ファイユーヴ/オリジナル・フェイ・イェン(電脳戦機バーチャロン)

登録日:2016/02/11 (木) 16:10:47
更新日:2022/09/06 Tue 02:38:57
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電脳戦機バーチャロン」に登場する 設定上のキャラクター 。ゲーム上の使用可能機体であるフェイ・イェンとは似て非なるもの。

基本的にアーケードゲームとして発展してきたバーチャロンにおいて、世界観的な設定はあまり表に出されないが、実際はかなり詳細な設定が時系列順に存在している。
ファイユーヴとはその世界の中でも古参かつ重要なキャラクターで、まだ設定が固まっていなかった初代バーチャロンの稼働時から存在している。
また、アーケード以外のメディアミックスへの露出度も高く、伝説のドラマCDから始まって各種設定・資料本、果ては別ゲーにまで出演しているため、そっち方面も好きだったファンに対しては知名度が超高い。


ファイユーヴとは

ファイユーヴ』。
それは『0プラント』で『プラジナー博士』に創出された
オリジナルバーチャロイド』の一体である『フェイ・イェン』の本名であり、
永遠の14歳であり、76・57・79である。

…と書いても何が何やらわからないと思われるので、順次世界観設定もからめて説明していこう。

世界観のおさらい

●1.電脳暦
バーチャロンシリーズの背景となるのは今よりも未来、電子的・物理的なネットワークが社会の隅々まで行きわたった電脳暦と呼ばれる時代。
発達したネットワークによって人々が「個にして全」となった人類社会では、土地や民族に依存した主権国家という枠組みは既に機能不全に陥っていた。
代わりにネットワーク上における物質/情報の複合コンテンツソリューション、ひいてはそれを提供/運営する企業体が、人々の刹那的な帰属意識を満たす依代となっていく。
それはもはやネットワーク上の国家と言ってよく、彼らは「企業国家」と呼ばれるようになった。

●2.ムーンゲートと0プラント
ある時、大手企業国家の一つであるダイナテック&ノヴァ(DN社)が、月面の開発調査中にある存在を発見する。
後に「ムーンゲート」と名付けられたそれは、明らかに人類が作り出した構造物ではなかった。
調査の結果、これはVクリスタルという巨大な結晶を中核とした施設で、太陽系のあちこちに存在している同質のクリスタルと一種の異空間転送ネットワークを形成していたことが判明した。

もしこの異空間ネットワークを利用することができれば、太陽系の至る所へ一瞬で物資や情報の移動が可能となり、DN社は莫大な利益を得ることができるだろう。
この異空間は電脳虚数空間(Cyber Imaginary Space:CIS)と名付けられ、DN社はそのオーバーテクノロジーを研究・再生するための専用施設『0プラント』を設置し、全力で実用化に取り組み始めた。


●3.オリジナルバーチャロイド
0プラント設立の翌年、ムーンゲート内で全長50mに達する巨大な人型構造体の残骸が発見された。
これは構造体が発信する音声信号からBBB(Bal Bas Baw)ユニットと名付けられたが、その後の調査でこれこそがV・クリスタルを介してCISを利用するためのロボットであることがわかったのである。

0プラントではこれを「バーチャロイド(Virtuaroid)」と名付ける。
つまりこれがオリジナルバーチャロイド、即ち「電脳虚数空間と実空間を自在に行き来する存在」である。
このバーチャロイドを人類の手で復元、あるいは作り出す計画は「V.プロジェクト」と名付けられ、CIS利用の鍵として研究がすすめられた。


●4.戦闘バーチャロイド
莫大な予算がつぎ込まれたVプロジェクトであったが、その後研究は完全に行き詰まる。
最初は期待していたDN社上層部も、度重なる失敗に見切りをつけてプロジェクトを中止し、0プラントの予算も大幅に縮小してしまった。

維持費にも事欠くようになった0プラントは窮余の末に、かつて社内で頓挫したXMU計画へと手を伸ばした(テムジンの項も参照)。
プロジェクトによって得られた「V・コンバータ」技術によって実現されたその人型ロボットは、「戦闘用バーチャロイド」と仮称される。
彼らにとっては研究の二次的な利用でしかなかったそれは、しかし上層部にとっては一向に進まない本来の研究よりも魅力的なものだった。

0プラントには戦闘用VRの研究と開発が命じられ、CISの制御と利用という本来の目的は忘れ去れた。
さらにMBV-04テムジン、HBV-05ライデンという以後の戦闘VRの基本となる2機種を送り出した後は、それらの改良と生産も、生産力がある他のプラントに移行されていく。
結局Vプロジェクトが再開されることはなく、0プラントはDN社の主流から外れて最低限の予算で細々と研究を続けていく「場末のプラント」に成り下がっていった。
が、しかし。上層部が0プラントにすっかり関心を失ったまさにこの頃、研究員であったプラジナー博士の手によって、Vプロジェクトの精華とも呼ぶべき研究成果が次々と生まれつつあったのである。


