リングにかけろ

登録日:2016/01/24(日) 18:57:45
更新日:2024/02/16 Fri 13:22:37
所要時間:約 9 分で読めます





「私は…これほど美しい三人の若者の生涯を、見たことなどなかったよ…」


概要

『リングにかけろ』とは、車田正美による漫画作品である。
本作は1977年から1981年にかけて週刊少年ジャンプに掲載され、週刊少年ジャンプで初めて最終回を巻頭カラーで飾った作品でもある。
これでフィナーレを迎えた作品は滅多になく、今のところ「リングにかけろ」の他には『ドラゴンボール』『スラムダンク』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』しかない。

本作は最初は貧乏な家庭に生まれた少年が、名トレーナーの姉と共にボクシングを続けていく人情物語だったのだが、
だんだん過激なトレーニングや、大袈裟な演出が目立つようになり、インターハイ編あたりにもなれば
「どう考えてもこいつら、即プロ入りできるだろ」「観客席で見てる輪島や具志堅より強くね?」といったレベルまでインフレ。
仕舞いには場外乱闘やら、明らかに人間とは思えない選手やらがバンバン登場するようになり、
レフェリーは『テニスの王子様』以上に仕事をしなくなっていった。

この頃から、後の『風魔の小次郎』や『聖闘士星矢』といった車田漫画にありがちな
  • 無駄に暑苦しい驚き役
  • 暑苦しいフキダシ
  • 一目でカマセとわかる巨漢
  • 丁寧すぎる技の解説
  • 大袈裟な技名を絶叫しつつ見開き二ページ使って相手をぶっ飛ばす(通称「車田飛び」
  • 上空から激しく回転しつつ地面に叩きつけられる(通称「車田落ち」
  • 10リットルくらいありそうな大量出血
  • 死んだかと思ったら実は生きてました
  • どうやって食事や排せつをしているのかわからないほど長い長い城や砦を、相手が来るまでひたすら待っている悪役
などの要素が御多分に含まれるようになっていく。

そんなわけで本作は昭和50年代のジャンプの屋台骨を支え、本誌が300万部を突破した原因とまで言われた。
後発のジャンプ作品にも間違いなく多大な影響を与えている。
本作があしたのジョー路線のままであれば、「ジャンプ=友情努力勝利」だったかどうかも怪しい。

そこまで人気があった作品にも拘らず、残念ながらアニメ化は2004年(『星矢』『風小次』より更に後)まで待たねばならなかった。
これは当時、「アニメ化するとファンがそちらばかり見て、単行本が売れなくなるのでは」と危惧されていたからである。
この考えが否定され、「アニメ化すれば原作も売れる」という図式が定着するのは『Dr.スランプ アラレちゃん』以降である。
その頃には既にリンかけも過去の作品となっており、2000年前後のリバイバルブームに至って、ようやくアニメ化となった。
ちなみにこれに応じて単行本も『リングにかけろ1』のタイトルで改訂増補版が発売され、一部の台詞や演出に変更が行われた。
(※本記事は改定前のジャンプコミックスを底本にして執筆されました)

今なお本作の人気は強く、第二世代を描いた漫画『リングにかけろ2』が書かれたり、パチスロ化されたりもしている。

なお、このマンガでのジュニアボクシングは全く体重差を考慮に入れていない(作中でもそういうセリフがある)が、
現在は小・中学生であっても公式戦においては厳密な体重差を考慮した階級が設けられている。


