投げ技(ウルトラシリーズ)

登録日:2016/03/21(月) 20:01:25
更新日:2024/04/05 Fri 23:02:57
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ウルトラマンベムラーを追いかけて地球に辿り着いてから、50年以上の月日が経った。
凶悪無比な宇宙の死刑囚を追って地球に舞い降りた赤と銀の巨人の姿に、今はもうおじさん・おばさんとなったであろう子供達は熱狂した。

1966年の蒸し暑い7月の夜、ブラウン管の中を所狭しと暴れ回るベムラーに向け、ウルトラマンは敢然と立ち向かった。
首相撲、打撃戦、寝技、と、故郷の1/120の重力に戸惑いながらもウルトラマンはベムラーに着々とダメージを与えていく。
戦いが混迷する中、ウルトラマンの胸のカラータイマーが赤く輝き、鳴り響く。まずい。残るタイムリミットはあと1分に迫った。
ウルトラマンはベムラーの白熱光を躱しざまに飛びあがり、ベムラーの背後に降り立ち、押し倒すと痛烈な打撃を見舞う。

そして、遂にその技は放たれた。

ウルトラマンはベムラーの腰をむんずと両腕で握りしめると、大きく振り回して地面に叩きつけたのだ。
続いてウルトラマンはベムラーにのしかかり、再度殴打すると、その巨体を頭上に高々と掲げ、竜が森の湖面に投げつけた。
ベムラーは敵わぬと見るや球体に変化し再度逃走を図るが、ウルトラマンのスペシウム光線が火を噴き、粉々に砕け散った……。


前置きが長くなったが、このようにウルトラマンの初戦はあまり華々しい物ではない。
メタ的に言えば「ビルよりデカい巨人とを噴く怪獣の喧嘩」など今までの特撮では無かったもので、
円谷プロは必至でスーパーヒーロー・ウルトラマンがどう動いて戦うかを考えねばならなかったのだ。

悩みに悩んだ結果、当時子供たちの(大人たちをも)熱狂させたプロレスをベースに、
重量感を表現しつつも俊敏さ、力強さを高々と謳い上げる投げ技がフィーチャーされることとなったのである。

実際、ヒマな人は適当に仮面ライダー(格闘戦が多い昭和をお勧めする)のDVDを借りてきて見てみれば、戦闘の違いはよく分かるだろう。
等身大の仮面ライダーは殴り蹴りを多用する立ち技打撃戦が多く、投げ技と言えばライダーきりもみシュートやら真空地獄車やらといった、
「そりゃ死ぬわ」という決め技で使われるのが一般的である。

対してウルトラマンでは昭和・平成を問わずしつこいぐらいに怪獣を投げて投げて投げまくる

怪獣を殴るのはあくまで前哨戦、光線技の前には決まってぶん投げ、身動きが取れない程地面に叩きつけて光線を放つ、
と言う一連の流れはもはやウルトラシリーズのルーチンワークとなっている。

相手がウルトラマンの体重を何倍も上回ろうがお構いなしに怪獣をひたすら投げ続けるその様は、
ウルトラシリーズの戦闘そのものを象徴すると言っても過言ではない。
投げ技あってこそのウルトラシリーズ、怪獣プロレスなくしてウルトラマンに非ず、なのだ。


技紹介

というわけで、ここでは光線技に比べると知名度の低さは否めないものの、ウルトラシリーズの投げ技に関して記載する。
特にジャックとレオは投げ技が豊富である。


◆ウルトラスウィング
ウルトラシリーズのお決まり中のお決まり。相手の身体を掴んでコマのように回転し遠心力を載せて投げ飛ばす。
実際、やってみると目が回るしかけた側もキツイが、ウルトラマンにとっては慣れっこなので大した問題ではない*1
記念すべき第1話「ウルトラ作戦第1号」でベムラーに使用されたのを皮切りに、全てのウルトラ戦士が大概1回は使用している。
有名なシーンといえば
などが挙げられよう。

◆岩石投げ
相手を頭上に持ち上げ、投げ落とす。これもベムラーに対してウルトラマンが行ったもの。他のウルトラ戦士も多く使用している。
ウルトラマンは体重12万tテレスドンに対して使用し、強固すぎる装甲と重すぎる体を逆利用することで倒した。
タロウや80は怪獣との相撲で使用している。いや比喩ではなくマジで。

