風見志郎/仮面ライダーV3(仮面ライダーTHE NEXT)

登録日:2016/02/11 Thu 16:38:57
更新日:2023/10/09 Mon 09:13:48
所要時間:約 15 分で読めます





……静かに。

見てわからないか?今ワインのデキャンタージュをしているところだ……

しかもただのワインじゃない……1961年のシャトー・ペトリュス……

邪魔しないでくれ……この神聖なひと時を。


風見志郎は東映製作の映画作品『仮面ライダーTHE NEXT』の登場人物。演者は加藤和樹氏。
氏は平成ライダーシリーズ第6作、『仮面ライダーカブト』においては風間大介仮面ライダードレイクを演じている。
ちなみにドレイクとV3はどちらもトンボをモチーフとした仮面ライダーで、変身前も一人称が「私」のキザな青年という共通点がある。

『THE NEXT』は映画『仮面ライダーTHE FIRST』の直接の続編であり、
初代(あるいは萬画版)『仮面ライダー』を現代風に新解釈した前作同様、1973年の特撮ドラマ『仮面ライダーV3』のリファイン作品に当たる。
そのため、風見も旧作の主人公・風見志郎=仮面ライダーV3をモデルにしているものの、
劇中における人物背景や立ち位置にはかなりの差異が設けられている。

最大の変更点は、前作のダブル主人公、本郷猛一文字隼人が本作でも続投するのに対して、
風見志郎は最初はダブルライダーの敵=純正のショッカーの改造人間として登場するというところ。
人間関係もリセットされ、旧作では大学で先輩後輩の関係だった本郷と風見も、『THE NEXT』では初対面の他人同士である。
また、最終的には彼も正義に目覚め主人公然とした活躍を見せるものの、旧作と違いピンの主役という形にはならず、
トリプル主人公の一角という感じに落ち着く。スタッフロールのキャスト紹介も加藤氏が番である。


時代の寵児・風見志郎


若年にしてIT企業『エクサストリーム』を設立。ほどなくしてトップ企業にまで押し上げ、
かわいい妹のちはる*1は国民的アイドル歌手『Chiharu』として活躍中
…という絵に描いたような勝ち組セレブなリア充青年。ルックスもイケメンである。

その華麗な背景設定は、
学級崩壊クラスを担当する冴えない童貞高校教師=本当バカし本郷猛や、
いつ果てるとも知れぬ身体を引きずって酒と女に溺れる遊び人一文字チャン♥=一文字隼人とは対照的。
また、後に彼を襲う悲劇を際立たせるための布石とも取れようか。

本編開始より2ヵ月前にエクサストリーム本社では社内の人間が一人残らず失踪するという怪事件が発生。
社長の彼もその時を境に社会との関係を断って別荘に引きこもり、金満ニートとして無為で退廃的な日々を送っていた。
趣味はワインのデキャンタージュ。…彼は『G』に先駆けてのワインライダーである。


一人称は『私』。立ち居振る舞いはエレガントだが、感情表現はフラットで冷淡な雰囲気を醸し出している。
しかし、社長時代は鷹揚で冗談を好む爽やかな青年であり、ちはるとも以心伝心の仲良し兄妹だった。
…秘書の女性が言うには会社では妹の自慢話ばかりしているらしい。
世捨て人になってからも浴室内のTVに妹のPVを流しながらシャワーを浴びていた。そこまでいくとちょっと引くわ。

時を同じくしてちはるの親友・菊間琴美がちはるの身に何らかの異変が起こったことを知り、
彼女は事件の背後に悪の秘密結社・『ショッカー』の影を感じとった本郷と共に志郎の別荘を訪ねる。





『Ver.3』 -ショッカー最強の刺客-


しかし、風見の正体はショッカーの改造人間であり、組織に叛逆した本郷=仮面ライダーを抹殺するべく
部下であるチェーンソーリザードショッカーライダー部隊を差し向けた上に
『楽しみにしていた年代物のワインが思ったより若くてむかついた』(意訳)*2というむちゃくちゃな理由から
自身も『仮面』を装着し、その恐るべきもう一つの貌を明らかにする。



いま私は機嫌が悪い。

まさかこのワインが……まだ“若かった”とは……!