●5.プラジナー博士
プラジナー博士はVプロジェクトが望みながらついにたどり着けなかった地平に、一人たどり着いていた。
即ちCISの自在なる往還と、Vコンバータによる完全なデータ←→物質変換を可能とした、本来の意味での「バーチャロイド」……すなわちオリジナルバーチャロイドの創造である。
プラジナー博士が創造したオリジナルVRは『アイス・ドール/エンジェラン』『ファイユーヴ/フェイ・イェン』『アプリコット・ジャム/ガラヤカ』の3体。
彼女達は博士を父親とする姉妹といってもよく、いずれも人間同様固有の自立した人格を持ち、自身の超高効率Vコンバータを介して自らのデータを変換しヒトの形態になることもできた。

事態を知ったDN社上層部は驚愕して調査の手を伸ばしたが、時はすでに遅かった。3体のオリジナルVRとプラジナー博士は既に行方をくらましており、その研究データも一切が消去されていたのである。

DN社は頭を抱えた。叡智の結晶とも言うべき存在であると同時に、自社の最高機密たるオリジナルVRの存在を外部に公然とつまびらかにするわけにはいかなかったからである。3体のオリジナルVRの回収は急務と言えた。
が、アイス・ドールとアプリコット・ジャムについては所在すらわからないため探しようがなかったし、ファイユーヴはその存在及び能力の特異性と人目をはばからぬ奔放な性格で周囲を翻弄し続け、DN社にとって特に深刻な頭痛の種となった。

●6.ファイユーヴ
ファイユーヴは姉妹の中では「次女」に相当する存在で、Vコンバータ利用の宿病ともいうべき「シャドウ現象」の対応と抑制のために作り出された個体である。
想定された主活動空間がCIS内であるため、姉妹の中でも一際強力なCIS往還機能とVコンバータを備えている。

が、そんなことより問題なのは、彼女の精神年齢が思春期真っただ中の14歳の少女なことだった。
つまり完全なVRの機能を持ちながら、同時に歌と踊りが大好きで、気まぐれかつ好奇心旺盛な、普通の少女でもあったのだ。
彼女は自身を情報体に変換して電子ネットワークに入り込むこともできたし、CISを行き来することで太陽系のどこへでも、あるいは許されざる禁断の領域にまで行くこともできた。
「神出鬼没の歌う少女型巨大ロボットが!?」「画面から人間の女の子が飛び出してきた!」3サイズは上から76・57・79などの目撃証言が、人類社会のあちこちから上がることになったのである。

フリーダムに出歩く最高機密に頭を抱えたDN社は、躍起になってその捕獲に取り組んだが、いずれも失敗に終わる。*1
ファイユーヴは商用戦闘VRのような火器を備えてはいなかったが、胸部から発射される『エモーショナル・アタック』というビームの前にはどんな戦力も抗しがたかった。
このビームを照射された人間は強烈な多幸感に包まれてしばらく行動できなくなり、戦闘VRもレスポンスが劇的に悪化して操縦不能になる。兵士曰く「人もVRも、メロメロになっちまう」のである。
また無人攻撃兵器に頼ろうにも、人間という足かせを持たないファイユーヴの実存強度はとてつもなく高く、そこからもたらされる強力な運動性は到底VR以外の兵器が及ぶところではなかった。
そして失敗し続ける捕獲作戦から得られたデータで、新たな事実が発見された。何らかの危機的状況に陥った時などに顕著だったが、ファイユーヴは自身のVコンバータを用いて「自己進化」していくことが確認されたのである。

ここに至って、DN社はついにファイユーヴの捕獲を断念した。
このまま彼女を軍事力で追い詰めていけば、今でこそ「メロメロ」効果で済んでいるビームが、究極の殺人破壊光線と化す危険性もある。
もともとファイユーヴは単に束縛を嫌う性格というだけで、DN社に対して特に敵対的なわけでもなく、ならば現状維持の方が無難だと判断されたのだった。
しかし、人類史の巨大なエポックを開き得た大発明を失ったDN社、その最高幹部会の怒りは凄まじく、半ば八つ当たりで全ての責任を押し付けられた0プラントは、危険分子として解体されてしまう事態となった。

●7.飛燕
晴れて自由の身となった(元々自由だけど)ファイユーヴは、本来の使命であるCISの巡察、シャドウ化したVRの発見と対処を行いつつも、好奇心の赴くままに世界を飛び回り、歌い、舞い、そして成長し続けた。
DN社にとっては頭が痛くなる事態ではあったが、生みの親であるプラジナー博士にとってはそうではなかったらしい。
博士は行方をくらませた後、一通のメールをDN社上層部に送っていたのである。その手紙の末尾にはこうあった。