◆首投げ
相手の首を小脇に抱えてぶん投げる。
ウルトラマンがゴルドンに対して使ったり、セブンがエレキングに対して使ったのが有名。
ジャックはグドン戦にて抱え上げてバックドロップのように投げ飛ばし、トドメへの布石とした。
オーブ(バーンマイト)水ノ魔王獣マガジャッパ戦で首を掴んでのジャイアントスイングを使用している。

◆ウルトラ一本背負い
定番中の定番。ウルトラマンがレッドキングテレスドンを葬り去った一撃はあまりにも有名。
80はギマイラに対して使用し、5万2千tの巨体を宙に浮かせた。
また、メビウスとヒカリは首が二つあるディノゾールリバースに対し二人で同時に掛けることによりぶん投げている。
タロウも多く使用したが、ガンザに使った際には腕を自切されて躱された。
ちなみにウルトラマンをコピーしたカオスロイドUもこの技を使うが、最後に相手の首を片手で掴んで投げるというえげつない事をする。

◆巴投げ
ウルトラマン、ジャック、ジョーニアス、レオなどが使用している柔道技の一つ。
相手を掴んで背中から倒れ込み、足の力を用いてぶん投げる。
脚力が加わる分威力も高く、ウルトラマンなど12万tのテレスドンをぶっ飛ばしているほどである。
特にタロウは初戦のアストロモンス戦を始めとして数多く使用している。

◆脳天逆落とし
ウルトラセブンバド星人を倒した技。
敵を放り投げ、頭から地面に激突させる。さすがの宇宙帝王(自称)もこれにはひとたまりもなかった。

◆ウルトラリフター
セブン、ジャック、タロウが使用。相手を頭上に持ち上げて斜め上に向けて投げる。
主にタロウが使用し、本来なら放物線を描いて落ちるが、ピッコロ王子ボルケラーに対して使用した際にはそのまま宇宙まで飛んでいった
爆弾が取り付けられたムルロアとの戦いでは空中に放り投げて起爆させ、地上の危機を回避した。

◆ウルトラ投げ
ウルトラマンジャックナックル星人との戦いで編み出した空中投げ。
相手のケツと肩を掴んで空高く跳びあがり、空中で後方に投げ飛ばして脳天を地面に叩きつけるというもので、ナックル星人を一撃で倒した。

◆ウルトラハリケーン
最終回、ジャックがかつてウルトラマンを破った宇宙恐竜ゼットンに対して使用。
相手を高々と持ち上げてから回転して放り投げ、空中に吹っ飛んだ相手目がけスペシウム光線でトドメを刺すというもの。
最強の宇宙恐竜のただ一つの弱点である背中を撃ち抜いて義兄の雪辱を晴らしたが、このシーンで撮影ミスがあるのは有名……。
後にセブンの息子・ウルトラマンゼロ、ジャックとゼロの力を借りるウルトラマンオーブハリケーンスラッシュも使用するのだが、
ゼロの場合はこの投げをフロントチョークスリーパーの体勢から仕掛け、
オーブの場合はジャイアントスイングの応用で嵐のエフェクトと共にハンマーのごとく掴んだ相手を投げ飛ばす。
ゼロの場合は非常に彼らしいスタイルといえるが、投げより寧ろ首の骨をぶち折りかねないような……。

◆空中回転落とし
ウルトラマンジャックが空を自在に飛び回り、スペシウム光線すら耐える強敵・テロチルスに対して使用。
空中で相手に組みついて回転し、相手の脳天を地面に叩きつけて葬り去る荒業。

◆空中回転逆落とし
ウルトラマンジャックが使用。相手を掴んだまま空中で大車輪回転して、相手だけ投げ落として自分は着地するという凄い技。
全身がマシュマロのように柔らかいシュガロンもこれにはすっかり参った。

◆ウルトラ回転足投げ
ジャックやエースが使用。シザースキックの状態で相手の首を足首で締め上げ、回転の勢いを載せて投げる。ウルトラマンが男性なのが非常に残念
ドラキュラス、プルーマ戦でつなぎ技として使用。