ホッパーVer.3 -HOPPER Ver.3-


スーツアクター:伊藤慎

身長:190cm
体重:78kg
打撃力:4t
蹴撃力:12t
跳躍力:18m
走力:100mを4秒

ショッカーの尖兵・風見志郎のもうひとつの姿。
本郷や一文字のような外科手術では無く後述のナノロボットによる改造手術を施された結果、
旧型の改造人間ホッパー(仮面ライダー)1号2号、量産型ホッパーであるショッカーライダーを経て正統進化し、
これらを凌駕する最新最強の改造人間『Ver.3』としての能力を与えられている。
二連装の風車を搭載した変身ベルト*3『ダブルタイフーン』にも『Version3の表記が施されている。
以上の描写から、THE NEXT版におけるV3のVは旧作のような『VICTORY』のVではない。

1号のパワー2号のテクニック*4を併せ持ち、なおかつ上回る圧倒的な格闘スキル、
専用マシン『ハリケーン』を肉体の延長上にあるかの如く乗りこなすライディングテクニックを駆使し、
ショッカーを裏切った仮面ライダーに襲いかかる。
マスクは顔の上半分を覆うヘルメットを被り、下から顎にあたるパーツをセットして固定する旧ホッパーと同じ構造。
緑色の複眼は暗視能力を持ち、特殊強化服ともども耐弾性・耐熱性に優れている。

スーツデザインは出渕裕氏が担当。旧V3同様を基調としたダブルライダーよりは派手な色遣いだが、
リアルかつスタイリッシュな雰囲気を重視した『THE FIRST』シリーズのライダーらしく色調は一段暗いものに変更されている。
旧作では白かった襟とマフラーもスーツの地色に近いダークグリーンである他、
ブーツの色は赤だがグローブはショッカーライダーと共通した黄土がかったコッパーカラーのものを着用。
強化服の背面には本郷や一文字は削り取っているショッカーのエンブレムが付いている。
また、『人間が異形の〈仮面〉を被っている』ということを強調した『THE FIRST』シリーズの改造人間の原則に則って
マフラーの下からは生身の首、後頭部からは頭髪が露出している。
実はベルトのサイド部分には旧作と同じく索敵装備V3ホッパーがセットされているのだが、
これは出渕氏の個人的な拘りによるものであり、「使わないと聞いていたが、敢えて装備させた」とのこと。

ホッパーシリーズであるため、一応『バッタの改造人間』となり、
事実スーツも部分的に1号、2号と似通った意匠を持たされているのだが、メタ的には旧作のV3のデザインを踏襲しているため、
公式サイトの紹介や一部の資料でモチーフはトンボであるかのような記述もある。

ちなみに劇中では終始『強力な新型の改造人間』というだけの扱いであり、
敵からも味方からも公式のコードネームであるホッパーVer.3という名ですら明確に呼ばれたことはなかった。
変身時の演出はシリーズ共通の無言でベルトに風力を与えるといつの間にか強化服を身に着けており、そのままどこからともなく取り出したメット上部とクラッシャーを装着するというもので
『変身』という掛け声は存在しない。



ハリケーン -HURRICANE-


ベース車:HONDA XR250Motard(モタード)

全長:2195ミリメートル
全幅:805ミリメートル
全高:1205ミリメートル
最高速度:時速600キロメートル
馬力:900キロワット
ジャンプ力:40メートル

ホッパーVersion3専用の二輪車両としてショッカーが風見志郎に与えたカスタムバイク。
前作から本郷・一文字が乗り続けているサイクロンが知人である先代V3立花藤兵衛の手による民間製のマシンであるのに対し、
こちらはショッカー純正である(でっかくHONDAって書いてあるけど。…まあ、HONDAも裏でショッカーとつるんでたってことか←オイ)。

