トロ(食べ物)

登録日:2012/07/20 Fri 00:28:59
更新日:2024/01/12 Fri 19:28:11
所要時間:約 7 分で読めます




トロとは、マグロの中でも脂肪が乗った部位の総称、並びに、他の魚や動物の脂肪の乗った部位に、それにあやかってつけられた名称である。
ここではマグロのそれを主として説明する。


現在は高級魚の代名詞であるマグロだが、冷凍技術が進んでいない昔は痛みやすい事もあり、下魚扱いであった。
しかも、かつては日本人は脂の味を理解出来ておらず、トロは「アブ」(あぶらから来てる)と呼び、捨てられていたと言う過去すらある。
当時マグロは醤油漬けにして食すのが一般的で、脂の強さから醤油を弾いてしまうトロは都合が悪かったのである。
この時には猫も見向きもしないと言われ『猫跨ぎ』と称されてすらいた。

これを食べるようになったのは、金の無い苦学生が捨てられていたものを拾って食べていたのが始まりとされる。
もちろん江戸時代から捨ててしまうのは勿体ないという考えも存在し、落語で有名な「ねぎま」もトロを何とか美味しく食べようという工夫から生まれた料理である(後述)。

そして現在、食の西洋化もあり脂の味を理解した日本人にとって、トロと言えば最高級の食材としての地位すら築いた。

かつて、「アブ」と呼ばれ蔑まれていたその部位は、今や「トロりとして美味しいから」と「トロ」の名を頂いていると言う訳である。


■トロの種類

部位によって細かく分けられるが、大雑把に次の2種類がある。

◆中トロ

基本的に筋肉質な赤身が主のマグロの中で、適度に脂が乗った部位。
一般的には腹部後方のものをこう呼ぶ。
赤身と脂がほどよく混ざっており、値段こそ劣るも後述の大トロより好きと言う人も多い。

◆大トロ

最も脂が乗り白く見える部位。
名前通りにトローリとした味わいが楽しめる、誰しもが一度は憧れる存在。
が、やはり目玉が飛び出る程高く、最上級のものは同じ大きさの純銀より高い値がつく。
一般的には腹部前方の身を指すが、大トロを名乗れる部位は他にもいくつかある。

※ネギトロ

マグロの皮の裏の脂を貝殻やスプーン等でねぎ取ったもの。野菜のネギは関係無い。
そこに中落ちや剥き身も混ぜる。
マグロ一匹買うような店でないと食べられない高級品。大抵は裏メニュー。

現在スーパーなどで流通している大量生産品は、キハダマグロやビンチョウマグロなどの安価な材料に、
魚油や植物油などの油脂や調味料、着色料などを加えて味と食感を向上させている人工ネギトロがほとんど。
前述の通り野菜のネギとは無関係なのだが、食材としての相性が良いためネギを乗せるなどして提供されることも多い。
また、近年ではマグロに色や食味が似たアカマンボウの身を使用したネギトロも出回っている……という噂も存在している。
アカマンボウは確かに部位によってはマグロとよく似ているものの、安定的な供給ルートが確立されていないのでかえって高コストになってしまい、とてもではないが安価な回転寿司では提供できないため、ミミズバーガーのような都市伝説に近い。
味自体は悪くないが、胃もたれには注意。


■主な調理法


◆寿司

トロと言えば何と言ってもこれ。
洗練された職人により切っつけられ、酢飯に乗せて握られる事こそがトロの一番美味しい食べ方であろう。
東京の高級寿司店のトロは日本人にとっての「高級な食べ物」の代名詞と言ってよい。

◆ネギマ

「アブ」と呼ばれ、下品とされていた時代にはネギと共に鍋仕立てにした「ネギマ鍋」にする事で、庶民の味として親しまれていた。
赤身でやるとパサパサするので、やはりトロでいただくのが美味しい。
が、今となっては高級なトロを甘辛く味付けてしまうネギマ鍋は、最高の贅沢となってしまった。
他にも焼き鳥の方のネギマの元になったネギとトロを交互に串に刺して炙って食べる方も有った。

◆トロ鉄火

鉄火丼のマグロをトロに。
贅沢で美味だが、赤身を粋として尊ぶ江戸っ子には無粋として好まれない。

「てやんでい!鉄火は赤身よ赤身!」

が、邪道ならば邪道で、思いきり沢山のトロを乗せてしまおう。

ワサビを乗せてかっこむと…

ああ幸せ

◆トロステーキ

獣肉に負けず劣らずの脂の乗りのトロは、火を通してもしっとりしてるのでこうしてステーキにもできる。
塊を使う上、生でも食べられる大トロをステーキにするのは、バチが当たりかねない最上級の贅沢である。

ワサビ醤油で食べるのも良いが、最初の一口は塩だけで頂いてみよう。


■その他のトロと呼ばれるもの

前述通り、トロの名をあやかった素材はマグロ以外にも多い。

◆ビントロ

マグロはマグロでもビンチョウマグロのトロ。
ビンチョウマグロ自体さっぱりしているからかトロも言うほどトロっぽくなく、
悲しきかな他のマグロのトロよりも安物という認識。

◆カツオトロ

高級感でマグロに軍配を譲ったが、マグロと同じサバ科の魚故に似た味を楽しめ、なおかつマグロよりは気軽に食べられる一品。
かつての江戸っ子は脂を無粋として「初ガツオ」を喜んでいたが、現代人の舌には脂の乗った「戻りガツオ」の方が合うだろう。
マグロより癖はあるが、モチモチとして美味しい。

◆トロサーモン

最近人気の、サーモンの脂が乗った部位。
畜養技術が進み、手軽に回転寿司で食べられるようになった庶民の味方。
炙って寿司に仕立てた「炙りトロサーモン」は、言葉だけで空腹の人々を狂喜にかきたてる魔法の呪文となる。

◆豚トロ

最近注目の豚さんの首。
焼き肉店で見かけるようになった。
網焼きに仕立てると、溢れる肉汁と脂がジュウジュウと音を立て…。
独特のダイナミックな歯応えも魅力である。
類似品に「トンボロ」という、西伊豆のある島でしか食べられない幻の逸品がある。うそやで~

◆牛トロ

北海道の食品加工メーカーが「牛とろフレーク」を生産している。ご飯にかけて牛とろ丼として食べる。
やや割高だが牛肉の旨味がたまらない。大学生協で提供されていたことがあるので学食などで食べたという人もいるだろう。



追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • トロ
  • どこでもいっしょ ←ではない
  • 食べ物
  • 刺身
  • 寿司
  • 腹が減る項目
  • 毛利元就
  • 折原臨也
  • マグロ
  • 高値
  • 高級
  • 高級品
  • 脂身
  • 大トロ
  • 中トロ
  • ネギトロ
  • マグロ、ご賞味ください

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月12日 19:28