ライデン(電脳戦機バーチャロン)

登録日:2016/02/03 Wed 22:01:40
更新日:2024/03/24 Sun 20:41:33
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電脳戦機バーチャロン」に登場するバーチャロイド(VR)で、テムジン(電脳戦機バーチャロン)に並ぶもう一つの主役機とも呼べる存在。

一撃必殺のレーザー搭載という漢らしさ、重厚でありながらも細身というスタイリッシュなマッシブさがステキな重量級VRで、なぜかアファームドと並んで、昔から女性プレイヤーの愛機率が高い(気がする)。この人とか某コラボでのこの人とか。

テムジンがゲーム内での看板なら、ライデンは外部作品における看板であり、ドム愛好会ことS.H.B.V.Dの活躍は小説やムック本で知っているチャロナーも多いことだろう。

OMG:HBV-05-E ライデン

-[ 開発経緯 ]-

MBV-04『テムジン』と並び、DN社が開発した商用としては最古のVR(限定戦争と戦闘VRの由来に関してはテムジン(電脳戦機バーチャロン)の項を参照)。
商用VRの開発当時、その基本的な運用法としては、衝撃力を担う前衛型火力を担う支援型との2機種からなる編成を構想していた。
前者であるMBV(主力戦闘バーチャロイド)として開発されたのがテムジンであり、後者であるSAV(火力支援バーチャロイド)の役を担うべく開発されたのがこのライデンとなる。

基本構造自体は、XMU計画の5号機であるXMU-05が流用されている。
XMU-05はもともと大重量装備を想定した頑強な構造を持っていたので、当初開発は非常にスムーズに進んだ。が、試作機に兵装が施される段階になって大きな問題が発生する。
武装として想定されていた手持ち式の指向性弾芯内包型ビームランチャー(バイパーIIのCWのようなものか)であったが、この威力がどうにもパッとしなかったのである。
打撃火力を担うSAVにとって火力不足は存在意義にかかわる問題であり、慌てて代替装備が探されることになった。

ここで騒ぎを聞きつけたDN社上層部が、一つの提案を持ってくる。
当時DN社では調達を途中でキャンセルした巡洋艦の部品を抱え込んでいたのだが、この中の短射程対艦レーザー砲『Ali-02a』を試作機に使用してはどうか?というのだ。
当然ながら開発スタッフは大反対だった。Ali-02aが「高出力ながら小型軽量」を売り物にしているとはいえ、それはあくまで艦載砲としては、の話。
いくら大重量装備を前提としているとはいえ、全高15m程度の試作機に収まるようなものでは到底ないし、無理に搭載しようとすれば機体を作り直すレベルでの再設計が必要となるのは明らかだった。
が、上層部はあくまでもこれに執着する。「処分品だからコスト安いし、威力もちゃんと高いだろ!文句ばっかり言ってないで作り直せ!技術者魂を見せろ!」と強要。
開発部はこれを容れざるを得なかったが、上層部はさらにこう付け加えることも忘れていない。「でも納期は変更なしだからな」と…。
開発部はまさしく地獄と化し、昼夜を分かたぬ殺人的な突貫作業で再設計が進められた。
しかし当時の0プラントのスタッフはまさしく精鋭というに相応しく、この無茶苦茶な要求に見事応えて機体の再設計を行ってしまったのである。

そして完成したVRの性能は驚くべきものだった。
両肩部に搭載された主砲であるレーザー砲の威力はまさしく規格外の火力を誇り、それを支える機体本体も頑強、重装甲そのもの。それでいて機動性の低下も許容範囲内に収まっていた。
最早その性能は単に火力支援を担うSAVの枠を超えていると判断され、SAVの火力とMBVに近い機動性をもったVR、すなわち「Heavy Battle Vituaroid:重戦闘バーチャロイド」という新区分が用意された。
ここに数々の伝説を生み出していく「HBV-05-E ライデン」が誕生したのである。


-[ 機体構造 ]-

火力と装甲防御力において第一世代VRでも屈指の機体であり、かつ構造も堅牢で、整備・運用面でも特に他のVRに劣る部分は見られない。
凄まじい突貫作業の果てに生み出されたVRにもかかわらず、兵器としての完成度はある一点だけを除いて極めて高い。

主兵装であるAli-02r(ライデン用になって型式番号が変わった)レーザー砲は、他に搭載する場所がなかったことで肩部に内蔵されている。
その威力ははさすがは艦載兵器と言うべきか、VR用の火器としては異次元の破壊力を持っており、最大出力モードならば地表面から軌道上の衛星を破壊することすら可能なほど
その大重量を相殺するため脚部にはバラストを兼ねる重装甲が施されているが、大重量を前提としたスケルトン(VRのフレーム)はこの負荷にきちんと耐え、重心自体は低い位置にとどめられている。

