小さき勇者たち~ガメラ~

登録日:2015/12/22 Tue 23:05:03
更新日:2023/12/27 Wed 22:49:51
所要時間:約 10 分で読めます





ガメラは少年のために、少年はガメラのために


『小さき勇者たち~ガメラ~』とは、2006年に公開された角川ヘラルド映画の特撮怪獣映画。
角川映画としての初のガメラ映画であり、ガメラシリーズとしては12作目にあたる。


【概要】

大映の資産と映画事業を取得した角川ヘラルド映画が、ガメラ生誕40周年記念として製作した作品。

リアリティを重視し小学生高学年以上をメインターゲットに置いていた平成三部作とは異なり、
ガメラと少年達の成長と友情、家族の絆を重点に置いたファミリー向けのジュブナイル作品となっている。

また、動物映画としての側面もあり、一部のシーンでは本物のケヅメリクガメが起用されている。
しかし、ガメラ映画の例に漏れず、直接的な描写は避けているが人間が捕食されるシーンや怪獣の出血シーンなどの過激な描写は健在。

監督は平成仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズなどの子供向け特撮作品を多数手掛けている田崎竜太。
脚本には本作が特撮作品初担当となる龍居由佳里が起用された。

物語はガメラと複数のギャオスが戦うシーンから始まるが、ガメラ3の続編ではなく平成三部作とは別世界が舞台となっている。

本作のプロットは、平成ガメラシリーズの最初期の構想である、小中兄弟によるプロットが由来である(この「小中ガメラ」はデジモンテイマーズにも影響を与えた)。


【あらすじ】

1973年、ガメラと複数のギャオスが三重県志摩で戦いを繰り広げていた。
次第に数で押され始めたガメラは全身から赤い光を放ち、ギャオスを巻き込んで自爆。
それを見ていた人々は、ガメラが命を犠牲に自分達を救ってくれた、と安堵する。

それから33年後の2006年、ガメラとギャオスの闘いを目撃した相沢孝介の息子・透は、事故で他界した母・美由紀の墓参りに訪れていた。
近況を報告し、家へと戻る途中、透は緋島で何かが赤く点滅するのを目撃する。その場所は33年前、ガメラが自爆した場所だった。
後日、透は緋島で赤い水晶と卵を発見し、卵からふ化した子亀に「トト」と名付け、孝介に隠れて育てる事にする。
しかし、トトは一日で急速に大きくなったうえに、宙に浮かぶ能力を持っていた。

一方、沖縄近海では謎の船舶事故が多発していた。


【登場人物】

◆相沢透
本作の主人公。11歳の小学五年生。一年前に母親の美由紀を亡くし、父親と二人で暮らしているが親子関係は若干ギクシャクしている。
拾った卵から孵った子亀にトトと名付け育てるが、普通の亀ではないことに気付き一度は海へ放そうとする。
しかし、結局自分の後を追いかけて来るトトを手放す事ができず、幼馴染みの麻衣、友達の石田兄弟と共に隠れて飼う事に。
後半は孝介の制止を振り切り、自分達を護ろうと戦うトトのために奔走する。
ちなみに彼の部屋には仮面ライダー龍騎関連のフィギュアが置いてあったり。

「お前の名前トトな。名前に恥じないように成長しろ」

◆西尾麻衣
本作のヒロイン。透の幼馴染みで14歳の中学生。好きなマンガは『ケロロ軍曹』。
トトがガメラの幼体ではないかと疑い、透が飼う事を反対していたが、後に協力するようになる。
心臓に病気を患っていて、態度には出さないが内心では不安を抱いている。
「行かなきゃ。トトのところに行かなきゃ!」

◆相沢孝介
透の父親。大衆食堂の店主。母親と死別した透を気にかけてはいるが、距離感がうまく掴めずに悩んでいる。
33年前のガメラとギャオスの戦いを目撃しており、透がガメラとして成長したトトと関わろうとするのを止める。
「トトじゃねーんだ! あれはもうガメラなんだ!」

