エイヴィヒカイト(Dies irae)

登録日:2015/12/25 (金) 6:20:00
更新日:2022/08/28 Sun 02:51:19
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永劫破壊(die Ewigkeit)



エイヴィヒカイトとは『Dies Irae -Acta est Fabula-』に登場する術理。

カール・クラフトが編み出し、聖槍十三騎士団を魔人へ変えた魔術式。
その実態は聖遺物を扱えるよう人間を超人化させることにある。
その習得難易度は非常に高く、どんなレベルであれ扱えるならその人物は超人と称して間違いない。




◆聖遺物

『Dies Irae』作中における聖遺物とは、キリスト教における聖人の遺物(ロンギヌス、聖骸布、聖杯等)だけを意味するのではなく、人々から膨大な想念を浴びた器物を指す。その想念は種別を問わず、信仰心や怨念等、どのような形でもそれに値するだけの質と量さえあれば聖遺物と呼べる物になる。
過去の英雄や化生に縁のある神秘を持った器物がベーシックだが、より人間を死に至らしめ多くの畏怖を集めた近代兵器も聖遺物に該当する。
ただし、後者の場合は「直接人々を殺戮した単一の兵器」でなければならない。この条件で聖遺物と化した兵器は例外なく強力であり、事実黄金の近衛である三騎士もこのタイプの聖遺物である。

聖遺物は1人につき1つだけ人と器物の間で契約できる。契約した人間(聖遺物の使徒)の身体は聖遺物と同化し、霊的に強い繋がりを持つ。その為、聖遺物を元の持ち主から強奪するのは極めて困難であり、作中の成功例は一つだけ。人と聖遺物の契約には相性も大きく関係し、当然強い繋がりがあればより強力に力を引き出せる。
なお、例外として藤井蓮ラインハルトの持つ聖約・運命の神槍を除く全ての聖遺物を扱うことができる。

聖遺物による攻撃は物理的・霊的の両面で防がなければ止められず、その傷は通常の負傷ではなく、歴史を重ねることで蓄積された想念という呪いであり、致命的な毒となりうる。
常人なら即死。たとえ実体を持たぬ死霊の類でも、聖遺物を武装化する彼らの秘奥はあらゆるものを殺傷する。人であれ、魔であれ、神であれ、戦えば鏖殺。修羅の戦鬼のみが揮える禁断の遺産とその攻撃を、無効化する法は事実上存在しない。

聖遺物およびその使徒は、聖遺物でしか破壊できない。
この理を操る者には銃火器を始めとする“常識的攻撃手段”が原則として通用しない。毒ガスを吸っても死なず、無酸素で窒息するようなこともない。

聖遺物が砕かれるとその使い手も砕かれる。
これは聖遺物に宿る魂と聖遺物に溶け合い融合した魂の二つを砕かれると、霊質の破壊が物質の破壊に繋がるという理屈。



  • 各人の聖遺物
人物 聖遺物 概要 形態
藤井蓮 罪姫・正義の柱(マルグリット・ボワ・ジュスティス) 生前のマリィの首を落としたギロチン 人器融合型
ラインハルト 聖約・運命の神槍(ロンギヌス・ランゼ・テスタメント) 兵士ロンギヌスがキリストの腹を貫いた際使用したとされる槍 武装具現型
トバルカイン 黒円卓の聖槍(ヴェヴェスブルグ・ロンギヌス) 緋々色金を材料に製造された聖約・運命の神槍の偽作 武装具現型
トリファ 黄金聖餐杯(ハイリヒ・エオロー) ラインハルト・ハイドリヒの肉体そのもの 特殊発現型
ヴィルヘルム 闇の賜物(クリフォト・バチカル) ワラキアの英雄、ヴラド三世の結晶化した血液 人器融合型
櫻井螢 緋々色金(シャルラッハロート) 緋々色金を材料に製造された両刃剣 武装具現型
ベアトリス 戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ) ザクセン選帝侯ことフリードリヒ三世の宝剣 武装具現型
氷室玲愛 聖櫃(スワスチカ) 黄金練成のための生贄が捧げられる土地。玲愛の場合は諏訪原市 事象展開型
イザーク 同上。イザークの場合はベルリン 事象展開型
マキナ 機神・鋼化英雄(デウス・エクス・マキナ) ティーガー戦車とマキナの魂を合成した生体兵器 特殊発現型
ルサルカ 血の伯爵夫人(エリザベート・バートリー) バートリー夫人が獄中で書き記したとされる拷問日記 事象展開型
エレオノーレ 極大火砲・狩猟の魔王(デア・フライシュッツェ・ザミエル) 第二次世界大戦で建造された80cm列車砲ドーラ。最大の聖遺物 武装具現型
シュピーネ 辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワ・ゲットー) ワルシャワ刑務所の絞首縄 人器融合型
リザ 蒼褪めた死面(パッリダ・モルス) 赤子の皮を重ねてできた仮面 事象展開型
シュライバー 暴嵐纏う破壊獣(リングヴィ・ヴァナルガンド) ドイツの軍用バイク、ZundappKS750 人器融合型
メルクリウス 藤井蓮(ツァラトゥストラ) 彼の血を元に作られた聖遺物を扱う聖遺物 特殊発現型