◆エースリフター
ウルトラマンエースの最強格闘ワザと名高い。
相手を岩石落としの状態から真上に投げ上げ、落ちてきたところを受け止め、回転してから再度放り投げて地面に叩きつける。
ルナチクスは火山に落して焼死させ、TACのゴールデンホークでダメージを受けたオニデビルにトドメを刺した他、
ギタギタンガに使用した際には叩きつけただけでコナゴナに粉砕していることからもその威力はうかがえる。
ウルトラマン超闘士激伝』ではエースを破ったゼットンに対し闘士ウルトラマンが意趣返しとして使用した。

◆レオリフト
ウルトラマンレオが使用。岩石落としの前に横回転を入れている。
カネドラスのとの戦いではトドメの布石として使用し、ボーズ星人戦では100年前からの陰謀に終止符を打った。

◆レオスウィング
ジャイアントスイングとほぼ同じ。

◆小手返し
ウルトラマン80がレッドキング三代目に対して使用。重心を崩しながら相手の手首を捻って投げる。

◆ジャイアントスロー
ウルトラマンパワードが使用。
米国では子供向け番組でハデなアクションが使えないこともあり、パワードは掌底や投げが中心となった太極拳のような動きをすることとなったのだが、
その言い訳として反面、「気」を手に集中することで絶大なパワーを生み出すということになった。
テレスドンとの戦いでは13万tの巨体を軽々と岩石落としに追い込んでメガスペシウム光線のつなぎに使用した。
ペスター戦では全身に石油を満載したペスターを片手で持ち上げて天高く放り投げ、空中で撃破した。
夜の帳を照らす炎の中で敵怪獣を悠然と持ち上げる巨人の姿はとても幽玄。

◆ウルトラホイッパー
ティガやダイナが使用する全タイプ共通技。
相手を肩口でグイと持ち上げ、頭上まで高々と掲げて投げ飛ばす。なぜかⅡが付く怪獣に縁がある。

◆ウルトラレッグホイップ
ティガやダイナの使用する巴投げ。ダイナはシルドロン、ギャビッシュなどとの戦いで使用。

◆ウルトラバックドロップ
ティガ・パワータイプが使用。読んで字の如く。

◆ウルトラヘッドクラッシャー
ティガ・パワータイプが使用。剛力無双のシルバゴンに対して使用し、地中に犬神家状態でめり込ませて動きを封じた。
外伝においても吹っ飛ばされたドグーフに追撃で御見舞いして大ダメージを与えている。

◆ハリケーンスウィング
ウルトラマンダイナの使用するウルトラスイング。ネオダランビアやデキサドルを強引にぶん投げた。
ウルトラマンサーガ』でアーストロンに対して空中に放り投げて身動きを封じ、ソルジェント光線で撃破した流れは熟練を感じさせる。

◆バルカンスウィング
ダイナ・ストロングタイプの使用する、ハリケーンスイングの強化版。ダイゲルンを粉砕した。

◆スペースダイナマイト
ダイナ・ストロングタイプがデスフェイサーに使用。
敵を頭上に抱え上げ、回転をかけて空高く投げ飛ばす。ダイナックルで貫いたデスフェイサーに、続けてこの技をかけて爆発させた。

◆ガイアホイップ
ウルトラマンガイアの使用するウルトラホイッパー。
4万tのレザイトを軽々とぶん投げた。投げの鬼の片鱗を見せている。

◆ガイアレッグホイップ
うすうす読めたと思うが巴投げ。

◆ガイアバックドロップ
V2化してから使用した。エンザンの突撃を利用して大顎を掴み、背をそらせて背後に叩き落とした。

◆スプリームホイップ
皆さんお待たせしました。ウルトラシリーズ一の投げ好き、「投げの鬼」ことガイアSV先生の代名詞。
相手を掴んで軽軽と投げ飛ばし、地面に叩きつけることで着実にダメージを与える。
ミーモスとの戦いでは前代未聞の9連コンボを決め、中のスーツアクターがマジで病院送りになったという伝説を持つ。

◆スプリームレッグホイップ
相手の脚に下段蹴りを喰らわせ、その勢いを載せて空中でぐるりと回転させて地面に叩きつけるSV先生の荒業。
エンザンの巨体が軽々と宙を舞う姿は最早ギャグ。