副兵装として装備されたのは、右手に保持されるZig-13型バズーカランチャー。大口径噴進弾を発射する汎用ランチャーで、大きさこそ嵩張るものの、威力・速射速度・装弾数は高水準にまとまっている。
さらに補助兵装としてMk9型グランド・ボムも標準搭載されていたが、これはHBV-05の兵装の中で最も評判が悪い兵器だった。
MBV系列が標準搭載するパワーボム系に勝る点が何一つなく、運用部隊ではこれを基準装備から外していた節さえある。


-[ 活躍 ]-

HBV-05の性能はDNAの幹部もDN社の上層部も一様に満足させ、さっそく量産体制に入ることが決定。初期ロット120機分の予算が計上され、予算委員会に提出された。
そしてそこで、遂に、開発陣があえて触れていなかった重大な事実が白日の下にさらされることになってしまう。



「これが各種仕様書、並びに予算見積書です」
「ふむ、出来たか…ふむふむ……ん?」
「………」
「おいおい気が早いな、初期ロットの生産数は120機だよあくまでも。
まあ、ゆくゆくはこれぐらいの数を配備することになるだろうがね……」

「……それが120機分の予算なのですが……」
「……はぁ?」



殺人的なスケジュールの元に行われたHBV-05の再設計は、製品としてのコスト最適化を一切無視することで実現されたものだった。
結果としてHBV-05-Eの価格は、兄弟機であるMBV-04-Gの実に27倍に達していたのである。
ロボットアニメ的な常識から勘違いしてはいけないのは、これは「ムラサメの27倍のコストをかけてストライクフリーダムガンダムを作りました」というのとは違う。
ガンキャノンを作ってみたら、なんかRX-78-2ガンダムの27倍の値段になってました」という意味なのである。

当然上層部は激怒したが、そこに更なる凶報が重なる。
試作段階のHBV-05に搭載されているAli-02は、前述のとおりキャンセルの過程で余ったバッタ品なので、数を確保するためにはちゃんとした正規品を用意する必要があった。
しかしAli-02の開発元であるTeleFunken社は既に倒産しており、その生産ラインもすでに別の会社によって改装されていることが判明したのである。
今からラインを一から新設するなると、その完成には5年以上を要するとみられた。

とうとう完全にブチ切れた上層部は、自分たちの横槍がこの結果を招いた事実を全力でスルーしつつ開発スタッフの大粛清を断行。
主要スタッフは辺境プラントDD-05に飛ばされ、0プラントはVRの開発力を大きく削られてしまう。
同時にコストを最適化された改良型ライデンが生まれる可能性もなくなり、HBV-05は26機が作られただけでそのラインを閉じられてしまったのである

これでDN社の溜飲は下がったが、この26機を買わされたDNAの方は頭を抱えていた。
何せ後にも先にもたったの26機。減った機体の補充すらできないときては、とてもまともな運用などできそうにない。
そこでDNAは限定戦争のエンターテイメントビジネスとしての側面に着目する。兵器にとって数の不足は欠点でしかなくとも、ブランド品としてみれば。
希少性は逆に高級感につながる商品価値にもなるからである。

DNAは全軍の各部隊から最精鋭の人材を無理やり引き抜いて、最良の人材だけで構成させた特殊部隊、Special Heavy Battle Virtualoid Division:特殊重戦闘バーチャロイド大隊を編成。部隊の専用VRとしてHBV-05を集中配備し、ライデンを{「最強の精鋭部隊の為だけに作られた高級VR」とするイメージ戦略を展開したのである。
この戦略は功を奏し、HBV-05はS.H.B.V.Dの精鋭たちによって数々の伝説的戦果を生み出すことになった。
しかしHBV-05は高性能な機体とはいえ、同時代の他のVRとの間に絶対的なスペック差があるわけでは決してない。
それでいて彼らに求められたのは「ガンキャノンをストライクフリーダムのように活躍させる」ことであり、そのために行われた無茶は筆舌に尽くしがたいものがあった。
結果として部隊の損耗率も極めて高く、なんと最終的には最後の一機に至るまでHBV-05を消耗しつくしている。


