ビッグX

登録日:2016/01/06(水) 14:52:50
更新日:2024/03/18 Mon 17:38:25
所要時間:約 13 分で読めます




『ビッグX』とは手塚治虫の漫画作品であり、それを原作としたTVアニメ、またはその作中に登場する薬品、そしてそれを使用し…ああああああめんどくせえ!!!

このワードは本作に於いてあらゆる意味を内包しているため、とりあえずは作品についての概要を記す。

概要

漫画『ビッグX』は1963年11月から1965年2月まで集英社『少年ブック』に掲載された。
何それ、と思うかもしれないが、実はあの『週刊少年ジャンプ』のモトになった漫画雑誌なのである。
(後に手塚先生はジャンプにもマンガを多数載せることとなる。)
実際、永井豪の『ハレンチ学園』や松本零士の『光速エスパー』といった、初期のジャンプ掲載作品も最初は本誌で掲載されていた。

ウルトラマン』に先駆けること2年、日本の漫画で初めて「生身の人間が巨大化して戦う」という作品であり、
手塚先生も「ウルトラマンより早かったんだぞ」と後に述べている。
ついでに言うと『マグマ大使』のドラマ化も『ウルトラマン』より数週間早かったため、
手塚先生は「主人公が巨大化する作品」「特撮ヒーロー番組」の二部門を円谷より先に「日本初」の栄光に輝いちゃったというわけ。

しかし、話が進むにつれてドンドン内容が超展開なものになっていき、最終的に主人公は二度と祖国日本の地を踏めなくなるなど、
どことなく哀しい終わり方をしている。

アニメ化は1964年8月から全59話放送された。
…しかし、内容が古すぎるためフィルムが散逸しており、未だに一部のエピソードしかDVD化されていない。
アトムと違って本作は虫プロが作っていたわけではなく、当時出来たばかりの東京ムービーが製作を手掛けていた。
OPが終わる際には必ず主人公・昭が「この番組を提供するのは、僕の大好きな月のマークの花王石鹸です。」と律儀に宣伝していたことでも有名。

あらすじ

1942年12月。ナチスドイツは圧倒的な攻勢のもと、連合国側の国土を蹂躙していた。
大日本帝国の天才科学者・朝雲教授は、ナチスに招聘(という名の「軟禁」)され、ナチス三大兵器の開発に着手させられる。
一つはフォン・ブラウン博士のロケット兵器「V-2」。
一つはベルム博士の殺人光線。
そして最後の一つは、エンゲル博士の研究していた巨大化薬「ビッグX」

ヒトラーはナチスの全ての兵士をビッグXで巨人化させ、連合国を撃滅しようと目論んでいた。
しかし研究は間に合わず、ナチスドイツはレニングラード攻防戦以降、連敗を繰り返す。
ビッグXの兵器転用をよく思っていなかった朝雲教授は、息子・しげるの体内にビッグXの秘密を仕込んだカードを埋め込み、
いつかビッグXが人類の発展に寄与するその日まで封印しようと目論むが、ビッグX開発遅延の実態を知ったナチス残党は
エンゲルと朝雲を銃殺。こうしてドイツは敗戦し、その数か月後、日本の無条件降伏によって第二次世界大戦は終焉を迎えた…。

そして時は流れて1965年12月7日。
しげるの体内に秘められたビッグXの秘密を探るべく、ネオナチ系秘密結社『ナチス同盟』は遂にその毒牙を剥く。
取り出されたカードに記された場所を目指しナチス同盟は暗躍するが、しげるの息子・朝雲昭はそれを未然に防ぐべく
警察に通報しようとして、逆にナチス同盟に捕まってしまう。
ナチス同盟は昭をモルモット替わりにビッグXの実験に取り掛かるが、それにより昭は巨人になってしまった…!!

自らの使命に気付いた昭は、ナチス同盟を叩き潰し、ビッグXを人類の平和と発展のために使うという祖父の遺志を継ぐ。
今ここに、鉄の身体と優しい心を持った、正義の巨人が誕生した!!

