北海道新幹線

登録日:2016/03/29 (水) 20:58:00
更新日:2024/03/17 Sun 09:51:53
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物語が始まる

北海道新幹線(ほっかいどうしんかんせん)とは新青森駅から新函館北斗駅まで結ぶ、JR北海道の高速鉄道路線である。
JR北海道初となる新幹線である。
建設計画にある新青森駅~札幌駅間のうち、2016年3月26日に新函館北斗駅まで部分開業した。

なお、今回の開業に際しテーマソングを函館市出身のバンドグループであるGLAYが書き下ろした。
PRキャラクターとして水曜どうでしょうでお馴染み、ミスターこと鈴井貴之氏が特任車掌として起用された。一部では「サイコロで行先が決まりそう」だの「四国へ行きそう」だの言われていた。
2019年8月現在、東京~新函館北斗間を最短3時間58分で結んでいる。


◎線路概要

この区間最大の特徴は青函トンネルを含む新中小国信号場~木古内駅間82.1kmが、新幹線と在来線で線路を共有する三線軌条区間となっている事である。
しかし、これだけなら秋田新幹線奥羽本線の神宮寺~峰吉川間にも存在する為、そう大した話には聞こえなく見える。
大きく異なるのは「200km/h以上の速度で運転することを想定して作られている」という事である。
その為、新幹線開業を機に架線電圧が在来線用の交流20000Vから新幹線用の交流25000Vに切り替えられた。
電圧の引き上げや運行システムの更新により、従来の在来線電車は海峡線を走行できなくなるため、新幹線開業までに特急や寝台列車は全て廃止となり(豪華寝台列車は対象外)、同様に海峡線の途中駅も新幹線工事の進行に合わせて順次廃止されたため、海峡線は新幹線開業により貨物線へと移行する形となった。

とはいえ、実際にそんな速度で走行するとトンネル内ですれ違うコンテナ貨物列車のコンテナが風圧で吹き飛ばされる恐れがあるため、現時点では在来線特急が走行していた当時の最高速度と同じ140km/hの速度制限がかかっている。
しかし、JR貨物の都合等知った事ではないJR北海道にとっては致命的な問題である事から、1日1往復のみは貨物列車とすれ違わないようダイヤを調整し、地上と同じ260km/hでの走行が可能となる「新幹線専用枠」を設ける予定となっていたが、開業時点では安全性重視が優先されたためか導入は見送られた。なおトンネル内での260km/h走行をJRも諦めたわけではなく上下線の間に隔壁を設置など考えられる方法を色々模索中。

開業前には最高速度360km/hで運転できれば東京から札幌まで4時間を切ることも可能と予想されたことがあり、JR東日本も「FASTECH360」や「ALPHA-X」といった試験車両を作って走行試験を繰り返しているが、走るだけならともかくその速度で営業運転を行うためには様々な課題をクリアしなければならない。

乗り入れ先の東北新幹線区間を含めても、様々な事情で最高速度の引き上げが困難な区間も多く、開業時点では結果的に東京~新函館北斗間を3時間台で結べない妨げとなってしまった。
その後の試験を経て、2019年3月16日のダイヤ改正から青函トンネル内の最高速度を160km/hに引上げたことにより、東京~新函館北斗間の最速列車が4時間を切ることが出来た。
また、2020年度の年末年始以降、繁忙期(年末年始、GW、お盆)の一部時間帯において青函トンネル内で210km/hでの走行が行われている。ただし、三線軌条区間の地上部分は従来通りの速度での運行となっている。

◎車両愛称

札幌延伸時までは東北新幹線の愛称を使用する予定。
東北新幹線の愛称に関しては当該ページ参照。


【使用車両】

○H5系
JR東日本E5系をベースに作られた北海道新幹線オリジナルの車両。
最高速度320km/hで10両編成だが、北海道新幹線内は最高速度260km/hとなっている。
グリーン車の更に上位に位置するグランクラスを連結し、走行性能なども基本的にはE5系と同じだが、普通席には全席モバイルコンセントが設置されている。
この他にも車体中央の帯色や内装、北海道の地図をベースにしたロゴマークなどがE5系と異なる。
編成数はまだ少なく、中々見られない上に北海道新幹線以外の運用に入っていることもある。
4本が製造されたが、2022年3月の地震で脱線・損傷し廃車された編成があるため*1残りは3本。
増備されるとしたら札幌延伸の時であろうが、その頃には次世代型車両が開発されていそう…。
というわけで、少数派で終わる公算が高い。

