた。


◎エデ
モンテ・クリスト伯の奴隷の一人。
ギリシャのジャニナ太守アリ・パシャの娘。フェルナンの裏切りによって父を殺され、母を憤死に追い込まれ、自身は奴隷商に売られた後モンテ・クリスト伯に買われる。
モルセール伯爵の醜聞騒ぎの際には、当事者として彼の悪行を暴露した。

敬虔なキリスト教徒(アルバニア正教)であり、また情深く聡明な女性。歳の離れたモンテ・クリスト伯を愛しており、その悲しみを癒し最後にはその想いを告白した。


◎ベルツッチオ
モンテ・クリスト伯の家令のコルシカ人で元看護士・密輸業者。
ヴィルフォールに恨みを抱いており*4、復讐のために刺殺したつもりでいた。
その際埋められていた子供を掘り返し、一度は孤児院に預けるが姉に相談した結果その子供を引き取り育てた。
しかし悪童に育ってしまい、それらのことをブゾーニ司祭に話した後、モンテ・クリスト伯のことを紹介された。


◎アリ
モンテ・クリスト伯の奴隷の一人。
聾唖者の黒人で、身振り手振りで意志疎通を行う。
かなり多芸であり、もてなしの準備から暴れ馬を投げ縄で止めるまで何でもござれ。


◎ルイジ・ヴァンパ
ローマ周辺を根城にする山賊の頭目。
元は羊飼いで、山賊にして知的な読書家。
モンテ・クリスト伯の庇護を受けており、彼の関係者には手を出さないと約束させられていたが友人になったアルベールを誘拐してしまう。
また、借金から夜逃げしたダングラールを捕え、食事代に大金を吹っかけ持ち逃げした金を巻き上げるのに助力した。


◎ブゾーニ司祭
モンテ・クリスト伯の友人の一人。
イタリア訛りで話す禿頭の司祭。
ベルツッチオからヴィルフォールの隠し子の事を聞き出し、ベネデットをアンドレア・カヴァルカンティとして伯爵に紹介した。
またカドルッスが困窮の中でダンテスへの所業を止められなかったことを悔いていると知って遺産のダイヤモンドを渡す。

その正体は変装したモンテ・クリスト伯。


◎ウィルモア卿
モンテ・クリスト伯の友人の一人。
金髪で髭をたくわえた英国紳士。
本人曰くモンテ・クリスト伯との仲はあまりよくないらしい。

その正体は変装したモンテ・クリスト伯。



◆モルセール伯爵一家

◎フェルナン・モンデゴ/モルセール伯爵
作中一の卑怯者
メルセデスの従兄であり、彼女に横恋慕していたが、メルセデスはダンテスに一途だったため落胆していたところ、カドルッスの紹介でダングラールと出会い、彼が書いた密告状を提出してしまう。
その後は陸軍に入り、裏切りに次ぐ裏切りで中将にまで伸し上がり、モルセール伯爵の肩書を得る。
ダンテスがいなくなり悲嘆にくれるメルセデスの心に付け入り彼女と結婚。間に一人息子のアルベールを授かった。

しかしギリシャ独立戦争で軍事顧問をしていたギリシャを裏切ってトルコ側に寝返ったことが新聞に取りざたされ、エデの証言で完全に失脚。
また、その件でモンテ・クリスト伯に決闘を申し込んだはずのアルベールがそれを取り下げたと知り、モンテ・クリスト伯の屋敷に乗り込んだところでその正体を知る。
かつて自分がダンテスに行った悪行を知った妻と息子に完全に愛想を尽かされ、拳銃で頭を撃ちぬき自殺した。

去られた際に激しく絶望したことからも分かる通り、妻子に対してはまともに愛情を注いでおり、少なくとも家庭内ではよき父親だったようだが、いかんせんその家庭も極めて歪んだ形で手に入れたものなので、擁護の余地など全く無い。