ビッグX(薬品)

注入することで(途中で注射から経口服用型に変わった。やっぱり医者が描いてるマンガなだけはある)、生物の細胞を巨大化させる薬品。
しかもただ単に膨れ上がらせるだけではなく、総ての細胞が鉄よりも頑丈になり、宇宙空間や深海の環境にも耐えられるようになる。
ただし後述の時間切れの他、あまりにも上回るパワーの持ち主に苦戦したり、超高高度からの落下やロケットにしがみついた際のGなど強い衝撃や
毒物の吸引や光学兵器で意識を失うなど、全くの無敵と化すわけではない。
最大の弱点は、薬の効果が切れ体が縮んでいく際に全身の強い痺れと呼吸困難に襲われ、数分間身動きが取れなくなる事である。
ただし怪我の功名なのか、敵に敗れ意識を失っている間に時間切れとなった場合は、この苦しみを味わわずに済んでいる。
劇中でこの副作用が現れたのは昭のみで、注入された実験動物等にはみられなかった。マイナス方面の主人公補正といったところか。
また、ビッグXからただの人間に戻る様を丁寧に描写するためか、身動きが取れない所を狙って襲撃されるという展開も殆ど無く、
ちょうど効果が切れそのせいで敵を取り逃がすシーンはあれど、実際のところ弱点としては扱われていない。
総合して「良いも悪いも使用者次第、ある時は正義の味方、ある時は悪魔の手先」となる薬品。
大いなる力には大いなる責任が伴うのである。

植物細胞の場合はただ肥大化するだけだが、劇中の描写から植物では半永久的に効果が持続する模様。
食糧問題の解決案として朝雲・エンゲル両博士は開発していたフシがある。
もちろん死んだ細胞に関しては全く効果はない。
動物細胞に注入した場合には時間制限があり、昭曰く「3時間も持たない」とのこと。物語の都合で長くも短くもなり、ストーリー展開に便利
また、体内に異物が入った場合にはそれ自体は小さくならないため、ビッグXを服用して巨大化した状態で
満腹になるまで食事をすると胃袋が爆発して死ぬ(劇中でも戦車を呑みこんだ巨大化した蛇が爆死している)。

花丸博士によって注入量とレベルが規定されており、最初期はシャープペンシル型(当時は万年筆みたいな形だった)注射器で
目盛をいじるごとに注入量が変化していた。
経口服用型に改良されてからは、薬容器の目盛分飲むことで従来の注入量と同じ効果を発揮する。

  • 目盛1:先端から針が出る。
  • 目盛2:大きさはそのまま、全身が鋼鉄化し身体能力が猛烈に上がる
  • 目盛3:細胞が3倍のサイズになる
  • 目盛4:細胞が10倍のサイズになる。昭だとガンダムとか15m級巨人くらいのサイズに。
  • 目盛5:数十倍まで巨大化する。昭だと身長100mに。

高圧電流を浴びると変成してミクロX(効果は皆さんの予想通り)になる。手塚先生、そりゃないでしょそりゃ。

服用した生物に関してはビッグXを服用した生物一覧を参照。


用語集

  • ナチス同盟
ナチス残党の作り上げたネオナチ系軍事テロ組織。今じゃ絶対こんな分かりやすい名称使えない。
ナチスの復活、第四帝国による世界征服を目指し暗躍しており、既にいくつかの国を丸ごと掌握している。うわー、笑えねー。

  • クロス党
ナチス同盟と趣を同じくするネオナチ系軍事組織だが、こっちは更に過激であり、冷戦下の二大国を刺激し核戦争を起こしたうえで
放射能が無くなるまで宇宙でのんびり暮らしてから、誰もいなくなった地球を独り占めしようとしていた狂った団体。
幹部はKKKを黒く塗ったような格好をしている。