1分くらいで分かる本作に登場するボクサー

  • パンチの速度が速すぎて、周囲数万人の観衆の目にも挙動が全く見えず、プロボクサークラスの動体視力でやっと何をやっているか判別できる
  • 回転する扇風機の羽根の間をパンチがすり抜ける(後に『魁!!男塾』でパロディされる
  • 空振りしたパンチの風圧だけでキャンバスが引き裂かれる(つまり、パンチが音より速い)
  • 当たり前のように拳で岩を叩き割る
  • 相手をリング上の照明まで吹っ飛ばすアッパー
  • 100人の兵隊を一人でぶちのめす
  • 重油で満たされた床で動き回る
  • パンチ一発で相手を数十m先の太陽の塔まで吹っ飛ばしてめり込ませる
  • コークスクリューの回転が凄すぎて喰らった相手がドリルみたいに回転する
  • 正中線連続五段突き総てにクロスカウンター
  • パンチの風圧で100m以上先のガラス窓が割れる
  • 殴られた相手が後楽園球場のガラスをぶち抜いて外の堀に転落
  • 120分の1秒のタイミングを見計らってパンチを打ち込める
  • 0.005秒未満で殴りかかってくる相手に5発のパンチを叩きこめる
  • 余りの速さに11人に分身して見える
  • 対戦相手を殴り飛ばして後楽園球場のバックボードにめり込ませる
  • 互いのパンチ力が高すぎて撃ち合った瞬間に閃光とともに爆発が起こる
  • 殴られた相手がとっさにリングロープを掴んだらロープがあっという間に千切れ飛ぶ

なお、これらの行為を行っているのは全員中学生である


用語解説

  • 影道一族(シャドウいちぞく)
日本ボクシングにおいて、プロを表とするなら裏を牛耳る暗黒格闘家。
忍者のような動きをしており、完全にルール違反とも取れる攻撃を平気で多用してくる。

  • カイザーナックル
1万年前のアトランティス大陸で…いや冗談じゃなくて本当にそう言う設定なの!
付ければ無条件でパンチ力が10倍に上がるというオリハルコン製のベアナックル。
雌雄一番であり、近くに寄せると共鳴する。これボクシング漫画ですよね?

  • 阿修羅一族
不死身に近い肉体を有する血族。実は、ある人物もここの末裔である。影道の二番煎じとか言ってはいけない。


登場人物

日本Jr

  • 高嶺竜児
CV:森田成一
本作の主人公。伝説のプロボクサー・高嶺豪の息子で、菊の弟。山口県出身だが訛りは無い。
序盤こそ弱虫で泣き虫だったが、義父の乱暴さに耐えられず、姉と共にオー・テリブル東京に向かう。
そこで豪の知り合いである三条家に住み込みで働きながら聖華学園に通い、生涯のライバルとなる剣崎と出会う。
後に義父が三条家に「たかり」に来たことを知ると再び三条家を後にし、大村のオッチャンに拾われた。
大村ボクシングジムでボクシングを学び、菊の鬼コーチの甲斐あって立派なボクサーに成長していく。
中学卒業後にプロ入りし、世界一困難とされるバンタム級で王者を目指すが…?
手首にパワーリスト(重り)を付けてトレーニングしていたことで、フックに独特な癖が付き、必殺技「ブーメラン・フック」に開眼する。
この技の登場が、人情ものから超人バトル路線へと転換する契機になった。

CV:置鮎龍太郎
該当項目参照。
竜児の永遠のライバル。剣崎財閥の御曹司で、天才的な腕前を誇るボクサー。
花形とか力石みたいな、よくあるスポーツ漫画のニヒルなイケメンライバル枠。
裕福な実家、高慢な性格、天才肌と、あらゆる面で竜児とは対照的。

  • 河井武士
CV:神谷浩史
新潟県の名家・河井家出身の少年で、竜児より1つ上(竜児からは「河井さん」と呼ばれ慕われている)。
ピアニストとしても高い腕前を持ち、その美少女と見まがうばかりの美貌から作中・リアルを問わず女性ファンがすっごく多かった。
当時は「腐女子」というものがあまりいなかったため、キャラ単体のファン(例「あーんスト様が死んだ!」)が多かったのもあるが。
竜児同様姉(もちろん美人)には頭が上がらない。
必殺技は腕を垂直になるほど跳ね上げるジェットアッパー。廬山昇竜覇の元ネタ?