「014…お前の名はフェイ・イェンという。
私はお前に未来を託そう。
力強く羽ばたき、快活に笑い飛ばし、高らかに歌い上げてほしい…」


……かくして、物語はゲーム本編の時系列と重なっていく。


OMG前

CISを「退屈 たーいくつ」と嘆き、様々なところに遊びに出掛けている。
捕獲部隊に追われ、踏み越えてはいけない一線をこえてこちらの世界に来て滞在していたこともある。わ、若い男の家に居候するとか、お父さん許しませんよ!
Vコンバータの事象変換機能を利用して「何もないところから歌の伴奏を奏でる」どこかで見たようなエフェクトと共にVR形態に変形する」などと、DN社垂涎のオーバーテクノロジーをフリーダムに濫用している。
またこの時期に、自身の性能を飛躍的に増大させ、ビームすら用いず周辺広域をメロメロ化する「ハイパー化」を身につけた。

戦闘VR運用が本格化し、シャドウ現象の発生頻度が増えてくると、DN社の第8プラント(後のFR-08)は独自に『白檀艦隊』を設立してこれに対処した。
フェイ・イェンはこれを緩やかに支援し、シャドウ化しそうなVRを早期に発見して艦隊を導くなどの協力体制をとっていた。

OMG後

プラジナー博士の娘であるリリン・プラジナーが、白檀艦隊下に設立されたVR部隊『白虹騎士団』の団長に任じられる。
リリンとフェイ・イェンは同じプラジナー博士を「父」とする姉妹に近い存在であり、その一層な協力体制の確立が期待されたのである。
目論見はおおむねうまくいったが、当初期待されたほどではなかった。二人の間には絆もあったが、歳が近い姉妹のようなリアルな緊張感もあったのである。
とはいえ、この後の二人の緊密な関係をみても、これにはフェイ・イェンの年頃の少女らしいツンデレ気質による意地っ張りも含まれていると思われる。

オラトリオ・タングラム前後

自身のレプリカ戦闘VRであるSRV-014の第二世代モデル、RVR-14が実用化される。

木星継承戦争(フォース)前後

政争によってFR-08を追われたリリンは、「ある目的」の為に力を蓄えるべく、トランスAFG社を立ち上げた。
「ある目的」のためには定位リバースコンバート(一旦VRをデータに戻し、遠く離れた地点で再びVRに再構成する技術。平たく言えばワープ)を標準搭載した戦闘VRが必須であったが、この技術は他社が独占していて同じものを使うことができなかった。

リリンはフェイ・イェンに頼み、彼女のCIS往還能力を解析して別系統の定位コンバート技術を確立しようとする。
フェイ・イェンは(多分、口の達者なリリンに言い負かされて)しぶしぶ第三世代レプリカフェイ・イェン「TF-14」の開発に協力するが、後にTF-14が一般販売されることになると、RVR-14より一層&萌えを強調したフォルムに「こんなのあたしじゃない!」と機嫌を損ねる。
量産が自身に無断で行われたこともありフェイ・イェンはリリンに抗議するが(多分また言い負かされて)却下されたため、その腹いせにトランスAFG社のウェブサイトをハッキングし、機体の仕様書部分を自分の解説ポエムに置き換えるという発想が中学生レベルな抗議活動に出ている。
とはいえ文章自体はノリノリで機体イメージをポエム化したものであったし、フェイ・イェン自身TF-14の衣装で人間形態になってりしているので、まあこれもどちらかといえばツンデレ要素であろう。
後にタングラムの干渉によってバーチャロイドが召喚された世界でのTF-14が、興味を持って助けに来た彼女だとも分かったし。

またこの頃、対『攻性結晶構造体アジム』戦の為に、二機のVRのVコンバータを同調させてペアとして戦うツイン・リンク・コンバータ・システムが開発された。
これはフェイ・イェンの姉にあたるアイス・ドールの協力で作られたものなのだが、アイス・ドールが多忙という理由でフェイ・イェンが配達を押し付けられた。リリンと違って「お姉様」との力関係は比較的はっきりしているらしい。


??

いつの頃か定かではないが、通常宇宙ではなく、こっちの世界でもない別の世界にいったこともある。そのうちの一度は、CISに漂っていた別の歌姫の魂と合体し、新たなる形態で活動していた。
本来のフェイ・イェンの特性とミクの特性が重なり、歌姫×歌姫ということで歌い上げるのははまさしく銀河レベルの歌声となったが、貧乳×貧乳ということでおっぱいはピアニッシモのままだった模様
そしてマーズの時代、リリンの依頼から対ダイモンのためタングラム召喚を試みた際、フェイ・イェンはこの歌姫の姿でタングラムに歌を届け、彼女(?)を通常宇宙に呼び戻したという。





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最終更新:2022年09月06日 02:38

*1 この捕獲作戦の詳細を描いたのがCDドラマ「CyberNet Rhapsody Episode #14」「COUNTERPOINT 009A Episode#16」である。