聖遺物と契約者の相性、親和性なら肉体そのものが聖遺物であるトリファ、マキナは群を抜いており、ヴィルヘルムがそれに続く。



◆基本機能

聖遺物の使徒はそれだけで強力な身体能力、防御能力を備えた魔人であるが、エイヴィヒカイトを運用するためには燃料として人間の魂が必要であり、術者は慢性的な殺人衝動に駆られるようになる。
人間を殺せば殺すほど魂が聖遺物に回収され、百人殺せば百人分の、千人殺せば千人分の命を得るため、それに比例して死に難く、感覚を含む身体能力等も増していく。
単純な不死性にしても保有数の魂だけ殺せばいいというものではなく、回収した魂の数に比例した霊的装甲を纏うことで肉体の耐久度が格段に向上している。

何千人もの魂を喰らった術者はナイフや銃弾等の対人武器程度では傷一つ負わせられない。
普通の人間が想像し得る破壊という意味においては、一発で何千人も殺せる武器でなければ話にならない。(螢曰く、ベイやマレウスは大空襲の中でも無傷、真っ当な手段で斃すなら核兵器が必要。序盤によると、ベイは街を地図から消せる)
つまり魂を破壊する手段がある魔術的な攻撃以外はほぼ無効ということである。仮に肉体が損傷・欠損しても、魂を糧に瞬時に再生することが可能。

なお三騎士は数万人~十数万人の魂を纏った不死英雄である。正田氏によると、核爆発級の攻撃力、核爆発でも殺せない耐久力を持つ。頭部や心臓を潰されても、全身が木端微塵になっても、魂を糧に瞬時に再生可能。

ただ魂にも質があり例えば若く健康な青年、職業軍人といった人間の魂は強く質が良く、病人、子供、老人の魂は弱く質が悪い。
またエイヴィヒカイトの術者は程度の差はあれ例外なく質の高い魂の持ち主なので、内蔵された魂がなくても自分の魂を燃料として切り売りし戦うことも可能。もちろん戦力は大きく落ちる。



◆位階

エイヴィヒカイトには活動、形成、創造、流出の四つの位階が存在する。
位階が一段階上がればその力は桁違いに跳ね上がるため、下の位階の者は上の位階の者に勝つことはまずあり得ない。

  • 活動
Assiah(アッシャー)。聖遺物の特性・機能を、限定的に使用できる位階。刃物の聖遺物なら斬撃、火器ならば炎などを念じただけで発生させる。
いわゆるサイコキネシスに近いものであるため初動が早く、不可視なことも多いのが利点だが、威力の面はさほどでもない。
とはいえ常人には充分以上に致命的で、一般に想像される魔術や超能力の典型的な効果と言える。
身体能力と共に常人より遥かに強いが未熟。初歩の初歩。騎士団にこの位階の者はおらず、上階位の者が戯れにこの階位の能力を使用する程度である。

作中では戦闘能力の他に『校舎の屋上で交わされた会話を、百メートル以上離れている校庭の端の木陰から聞き取る』『団員同士の位置をkm単位で察知出来る』『闇の中、五百メートル彼方にいる者の表情、髪の一本から服の皺に至るまで目で鮮明に捉える』等の技能が披露されている。


  • 形成
Yetzirah(イェツラー)。同化している聖遺物を武器として具現化できる位階。
契約している聖遺物が目視可能になったことで威力が大幅に増大し、使い手の五感及び霊感も活動位階に比べて上昇する。
その振り幅は聖遺物の特性及び術者の技量、魂の保有量次第でまちまちだが、黒円卓の騎士にとって音速を超える体術を発揮する程度のことは難しくない。


Briah(ブリアー)。聖遺物を用いた戦闘における必殺技を習得する位階。
この位階に達した術者は、渇望に沿った自分だけのルールを作り出し限定的に世界を侵すことが可能になる。
この段階にて自身の渇望は覇道求道の2種類に分かれる。
覇道は「~したい」「~であればいいのに」という外に向けた渇望、で求道は「~になりたい」「~でありたい」という自分に向けた渇望である。

この位階の術者は一見まともに見えても根本的に常識とかけ離れた価値観、常識を持つ者がほとんど。重度の厨二病患者でなければ到達不可能。
騎士団のほとんどはこの位階であり、それが彼らの魔人たる所以となっている。