-[ ゲーム内性能 ]-

「重量級でも3割、軽量級なら即死する火力の攻撃」を「5秒に1回」撃てるという、格ゲーの常識からすると一見ぶっ飛んでいる機体。
実際、CWとしゃがみバズーカの猛烈な決定力から稼働当初の評価は高かったのだが、ゲームの戦略が煮詰まるにつれて転げ落ちるように地位が低下していった
その理由は「(主にRWの弾速のせいで)自分から当てに行ける武装がない」ことと、「(CWCが使えないので)足回りが致命的に悪い」という2点に起因する。
このため主導権を取っていく能力が全くなく、常に相手の得意な土俵で戦わされてしまう。
とくにガン逃げ+壁+ちくちく戦法を徹底されると、ライデン側は最早なす術がないといっていいぐらいきつい。

このため真剣なダイアグラムを組むと、全機体に対して不利がつくライデンはぶっちぎりの最下位になってしまう
しかし火力の高さから事故らせた時のリターンは究極的に高いため、ダイアでは図れない一発逆転の可能性はある(勝てるとは言ってない)。
PS2版ではオラタンさながらの脱衣も実装されたが、意味があるかといわれると……。



オラトリオ・タングラム:HBV-502-H ライデン(RVR-75 ライデンII)

-[ 開発経緯 ]-

粛清としてDD-05プラントに飛ばされたHBV-05の開発スタッフ達は、再起の怨念に燃えていた。
現に彼らが開発した第1世代ライデンはオペレーション・ムーンゲート(OMG)以降獅子奮迅の活躍を示していた。
当時主力機の座についていたアファームドとドルカスの混成部隊をまとめて蹴散らす実績すら上げていたのだ。

しかしDN社はOMGからまもなく倒産。その傘下プラントを再編成して盟主となったのはFR-08:フレッシュ・リフォーだったが、彼らは諸事情からVRビジネスそのものに懐疑的であり、傘下の全プラントに対してVR技術の開発禁止命令を出した。
だがDD-05のスタッフはこれをほとんど公然と無視し、技術開発を続行していた。FR-08からの制裁を恐れる声もあったが、お咎めはまったくなかった。
DD-05があまりに零細な辺境プラントであったのが逆に幸いし、わざわざ考慮するほどのこともないとしてスルーされていたのである。

そして第二世代VRを配備した「RNA」が現れた時、ついに彼らの雌伏は報われることになった。
DNAが保有していた第一世代VRではRNAに全く対抗できず、FR-08は慌てて各プラントに第二世代VRの開発を依頼。DD-05はこの機会を逃がさず、真っ先にその候補に名乗りを上げたのだった。
同じく名乗りをあげたプラント・MV-03RP-07は、FR-08のVRビジネス忌避の影響でVR関連の技術開発が滞っていたが、DD-05に限ってはそのロスは皆無だった。
彼らが蓄積してきた技術は、RNA側と互角どころか、それを上回る領域に達していたのである。

スタッフはかつて自分たちが作り出したHBV-05に絶対の自信を持っており、新型第二世代VRにもそのコンセプトを継承させた。
今回は機体を練り上げる時間が充分にあったため、新型ライデンは打撃力と防御力を維持しつつ、その欠点であった機動性と近接戦闘性能を底上げし、かつ(当然だが)製品として問題ない価格に抑えることが目標になった。
そしてスタッフの執念は見事に結実し、第二世代の中でも屈指の傑作機と呼ばれることになるHBV-502-H ライデンが産まれるのである。

-[ 機体構造 ]-

外観通り、HBV-05のコンセプトを基本的には継承しているが、著しく多機能化した部分が多く、コンセプトの上でもまさしく上位発展機と言える。

まず機体自体の特徴としては、機動性の著しい強化が挙げられるだろう。
第二世代VRは第一世代に比べて飛躍的に機動性が向上しているが、HBV-502-Hはその中でも特に顕著な部類に入り、HBV-05のように同世代機との圧倒的機動性格差はない。
また、HBV-05において緊急的に行われた装甲パージ機能を「アーマーブレイク」としてシステムに組み込んでいる。全アーマーを排除するのみならず、Vアーマー(Vコンバータの余剰出力で形成される防護フィールド)に使われていた出力もすべて機動性に回すため防御力は0になるが、そのかわりにとてつもない超高機動力を発揮することができる。

主兵装である肩部のレーザー砲はその機能をさらに発展させ、複合兵装ユニット「スタイヴ800Z」に昇華された。
まずHBV-05のそれを継承した砲撃モード・「バイナリー・ロータス」形態では、文字通り蓮のような形状に変形して超出力のレーザー砲を発射する。
さらにHBV-05から得られた戦訓に鑑み、近接戦闘時には格闘モード・「フラグメント・クロー」形態へと変形する。
これは変形・展開した大型クローによって特殊な力場を展開するもので、その中に入ったVRを機能不全に陥らせたり、高エネルギーによって破壊することもできる多用途格闘兵装である。
この拘束力場はある程度の距離なら射出展開することも可能(「クロー・ストリング」と名付けられている)。