  • ガレア共和国
とある北国。50年来の寒波に襲われ、食糧難が國全域を覆っていた。
猛烈に軍部が強いろくでもない国で、多分社会主義国。

  • じねずみ要塞
ガレア共和国軍が国民から猛烈な税金をふんだくり、死ぬほどコキ使って建造していた地下要塞。キング・ガレアに乗っ取られる。

  • アブラム共和国
東南アジアの仏教国。南北に分かれて泥沼の戦争を…はい、モデルがどこかすぐわかったと思うので省略。



登場人物


ビッグX陣営


  • 朝雲昭(あさぐも あきら)/ ビッグX
CV:太田淑子/島田彰
本作の主人公。祖父と父の遺志を継ぎ、ビッグXで巨人となって悪と戦う少年。
年は若いが知恵が回り、ビッグXの研究データを解析し勝手に改善してしまうなど天才肌でもあり、
国連警察加盟後には自分で研究所を建てていた。うーむ、天才児だ…。学校に行ってないのもそのためか?
正義感が強く、鍛錬している描写はないがある程度の格闘戦や銃火器の扱いもこなせ、わりと容赦なく敵対者は殺す。60年代の少年漫画らしい。
ただし、ビッグXの効果が切れた生身での戦闘は基本的に負けフラグ。
ナチス同盟、クロス党を壊滅させた功績から国連機構の武装監視員(レインジャー)に任命された。労働基準法…
1967年、日本人初の月着陸を成功させた。まだアポロ計画は地球の周りをグルグル回ってた頃なのよ…

花丸博士から、シャープペンシル型注射器とともに強化ゴム製のスーツを譲り受けており、
ビッグX服用直後着ていた服がバリバリと破れ、そこからスーツを身に纏った昭/ビッグXが現れるのが、本作で定番の見せ場となっている。
スーツを受け取ると同時期に、ナチス同盟が昭個人を指してビッグXと呼称するようになり、これを受けて昭も活動時にビッグXを名乗るようになる。
ヒーロー『ビッグX』の長く険しい戦いの始まりである。

ちなみにこのスーツ、カラーでは真っ赤な軍服に紫色のマントを羽織っているという、かなり派手なデザインなのがわかる。
作中で目盛2状態で、または一時的にビッグXを紛失した生身でナチス同盟やクロス党の施設に潜入するという展開があったが、
前者はナチス同盟の誘い込みの罠だが、後者はハンスのせいで厳戒態勢となった基地内であのスーツのままでの行動、よくバレなかったものである。
耐久性に関しては、生身時は銃弾が掠めマントが破ける、拷問でボロボロの姿になるなど普通の衣服と大差ないはずだが、
ビッグXと化している間は基本的に、銃弾どころか火炎放射やミサイル爆撃を受けても傷一つというか埃一つ付かず、
宇宙空間に出ても平気というビッグXの身体同様の頑丈さであり、それどころか
ビッグX服用直後のコマでボロボロだったスーツが真っ新に、紛失したマントとヘルメットも再び身に着けているという描写も度々みられている。
やはりというか、これら描写に対する説明はない。最初から超展開の片鱗はあった
スーツには胸ポケットがあり、ニーナらヒロインをここに収納しビッグXとして戦いに赴く展開が幾度かあったが、
跳梁跋扈する巨人の胸元にいながら彼女らも無傷であった。これら描(ry


  • ニーナ・ベルトン
CV:白石冬美
本作のヒロイン。ナチス同盟に捕まっていたチュニジア人*1少女で、テレパシーが使える超能力者。ナチス同盟の収容所で両親と死別の末に身に付けている。
昭と共に悪と闘い抜いた女傑で、ハンスらビッグXを狙う悪者をテレパシーによる精神攻撃で叩きのめし、昭とは違う分野の強さを発揮する。
テレパシーで動物と心を通わせることもでき、ビッグXを注射された巨大ライオンとの戦いでは、敵わず倒れ伏し絶体絶命のビッグXを
巨大ライオンをテレパシーで大人しくさせることで救い、暴力を用いらず場を収める活躍を見せた。
このようにニーナが昭を助けることも、昭がニーナを助ける、その過程で罠にかかり危機に陥ることもあり、正統派なヒーローとヒロインの関係と言える。
クロス党壊滅後、昭とともに国連機構の武装監視員補佐に任命された。
何故か漫画とアニメでキャラクターデザインが大きく異なる。


  • 花丸博士
CV:永井一郎
しげるの友人であり昭のよき理解者。東京の某病院に勤務する医学博士で、昭を助けるためビッグXの改良その他に貢献した。
前述のビッグXスーツの開発や、後述の「M式手術」も行うなど、あらゆる分野に精通した天才科学者でもある。
昭の本格的活動前のビッグX性能テストでは、服用後効き目が表れたのを確認して拳銃をビッグXの胸板に発砲する、
遠洋から無事陸地まで戻れるかのテストでは、ビッグXを注射したウナギを障害として海に放つなど、なかなかにスパルタな面も。