◆相沢美由紀
交通事故で他界した透の母親。元々「トト」は彼女が透に付けたあだ名だった。
「トト、おかわりは? お か わ り」

◆石田勝
透の友人。透のズボンを脱がそうとしたり、地雷を踏んだりするがいじめっ子と言うわけではない。あだ名は「イシマル」。
「石を、みんながこの石を順番に」

◆石田克也
勝の弟。勝、透と同じスケボークラブに通っている。
「トトにって、みんながトトにって!」

◆西尾治
麻衣の父親。孝介の幼馴染みで、西尾真珠店を経営している。手術を控えた麻衣のために、幸運を呼ぶと言う緋色真珠をプレゼントする。
「その幸運を麻衣にもってワケ」

◆西尾晴美
麻衣の母親。本編ではカットされたが、麻衣のためにお百度を踏むシーンが撮られた。
「お守りなんてなくたってあの娘は平気だって、楽勝楽勝」

◆一ツ木義光
巨大生物審議委員会参事。委員会発足以降怪獣が現れなかったため雨宮の警告を無視していたが、ジーダスが現れた途端華麗に手のひらを返した。
ガメラを捕らえ、飼いならそうとするのだが……。

映画だけ見ると無能なくせに態度だけはでかい駄目な大人だが、
Ark Performanceが描いた外伝漫画ではジーダス出現を口実に暴走し始めた自衛隊を抑えるために、
ガメラを利用してジーダスを倒すことを計画するという優秀な面が描かれている。
「すぐにご連絡しろ! 現地で合流だ」

◆雨宮宗一郎
名古屋理科大学応用生物学科教授。怪獣研究の第一人者で、最近多発する船舶事故の原因が怪獣である事を予想したり、
トトを10メートルから50メートルへ成長させたりとなかなか優秀。
「ガメラを成長させないと、大変なことになる」

◆子供達
麻衣がお守りとして預かっていた赤い水晶を透達の元へ届けた子供たち。ジーダスを倒したトトを捕獲しようとする一ツ木達の前に立ちふさがった、小さき勇者たち。
「…トトに」


【登場怪獣】

【ガメラ】

本作に登場するガメラはケヅメリクガメがモチーフのため、これまでのガメラと体色や甲羅の形状が異なっている。
その他鳴き声や回転ジェットの音も変更された。また、体高がこれまでのシリーズに比べ縮んでいる。
理由は不明だが、人類(他の生物)を護るために敵怪獣と戦う性質を持っており、平成三部作と異なり人間もガメラを味方と捉えている。

◆トト
本作メインで活躍する個体。アヴァンガメラが自爆した場所で透が発見した卵から孵ったばかりの幼体。
見た目は普通のケヅメリクガメの子供だが、腹甲には「炎」の字のような模様がある。
この時点で宙に浮かび火を吐く能力を持っており、ギロン孝介の包丁に焦げ目を付けた。
孵化から数日で1メートル近くまで急成長した後、透達の前から姿を消す。

しかし、ジーダスの志摩市襲撃時に、成長した姿で透達の元へ帰って来た。それまでリアルな亀だったが、かなりデフォルメチックな容姿に変わっている。
体格で上回るジーダスに追い詰められるが、とっさの機転で火球を至近距離で炸裂させ退ける。しかし、自身も傷つき倒れ、自衛隊に捕獲されてしまう。
その後名古屋にて、雨宮達の手で成長を促進されアヴァンガメラに近い体長になったが、まだ子供のためか顔つきはそのままだった。

志摩市出現時 体高:8メートル 体長:10メートル 
名古屋出現時 体高:30メートル 体長:50メートル 体重:900トン
必殺技:火球攻撃、
    トトインパクト!(技名は一般公募により命名)=腹甲の模様が赤く発光し、全身が高熱と赤い光に包まれた後、光を口に集約し放つ強力な火球。一撃でジーダスを粉砕した。


◆アヴァンガメラ
1973年に現れた個体。成体なのか、トトに比べ体付きがガッチリしており、顔つきも厳つい。トト同様腹甲には「炎」の字のような模様がある。
冒頭で4体のギャオス戦闘を繰り広げ、内1体を火球で倒す。しかし、残りの3体に追いつめられ、ギャオスを巻き込み自爆。
この爆発の規模は凄まじく、本島と地続だった岬を孤島へと変えてしまった。この孤島が卵と赤い水晶の発見場所となるが、トトとの関係は不明。
「アヴァン」とは「前の」「先行する」の意味。劇中では「以前のガメラ」「33年前のガメラ」と呼ばれる。