副兵装の傾向もHBV-05のそれを基本的には継承しており、Zig-13の発展型であるZig-18型バズーカ・ランチャー、グランドナパームを搭載。
もともと高性能なバズーカは勿論、HBV-05ではお荷物同然の扱いを受けていたボムはナパームとの複合兵装が施され改善を遂げている。

総じて防御力・機動性・火力を高次元で融合させた高性能重VRであり、その戦闘性能は他の第二世代機と比べても明らかに一段階高い。
その高性能を支えているのは機体中枢であるVコンバータ。他機種に比較して実に2倍近い高出力を誇るこのコンバータは、0プラントから受け継がれてきたDD-05の開発スタッフの高い技術力の賜物と言えよう。

ただし唯一の欠点として、肩の複合兵装ユニットをはじめとした多機能化の影響で、整備性が著しく悪化している点が挙げられる。
これは兵器としてみた場合決して軽視できる問題ではなく、後に高い整備性と融通性を武器にしたMV-03のボック系の台頭を許す結果につながっている。


-[ 活躍 ]-

DNA陣営の第二世代VRの中で真っ先に完成したHBV-502のデビューは、しかしサンド・サイズ戦役において試作機のいきなりの実戦投入という荒っぽいものになった。
試作機というには派手すぎる気がするが、桜吹雪が舞い鶴が羽ばたく純和風塗装を施された『試型雷電』は、RNAの猛攻の前に窮地に陥っていたS.H.B.V.Dの前に颯爽と登場。
パイロットであるピエゾ・バイモルフ軍曹の超絶的技量も相まって、第二世代のアファームド相手に無双するというド派手なデビューを飾った。
このデータを提出されたFR-08では、即座にDNAでのHBV-502の正式採用を決定。かつてHBV-05で辛酸を舐めたスタッフたちの執念が、ついに報われたのだった。

が、名誉挽回に必死になる彼らの執念はあまりにも強すぎた
DD-05は一刻も早い実績を得ようとして、RNA側にも積極的にHBV-502の売り込みを図ったのである。
限定戦争が経済活動の一部である以上、敵対陣営への販売は決して禁忌とはされていない。しかし今回のケースでは明らかにやりすぎていた
FR-08は「他に売るなとは言いませんが、まずDNAを優先しなさい」と、特別販売優遇措置を取ることを何度も勧告したが、DD-05はこれをガン無視。
構わず節操のない大量販売を敢行したため、RNA側では『RVR-075 ライデンII』と命名されて主力の一角を担うまでになったのである。

ここに至って、FR-08はDD-05を明確に危険視し、粛清の対象とすることを決め、あらゆる謀略や経済攻勢を開始した。
DD-05はFR-08の政治力と経済力に翻弄された挙句、最終的にはプラント自体を限定戦争の戦場として提供されてしまい、文字通り炎の中に葬られてしまうことになった

再起を期したDD-05が無念を飲んで壊滅したことで、ライデンはまたしても希少なVRとなってしまうかに思われたが、DD-05のライバルであるMV-03がいち早くそのラインを接収。
完全再現とは言えないがほぼ同質の構造で量産することに成功し、HBV-502-H8として販売することになった。
(このライン接収から再販までがあまりにスムーズに行われた為、一部ではFR-08からの粛清に備えライバルが故にその実力を認めていたMV-03に対し、水面下でDD-05が人材や技術、及び何よりも自分達が無念の果てに世に送り出した傑作機の血統を絶やしてほしくないという情熱までも予め託していたという都市伝説が囁かれている)

-[ ゲーム内性能 ]-

オラタンにおけるゲーム的特徴がピンポイントでライデンの性能を押し上げ、一躍トップを争える強機体になった。
まず、前作ではなぜかライデンだけ冷遇されていたキャンセルアクションが他機と同レベルに向上し、別次元の運動性を獲得。
地上での速度もかなり改善され、他機に翻弄されっぱなしということは完全になくなった。
いくら専用設計とはいえアファームドSTより速いってのは流石にどうかと思う。

さらに必殺のレーザーはそのままに多様な補助武装が追加され、攻撃面における攻め手の貧弱さも完全に払拭された。
豊かな手数で中距離以遠に敵を追い払いつつ、ハーフネットとグラナパの設置で動きを制限し、しゃがみバズやLTRW、レーザーなどでごっそり頂くという戦術が単純かつ強烈。
近接に持ち込まれても前作から継続のガードリバーサルLWと左回りクイックステップLWが追い返してくれる。