  • 志那虎一城
CV:石川英郎
どっからどう見ても中学生ではないふてぶてしい面構えの少年。竜児より2つ上。
実家は京都府で剣道の道場を営み、スパルタオヤジの無茶な特訓で右手を痛めてから、サウスポーのボクサーに転向した。
妹(髪の色しか似てない)のことを何よりも大事に思っている、頼れる兄貴。
剣道も達人並みの腕前で、それを活かした「見切り」による天才的なディフェンスと、神速の左突きで相手を圧倒する。
必殺技は三連続で左パンチを叩きこむローリングサンダー、および強化型の五連続パンチ・スペシャルローリングサンダー。
その神技的ディフェンスは、相手にパンチがすり抜けたと錯覚させるほど。
ちなみにインターハイにも出場したが1コマで竜児に敗北し準決勝落ちとなる。
聖闘士星矢で言う所の氷河+紫龍。

  • 香取石松
CV:草尾毅
千葉県の漁師の家庭に生まれた。竜児と同い年で、菊姉ちゃんに片思いしている。
五人の中では一番小柄であり、コミカルな演出が目立つ。実家は高嶺家程ではないが貧乏であり、笑いが絶えない大家族。
短気で喧嘩好きな性格のため、だいたいの試合で先鋒を務める。
必殺技は跳躍力を活かしジャンプの勢いをつけて殴るハリケーンボルト。
聖闘士星矢では特に該当キャラはいないが、むしろ本作以降の小次郎、仁義、星矢、麟童ら主だった主人公達は大なり小なり石松の気質を受け継いでいると言え、結果的に竜児の方が車田漫画の主役としては珍しいタイプとなっている。

  • 影道殉
CV:櫻井孝宏
影道一族の頭首。その正体は、剣崎の双子の弟である(双子を不吉とする剣崎家の家風により、影道に養子に出された)。
日本有数の大財閥の養子先がなぜ幻の闇ニンジャ拳術宗家なのかは「2」に至っても謎である。
悪役ではあるが仲間思いのいいリーダー。
こいつだけ「北斗の拳」のキャラです、といっても信じられそうなほどボクシング離れした拳闘を使う。
影道が日本Jrに敗れた後は、兄と共に日本Jrを支えていく。
(※つまりこの時点で日本Jrは既にプロより強かったということになるが、それでいいのか…)


大村ジム

  • 高嶺菊
CV:田中理恵
本作のヒロイン。豪の長女で竜児の姉。山口出身で、ラムちゃんみたいなしゃべり方をする。アニメだとCV:田中理恵なので結構色っぽい。
チャキチャキの元気っ子で天才的なボクシングの資質を持ち、小学生編あたりまではたぶん竜児より強かった。
この時代の日本では女子ボクシングの知名度が0だったのが残念でならない(渡米した女性ボクサーとかはいた)。
剣崎とは最初は敵対していたが、次第に心惹かれていくこととなる。…巨人の星
竜児にわりと本気で殴り飛ばされて生きてるあたり、この人も人間じゃない。

  • 大村蔵六
CV:川津泰彦
大村ジムのオーナー。立派な髭の人の良さそうなおじさん。
ハゲ・コワモテ・喧嘩っ早い「某ボクシングマンガの主人公の師匠」とは真逆。
本業は町医者で、メディカル要素を加えた科学的なトレーニングを行う。料理にも詳しい。
行き場を失っていた高嶺姉弟にとっては第二の父親とも言える存在。
なぜかカイザーナックルを保有していたが・・・。

  • 大野六助(ロクさん)
CV:島田敏
大村ジム所属のボクサー。野暮ったい外見で、減量が苦手。
初期のリアル路線を突き進んでいた「リンかけ」において、竜児と並行する形で半ば主役を務めていた。
ボクシングの才能には乏しいが、竜児にとっては面倒見の良い優しい先輩。魚屋で働いている。
リングネームは輪島功一に因んでフロッギー六助。


その他(自称)中学生ボクサーの皆様

  • 辻本昇
インターハイ関東地区予選で竜児と戦った少年。高嶺家に負けず劣らずの昭和枯れすすきな家庭で育つ。
ろくでなしの実父に幼少期から当たり屋をさせられており、頑丈な体を有するが、ある一か所が弱点。
超人ボクシングに入る前の時点でボクシングを辞めてしまったのが悔やまれるが、竜児の最終戦には応援に駆け付けた。