*2

○E5系
東北新幹線用の車両で最高速度320km/hで10両編成だが、H5系同様北海道新幹線内は最高速度260km/hとなっている。
上述のH5系のベース車両だけにほぼ同じ車両だが、一部編成を除き普通席は窓側のみモバイルコンセントが設置されている。
ネコミミ型エアブレーキで有名なFASTECH360の量産機だがネコミミは装備していない。
北海道新幹線の大半は現在この系列の運用。

○EH800形電気機関車
JR貨物所属の交流用電気機関車で、青函トンネルを走行する貨物列車全てを牽引する。
在来線用の20000Vと新幹線用の25000V双方を走行できるように設計されている。
新幹線供用区間を含む東青森駅~函館貨物駅(五稜郭駅に併設)間で使用。
製造に税金が使われている関係で、定期の旅客列車牽引使用は出来ないらしい*3


◎駅一覧

新青森奥羽本線乗り換え。東北新幹線との境界駅で起点駅。
青森市の中心である青森駅はお隣。

奥津軽いまべつ…津軽線乗り換え。津軽線は津軽二股駅だが、新幹線開通前は完全な別駅扱いであった。
元々は海峡線の津軽今別駅として開業したが、新幹線駅にリニューアルする形で再開業した。
なお、仮称は奥津軽駅だった。青春18きっぷオプション券を使用して北海道に抜ける場合はここから乗るという規定になっている(逆も然り)。
竜飛海底駅が廃止された現在は、「JR北海道では唯一本州にある駅」と言える。
海峡線とは当駅の青森方で合流し、当駅を囲うように在来線用の待避線が設けられている。
ここから青函トンネルに入るため、新幹線は下りのみ待避可能。
駅周辺の秘境度は北陸新幹線安中榛名駅と同じくらい。利用者数も開業前まで新幹線駅のワースト1位だった、いわて沼宮内駅を下回っている。しかし一応、道の駅が併設されてはいる。
津軽鉄道線の津軽中里駅とを結ぶバスが発着する。

木古内…道南いさりび鉄道道南いさりび鉄道線(旧JR北海道江差線)乗り換え。
かつては松前線と江差線と乗り換えができた駅。
奥津軽いまべつ駅と同じ理由で、こちらは上りのみ待避可能。

新函館北斗…函館本線乗り換え。2016年現在の終点駅。
函館駅からは5駅離れた北斗市内の駅の為、在来線との乗り継ぎが必要となる。
新幹線11番ホームと在来線1・2番ホームは対面乗り換え可能。
現在は2面2線だが、札幌延伸時にもう1線追加予定。
旧駅名は「渡島大野」という名前だった。
新駅名については函館市が「新函館」、北斗市が「北斗函館」などを主張して対立し、JR北海道が折衷案として現駅名を採用した、いわゆる合成駅名というやつ。
2023年8月現在、駅の周辺はホテルが2軒とレンタカーの事務所、そしてコンビニ「ハマナスクラブ」くらいしか無いという地味にほぼ何もない状況。
最寄りのセイコーマートすら車で5分という状況である。道内でセイコマすら徒歩圏に無いって地味にやばくね?
厄介なのがハマナスクラブの営業時間、20時に店を閉めてしまう。
最終の新幹線で来る場合、乗車前や車内販売で買い物をしておくのが無難だろう。

○今後開業予定の駅
新函館北斗 - 札幌間は2030年度末に完成予定。地元は2030年冬季五輪招致に合わせて前倒しを求めているが、現状厳しいとのこと。

・新八雲(仮)…函館本線の八雲駅から西に3kmほど離れた新駅になる予定。
完成すると北海道最西端の駅になる予定*4

・長万部…函館本線室蘭本線乗り換え。
かつて車両基地があった為、新幹線が開通してもまだ余る位の側線がある。
長万部温泉や南部藩ヲシャマンベ陣屋跡の最寄駅。

・倶知安…函館本線乗り換え。
後志総合振興局(旧後志支庁)の所在地であるが、町としては小樽の方が発展している。
読み方は「くっちゃん」と地味に難読駅。
日本有数のスキーリゾートであるニセコへのアクセス駅として期待される。