空中機動性の低さという明確な欠点こそあるが、重量級ならではの高防御力と高攻撃力を両立し、重量級入門者からベテランまで幅広く使っていける。
そのシンプルな強さから、バージョンごとにキャラランクの変動が激しいオラタンにおいは割と安定して上位に位置付けられていた。
初期はLWのグランドナパーム(投擲するとグラボムの他に、軸が合うとナパームが自動で炸裂する)の目を見張る凶悪さの為にバージョンアップでRT系と前ダッシュ系のみナパームが出るように下方修正を受けたものの、それでもレーザーネットとの組み合わせによる追い込み効果は変わらず優秀の一言であり、今なお歴代ライデンの最優秀LWとの評価も高い。
最終バージョンの5.66だと総合的には最強との声も大きい。


フォース:HBV-512-E2 ライデン

-[ 開発経緯 ]-

HBV-502の生産ラインを引き継いだMV-03は、オラトリオ・タングラム戦役における販売拡大で巨額の利益を上げ、その力を急速に増していた。
しかしMV-03は宗主であるFR-08の高圧的かつ利己的な姿勢に不満をもっており、その影響下から独立することを狙ってもいた。なにせオラタンでFR-08陣営が得た莫大な利益のうち、DNAの勝利の立役者であったMV-03に配分された利益は1割にも満たなかったのだから。
だが表立ってFR-08に反抗したところで、かつてのDD-05の二の舞になることは明らかであったため、彼らは別の道を選んだ。今の体制に歯向かうのではなく、別の新体制を別の場所に1から作り上げようとしたのだ。
MV-03は火星圏という辺境の地に目をつけ、そこに巨大な限定戦争市場を作り上げようと目論む。
そして社運を賭けたこの事業のため、自らの組織を大幅に再編するとともに『アダックス』と改名する。

この目論見は多数の賛同者を産んだ。市場拡大が利益に直結する国際戦争公司は勿論、地球圏ではDNAに対して劣勢を強いられていたRNAも、自らがイニシアチブを取れる戦場を求めてこれに呼応する動きを見せたのである。
RNAの親会社であるTSCドランメンは勿論、反FR-08派プラントであるTV-02SM-06も積極的にこれに同調したため、火星戦線は地球圏のオラトリオ・タングラム戦役に並ぶ巨大な限定戦争市場へと成長していった。

しかし火星に存在する巨大Vクリスタル(マーズ・クリスタル)の影響下にある火星圏では、従来型の第二世代VRは稼働すらできない。
火星に本格進出したアダックスは火星の戦闘に対応した第三世代型VRの開発に取り組み、自社の主力商品であるボック改め「VOX」系、そしてライデン系を第三世代にアップデートしていったのである。

本来ライデン系はSAVとして開発されたVRなので、機体特性的にはアダックス社本来のVOX系と重なる部分が多い。
戦術ニッチが重複するライデンの後継機をあえて開発した理由は不明だが、おそらくは限定戦争のエンターテイメント性を重視した結果だろう。
ボック系からの伝統といえるが、徹底して兵器としての実用性を重視したアダックス製のVOX系は、限定戦争のロマンあふれるVR戦を好む視聴者層からのウケが極めて悪い。
対してライデンは明快で豪快なキャラクター性を持ち、また数々の伝説的戦果に彩られたVRということもあって視聴者に対するアピール度が非常に高く、極端な話「有名ブランドだった」という部分があったものと思われる。

-[ 機体構造 ]-

兵器としての信頼性を第一義とする武骨なアダックス社製ライデンということで、HBV-502とは機体コンセプトが大幅に変わっている。

最大の特徴は、HBV-502に装備されていた豊富な多用途オプションが一切排除されていることだろう。
E型に搭載されている両肩部の兵装ユニットは、レーザー照射機能「バイナリー・ロータス」機能のみが残されたシンプルなものに回帰し、HBV-502で正式化されたアーマーブレイク機構も排除された。

これらオミットされた機構は切り捨てられたわけではなく、それぞれがユニット化され、派生機用のオプションとなっている。
これはボック・VOX系の根幹となる機能である「ユニット・スケルトン・システム(USS)」と同一のものであり、VOXが装備するユニットによって全く別の方向性のVRに派生するように、ライデンもまた装備によって自在に機体の性格を変えられるVRとなったのである。
規格化されたハードポイント部分は両肩をはじめとして、手、腕、脚など全身にわたって存在している。

基幹機種であるE型は、伝統的なレーザー砲、グランドボムを標準搭載したタイプ。
中でもZig-21型バズーカ・ランチャーを装備した機体はE2型に分類され、第一世代ライデンに最も近い特性を持つHBVとされる。