自爆の理由は不明だが、小説版では下あごを切り落とされて火球を吐けなくなっており、映画でも喉元の肉を食いちぎられていたので火球を使えなくなった可能性がある。なお、コミックスではガメラ細胞にはギャオス細胞を破滅させる力があるとされる。

体高:35メートル 体長:55メートル 体重:1200トン
必殺技:火球攻撃、自爆


【ジーダス】

ガメラ怪獣では珍しいオーソドックスなタイプの怪獣。エリマキトカゲがモチーフで別名は「海魔獣」。
モチーフ通りの大きなエリマキに、全身がただれたような皮膚とトゲ、長い尻尾が特徴。
トカゲモチーフのガメラ怪獣としては「バルゴン」がいるが、二足歩行や肉弾戦を得意とすることで差別化を図っている。

尻尾の他、伸縮し血を通わせる事で硬質化するハープーン舌が最大の武器。
この舌や手足の爪からは溶解液が分泌されていて、攻撃対象を溶かしてダメージを倍加させる。
ギャオス同様肉食で残忍な性格をしている。沖縄近海で多発していた船舶事故の犯人。

漂流していた人が海中に引きずり込まれた後海面が真っ赤に染まったり、
透たちの目の前で逃げ遅れた人のいるところに顔を突っ込んで貪り食らうシーンは地味に怖い。

志摩市に出現し、人間を捕食。克也達に襲いかかろうとしたところに現れたトトと戦闘になる。
大きく勝る体格と強力な舌による攻撃で追いつめるが、反撃の火球を受けて河へ落下。そのまま行方をくらます。
その後二回り以上巨大化し、トトが運び込まれた名古屋を襲撃。成長したトトと最後の戦いを繰り広げる。

志摩市出現時 体高:30メートル 体長:50メートル 
名古屋出現時 体高:90メートル 体長:150メートル 体重:2000トン 舌の長さ:100メートル


劇中では出自に関して触れられていないが、『Yahoo!ムービー「小さき勇者たち~ガメラ~」特集』やノベライズ版によると
オリジナルギャオスの死骸を摂取したトカゲが突然変異を起こしたという設定になっている。
名前も「G-Dust=(ギャオス)が残した者、ゴミ」から付けられている。

ノベライズ版ではギャオスとの関係性が強調され、ギャオスの怨念に取り憑かれガメラ(トト)を狙ったり、
他の怪獣達の司令塔になったり、最終的に翼が生える

「ジーダス」という名前とエリマキが付いた見た目から、ウルトラ怪獣の「ジラース」が元ネタとする説がある。
この場合、かなり間接的ではあるが「ガメラ対ゴジラ」が実現したとも言える
もっとも、ビルに上る姿は1998年版に近い。

ちなみにラストで爆散したジーダスは着ぐるみ内に火薬を入れて直接爆破したもの。
やり直しのきかない一発勝負だったが、何とか成功している。


【オリジナルギャオス】

1973年に現れた鳥型の怪獣。成体が4体確認されているが、詳しい出自は不明。
しかし、倒れたアヴァンガメラに群がり啄み捕食しようとするなど、これまでのシリーズ同様肉食で獰猛なことがうかがい知れる。
見た目は「ギャオス・ハイパー」に近いが、体付きが若干細く飛膜の無い翼爪が2本になっている。

また、夜のシーンのみの登場でカラーリングが分りづらいが、
立体物では青黒い体色に黄色い飛膜、とこれまでとは印象の異なるカラーリングになっている。
冒頭でアヴァンガメラを追いつめるが、自爆に巻き込まれ全滅した。

名前はジーダスを生み出したため「オリジナル=起源」が付けられているが、劇中では単に「ギャオス」と呼ばれる。

体高:30メートル 翼長:90メートル 体重:500トン 必殺技:超音波メス

ノベライズ版ではジーダスの他にも死骸を摂取した動物が怪獣化し、
「Gバルゴン」「Gバイラス」「Gギロン」「Gジャイガー」「Gジグラ」として登場する。
これなんてG細胞


