アディン・ロウ

登録日:2016/03/10 Thu 17:50:22
更新日:2023/05/10 Wed 10:39:35
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最後に、いいことを教えてやろう。正しい人間の生き方ってヤツだ
何があっても、感情のままに、行動しろ……


新機動戦記ガンダムW『EPISODE ZERO』『敗者たちの栄光』『フローズン・ティアドロップ』の登場人物。


性別:男
年齢:不明(描写から30代~40代と思われる)
搭乗機:ウイングガンダムプロトゼロ



人物


フリーの特殊工作員。
かつて秘密結社『OZ』が、連合軍特殊工作班と呼ばれていた時代に所属していた狙撃兵であり、AC(アフターコロニー)175年4月7日にコロニーの伝説的指導者ヒイロ・ユイを暗殺した人物
この一件は連合軍の将校であるセプテムの半ば強攻策だったこともあって歴史には記されていない(ヒイロが何者かに暗殺されたという事実は周知の事実となったが、それを行った人物の名は歴史に残っていない)。
しかし裏社会や反連合組織においてはアディンがヒイロ暗殺を達成したことは公然の秘密となっているらしく、その極めて難度が高い任務を遂行したことから『伝説を殺した男(スナイパー・ロウ)』の異名を持っている。


彼が何故OZを離反したのかについて、公式には語られていない。
だが彼の言動の節々から、指導者ヒイロを殺害したことをひどく後悔しているのが直接の原因であることは確かである。
組織の命令で放ったたった一発の弾丸が、その後の歴史を大きく狂わせてしまったことにも責任を感じていたのかもしれない。
少なくともその時以来、彼は「感情のままに行動する」という持論を掲げている。


工作班を離れてからは、フリーの特殊工作員としてバートン財団や反連合、マフィアなどの裏社会の依頼を主に引き受けていたようである。
コロニー間の移動が制限されてからは、「元芸術家の建設作業員」という肩書きで狙撃銃を仕込んだバイオリンケースを片手に旅をしていた。
依頼されれば主義も主張もなく暗殺を遂行するが、「女子供だけは殺さない」という流儀をもっており、女子供をターゲットにした依頼を引き受けることはない。
扱う仕事は多岐に渡り、単なるターゲットの狙撃から要塞での破壊工作までこなす。エージェントとしては非常に優秀な男と言える。

特に狙撃の腕に関しては一級品で、後にジェイ・ヌル(ドクターJ)には「地球圏でもっとも腕のいい狙撃手」とまで言わせている。



彼を語る上で外せないのは、彼が本編の主人公であるヒイロ・ユイ(当時はアディン・ロウJr.(ジュニア)、通称ジュニアと呼ばれていた)に生きる術を教えたことである。
ジュニアはかつて特殊工作班時代にチームを組んでいた女性、アオイの息子であり、彼女と結婚した連合軍技術者であるセイス・クラークの義理の息子という立場だった。
しかし宇宙要塞バルジの完成式典において、テロリストがバルジを急襲。そんな中でアオイとセイスは息子を救うために死亡してしまい、身寄りを失ったジュニアをアディンが引き取ることになった。

当初アディンは普通の子供に育てるつもりだったらしいが、裏稼業をしていることがジュニアに露見してしまい、『親子』という関係を偽装する見返りとしてジュニアに戦闘技術を叩き込むことになった。
結果、ジュニアは7~8歳という若年にして、工作員として高いスキルを得ることになる。
それでもアディンはジュニアを「人殺し」にするつもりはなかったが、当時のOZ総帥ヴァン・クシュリナーダ暗殺依頼の際、ジュニアは殺人を犯す結果となってしまった。
自分が育てている以上はいつかこうなることは予感していたらしく、「こうなる前に捨てたかった」と独白している。また、ジュニアの母親であるアオイに対しても「すまない」と心の中で謝罪していた。

なお、ジュニアが本編でも語った「感情のままに行動することは人間として正しい行動だ。俺はそう学んだ」というのはこのアディンからの教え。
また彼が潜伏先に学校を多く選んだのも、自分の年頃なら学校に通うのが普通という理屈以前に「学校にでも行け」とアディンに言われたからである。



反連合の依頼も多く引き受けていたが、同時に指導者ヒイロを暗殺した人物であるという噂のせいで敵も多かった。
特に反連合組織からは依頼→襲撃のコンボを頻繁に受けていたようだ。
そこらの工作員などアディンの敵ではなかったようだが、ジュニアを引き受けたことで弱点も増え、ヴァン・クシュリナーダ暗殺依頼の際には「自分とジュニアの命の保障」という報酬で、流儀ではない「子供相手の殺し」を引き受けることになった(結果的に未遂に終わったが)。

そしてAC188年、「最後の仕事」としてデキム・バートンからセプテム将軍暗殺依頼を受ける。
だがそれはデキムの罠であり、任務は失敗。負傷したアディン自身もデキムに撃たれ、その生涯を終えた。


最後にジュニアに残した言葉は、「お前と一緒にいたこの数年間、悪くなかったぜ」であった。



搭乗機


ウイングガンダムプロトゼロ


ドクターJら反連合組織の科学者が、初めてガンダニュウム合金を用いて設計したMS(モビルスーツ)
本編中でも登場した、いわゆる『ウイングガンダムゼロ』だが、カトルが再現した機体と同一ではなく、初めて設計された当時の一号機である。

ガンダニュウム合金の本格採用に始まり、MSとしては初のデュアルアイタイプ、また、インターフェースに『ゼロシステム』を搭載した画期的な機体。
ドクターJはこの機体をその基本色から『白雪姫(スノーホワイト)』と呼んでいた。