余談だが、しげるの体内から摘出したビッグX計画のカードには、片面に光を当てると昭がビッグXと化した姿に酷似した
人影が浮かびあがる仕掛けが施されているが、博士がそれを基にスーツをデザインしたのか、それとも偶然の一致かは語られていない。

似たような人がタイムマシンを発明したり、ブラック・ジャックに医学を教えたりしている。


  • 昭の母 / 47号
CV:渡辺知子
しげるの妻。美人。
実は日本人ではなく中独のハーフであり、幼少期はゲシュタポで訓練を積まされていた。
ナチス壊滅後、ビッグXの秘密を知るためにナチス同盟から日本に送り込まれ、しげると結婚してビッグXの在り処を探れという任務を受ける。
しかし時が経つにつれ、本当にしげるを愛するようになり、息子・昭が生まれたことで、遂にナチス同盟を裏切る。
こう書くと死亡フラグビンビンだが、孝行息子がナチス同盟をぶっ潰してくれたおかげで任務は雲散霧消。
昭とも和解し、研究を手助けすることになる。良妻賢母や…。


  • 朝雲しげる
CV:仲野宏
昭の父で朝雲教授の息子。若い頃は昭そっくりだったが、1965年時点ではつるピカハゲ丸に。まだ30代なのに…。
体内にビッグX計画を記したカードを埋め込まれていたためナチス同盟に狙われる。
仕事は父と同じく科学者であり、花丸博士と共にビッグXの平和利用を行おうとするが、ナチス同盟の凶弾に倒れる。まだ30代なのに…。


ナチス同盟

  • ハンス・エンゲル
CV:山本圭子
いわゆるライバルキャラ。朝雲教授とビッグXを共同開発していたエンゲル博士の孫。
顔はかわいいが優柔不断で欲張りで狡猾なクソヤローであり、改心した→オンドゥルラギッタンディスカ!!→ごめん嘘→改心(最初に戻る)を
延々続けていたろくでもない奴。
ただ、「開発中に朝雲教授がビッグXの成果を持ち逃げし、そのせいでエンゲル博士が銃殺された」というナチスドイツ陥落当時の
誤った情報を信じており、エンゲル家の名誉にかけなんとしてもビッグXを取り戻さんとする、一応重いバックボーンも持っている。
実際は、これ以上戦火を広げぬため朝雲教授とエンゲル博士が共謀してビッグX開発をわざと遅らせ、敗戦直前の研究記録抹消として
二人が銃殺されたのが真相だが、それをハンスが知ることは無かった。
上記の生来の気質に加えナチス式教育で育ったため、結局ろくでもない奴には変わりないが、ビッグXを取り戻さんと食らいつく気骨は本物で、
冤罪であるが負い目を感じていることや、ハンスのある種健気な姿を見続けていた昭は「どうしても彼を憎めない」と評している。
なんとか和解の道を模索し、ニーナの助けも借りて一時は和解を果たすも、キング・ガレアに唆かされ結局は決別、悲しい結末を迎えることに…

初登場時にはナチス同盟の秘密警察長官として登場し、昭を捕らえビッグXを渡すように迫るが、幾度となく昭に脱走され、
最終的にドロンボー一味やらばいきんまんやらロケット団やらといったレベルにまで落ちぶれとうとう総統から死刑宣告が下される。
ナチス同盟の本性を知ると憤激し昭と協力してこれを叩き潰した。
クロス党との戦いでは協力する振りをしてクロス党からビッグXを奪おうとするが、銃撃を受けて瀕死の重傷を負う。

朦朧とする意識の中病院に搬送。花丸博士にもう手遅れと診断されるが、最終手段で人間の体を捨てサイボーグとなれば生きられると告げられ、これを了承。
「M式手術」の直前、花丸博士に「うんと大きな… 見上げるほど大きな体にしてほしい」と願ったことで、
奇しくも後述のV-3号に酷似した姿の巨大サイボーグとして復活。ビッグXへの未練と執着が感じられる願いであった。
サイボーグとなってからは目盛4状態のビッグXとほぼ同程度の全長となり、単純なパワーではビッグXを上回る性能を得た。
ただし、V-3号のような特殊装備は内蔵されておらず、パワーと頑丈さに任せた力押ししかできないのが欠点。
結局は人間時代と同じく、直接戦闘は避ける参謀ポジションに落ち着いた。
その後2度の直接対決ではビッグXを圧倒し叩きのめしたが、最終的にそのどちらでも搦め手によって敗れている。