-[ 活躍 ]-

ライデン系の歴史において初めて安定供給を実現したVRであり、配備数は間違いなく全世代中最多だと思われる。
圧倒的な万能性を売りにした先代HBV-502とは機体の性格がかなり異なるため、用兵サイドでも最初は戸惑いを見せたが、そのHBVらしい安定性と重厚な打撃力が高く評価され、戦線の一部として定着するまでに時間はかからなかった。
普及台数が多いため、アダックスは様々な武装ユニットを開発、投入している。

ライデン系の伝統というべきか、S.H.B.V.Dとの関係も深く、彼らが部隊内で施してきたカスタマイズを商品としてパッケージ化した他、ラインの一部を割いて専用の高性能カスタマイズモデルも供給している。


-[ ゲーム内性能 ]-

オラタンで搭載された新武装が全部没収。中距離戦の要であったLTRWも没収。使わないけど脱衣も没収…とまあ、運動性を除けばOMGに先祖返りしている。
そのため格ゲー志向のオラタン勢が主体だった稼働初期においては「何このクソ雑魚ライデン」との評価が多く、他の重量級機体もろともに最低ランクに位置づけられていた。
しかし2on2であるというフォースの基礎構造が周知されるにつれ、評価は徐々にあがっていった。

まず必殺の威力を誇るCWレーザーに「こちらを見ていない敵に当てる」という新たな使い方ができた点が大きい。
このため敵は別の機体と戦いながらも常にライデンの方に意識を向けておかなければならず、これはチーム戦において極めて有利に働く。
また主力のRWもダメージ源としても援護手段としても非常に優秀で、LWのグラボムは全世代中でも迎撃力でトップとなる「踏ませるボム」に特化している。

総合的にみると、その圧倒的な注目度から重量級の中でも上位に食い込む強機体であると言えるが、あまりに決定力がありすぎる+足が遅いため、集中攻撃を受ける率が極めて高い。
特に相方が放置されがちな機体の場合、敵は確実に全力でライデンを潰しにくる。
E2はタイマンでの迎撃は大歓迎のシチュエーションといってよいが、ダブルアタックをさばくには絶望的に機動力が足りない。しかしE2を使う以上決して避けては通れないシチュなので、使い手はがんばって回避の腕を磨こう。

瞬間的に勝負を決せる爆発力こそが魅力のVRだが、使い手にはむしろ相方に安定した援護を送りうる判断力、そして繊細な回避技能こそが要求されるという渋いVRである。


-[ 系列機 ]-

HBV-512-E1

S.H.B.V.D内で使用されていた連装砲身ビーム兵器『Zap-11型フラット・ランチャー』を搭載したモデル。ランチャーはバイナリー・ロータスにも匹敵する高威力を誇り、只でさえ強力なHBV-512の打撃力をさらに増強させている。
また武装をエネルギー系に統一したことで機体制御系やFCSが最適化され、運動性が若干ながら強化されるという副産物も。

●ゲーム内性能
E2との外見上の変更点はRWだけだが、見た目以上に性格の違う機体に仕上がっている。
なんといっても魅力なのはRWの規格外の高火力で、立ちTRW(当たるとは言ってない)や前ビの威力は自身の立ちレーザーに匹敵する。
さらにCWのレーザーもE2に比べ出が速く、硬直が短くなっており差し込みやすくなっている。瞬間火力は全VRでも最強クラスといってよいぐらい。

が、RWは威力こそ高いがそれ以外は平均的で、コンスタントに削っていく能力が激減してしまった。
CWの出が速くなったことも、E2から乗り換えたばかりだと逆にキャンセルしづらくなるという短所にも繋がっている。ライデンにとってレーザーはダメージを取る武器でもあるが、それ以上に「いつでも撃てることをちらつかせ相手にプレッシャーをかけていく」武器なのである。

要するに前衛を張れるライデンである。
RWはその形状から近接でもかなりのリーチを誇る為に近距離迎撃能力も高く、隙を突いて相方への援護レーザーも飛ばせる重戦の皮を被った主戦機と見ると運用法が見えてくる。
総じてE2よりも決定力が上昇しているが、その分だけ不器用にもなっていると言える。あちらが「重迎撃型」ならこちらは「重攻撃型」か。
前ビや低空前ビによる硬直取りは勿論、近接信管を活かしたグラボムの近接直当て、立ちや歩きからのRW牽制、レーザーキャンセルなどの小技、ダッシュ近接の叩き込みなどワンチャンスをモノにするテクニックが活きる主戦機らしい堅実な戦い方が出来れば、火力と装甲の兼ね合いでダメージレースを勝ち抜いて行けるポテンシャルを秘めている。
どこからでも状況をひっくり返せる爆発力とそこから生まれる絶大なプレッシャーは魅力だが、それを発揮するために必要なのはE2以上に繊細な回避能力と位置取り。
そしてもっと重要なのは相方との連携である。
「援護を貰う」側になった際にこそ真価を発揮するこの機体をフルに活用することが出来れば、君も今日からサルペンさんだ。