最強クラスの改造人間である志郎のスペックに合わせた形でカスタムアップされており、
戦闘員/ショッカーライダー用の車両はおろか、サイクロン1号・2号すらあらゆる面で凌駕する性能を誇る。
武装は無いが、高い強度を持つボディはそのままマシンを高速走行する凶器と化し、
正面からの突撃は強化服を纏うライダー1号にさえ激突先の地面に亀裂が走る程の大ダメージを与えた。

白地のカラーリングで、車体側面のカウルには金色のVの字に見える意匠がある。
THE FIRST版サイクロンと違ってあんまり旧作のハリケーンには似てないしなんだか色遣いがミニ四駆っぽい。
そもそも旧ハリケーンのベース車SUZUKIだし。

ベースとなったXR250は取り回しの良さからバイクアクションに向いており、
平成ライダーシリーズでも多くのバイクの原型となった車種。
THE NEXT版ハリケーンはフロント及びサイド部のカウルが新規造形されている他、
タイヤが大型化し、マフラーも2本に増やされているなど全体として視覚的なボリュームを増したカスタムが施されている。

車輛は後に手を加えられないそのままの状態で特別企画番組『仮面ライダーG』にて
主役ライダー・稲垣吾郎/仮面ライダーGの乗るバイク(名称は不明)として流用され、
奇しくもワイン好きの仮面ライダーの乗機*5という共通点が生まれた。乗り手が志(4)郎→吾(5)郎というのも面白い。*6
なお『G』劇中で吾郎は思いっきり飲酒運転をしていたが、志郎もワインが若いと評した後にすぐ変身して乗っていたので
本郷にハリケーンダッシュキメた時は飲酒運転→轢き逃げの極悪コンボだった可能性が…まあいいか、この頃はショッカーの手先だし。





…実は2ヵ月前のエクサストリーム本社ビルにおける社員失踪事件の真相は、
ショッカーによるナノロボットを用いた改造実験作戦だった。
ナノロボットに適合できずに死亡した社員を、ショッカーが秘密裏に処分したため社会的には失踪という形になっていたのである。
この実験で生存し、改造人間となったのは志郎とチェーンソーリザードの前身である彼の秘書だけであり、
ナノロボットに思考を冒されてマインドコントロールを受けた彼らは、以降ショッカーに従うようになったのだった。





洗脳された志郎はショッカーの企てた無差別虐殺を『偉大なるショッカーの崇高な実験』と賛美し、
『富や名声を得ても空しいままだった心をショッカーの授けてくれた力が満たしてくれた』と嘯く腐れ外道に成り下がっており、
本郷を旧い改造人間と見下しながらも、手に入れた暴力の悦びを強く味わうために彼(と一文字)の抹殺には歪んだ執着を示していた。

一方で唯一の肉親である妹・ちはるに向ける愛情だけは捨て去ることができず、
ちはるに関する事柄においては終始自制が働いており、妹の親友である琴美には手を出すことは無かった。

そして、琴美に(アイドルとして自力で一生懸命輝いていたちはると違って)『お前は自分だけの力じゃ何もできなかった』
一文字に(かつての俺と一緒で)『空っぽの人形』と真っ向から罵倒されたことがきっかけとなり、
徐々に借り物の力で粋がっているだけの今の自分に疑問と苛立ちを募らせていく。

それと前後して事務所まで会いに行った『Chiharu』が
志郎がプレゼントと偽って渡した『ちはる自身が志郎に送ってきた時計』を平然と受け取ったことから
妹と同じ顔をした偽物だと看破。行方を晦ました妹の安否を祈るが…






新生・第3の男


琴美に連れ出された偽Chiharuの白状によって真実を知らされ絶望に膝を折る志郎。
こうなってはもはやショッカーは自分たち兄妹を地獄に突き落とした元凶にすぎず、
志郎の戦うことへの悦びや歪んだ虚栄心は完全に砕け散っていた。

手にした形見の時計が不自然に指し示す時刻が、ショッカーの輸送するナノロボット到着のそれと一致していたことから
『ちはるがショッカーの野望を止めて欲しいと願っている』と直感するも、
自分にはショッカーに従う以外の選択肢は無いという諦観から二の足を踏む志郎。
このシーンのヘタレぶりはイケてない時の大介にクリソツである。