後にそっくりさんがブラックジャックみたいな男と諍いを起こすことになる。


  • ナチス同盟総統
禿げ頭に眼帯の男。
V-3号で昭とハンスを拉致しナチス同盟本部へ連行、昭からビッグXを奪いもはや不要と両名の処刑を命ずるが、部下の報告で
奪ったのがビッグXをごく少量しか入れられてない注射器と知るや、中止するために処刑用のライオンの射殺を命ずるも、
既にビッグXの効果が出ていたライオンに逆襲され本部内はメチャクチャに。この間に昭は本命のビッグXを服用し、
本部内の電気系統を破壊して脱出。おかげでハンスも救われた。

巨大ライオンとビッグX双方から追われる身となり、軍事基地に逃げ込みまずどちらかでも始末しようと配備ミサイルを待機させる。
追ってきたビッグXにミサイル50発をしこたま浴びせるも、全く通用せずビッグXは無傷。当然逆襲され軍事基地はあっという間に壊滅した。
バッテン創膏だらけのギャグ顔で命からがら逃げだすも、ちょうど行く先から巨大ライオンが現れた事で命運は尽き、乗っていた車もろとも
谷底に叩き落とされ、悪の首領と思えぬあっけない死を遂げた。

見た目は大物感漂ういかにもな男。ナチス同盟編終盤に満を持しての登場で、実質しげるやニーナの両親の仇という憎くき重要ポジションのはずだが、
そもそも出番が少なく組織の首領として明らかに無能という、どうにもぱっとしないが同編のラスボスであった。一応。


  • V-3号
ナチス同盟が作った無人兵器。ローマの鎧兜のような姿をした巨大ロボット。クロス党や占領後のじねずみ要塞でも製造され、ほぼ全編で姿を見せた。
戦車の弾を弾き返すほど頑丈であり、眼からは強力な熱線を放ち、昆虫型の無人観測器を体内に無数に格納している。
ビッグXスーツにもローマ式の意匠が若干みられるため、両者は対になるキャラクターとしてデザインされた可能性も考えられる。
だが、実際の立ち位置としては目盛2状態のビッグXにすら勝てない、いわゆる「やられメカ」である。量産機であるため特別感もない。

それでも、ビッグXの初陣である最初の対決ではわざと破壊されることで、機内の仕掛けによりビッグXを気絶させ捕獲、
クロス党編では、咄嗟に目盛2状態にしかなれなかったビッグXを数の暴力で窮地に追い込む、
ガレア共和国編では、巨大獣型兵器にビッグXが掛かり切りの間に戦車隊を蹴散らす、と立派に(?)悪の兵器をやってはいる。


クロス党

  • クロス党首領
クロス党の創設者。過去にある人物の影武者を務めており、瓜二つの姿をしている。
ビッグXからの偽情報で(一軍を率いてではあるが)現場にノコノコ顔を出した所でスクラップと化したV-3号軍団を見せつけられ、
数に任せた安易な策でビッグXを始末しようとするも、当然通用せずシルバーへの手土産としてホワイトハウスまで運ばれ観念した。またぱっとしないラスボス...
ちなみに元の本人も、しげるの少年時代を描くプロローグに登場している。


  • シルバー
クロス党幹部。アメリカ大統領に立候補し、核戦争を引き起こそうと画策する老獪な男。
ビッグXに企みを全て看破され、ホワイトハウスにて自決した。


  • クロス党司令
東南アジアのジャングルに位置するクロス党基地の司令官。獲物は高圧電流装置つき鞭。
目的のためには手段を選ばぬ残忍な男だが、ゲルダがビッグXに殺された(実際はもちろん違う)と知るや涙し激昂しており、肉親への情は本物である模様。
基地壊滅後は昭の始末およびビッグX奪取のため日本に先回りし、研究所を急襲。ニーナを人質にとり
ちょうどビッグX改良型の開発中だった昭を心身ともに揺さぶり新薬開発を急がせる。
しかし隙を突きビッグXを服用した昭に返り討ちされ、これまで幾度も苦しめてきた高圧電流鞭を見舞うも
目盛4状態のビッグXには通用せず、掴まれた鞭ごと遠方へ投げ飛ばされ最期を遂げた。