HBV-512-A

辺境ゆえに兵站上の問題が多い火星戦線では、しばしば部隊のVRを同じ機種に統一することで運用性を向上させていた。
そのためHBV-512を使用する部隊でも様々な性格の機体が必要とされることになり、A型はそんな需要に応えた内の格闘戦モデルとなる。
主武装としてはHBV-502-Hに標準搭載されていたフラグメント・クローを再び搭載し、副兵装にS.H.B.V.Dで使用されていたビームソードユニット『Type-H型ハイパークラブ』、VOX系の一部ユニットに採用実績のあるエネルギーボムを採用している。
部隊の前衛として敵のMBVと激しい近接戦闘を行うことが想定されているため、ライデン系の特色である重装甲を維持しつつ、突撃性能を中心とした機動性も大きく強化されているという異色の重白兵戦闘VRである。

●ゲーム内性能
通称カニライデン。E系との共通点はほぼ皆無で、むしろテムジンAなどに近い。看板である近接攻撃は威力こそ凄まじいが、出が遅めなので総合的にはそこそこなレベルにとどまる。
重量級の中でもトップクラスの装甲を持ちながら、機動性も悪くないという高い基礎性能を誇る。
反面、射撃面ではケズリ性能こそ高いが決定的なプレッシャーになり得るものを持たないのが痛い。
このため主戦機としてみると重さを覆すアピールポイントがなく、若干器用貧乏で力不足気味。
寧ろ援護射撃寄りに戦う立ち回りでもかなり強いので、手数重視の支援機扱いに見ても良い。
また、機体がデカいのでカメラ位置によって「近接時に自機で敵が見えなくなる」なんてことがある。
CWは菱形加工したレーザー弾を連射するものとなっているが、レーザーなので敵弾を消しまくる相殺性能は健在で(無干渉の弾はRWのカッターで対応すると良好)、ゲージの回転率も恐ろしく速く、ダッシュ攻撃時は高い誘導性を有する。
ノーロックで置いておく、取り敢えず正面の敵に撃っておくなど抜群の牽制能力で幅広い使い方が出来る、まさにライデンらしからぬライデン。

箱◎版ではCWの弾速の高速化に伴い削り火力が凄まじいことになり、存在感が一気に上がった。
それに伴うプレッシャーの増大によって基礎性能の高さと対応性の高さも活かせるようになり、重量級主戦機として確かな地位を築いた。

余談だが、この機体の指揮官機である「A/c」のみ、アーケード版のCPU戦においてラスボスが倒せなくなるバグが存在している。

HBV-512-D

攻撃支援型ユニット『バック・スパイダー』を搭載したモデル。
バック・スパイダーは小型の端末を射出し、端末間に張られたVコンバータ阻害ビームで敵VRの行動を阻害するという装備。原理としてはHBV-502のクロー・ストリングと同一のものである。
右手にはバズーカの代わりにバイパーIIのものを大型化させたかのような形状のランチャー武器『マルチ・ランチャー レブナントS ver.2.44.』を装備。
最近のロボット物で言えばシュヴァルペ・グレイズのクローの形に似ていると言えば分かりやすいかもしれない。
支援を目的とした装備なので火力自体は高くないが、その分機動性能は良好。

●ゲーム内性能
オラタンライデンの標準装備だった設置ネットを独立させた派生機。

E系と同レベルの重装甲を維持しつつ、レスポンスやVターンが軽量機並みに向上している。しかし火力の低下が著しく、自分からダメージを取っていく能力が低い。
ネットによる拘束→相方の高火力攻撃が理想的につながればいいが、うまく連携が取れない場合はどうしてもダメージレースに不利がつくため、決して弱いわけではないのだが野良での評価はどうしても下がりがち。
他の機体にはマネのできない独自要素を多く持ち、固定相方と戦術をねった上で使えば光る部分もあるのだが…

LWはグランドボムを廃しアファ系列のようなナパームに換装している。
障害物を貫通する拘束ネットのCWに合わせて壁越しにプレッシャーを与えていける他(弾消し効果含めライDの初手として非常に重要)、遠距離支援にはTLWの通称「魔球」と呼ばれる高誘導遠投ボムが実装されている。
TCWにスパイラルレーザーを装備する一発逆転要素も有るが、射角が付けやすいTRWのレーザーなど援護射撃が出来ない訳ではないテクニカルな機体。