・新小樽(仮)…新八雲と同じく単独駅になる予定。
函館本線の小樽駅は北に4kmほど離れている。
開業後は日本最北端の新幹線駅になる予定。

・札幌…函館本線・千歳線学園都市線(隣の桑園駅から直通)、札幌市営地下鉄南北線・東豊線乗り換え。
地下鉄は厳密に言うと「さっぽろ」駅。
北海道最大かつ全国第4位の人口を持つ札幌市の中心駅で、日本最北の政令指定都市。
元々は地上駅の跡地に新幹線ホームを作る予定だったが、高架化が完了した1990年代当時は新幹線が来るまで何十年かかるか、そもそも本当に来るかどうかさえ不透明な状況であり、それまで待ちきれなかったJR北海道は跡地に大規模な駅ビルを建設してしまった。本業が万年赤字のJR北にとって駅ビルのテナント料は貴重な収入源となったことだろうが、いざ札幌延伸が具体化すると当然のことながら新幹線ホームをどこに作るかが問題となる。在来線の1・2番ホームを改修する案、駅ビルを大規模改修する案、現駅の西側や地下に設ける案などが検討されたが、現駅から200~300mほど東の創成川上に2面2線のホームを作ることで決着した。それにあわせて新幹線出入り口も設けられる。
在来線は現在5面10線だが、新幹線を通すために1番ホームが廃止される代替として11番ホームを建設中。新在乗り継ぎは新たに建設する連絡通路・跨線橋での乗り換えになる。動く歩道やエスカレーターの設置に関しては厳しいとのこと。
地下鉄東豊線は比較的乗り換え易くなるが、南北線とは少し距離が離れることになった。


○札幌より先の区間
北海道新幹線の基本計画は札幌より先の旭川までだが、特に進展は無い。
また、北海道南回り新幹線として長万部~室蘭~札幌も基本計画区間に含まれているが、こちらも特に建設に向けた動きは見られない。

◎計画段階で考えられていた別ルート
  • 南回りルート
現在の室蘭本線、千歳線に沿って線路を敷くルート。こちらの方が沿線人口も多く、雪の量も少ないのだが
「有珠山が噴火したらアウトだぞ!」
という指摘があり、没に。先述の北海道南回り新幹線とはこの南回りルートの変形。なお並行在来線として経営分離される函館本線(山線)の長万部~小樽間はバス転換が濃厚。だから有珠山が噴火したら貨物どうすんだよ。
  • 内浦湾海底トンネル
内浦湾の海底を掘削し、地上で建造したトンネル構造体を沈めて埋める沈埋工法で海底トンネルを建設。室蘭からは南回りルート同様に進むルート。こちらは
「駒ケ岳の噴火時の対応が難しいのと沈埋トンネル作るのに金がかかりすぎる」
という事が判明して没に。もし実現していれば日本で唯一2回海底トンネルをくぐる新幹線になっていた。
  • 中山峠・定山渓ルート
中山峠を超え、定山渓温泉付近を通って札幌までを結ぶ。距離は短いのだが
「あの辺は温泉が出る。イコール地質がややこしい場所である」
ということが判明して没に…。
  • 函館駅立ち寄りルート
木古内駅から函館駅へ直行するルートと新函館北斗駅でスイッチバックして函館駅に入るルートの2案が立てられたが
木古内駅から函館駅直行案は
「札幌まで伸ばす時に大回りになる」
新函館北斗駅スイッチバック案は
「建設費1000億円全額を函館市が負担するのはムリムリムリムリかたつむり」
という理由でそれぞれ没になった。
その後、2023年4月に就任した大泉潤*5函館市長が「新幹線の函館駅乗り入れ」を公約として挙げており、6月15日に補正予算案として調査費3773万円を計上した。
8月下旬に公募で委託事業者を選定し、9月頃から調査を開始する予定。
一度は消えた案が本格的に動き出すことになり、今後の展開が注目される。


◎イメージソング

『Supernova Express 2016』/GLAY


見送りのあの人の口癖は
「漂うのも悪くないさ」
追記、修正、そう果てなき旅

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最終更新:2024年03月17日 09:51

*1 当該編成のうち6両は函館に輸送され、社員の教育・研修に役立てられている

*2 出典:Wikipedia URL: https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cc/H5%E7%B3%BB_H2%E7%B7%A8%E6%88%90_%E7%9B%9B%E5%B2%A1%E9%A7%85%E5%85%A5%E7%B7%9A.JPG 日時:2016/03/29 出典者 Sukhoi37

*3 団体列車としてはE26系客車を使用した「カシオペア紀行・カシオペアクルーズ」がEH800形牽引で青函トンネルを走行したことがある。また、「TRAIN SUITE 四季島」は25000V対応のため青函トンネル内は自力で走行する。

*4 かつてはもっと西に最西端の駅があったが、いずれも路線の廃線により無くなってしまっている。2014年5月13日以降は八雲駅が北海道最西端の駅となっている。

*5 偶然にも俳優の大泉洋氏の兄である。