クリス・ベノワ

登録日:2012/09/03 (月) 02:43:56
更新日:2023/07/08 Sat 21:32:27
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◆クリス・ベノワ

「クリス・ベノワ(Chris Benoit)」はカナダ出身のプロレスラー、元WWEスーパースター。
生年:1967年5月21日
没年:2007年6月24日(40歳)

日本では初代タイガーマスクのライバルとして名高い火の玉小僧ダイナマイト・キッドに憧れ、カナダの名門スチュ・ハート道場で技術を学び、
柔道出身のバッドニュース・アレンの薦めもありスチュ・ハート道場とも関わりがあり、ダイナマイト・キッドも参戦した新日本プロレスに来日……道場生となる。
当初は憧れの地とはいえ、異国の風土に戸惑いも感じたようだが一念発起し、新日本への定着を決意。
身体の小さかったベノワはJr.のカテゴリーに加えられたが、同時期に登場した獣神サンダーライガーらと共に新日本Jr.の黄金期を築き上げる。
上背は無いが見事にビルドアップされた肉体からも窺える圧倒的なパワーに加え、天性のバランス感覚と道場で得た高いレスリング技術を併せ持つ強豪選手として知られており、
米マットでは頂点にも立った。


【人物】

本名クリストファー・マイケル・ベノワ(Christopher Michael Benoit)“Benoit”は日本語表記だとベンワーとも訳されている。
古巣の新日本では“ベノイ”とされていたが、同じく日本を主戦場にしていたクリス・ジェリコが本人に「ベノイって何だったの?」と聞いた所、
苦笑して「あれは間違いだ」と答えている。

新日本ではマスクマンのペガサス・キッドを経て、ライガーに破れた事から素顔のワイルドペガサスのリングネームで活躍。

新日本時代には後に生涯を通しての友人となるエディー・ゲレロ、ディーン・マレンコとも出会い親交を深めている(この3名にライガーを加えたユニットがJr.4ホースメン)。
新日本Jr.のトップ戦線で活躍した後、95年からは米マットに進出。
先ずはECWを主戦場にし、試合中のアクシデントにより日本でも馴染みのサブゥーの首をへし折りかけたアクシデントを逆手に取り“危険な実力者”として売り出され、
これが以降のベノワの基本的なイメージとなった。

ECWでの仕事にやり甲斐を感じていたベノワだが、就労ビザを更新してくれない関係から仕方なく見切りを付けWCWに転身。
WCWでもECWに引き続き、日本から共に流れて来たエディーやジェリコらと共に“日本流の高度な技術と危険な技の飛び交う試合”を展開。
当時のWCWでは大型選手を重用する傾向にあった為にポジションは中堅のままであったが、新日本流のストロングスタイルを貫き、
ブッカーTの様な高いポテンシャルを持つ選手とも名勝負を繰り広げ、大いに観客を盛り上げる。
nWoなどのメインストリームには乗らなかったが、当時のWCWでは冷遇されていたリック・フレアーの本家4ホースメンに加わったり、
WWEで師匠スチュ・ハートの息子であるオーエン・ハートが事故死した際には、兄のブレット・ハートと道場出身者として追悼試合を行っている。
また、マネジメントも担当していた所属選手のケビン・サリバンの夫人であった女子マネージャーウーマンと恋仲になり、事実上略奪婚をしている。
サリバンとはこの不倫騒動の最中にストーリー上でも抗争を行っていた。

隆盛を誇ったnWoが消滅後、視聴率戦争をWWEに逆転され死に体となり迷走を続けるWCWで、世界ヘビー級王座を獲得させられるも、
既にWWEに転身していたジェリコらの後を追う様にエディー、ペリー・サターンらと共にWCWを見限りWWEに転身。
当時のトップ選手であるストーンコールド・スティーブ・オースチンやザ・ロックらをターゲットに抗争を開始する。
……中でも最大のライバルとなったのはオリンピック金メダリストからプロレスに転向したカート・アングルで、
体格とスタイルが似ている2人は日本以上にブック(台本)とTV興行に於けるストーリーラインを重視するアメリカンプロレスの中にあって、
日本以上のガチンコレベルの好勝負を連発。
危険なスープレックスが飛び交う2人の試合に巻き込まれた(パートナーを組まされた)選手に怪我人が続出したという。
(最高傑作とされるサブミッションマッチでは感動の余りオーナーのビンス・マクマホンが2人を抱き締めたという)