  • ゲルダ
クロス党司令の妹。クロス党幹部と後述のスパイダー隊隊長も兼任している。
小太りなクロス党司令とは対照的な美人で、クロス党編ヒロインその1。
表面上は冷徹で気丈に振舞っているものの、実際は争いを好まぬ優しい性格。基地内に潜入していたビッグXの背後を取った際、
すでに生身に戻っていると知ると銃を下ろし部下に生け捕るよう命じる、山犬をおびき寄せるため炎天下で縛り付けられている
昭を見ていられず水を飲ませてやるといった行動から優しさが垣間見える。
ビッグXの最後の逆襲の最中、保護されビッグXスーツの胸ポケットに入れられるが、なおも続く激しい戦いの中
「こんな馬鹿げた戦いはもうたくさんよ」と顔を出した所に、胸に流れ弾が当たり死亡。クロス党司令はビッグXのせいだと決めつけ、蟠りが解けることは無かった。


  • 山犬
基地周辺のジャングルに生息する山犬たちのリーダー。性別:雌。クロス党編ヒロインその2。
ビッグXを奪ったスパイダー隊をハンスとともに追い、先を越されまいとする昭の前に沼でワニに襲われている状態で出くわす。
見ていられず僅かに残ったビッグXの力で救ってくれた昭に惚れ込み、以後行動を共にする。
野生の力で基地セキュリティの抜け穴を昭に示し昭に先立って潜入するも、基地内で実験動物と間違われビッグXを注射されてしまう。
巨大化し、昭を背負ったまま大立ち回りを繰り広げるも渦中で注射器を誤って飲み込んでしまい、そのまま逃げるよう昭に促されジャングルに姿を消す。
それから後、ジャングルを彷徨っていたニーナと対面。彼女の助力で注射器を無事吐き出し、ともに昭の救出へ向かう。
ニーナの策で山犬たちの群れに混じり縛り付けられた昭のもとへ向かうが、咥えていた注射器が昭の手元へ渡った瞬間銃撃を受け死亡。
そして昭は、怒りと悲しみに打ち震えビッグXと化した。


  • スパイダー隊
クロス党基地直属の特殊部隊。見た目は人型のまっくろくろすけといった感じだが、初見では得体の知れなさもしっかり感じさせられる。
某蜘蛛のヒーローのごとく木々を舞い、粘着液を発射するクモ糸銃や華麗なチームプレイで標的を翻弄する。
ハンスを助けるために目盛2状態だったとはいえ、ビッグXをクモ糸銃のみで拘束してしまうという、なにげに生身の真っ向勝負で
ビッグXに勝利した数少ない存在である。ゲルダを除き、中身はただのおっさんとかのモブ顔だが
基地壊滅時に全滅したのか、舞台を日本に移してからは登場しない。


ガレア共和国

  • ビッグXを摂取したイモ系植物 / キング・ガレア
ビッグXを用いた食糧支援でガレア共和国を訪れた昭達に対し、ビッグXを奪おうとならず者達が狼藉を働いた際のアクシデントで
地中の植物がビッグXを摂取したことで生まれた複数の個体。僅かに意識のようなものが芽生えており、強靭な根っこを触手のように操り人や家屋を襲う。
植物であるためテレパシーが通じないことや、痛覚がなく物理的な攻撃に全く怯まず襲い来る姿は二人を戦慄させた。
根の触手での絡めとりや締め付け、異常なタフさでビッグXを苦しめるが、気絶しているニーナを守るための咄嗟の行動が起点となり、
根を地面に縫い付けられた挙句、即席の斧でバラバラに引き裂かれたことでこの個体は沈黙した。
二人が息をつくのも束の間、火の手が上がる隣村へ向かうとそこは別の個体に蹂躙された後で、方々に根が絡みついた無残な姿を晒していた…
さらに、じねずみ要塞を襲撃した個体は明確な知能が発現しているらしく、占領直後に要塞中枢のスーパーコンピューターを用いて合成音声を発し、
自らをこの要塞の主「キング・ガレア」であると宣言した。