◆スプリームリフティング
SV先生の放つ岩石投げ。

◆アグルホイップ
アグルが使用。
いうなればジャイアントスイングだが、ガイアから投げ飛ばされそうになった時に使用し逆に投げ返すという離れ業を見せた。

◆21・ホイッパー
ウルトラセブン21が使用する投げ技。
相手の体を掴んで一気に投げ飛ばす技で、人間大の際に用いて変装していたザム星人を投げ飛ばした。

◆ルナ・フライングメイヤー
優しさの戦士・コスモスの使用する首投げ。
敵を殺したり痛めつけたりするのではなく動きを封じるのに使う。

◆コロナ・レイジングホイッパー
強さの戦士・コスモスコロナモードが使用。
相手に突撃して組み付き思いっきりぶん投げるという男らしすぎる技。強敵との戦いでも幾度となく使用された。

◆ハイエスト・スウィング
勇気の戦士・コスモスエクリプスモードが使用するジャイアントスイング。

◆ジャスティスホイッパー
正義の使者・ウルトラマンジャスティスの使用する技。クラッシャーモードに変身することでより強化される。

◆アンファンスホイップ
ウルトラマンネクサスが使用。技名なんてあったんですね。
ジュネッスブルーの使うジュネッスブルーホイップは相手を空高く舞い上げるほどにパワーアップしている。

◆マックスシュート
マックスが使用。
いわゆるジャイアントスイングであり、エレキングを成層圏までぶん投げ、マクシウムソードで細切れにするという離れ業を見せた。
そんな遠くまで完全に視認できるマックスの視力も凄い。

◆ジャイアントメビウススイング
メビウスが使用。
グドンとの戦いでは鞭を自らの手に絡めることで自分もグドン共々飛んでいき、町への進行を食い止めた。ムチャするなあ。

◆メビウスパワーリフト
相手を丸太のように肩で持ち上げ、地面に叩き下ろす技。

◆名称不明
ウルトラマンギンガが使用。ケムール人の触角を左手で、腰を右手で掴み、上空に投げ上げた。
わずか数秒で成層圏を突破して宇宙空間に達し、素早い相手の身動きを封じた。
結構すごいことやってるのに技名が無いのは残念。

◆フォトンアースドライバー
ウルトラマンタイガ・フォトンアースが使用。
マジャッパの体を掴み上げてジャンプ後、そのまま勢いよくパイルドライバーを決めた。

◆ベータヘッドクラッシュ
ウルトラマンゼットベータスマッシュが使用。
実際のプロレス技「ダイヤモンドヘッドカッター」のごとく、テレスドンの頭部を掴み上げ、そのまま地面に叩きつけた。

◆ベータフォール
ゼット・ベータスマッシュが外伝『セブンガーファイト』で使用。
ガンダー赤いアイツばりに崖から投げ落とした。

余談

ちなみに飛距離を無視した重量別でTOP5を決めると、以下のようになる。
なお、重さが明確に分かっていない物は省く(例えばガイアが投げたレザイトは最大400万tだが、投げた段階での重さが不明のため)。

1位 スーパーグランドキング 21万5千t ウルトラマンギンガ(ジャイアントスイング)
2位 ギラドラス 16万t ウルトラセブン(背負い投げ)
3位 パワードテレスドン 13万t ウルトラマンパワード(岩石落とし)
4位 テレスドン 12万t ウルトラマン(背負い投げ・岩石落とし)
5位 超コッヴ 10万7千t ウルトラマンガイアSV先生(ジャイアントスイング)
次点 超パズズ 10万4千t ウルトラマンアグルV2(ジャイアントスイング)

意外と年長組も頑張っているんですなあ。






いかがだっただろうか。
後半はやや駆け足になってしまったが、ウルトラシリーズにとって投げ技が欠かすことのできない存在であることはお分かりいただけただろう。

特に爆発物満載のパワードペスターや爆弾を括り付けられたムルロアは、投げ技無くしては倒してはならない相手であるし、
レッドキングやギタギタンガ、バルタン星人五代目やダイゲルンなどのように投げ技がトドメとなった一戦も記憶に新しいことだろう。

投げ技のないウルトラシリーズは麺の無いラーメン…は流石に言いすぎにしろ、「無くてはならない存在」であることに異論はあるまい。
これからもウルトラ戦士は暴れ狂う怪獣に向け、液晶画面やスクリーンを所狭しと投げ飛ばしていくことだろう。




55周年、おめでとうございます。





追記・修正は宇宙空間まで怪獣を投げ飛ばしてからお願いします。

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最終更新:2024年04月05日 23:02

*1 ただし中の人であるアクターさんはキツイ部分もあり、NG映像ではこれに失敗している映像が見られる。