ベノワのキャリアに於ける到達点となったのが記念すべきレッスルマニア20に於ける世界ヘビー級王座の獲得である。
レッスルマニア史上最高傑作にも挙げられるトリプルHとHBKとの三つ巴戦(トリプルスレット)を制し王座を獲得したベノワが、
カートを破りWWE王座の防衛に成功した親友エディーと涙を流しながら抱き合う姿は日本のファンにとっても忘れ得ぬ感動の場面であった。

……しかし、その親友エディーが逝去。
自身も低迷を続ける中で07年にベノワが妻と子供を殺害した上に自殺するという衝撃的な事件が報じられた。
キリスト教の教義の関係上自殺や無理心中に理解を示さない米国の事情から犯罪者となったベノワの名前や画像がWWEから自粛削除されるという事態が起きる。
……自殺の原因について、ステロイド系薬剤等の弊害が原因ともされていたが、
親友エディーの死が矢張り影響を与えていたのでは無いかとの見識が示されている様だ(日本人には今更感だが)。
他にもボクシングで言う所のパンチドランカー的な脳障害もその一因として示唆されており、ベノワの死の直前辺りの言動・行動には明らかに脳障害のそれが見られるとの事。
このためWWEではペインキラーこと痛み止めの過剰処方の見直しや脳神経系のケア(と頭部攻撃技の禁則強化)を強化している模様。

また、WWEでも漸くベノワの業績を見直そうという意識が生まれたのか、王座獲得者やコンテンツからベノワの姿や名前を消さない方向に転換するとの事である……合掌。


【得意技】

■逆水平チョップ
小柄(公称175cm)ながら、絶叫と共に胸板に打ちつけられるチョップは“業界一痛い”と讃えられた。


■ジャーマンスープレックス

連発式を得意としており、カートとの試合では互いに連発式を応酬する展開となった。
3連発が基本だが、オースチンは10連発を受けた事がある。


■ダイビングヘッドバット

敬愛するダイナマイト・キッドのフォームを忠実に再現。
凄まじい飛距離を誇るのが特徴。


■クリップラークロスフェイス

腕極め顔面絞めで、ナガタロック2と同型。
ベノワ最大の必殺技で、空中に浮いた状態でも下になった状態でも、瞬時にこの技に入る事が出来た。
ベノワの死後、トリプルHが哀悼を込めて使用。


■シャープシューター

ブレット・ハートの得意技で所謂サソリ固め。
クロスフェイスと並ぶ必殺技。



※WWEでは制限があった事と首の負傷により使用しなくなったがドラゴンスープレックスやパワーボム、雪崩式ツームストーンドライバー等も使用していた。
ただし、本人は投げ技や空中技よりも関節技の方が危険であると語っている。


【異名】

●ザ・クリップラー(The Crippler)
●凶獣(The Rabid Wolverine)
●歯無き攻撃性(Toothless Aggression)



【余談】

※日本時代は美形として有名であったが、激闘の中で前歯を欠いてしまい、WWEでは「歯無し」が売りにされてしまっていた。


※自伝本の中で95年頃の新日本道場での練習生の事故死について道場主であった佐々木健介を殺人者として告発しているとして話題になったが真偽は不明。
当時の長州力体制下での道場主いびりの逸話から、その話のリアリティをファンが受けた結果であろうと思われる。


※日本時代のペガサスのリングネームは、当時の新日社長の坂口征二がハマっていたパチンコの機種名だったらしい。


※現在、前妻との息子であるデヴィッドがプロレスラーを目指しトレーニングを積んでいる。父と同門で友人だったクリス・ジェリコとは今も連絡を取り合っているらしい。


追記・修正はアンクルロックをクロスフェイスに切り返してからお願いします。

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最終更新:2023年07月08日 21:32