ガレア共和国編後半では、昭と一時的に和解し協力を依頼されていたハンスを、キング・ガレアはその野心を焚き付け懐柔させる。
協力者となったハンスの指揮のもと、V-3号の量産や新型兵器の開発により要塞のさらなる軍備拡張を行った。
決戦では、手始めに軍の戦車隊をV-3号軍団で殲滅。目盛5状態となったビッグXの奮闘でV-3号軍団を全滅させられるも、
高熱兵器を用いたハンスの策でビッグXに重傷を負わせ、最終的に勝利。さらに水爆ミサイルを全世界に発射すると宣言し
一時は圧倒的優位に立つが、後に交渉役として要塞を訪れた昭の秘策により、植物である点を突かれあっさりと枯れ果てた。

廃墟となった要塞前から昭とニーナが去るシーンで同編は幕を閉じるため描写はないが、
その後、残った個体もビッグXの活躍と前述の秘策で駆除されたものと思われる。


  • ブルブ博士
ガレア共和国の窮乏を国連に訴えた科学者。お茶の水博士に似ている。じねずみ要塞建設には反対していた。


  • ゼンダ少佐
じねずみ要塞作戦司令官。隻眼の中年男性。ここを世界最強の要塞に仕立てようとする軍事バカ。
しかしキングガレアに要塞が乗っ取られると、身分関係なく彼も奴隷として扱われてしまう。
昭が要塞を開放すると、一転して元のようにえばり散らしていたが、大臣にこのスイッチを押すよう命じられ…


  • 大臣
ガレア共和国の要人。キング・ガレアに占領されたじねずみ要塞を廃棄すべきと進言する昭を突っぱね、更に要塞の機密保持のため昭を暗殺しようとする。
しかし事前にビッグXを服用していた昭に刺客が返り討ちにされ、暗殺の主犯なのがバレるとヘリコプターで逃亡。
ヘリにしがみ付いた昭と根競べの最中、植物が根を張りめぐらす地域まで来てしまい捕獲され、絞め殺される所を昭に救われた。
キング・ガレア達の恐ろしさをその身で味わった事で改心。要塞破壊への全面協力を約束し、一時的に軍の指揮権を昭へ移譲した。
ハンスの策に敗れ意識不明の重体となった昭に手を下すことはせず、意識が戻った際に心配し気遣う様子から、本当に改心している事がうかがえる。
昭がキング・ガレアとハンスを倒した後、ゼンダ少佐の手を借りて要塞を爆破。災禍に終止符を打たせた。


国連

  • モル博士
国連科学財団所属の科学者。人類月着陸計画の発案者。計画を邪魔するスパイの存在に気付き、昭とニーナを招聘した。


  • カリスト隊長
国連月ロケットの隊長。やや乱暴な性格。
実は月着陸計画におけるスパイとは、彼を含む5人全員。
月に巨大なレーザー砲を建造し、地球をいつでも狙えるように画策していた。
彼らはいずれも戦争が続く現代社会に辟易しており、誰も悲しまず、誰も殺し合わない世界の「共同の敵」になるためにこの計画を乗っ取った。
今までの悪役とは異なり、自らが悪に手を染めた際にもどこか悲しげな顔を浮かべていた。


  • ヘレン博士
国連月ロケットに搭乗した女性科学者。妹をベトナムで失っている。
実はカリストの内縁の妻。


  • 大友技師
  • ドクター・アブラハム
  • モハメット技師
いずれも国連月ロケットに登場した宇宙飛行士たち。
カリストと共にカグア軍残党と闘い、5人全員が戦死を遂げる。


月面

  • カグア
800年前に月に辿り着いた異星人、ハボス人の作り上げたアンドロイド。800年間、地球を攻撃するために月でじっとその機会をうかがっていた。
平安時代の地球(日本)で人間に化けてスパイ活動を行っており、その時にかぐや姫と呼ばれていた。
国連月ロケットに搭載されていた道具や武器を使い、地球攻撃を開始する。


アブラム共和国

  • 蟻田博士
東都大学で教授を務める、日本有数の化学者。
しかしその正体はアブラム共和国のスパイであり、名を変え日本に潜伏して生物学と化学を研究していた。
47号同様既に配偶者や子供もおり、祖国への研究結果譲渡を躊躇っている。