◎メルセデス/モルセール伯爵夫人
ダンテスの恋人でカタルーニャ系イタリア人。
奥ゆかしく聡明、それでいて美しい少女であり、ダンテスが行方不明になってからも彼に操を立てていた。
しかし自分を支えてくれていた従兄も従軍して孤独になり、その悲しみに付け込まれて帰郷したフェルナンと結婚した。

長年の投獄によりすっかり姿の変わったダンテスの正体に一目で気付いた唯一の人物。
一人息子のアルベールを決闘で殺さないで欲しいと頼み込み、その時に夫の悪行を知り息子に彼の行いには正当な権利があると説いて決闘をやめさせた。
その後は全ての財産を貧しい人に寄付し、旅立った息子を待ちながら新しい人生を送ることにした。


◎アルベール・ド・モルセール
フェルナンとメルセデスの一人息子。
親友のフランツとローマの謝肉祭を見物に行き、同じホテルに滞在していたモンテ・クリスト伯と知り合う。
その後ルイジ・ヴァンパの一味に捕まるが、座敷牢で鼾を立てて寝るなど豪胆な性格の青年。

命の恩人としてモンテ・クリスト伯をパリの社交界に紹介したが、父の醜聞を流布したとして決闘を申し込む。
しかし、それがかつてダンテスを陥れたことへの復讐だと知り、モルセール伯爵の息子ではなくフェルナン・モンデゴの息子として恥を謝罪。
父を見捨て、母と二人で屋敷を後にし、アルジェリア陸軍に従軍して一人の男として身を立てるため旅立っていった。

余談だがアニメ『巌窟王』では主人公に抜擢されている。



◆ダングラール男爵一家

◎ダングラール
作中一のクズ
ファラオン号の会計士。裏で不正に帳簿を弄ったりなどもとから後ろ暗い人物。
若くして船長に抜擢されたダンテスを妬み、カドルッスの紹介で出会ったフェルナンに『左手で筆跡を偽装した密告状』を見せてそれを提出するよう仕向けた。
その後はスペインで銀行を経営し、一財を築いて男爵位を得る。

モンテ・クリスト伯の手によって経営が悪化していき、ただでさえ金の亡者のような性格が深刻化。
娘のユージェニーをアンドレア・カヴァルカンティと結婚させ、結納金で再起を図ろうとするがアンドレアの正体が人殺しのベネデットだと婚約披露宴で発覚。

どさくさで娘に家出され、最後の預金もモンテ・クリスト伯に引き出されてついに破産。妻を捨てて夜逃げしモンテ・クリスト伯の受領書と引き換えに得た500万フランで新たな人生を送ろうと考える。
しかしルイジ・ヴァンパに捕まり、法外な食事代を拒否するも飢えには敵わず払い続け、
それでも最後に残った5万フランだけは絶対に死守しようと苦しんだ末に、自分の悪行を後悔したところで正体を明かしたダンテスに解放された。

金のために娘を政略結婚させようとしたり窮地に陥ると妻を見捨てて逃げるなど、ダンテスを陥れた四人の中では最も自己中心的な人物にもかかわらず、唯一発狂もせず生存したが、牢の筵さえ喰らうほどの飢えに苦しんだ後は髪が真っ白になるほど衰弱していた。


◎エルミーヌ/ダングラール男爵夫人
ダングラールの妻。
投機の才能があり、友人のリュシアン・ドブレーとともに小遣いで稼いでいた。
ダングラールと結婚する前はナルゴンヌ伯爵夫人。その頃にヴィルフォールと浮気しひとりの子供を産むが、生まれてすぐに死んだと聞かされていた。

銀行が破産したダングラールに捨てられ、ドブレーから投機の利益を受け取ってからは人目を避けての生活を余儀なくされる。
傍聴人として出席したベネデットの裁判でベネデットが死んだと聞かされていた子供だと知り、その場で卒倒した。