  • ブラック・シャフト
CV:子安武人
アメリカJrの大将。全米ジュニアチャンピオンで、派手好きな黒人。
殺人鬼とかオカマとかレイシストとかヒャッハーとか、ボクシングのルールを知ってるのかどうかすら疑わしい連中と共に日本Jrに挑んだ。
世界大会編では真面目なボクサー4人と共に出場するが、汚い策謀で敗れ去る。

  • ドン・ジュリアーノ
CV:黒田崇矢
イタリアJrの大将。マフィア「シシリアンダンディ」のボスで、勝つためなら手段を択ばない。
いわば格闘もので避けては通れない「裏社会」を象徴するキャラ。
こいつ自体は結構強かったが、他の4人はただのカスであった。

  • ナポレオン・バロア
CV:森川智之
フランスJrの大将。バロア5兄弟の長男で、鎌鼬を発生させるほどのハイスピードパンチを得意とする。
弟たちは残りの先鋒~副将までを務めるが、みんなおそ松くんばりに顔がソックリである。
オスカル様を彷彿とさせる風貌。

CV:緑川光
ドイツJr(たぶん西)の大将。どっからどう見てもネオナチで、圧倒的なカリスマ性を誇る。
常に相手を研究し尽くしてから戦う知性派ボクサーで、剣崎も一目置いている。
あまりに美形なんで初版執筆者は最初女性キャラだと思ってた。

  • ヘルガ
CV:優希比呂
ドイツJrの副将。どっからどう見ても女性キャラだが一応男。IQ300の超天才で、スコルピオンの右腕とも呼べる少年。

  • ギリシアJr
アポロン(CV:三木眞一郎)を筆頭とする、ギリシャ神話の神々や勇者の名がつけられた少年たち。世襲制。
似たような奴らが『魁!!男塾』にも登場する。


その他

  • ギリシア十二神
聖闘士星矢のキャラではない。もう一々書くのも面倒なほどチートな人々。
正確な十二神とは名前が異なる。オリオンとかいるし。

  • ジーザス・クライスト
WBA世界バンタム級チャンピオン。モナコ出身。名前の通り技名には聖書の一説が長々と引用される。
その長さ、実に15ページジョジョ第五部の無駄無駄ラッシュの2倍にも及ぶ。
なお、表世界のプロボクサーの中で剣崎らと同じ超人クラスの描写があるのはこいつだけで、後の連中は……。


ゲスト

  • ガッツ石松
  • 具志堅用高
  • 輪島康一
インターハイ決勝を観戦していた。勿論ちゃんと許可は取っているが、アニメでは未登場。




余談

のちに『機動戦士ガンダム00』のキャラクターデザインを担当する高河ゆんは本作の大ファンであり、
連載当時、作者の自宅に押し掛けて仕事場を見学させてもらったという逸話がある。
また、ペンネームも、「嶺竜児」、「井武士」、「剣崎じゅん」の三人から取っている。



「追記・修正はパワーアンクルを付けてお願いするっちゃ!」
「あんまりだよ姉ちゃん!」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • リングにかけろ
  • リンかけ
  • 漫画
  • 週刊少年ジャンプ
  • 車田正美
  • ボクシング
  • ※中学生です
  • インフレ
  • 若者の人間離れ
  • 人間場外ホームラン
  • パワーアンクル
  • パワーリスト
  • アポロ
  • 車田飛び
  • 大袈裟
  • ボクシングのような殺し合い
  • ボクシングの王子様
  • 中堅までで三連勝
  • パチンコ化
  • 路線変更
  • 序盤は人情もの
  • 04年秋アニメ
  • 06年春アニメ
  • 10年春アニメ
  • 11年春アニメ
  • 集英社
  • アニメ
  • 東映アニメーション
  • マーベラスエンターテイメント
  • テレビ朝日
  • Sammy

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月16日 13:22