  • ユーユー
国際スパイ秘密組織の親玉。白菜みたいな髪型。
蟻田の細胞縮小薬を南アブラムに持ち帰り、兵器として密売しようとしている。


  • ガン・ガン・バン・バン将軍
南アブラム共和国軍の将軍。
ABC兵器を使うと海外から叩かれるため、法の抜け穴を通る細胞縮小薬で敵兵を無力化させようと考えていた。


  • ゴースト中尉
元は米軍特殊部隊のサイボーグ。体をスカスカの霧に変えて分子の間を通り抜けることが出来る…それもうサイボーグって言わねえよ。
かつてクロス党と闘っていた頃の昭を軍事基地の侵入者と勘違いして一悶着起こしたこともあったが、
そこでクロス党の人類滅亡計画を知ってしまい、昭に協力した。
が、別に善人というわけではなく、南アブラムの諜報部に派遣されるとそこを瞬く間に掌握し、北アブラム殲滅のために暗躍する。
本人もスパイとしての矜持と言うものがあるらしく、見境なく金で裏切りまくるユー・ユーのことを毛嫌いしている。
「平和のためにミクロXを使って北アブラムを滅ぼさないか」と昭に勧めるが、
「そんな一方的な暴力の蹂躙で解決したらビッグXやミクロXの平和利用とは言えない」とにべもなく断られてしまう。
最期はとてもあっけないものだった。


  • 怪物兵士
ゴースト中尉の手下の大男。生身の人間にも拘らず目盛3状態のビッグXとカチ合えるバケモノ。頭はゴリラ並。





余談

  • 手塚治虫先生は1965年に「サンデー毎日」で、昭と鉄腕アトムが戦う短編『ひょうたんなまず危機一発』*2を掲載している。
 こちらは悪役が魔神ガロンを呼び出すわ、レッド公がサファイアを巡って首と胴体で壮絶な戦争をするわ非常にカオスな内容である。

  • GBA『鉄腕アトム アトムハートの秘密』第2章*3では、上記の『ひょうたんなまず~』のパロディと思われるシーンがある。
 太平洋で頻発する飛行機事故を調査すべく島に訪れたアトムを事件の犯人だと勝手に思い込んだ昭が中ボスとして登場する。
 追い詰められた昭は目盛5を使って巨大化する…のだが、ゲームの仕様上そこまで大きくはない。
 また、このステージには雑魚敵としてV-3号も複数体登場する。

  • 前述したアニメ版は、アニメ制作未経験のスタッフばかりで制作されたらしく、当時の技術を考慮してもずさんな出来だという。
元々アニメ制作とは無縁な人形劇を製作していたスタッフに当時のTBSが「人形を動かすのと絵を動かすのは同じだよ!」というトンデモ理論で
半ば強制的に作らせたのが原因だという。
ストーリーもナチス同盟等とは全く関係のない悪の組織やギャングとビッグXが戦うだけという子供騙しのような有様である
(ちなみに脚本には漫画家であり、手塚先生と同じくトキワ荘出身のつのだじろう先生も関わっている)。
しかし、そんなアニメを作っていた東京ムービーがわずか10年で「ルパン三世」や「ど根性ガエル」等の名作アニメを制作したのだから
技術の進歩は恐ろしい(あの「名探偵コナン」や「それいけ!アンパンマン」を制作しているのも東京ムービー(現在はトムス・エンタテイメント)である)。

  • ちなみに『鉄腕アトム』では昭たちよりさらに2年先駆けた1965年にソ連のミーニャ・ハロヴィナ中尉が月面に着陸している。
他の作品だと映画『宇宙大戦争』でも1965年に月面着陸を成し遂げているが、
『サンダーバード』ではアポロ11号着陸の5年後の1974年ということになっている…。

客演情報

  • ハンス……『ブラック・ジャック』第113話「もう一人のJ」トレジャーハンターのハンス役
    同第162話『魔女裁判』外科医ハンス・エンゲル役






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最終更新:2024年03月18日 17:38

*1 劇中では「カルタゴ人」描写

*2 誤字ではない。映画『OO7/危機一発』の捩り。

*3 『鉄腕アトム』内のエピソード「人工太陽球」と「十字架大陸」がモデルのエピソード。なぜか本作ではW3とかマグマ大使も登場する。