◎ユージェニー
ダングラールの一人娘。
自立心の強い女性で、親の都合で決められた婚約者のアルベールにもお互い興味がない。
そのためアンドレアに御執心なふりをするも、今度はそのアンドレアと婚約させられてしまう。

婚約披露宴でアンドレアが人殺しだということが発覚し、その騒ぎに紛れて親友のルイーズ・ダルミイーとともに家出した。



◆ヴィルフォール一族

◎ジェラール・ド・ヴィルフォール
作中一の外道
マルセイユの検事代理であり王党派。父親のノワルティエとはそりがあわない。

自身の婚約披露宴中に呼び出され、連行されてきたダンテスを尋問。
当初は訳も分からず利用されただけのダンテスに同情し*5、念書を書かせた上での自宅謹慎で済まそうとしたものの、
預かっていた手紙がナポレオン軍の上陸を示すものであり、尚且つ宛先が自身の父親であったことから、この存在が自身の破滅に繋がるとして焼却処分。
さらにダンテスをシャトー・ディフに投獄し生涯幽閉によって口封じしようとした。

その後、検事総長まで伸し上がるが前妻の両親であるサン・メラン侯爵夫妻、使用人のバロワ、そして娘と身内が次々と死亡。
それら全てが毒殺であり、犯人が妻だと見抜き、告発されて家名に傷をつける前に自殺しろと命じる。

その直後に行われたベネデットの裁判でかつて仮死状態を死産と勘違いして生き埋めにし、その後掘り返しても行方不明だった不義の子がベネデットだということが暴露され、事実上失脚。
自分の罪を棚上げして妻を責めたことを後悔し大急ぎで屋敷に戻るも、すでに妻は息子と共に自殺していた。
ちょうど居合わせたブゾーニ司祭から正体を知らされるも逆上して息子の死体を見せつけ、蘇生しようとダンテスが引きこもった間に精神的な限界に達し発狂。
鍬を手に埋めた息子を見つけ出そうと延々庭を掘り返す狂人に成り果てた。

やった事は悪辣だが、娘のヴァランティーヌに殺人の嫌疑が掛かった時には娘の善性を信じて徹底擁護に回る、娘が死んだと思い込んだ際にはその恋人のマクシミリヤンと一緒になって嘆き悲しみ、
自身がベルツッチオに刺されて瀕死の重傷を負わされた際にもダンテスやベルツッチオの義姉への仕打ちの天罰と受け入れる等、
ダングラールやフェルナンと比べるとまだしも良心的な一面もあった。


◎エロイーズ/ヴィルフォール夫人
ヴィルフォールの後妻。
前妻より爵位の低い家の出のため、祖父母やノワルティエから莫大な遺産を受け取ることになる義娘のヴァランティーヌに嫉妬し、反動から息子のエドゥワールを溺愛していた。

モンテ・クリスト伯にそれとなく唆され、渡されたかつてファリア神父が使っていた薬を利用してサン・メラン侯爵夫妻やノワルティエ、そしてヴァランティーヌを毒殺して、
その遺産がエドゥワールに転がり込むようにと企んでいた。
しかしその計画が発覚し、夫に問い詰められたことで「良き母は子を残しては逝かないものです」と書置きを残して息子と心中した。


◎ヴァランティーヌ
ヴィルフォールと前妻の娘。
身体の自由を失った祖父を甲斐甲斐しく世話する心優しい女性であり、マクシミリヤンとは恋人同士。性格の良い美人なので、父と両祖父、外祖母から溺愛されている。

継母に毒殺されかけるもそれを見抜いていた内祖父が薬を入れた水を少しずつ飲ませていたことで耐性を付けており、一命を取り留める。
その後別の毒薬で殺されそうになるが、マクシミリヤンの恋人と知って見殺しにする予定を変更したモンテ・クリスト伯の薬で仮死状態になり殺意から逃れる。