しかし当時はまだ技術的に未完成だった部分もあるため、全てがAC195年の二号機と同じものではない。実際に狙撃シークエンスやバスターライフルはまだ未完成であり、ゼロシステムも建造当時は起動していなかった。
ドクターはこの機体を『最高のスナイパー・モビルスーツ』として完成させるためにアディンの技術に着目し、彼の狙撃能力をシステムに学習させれ0.00単位で高めた狙撃システムを完成させられると踏んでいたようである。

当初アディンへの依頼は連合軍月面基地の狙撃だったが、その時に老朽化したコロニーの破片が地球と周辺コロニーに向かって降り注ぐという事件が発生。
連合軍は事態収拾のために、バルジのビーム砲でコロニーを狙撃するという暴挙に出る。
コロニー側の被害を抑えるため、また狙撃対象のコロニーに残っていたガンダニュウム製MS『シェヘラザード』を救出するために、アディンはたった5秒間、相対時速1000キロ以上の中、数メートルしかないバルジの主砲中心核をピンポイントで初めて乗ったMSによって狙撃するという困難極まりないミッションをこなすことになってしまった。

しかし途中で起動したゼロシステムの操縦補助、そして何よりも正確無比なアディンの狙撃スキルによって任務は成功。
本人は「いい仕事、させてもらったよ」と満足気であった。


ちなみに、これ以降のドクターJ製作モデルであるウイングガンダム、そしてプロトゼロを再現した二号機にもこのアディンの狙撃スキルが射撃管制のひとつとして使われている。
つまりジュニア(ヒイロ)は、義父の力を借りて戦っていたとも言えるかもしれない。


また、この機体はアディン使用後にドクターJに返却され、その後紆余曲折を経て『FT(フローズン・ティアドロップ)』に登場する『スノーホワイト』へと改修されている。
そちらではジュニアの手によって、超々長距離でバスターライフルのカートリッジの雷管を三つまとめて撃ち抜く(千キロ超)という正確無比な狙撃を見せた。



メタ的な解説をすると、『敗栄』にウイングゼロを登場させるにあたり、ウイングガンダム(EW)とウイングゼロ(EW)のミッシングリンクとしてカトキハジメがデザインした機体。
TV版のウイングゼロに酷似しており、ある意味では本当の『ウイングガンダムゼロVer.ka』であると言える。
アディン搭乗時に使用した武装『ドライツバーク』は雑誌付録としてプラモデル化されたが、肝心のプロトゼロが1/144で出ていないためにアディン機が再現できないという手落ち仕様に。……まあ本来は『敗栄』に登場するゼロEWのドライツバーク再現用なのだから当然っちゃ当然なのだが。
しかし後に発売されたRGウイングガンダム(EW)ではドライツバーク用のパーツがデフォルトで用意されており、もしかしたらプロトゼロがRGで発売される可能性もゼロではない。
肝心のドライツバークが入手できない?プレバンだろ。



ジュニアとの関係



『EPISODE ZERO』や小説版の『Endless waltz』ではジュニアの義父、師匠として描かれていた彼だったが、『FT』において実の父であった事が判明。
バルジの完成式典におけるアオイとの会話からアディン自身は子供を望まなかったこと、アオイはアディンの子供を望んでいたらしいことがわかる。
そんなふたりがどう子供を作ったのかは謎だが、ジュニアは当時の流行であった試験管ベビーの可能性もある。
正直ジュニアとは髪の色くらいしか似てない上、かつてチームを組んでいたキャサリン・ポォはジュニアを見て「彼女の瞳にそっくり」と言っている。どうやらジュニアは母親似らしい。


アディンがジュニアを引き取ったのは自分自身の息子であるという部分も大きい。
またジュニアがアディンの息子であるということをデキム・バートンは知っており、アディンに依頼を受けさせるための脅迫にも使っていた。


ジュニアの身体能力はアオイの遺伝、メカに強いのはリーオーを設計したセイスの影響があるとアディンは考えていたようだが、彼からもある才能が遺伝していたとされている。
それについて明確に語られてはいないが、彼の独白を見る限り「人殺しの才能」だと思っていたようだ。
だが後のジュニアの行動やスキルを見る限り、エージェントとしての才覚と狙撃能力がアディンの遺伝と見るべきだろう。


アディンの死後、残念ながらジュニアは「感情のままに行動する」ことができなかった。しかし後のAC195年以降、様々な人々との出会いや戦いを経て彼の幸せを掴んでおり、最終的には「感情のままに行動する」ことができている。
決してアディンの教えは無駄ではなかったのだ。




余談



小説版のEWや『EPISODE ZERO』発売当時は書籍そのものの入手が難しかったこともあり、ネットの普及や『FT』発売までは知名度が低かった。
同じく知名度の低かった五飛の嫁こと竜妹蘭同様、「知る人ぞ知る」レベルの人物だったのである。
アディンの設定が当初からあったかは不明だが、没エピソードとされたガンダムパイロットの過去に登場する予定だったのかもしれない。

名前の由来はロシア語の1であるодин.(アディン。アジンとも)。
これは外伝作品である『G-UNIT』の主人公であるアディン・バーネットと同じ。

彼の語る「感情のままに行動する」という持論はよく「理性でなく衝動で動け」という風に勘違いされがちだが、実際には「誰かや何かに生き方を強制されるのではなく、自分のことは自分で決めろ」といったスタンスの言葉である。
意訳すれば、「自分というものを強く持て」と言い換えることもできる。
事実、彼はその信念があったからこそゼロシステムに取り込まれることがなかったと後年のヒイロは語っている。









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最終更新:2023年05月10日 10:39