【巨大生物審議委員会】

1973年のガメラ、ギャオス出現後発足された政府機関。
しかし、その後怪獣が一切出現しなかったため予算や規模は縮小され、2006年に解体が決定する。
が、その直後ジーダスが出現。参事であった一ツ木が現場指揮を執っている事から、正式な解体ギリギリ直前だった模様。


【緋色真珠】

ガメラとギャオスが戦った年にだけ採れた赤い真珠。幸運を呼ぶ真珠と話題になり、取材や観光客が訪れ復興に貢献した。
雨宮によると、自爆したアヴァンガメラのエネルギーが固形化したものらしく、エネルギーを液状にして注入する事でトトを巨大化させる事に成功した。
一時期透の前から姿を消していたトトは、緋色真珠の成分を吸収するために海に潜っていたらしい。


【赤い石】

トトの卵の下に置かれていた赤い水晶。緋色真珠同様アヴァンガメラのエネルギーが固形化したものと思われる。
物語中盤で手術を控えた麻衣に透がお守りとして渡す。

その後、ジーダスの名古屋襲撃時にトトに赤い石が必要だと感じ取った麻衣から同じ避難所にいた少女、
そして避難中の子供達へとリレー形式で渡され透の元に届けられた。
子供達が説明抜きでこのような行動に出ている事から、平成三部作に登場する勾玉に近い力があると思われる。


【捨てたらダメラ】

本作は環境省とのタイアップ作品であり、ペットの放棄を防止するキャンペーンが行われた。
キャッチフレーズの「捨てたらダメラ」が印字されたポスターが環境省関連施設に配布された。
また、ケヅメリクガメの管理を指導した獣医からの要望で、本作を見た人が安易にケヅメリクガメを飼い死なせる、
または飼育放棄する事を防ぐため、本作のエンドロール後やパンフレット、公式サイトにペットは最期まで責任を持って飼うよう注意を促す文章が掲示された。


【撮影での実情と問題】

上記の注意文に加え、本物のケヅメリクガメを使用した撮影では細心の注意をはらい、動物虐待にあたる行為はしていない旨が掲示された。
しかし、実際は撮影用の亀数匹が撮影のストレスから動物病院に運び込まれ、その内数匹が衰弱死している

スタッフは獣医から指導を受け、撮影に複数の亀を用いてストレスを分散させるなどの工夫を行ったが、
ケヅメリクガメはワシントン条約付属書II類掲載種であり、扱いに慎重さが求められる。
そのためマスコミからは適切な対応をしていなかった、と非難された。

また、撮影に使われたケヅメリクガメが一般に公開された際、甲羅に人工的に付けられたと思われる穴が発見され、
「虐待では?」と騒がれたが、これは一般的に行われる個体識別方法であり、位置も穴を開けて問題のない場所だった。


【余談】

本作は公開前制作費2億円の低予算映画との噂が流れたが、実際は15億円の大作予算が組まれた。なぜこんなデマが流れたのかは不明。だが、実際にはかなりの金額が自治体などとのタイアップなどに注ぎ込まれた可能性も否定できず、純粋な「製作費」としてどれほどが用意されたのかは不明。
ちなみに、この製作費15億という数値は、前三部作の三倍にもなる(前三部作は一本5億ぐらいで作っていた)。
しかし、配給収入は4億1千万円と興行成績は振るわず、製作費の回収すらできない結果となった。
(観客動員数は不明ながら、二年前の「ゴジラ FINAL WARS」が配給収入12.6億と本作のほぼ三倍、それでいて観客動員数が104万ということなので、単純に計算すれば35万人前後と想像される)
結果、シリーズ化はされずアメリカで計画されていたアニメ化も流れている。

本作品のガメラの描写は、平成ガメラシリーズの最初期のプロットによく似ている。また、制作チームは、企画段階にて「平成ガメラと異なる方向性で行かないと支援しない」と (平成ガメラシリーズを担当した) 上層部から言われていたことも判明している。

田口清隆も携わっている『ラブ&ピース』の「ラブちゃん」はトトにどこか似ている。


【主題歌】

「Eternal Love」mink




追記・修正は赤い石を次の子供に託してからお願いします。

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最終更新:2023年12月27日 22:49