ダッシュ近接の威力が系統中でも最高レベル。
近距離でネット捕縛に成功した場合には問答無用で叩き斬ってやろう。
「スゴクシビレル・ネット・ジツ!! イヤーッ!!!」 哀れカゲキヨは爆発四散!
相方やステージに左右されやすい機体なので、ご利用は計画的に。

HBV-512-N1、HBV-512-N2

脚部をまんまブースターに置き換えた高機動試験型。
この脚部ユニットは元々、VCa3年(オラトリオ・タングラム期)において発生したDD-05を巡る一大攻防戦で試験的に投入されたブースター・ユニット「KK-66」を再設計したものであり、後述するゲーム内の性能からか、兵器としては安定感に欠いた「キワモノ」となっていた。
一方で一部の物好きからの需要が僅かながらあったので、汎用パーツを組み込んで採算ベースに乗せたN型として限定販売されたといういわくつきの機体。
基本武装はE型を基準にしており、N1型はフラット・ランチャーを、N2型はバズーカ・ランチャーを使用する。

●ゲーム内性能
ライデン系の中でも最上位のレアリティを与えられており、ゲーセンでは見たことのある人の方が少ないだろう。
そのくせ弱い。他機種よりダッシュ速度が気持ち速いだけにもかかわらず、Vターンが使用不能。おまけに体力もE1から削られている。
生存性が大幅に低下しているにもかかわらず、火力だけはあるので集中攻撃を受けがちなのはE1と同じ。対戦で使うには相方の許可を取ることが推奨されるマゾ仕様となってしまい、多くのライデンファンにとっては最上級レアの座を食いつぶす忌わしき存在として記憶されることになる。*1


Svt.gfk-512

S.H.B.V.D隊員が使用している高性能カスタマイズモデル。通常の派生機はあくまでUSSによる換装にすぎないが、このVRはVコンバータや機体構造の時点からカスタマイズされている。
基本構造自体は通常のHBV-512と変わりないが、gfkフレームと呼ばれる高品質フレームを構造に用いているのが特徴。
このため通常モデルに比べ機体強度が圧倒的に高く、装甲防御力や機動性能が大きく向上している。通常モデルと同様のユニットを装備することも可能なため、この機体も様々な派生機が存在する。

●ゲーム内性能
家庭用であるMARZに登場する反則ライデン
地上機動性は(ダッシュ持続性を除いて)747Aと同レベルなのに、その2倍以上と言う耐久力を持つというモンスターVR。
武装面でも特にE1のフラット・ランチャーのゲージの高効率化が著しく、若干ながら格闘の発動距離も伸びておりランチャーのリーチと相まって近接戦闘もそれなりに強くなっていると隙が少なく(逆にE2の方は元々短い近接発動距離が更に縮んでいるが)、対戦で使う場合は相手の許可が必須なレベル。
MARZテムジンこと747Jがあまりに強力すぎるため隠れがちだが、もしそのままフォースに持ってきたとしたらむしろこちらの方が問題になるぐらいに強い。

ストーリーではダイモンの口車に乗っかり隊を率いてプレイヤーと戦うギル少尉が搭乗するE1、その副官レドン軍曹が搭乗するE2が有名であり条件を満たせば自分で使う事が出来るが、両者ともカラーリングのセンスがいまいち。一般隊員の使ってる方が欲しかったと言ってはいけない。
しかし相手にする場合は必ず2vs1な上、その圧倒的重装甲と機動力を盾にライデンらしからぬ巧みな近接戦闘を仕掛けてくるギル少尉と、バズーカやボムでその逃げ道を封じつつ隙あらばレーザーでの横槍を狙うレドン軍曹のお手本のような連携プレーはシンプルだが非常に強力。
ちなみにライデン系ではこの2種類の機体(及び『X-Ω』に期間限定参戦した御坂美琴機)のみスパロボに出演経験があるが、参加作品がアレだったからかイマイチ話題にならない。






― この項目は決して最良の項目ではない ―
― しかし決して追記・修正しにくい項目でもない ―
― 我々のライデンは我々が追記・修正することによって初めて最良となる。またそうならねばならない。 ―
― それが項目としてのライデンを成功させる唯一の道である。 ―






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最終更新:2024年03月24日 20:41

*1 当wikiにおいてバーチャロイド項目の初稿を多数執筆しているkurenainobutayarou氏でさえも、本項ではこの2機種に関しては関羽ネタを仕込んだだけで一切の解説を放棄していた。