しかし、『美しいもの』=『命』を守るために勝ち目のない戦いにも迷わず臨む本郷の勇気と、
既にリジェクションの限界を迎えて瀕死の身体ながらそれを聞いて飛び出していく一文字の友情
目に見えぬ熱い風となって志郎のダブルタイフーンを廻していく。

熾烈なるダブルライダーとショッカー軍団のナノロボット争奪戦はついにレストランに偽装されたショッカー基地直上でピークを迎える。
質・量ともに十分な新型改造人間の猛攻撃に分断され苦戦を強いられるダブルライダー。
さらに戦闘の最中にリジェクションの発作に襲われ絶体絶命の窮地においやられたライダー2号=一文字を救ったのは…



これがちはるの願いなんだ!

ちはるの悲しみを……二度と繰り返しちゃいけないんだ!!


おい……

良かったなァ。もうアンタは、空っぽじゃないぜ……!




仮面ライダーV3 -MASKED RIDER V3-


ショッカーと決別した風見志郎が変身する第3の仮面ライダー
姿形やスペックはホッパーVer.3となんら変わらないが、真に重要なのは魂である。
また、ショッカーサイドにおいても彼を超える強さの改造人間は(現時点では)存在せず、
味方につければ頼もしい事この上ない。事実劇中では苦戦もせず誰であれ対戦相手は圧倒していた。
ナノロボットの効果で半端なダメージは即座に修復してしまい、高熱の炎の中でも長時間活動できる。
また、『人工血液を定期的に交換しなければ長くは生きられない』という一文字も陥っていた問題点をクリアしているので
これ以降も長く戦い続けていけるものと思われる。

ダブルライダーと同様に腕をL字に組む/両手を大きく広げるなど、要所要所で旧作版を思わせるファイティングポーズを取る。
当たれば身体ごと吹き飛ぶような廻し蹴りを鮮やかに連発する姿はまさにハリケーン。
チェーンソーリザードとの戦いでは斬りつけてきた相手の腕を取って肘を極め、反動で伸びきった腕に蹴りを入れて切断するという離れ業を魅せた。
必殺技は初弾の蹴りで怯んだ相手に、蹴った勢いで宙返りして本命を叩き込むV3反転キック(…に相当すると思われる蹴り技)。
スペック上は純粋なV3キックでもその威力は35tにも達する。




-ここより永遠に-


自らの手で妹の命を奪うという重すぎる十字架を背負った志郎。
妹の後を追うように炎の中で茫然と膝を落としていたV3を救ったのはダブルライダーだった。
爆発する基地から脱出し、志郎に往く道を問う本郷。


あんたは……これからどうする?

生きていきますよ……“あなたの様に”。


―その言葉に応えるように、傍らに落ちていた『V3』の仮面の複眼が静かに光を放った。





アニヲタは……これからどうする?

建てていきますよ……“あなたの様に”。

良かったなァ。もうWIKIは、空っぽじゃないぜ……!


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最終更新:2023年10月09日 09:13

*1 この作品における風見の妹は『雪子』ではない。

*2 自分の先輩格である本郷がいつまでも組織に楯突くという青臭い真似をしていることに苛立った、という隠喩かもしれない。

*3 本作では変身には直接関係ないかもしれないが

*4 『THE FIRST』シリーズのダブルライダーの内約は『力の1号・技の2号』である。

*5 余談だが、Gの『かつて生き甲斐にしていたもの(雪の結晶・ワイン)に触れたことがきっかけで洗脳から解放される』という展開は『THE FIRST』の本郷に非常によく似ている。

*6 似たようなことが旧作版でもあり、V3=志郎の次に渡五郎=イナズマンが始まる…という流れになったことがある。

*7 これについては劇中全く説明が無い。改造人間もナノロボットも関係ない完全な怪奇現象である

*8 この時も普通に変身する時も風車の回転は同じく左回りなので、とりあえず『逆』ダブルタイフーンでは無い。

*9 …はずだったんだがエンディングで某メロニキ似のパチンカスが思念体にムッコロされている。どういうことなの…