一ヶ月後にモンテ・クリスト島でマクシミリヤンと再会し、モンテ・クリスト伯とエデの旅立ちを見送った。


◎ノワルティエ・ド・ヴィルフォール
ヴィルフォールの父親。
病気のため全身が麻痺して身動きがとれないが視線によって意志疎通する術を身に着けている。

かつてはナポレオンの信奉者で、フランツの父親を決闘により殺害している腕利きの剣士。
ヴァランティーヌを可愛がっており、彼女がフランツとの望まぬ婚約をさせられそうになった際にはその事実を暴露して解消させた。


◎エドゥワール
ヴィルフォールと後妻の息子でヴァランティーヌとは腹違いの姉弟。
母親が溺愛した結果、自分勝手な性格に育ってしまった。

なんの罪もない子供だったが母親の自殺に巻き込まれてしまい、そのことがダンテスの復讐にある変化を起こす。



◆その他

◎ファリア神父
シャトー・ディフに投獄されていた老人。
かつて秘書として仕えていたチェーザレ・スパダが遺したあぶり出しの遺書を発見し、慌てて隠し財産を探しにいこうとしたため政治犯と勘違いされ投獄されてしまった。
牢獄で得られるものを使って脱獄を図るも計算間違いから失敗し、途中で出会ったダンテスに自分の知識を伝授する。
持病を持っており、二度目の発作から立ち直った後は三度目に耐えられないと悟ってダンテスにモンテ・クリスト島の財宝のありかを教えた。


◎老ダンテス
ダンテスの父。
息子が投獄されてからはみじめなほどに老衰してしまい、メルセデスやモレル氏に世話をされながら息子に再会することもなく飢え死にした。
モレル氏の手で簡素な木製の墓標は建てられたが、風で倒れてしまいそのまま墓守の薪に使われダンテスは父親の弔いすらできなくなってしまった。

住居には後に別の一家が引っ越してきたが、ダンテスは建物ごと買い取り他の部屋は自由に使っていいがここだけは残してほしいと言い、後にモレル商会の借金返済やメルセデスとの最後の会話の舞台となった。


◎ガスパール・カドルッス
作中一の小物
ダンテスの隣人で酒浸りの仕立て屋。悪人でこそないものの小心者で日和見主義。

ダングラールとフェルナンの悪行を止められなかったことを悔い、没落して郊外で小さな旅籠を営んでいることも当然だと思っていたがブゾーニ司祭からダンテスの遺品としてダイヤモンドを受け取る。
しかし欲目にくらんだ妻に唆され買取にきて足元を見た宝石商を殺害。返り討ちに遭った妻は死にベネデットを探していた憲兵に捕まって投獄される。

その後、ウィルモア卿の手引きでベネデットとともに脱獄したが、アンドレア・カヴァルカンティと名乗るベネデットを強請るようになる。
モンテ・クリスト伯を殺せばその遺産がベネデットに転がり込むと唆され、屋敷に忍び込むがブゾーニ司祭に遭遇し思いとどまる。
しかし屋敷を出た直後に口封じを狙うベネデットに刺され、瀕死の重傷を負いながらブゾーニ司祭に正体を教えられ、数奇な神の思惑に驚愕して息を引き取った。


◎ベネデット/アンドレア・カヴァルカンティ
かつてヴィルフォールとエルミーヌの間に生まれた不義の子。ユージェニーとは腹違いの兄妹にあたる。
仮死状態で生まれてすぐに生き埋めにされたがベルツッチオに掘り返され、一度孤児院に預けられた後その姉のもとで育てられる。

札付きの悪童に育ってしまい、育ての母を誤って殺してからは行方不明になっていたがアンドレア・カヴァルカンティと名乗ってモンテ・クリスト伯の庇護を受けて社交界に出る。
ダングラールと意気投合しその娘のユージェニーと婚約するまでこぎつけるが、顔馴染のカドルッスにたかられ疎ましく思い殺害したことと経歴を詐称していたことが明るみになり逃走。
逃げた先のホテルで憲兵から隠れようとして偶然同じホテルに宿泊していたユージェニーとルイーズの部屋に落ちてしまい、あえなく御用となった。