Atziluth(アティルト)。創造位階の能力によって作り上げられた法則を拡大させ世界を塗り替える位階。新たな神の誕生。
流れ出した法則は最終的に全宇宙を覆いつくし、既存の世界法則と衝突する。古き神を打倒した暁には新たな世界法則を生み出すことができる。
ただし、流れ出すのは覇道の渇望のみ。求道である場合は真の意味で「神」になることはできない。

しかしこの位階は渇望の深度だけでは届かず、先天的な資質が不可欠。そのため作中2人を除いて創造位階からこの領域に行ける者はいない。
…というより彼らをこの位階に上げることがエイヴィヒカイトの作成目的である。
流出という求道に対応しない名称であるのも、メルクリウスが覇道しか求めなかったためである。



◆戦闘スタイル

エイヴィヒカイトは使い手の性質や聖遺物の特性により四種の武装形態に分類され形成位階にてその差異が現れる。


・人器融合型
肉体を聖遺物と融合させる。聖遺物の形状が素体とは大きく異なる例が多い。
全タイプ中最高の身体能力と攻撃力を発揮する。
しかし聖遺物との同調率が高くなるほど極度の興奮状態となっていき、理性的に判断することが困難になる性質がある。
使用には無理矢理衝動を抑えて戦うか、手綱を放して本能のままに戦うかの二択。
性格としては好戦的で破壊的な者、刹那主義者や享楽主義者などがなりやすい。
該当者は蓮、司狼、シュライバー、ヴィルヘルム、シュピーネ。


・武装具現型
聖遺物を刀剣などの武器として扱う。聖遺物の形状はほぼ素体に準拠している。
基本形でありバランス面で優れ、特筆すべきメリットもデメリットもない。
あえていうなら主従関係がはっきりしているため暴走・自滅の危険性が低いのが特徴。
未熟な者は決定力のない器用貧乏だが、強い者は万能となり隙がなくなる。
性格としてはこの型は指揮者の適性を持つものが多い。
該当者はラインハルト、エレオノーレ、螢、ベアトリス、トバルカイン。


・事象展開型
聖遺物を媒介として魔術や呪術のような働きをする。
物理的破壊の顕現ではないことが多く、攻撃力よりも防御や補助に優れている。そのため融合型と組んだ場合は非常に危険。
性格としては理知的で聡明な者や探究心と神経質な拘りを持つ者など、学者・芸術家タイプの者がなりやすい。
該当者はリザ、ルサルカ、玲愛、イザーク。


・特殊発現型
上記のいずれにも属さないか、または複数の性質を持つ。
他を上回る強大な力を発揮することもあれば、状況次第では全く役に立たないこともあるなど、非常に不安定なタイプ。
性格としては特定の物事や人物に囚われて盲目的になっている者、純度の高い宗教家や復讐者がなりやすい。
該当者はマキナ、トリファ、メルクリウス。



◆余談

より多くの、質の高い魂を貯蔵した術者が強いのは確かだが、各々の格によって貯蔵できる魂の量には限界がある。
そのため低位の存在が集めた魂の質量差で高位の術者を打倒するという事例はまず起こり得ない。

togetterの「Dies irae質問コーナー」によると、貯蔵限界は上からメルクリウスを頂点に蓮とラインハルトが続き、大きく下がって三騎士、また大きく下がってベアトリスとベイと神父、あとは団子。カインは偽槍の特殊性と、本人が融合体なので計りにくい。

白本の用語事典の「魂」によると、単純に多寡を持って挙げるなら、ラインハルト、シュライバー、マキナ、エレオノーレ、ヴィルヘルム、トリファ、ルサルカ、リザ、ベアトリス、シュピーネ、カイン、螢の順。
この内、量・質ともに高度なものはマキナ、エレオノーレの二者だが、桁違いの量を有するラインハルトと、彼の肉体に繋がっているトリファの強度は他を遥かに圧倒している。
そしてその反対に、質の一点を極めているのが蓮である。

一応作中では、ラインハルトが数百万人の総軍、三騎士は数万から数十万人の軍団から軍集団(マキナは六万人、シュライバーは18万5731人)
ベイと神父は八千人の旅団(質では神父はベイより数段劣る)、ルサルカは連隊規模
螢は数百から千人前後の大隊規模(黒円卓の一員となれる最低基準)の魂を喰らっていることはわかっている。

「習得難易度が非常に高い」と最初に記してあるが、これについては何も間違いではない。
実際性質が性質なので基準を常人に合わせているようなものではなく、最終的に言えば獣殿と練炭を覇道に導ければいいというわけで合わせる必要が無いという意味でもある。
つまるところ、散々ネタにされてるシュピーネさんや、作中ボコボコにされまくり散々言われまくりの螢もこれを習得できてるだけ超人なのである。





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最終更新:2022年08月28日 02:51