その後面会に来たベルツッチオから自分の出生に関する全てを聞かされ、裁判の席でヴィルフォールの悪行を暴露した。
傍聴人からはその来歴ゆえに情状酌量になるのではないかと思われている。


◎フランツ・デピネー
アルベールの友人。
物見遊山で立ち寄ったモンテ・クリスト島で『船乗りシンドバッド』を名乗るモンテ・クリスト伯に出会い、隠し部屋で一晩歓待される。
その後ローマの謝肉祭で偶然同じホテルの同じ階に泊まっていたところで再会し、彼の魅力に心酔していく。

ヴァランティーヌの婚約者だったが、彼女の祖父が父を殺したことを知り婚約を解消した。


◎モレル
ダンテスたちが乗船していたファラオン号の船主。
捕まったダンテスを助けようと手を尽くし、メルセデスや老ダンテスの世話もしてくれた人の良い人物だが、所有する船が悉く沈んでしまい破産の危機に陥る。
頼みの綱のファラオン号まで沈み、自殺を覚悟したが『船乗りシンドバッド』を名乗る人物の援助により借金が帳消しになったうえ、
まったく同じ見た目で同じ積み荷を乗せた新たなファラオン号とダイヤモンドを手に入れる。

自分を助けてくれたのはエドモン・ダンテスだったと確信して亡くなった。


◎マクシミリヤン・モレル
上記モレルの息子。
陸軍騎兵大尉。ヴァランティーヌに一目惚れしたがヴィルフォール家とモレル家は王党派と革命派であるため『ロミオとジュリエット』のように隠れて逢瀬を重ねている。

ダンテスとは投獄される以前からの面識があり、恩人の息子ということもあって実の息子のように目を掛けられ可愛がられている。
ヴァランティーヌが偽装自殺した際はあまりの悲しみから自殺を図るがダンテスによって止められ、一ヶ月の間嘆き悲しんだ末にモンテ・クリスト島でヴァランティーヌと再会する。

最後はヴァランティーヌと二人、旅立つモンテ・クリスト伯とエデを見送った。





マクシミリヤンさん、わたしはあなたに、わたしのあなたへの行動の真諦をお知らせしましょう。
それは、この世には、幸福もあり不幸もあり、ただ在るものは、一つの状態と他の状態との比較にすぎないということなのです。
きわめて大きな不幸を経験したもののみ、きわめて大きな幸福を感じることができるのです。マクシミリヤンさん、生きることのいかに楽しいかを知るためには、一度死を思ってみることが必要です。
では、なつかしいお二方、どうか幸福にお暮しください。
そして、主が、人間に将来のことまでわかるようにさせてくださるであろうその日まで、人間の慧智はすべて次の言葉に尽きることをお忘れなさらずに。



待て、しかして希望せよ!




――あなたの友なる
エドモン・ダンテス
モンテ・クリスト伯

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最終更新:2023年11月29日 16:00

*1 ちなみに名前はトーリ神父と伝わっている。

*2 ただしその最期は、自分の正体に気付いた、情報を聞き出した友人に拉致されて財宝を渡すよう言われ、それを拒否して殺されたという。

*3 もっともこっちは婚約者を奪った男の息子に強盗を唆して刑務所送りにしたり、その娘を犯罪者と結婚させてショック死させているので、決して一から十まで同情出来るとは言えない。

*4 ナポレオン軍の将校だった兄が百日天下直後にリンチに遭って殺された際に、殺人犯の捜査と義姉への軍人遺族年金の申請の口添えを断られた。作者のデュマ自身も父の軍人遺族年金を支給して貰えず幼少期に苦労した過去が有る

*5 新妻に「仕事も出来て慈悲もある検事」と良い格好をしたかった下心もあったが・・・