ヴァレンティナ=グリンカ=エステス

登録日:2015/12/17 Wed 20:11:30
更新日:2024/04/07 Sun 22:15:22
所要時間:約 4 分で読めます




ライトノベル『魔弾の王と戦姫』の登場人物。
CV;原田ひとみ



七戦姫ではオルガと並び、ティグルエレンらメインキャラとの関わりが薄く、エレンも一度か二度会っただけで、その人柄も詳しくは知らない。健康が優れないという理由であまり領地から出ず、たまに姿を現すことはあっても、体調を崩したといってすぐに帰ってしまう。サーシャ同様、穏やかな性格の病弱キャラかと思われていたが……。









以下、5巻以降のネタバレ注意
















私は、ほしいと思ったものを手に入れるためには手段を問いませんわ。

手段を選べるほど自分が有能ではないことを、わかっていますもの。


所属国:ジスタート王国
所有公国:オステローデ
身分:戦姫
武器:『封妖の裂空』エザンディス(大鎌型竜具)
異名:虚影の幻姫(ツェルヴィーデ)


【人物】

5巻時点で22歳。約5年前に竜具を受け継いで以降、ジスタート北東部の公国『オステローデ』を統治している戦姫。

青みがかった長い黒髪の、清楚かつ繊細で触れれば崩れ落ちそうな雰囲気を持った女性。薔薇で飾られた純白のドレスに、大鎌の竜具が調和を破壊しているようで溶け込んでいて、神秘性を増す効果を添えている。実はドレスの飾りの薔薇の造花はこすり合わせると発火するように作られている。また、彼女の人柄に触れたザクスタンの将軍クリューゲルは「この場違いなドレスは見る者を欺くためのものか」と考えた。

「~です」と敬語口調で話し、淑女然とした人物。誰に対しても口調を荒げることなく、穏やかな態度で接する。表面的には七戦姫でもソフィーのように穏健な人物のように感じられるが、実は「かつてのアスヴァール女王ゼフィーリアのような女王となる」という野望に燃えた謀略家。ガヌロン公爵に仕える残忍な人物であるグレアスト侯爵からは、無邪気な微笑の奥で、瞳に野心の光をにじませているのを見抜かれ、「方向性は違えど、自分と同じ世界に属する存在だ」と評されている。病弱と称しているのはありていにいって仮病であり、エレンのように頑健な体かどうかはともかく健康な体力を持っているようだ。病気を口実に顔を見せていない間、あちこちで暗躍している。アニメ版EDの画像でサーシャが病床の窓から外を眺めていたのに対して、ヴァレンティナはチェス盤を自在に繰る姿を見せており、その本質の違いをうかがわせている。

また、対立する二人の大貴族の仲を悪化させたり(二人の仲裁をするように見せつつ、巧みにお互いの敵意を煽り、さらに一方がもう一方に酒を贈るよう勧めておいてその酒に毒を入れるという狡猾なやり方だった)、敵将に会談を申し込んで相手が承諾したら少人数で現れたところを謀殺し、自分の竜具の力で逃げようと提案するなどの卑劣な策を用いたり、その策を提案した時の相手の驚く顔を楽しんだりと、性格の悪いところがある。彼女の性格を知った後のエレンやミラからは「あいつは信用できない」「自分のことしか考えていない」と酷評され、ガヌロンからすら「私を自分のことしか考えないと言うなら、まず鏡を見るといい」と皮肉を言われている。

その一方で、自分の領地や家来に対する愛情は本物。寝室の準備をしていた従者をねぎらうなど優しい一面もある。また、戦姫になる以前から、権力を手に入れにくい女性の身でも諦めず文武の修練に励むなど、勤勉さと向上心を持っている。また彼女の領地オステローデは資源に乏しく、前の戦姫が戦は強いが「私が戦姫やめたらもう後は関係ないし」と言って政治にさっぱり関心を示さない、さながら張飛か呂布が太守となったような人物だったこともあったため、七公国中最も弱かった。ヴァレンティナは戦姫に就任するとこの貧乏公国を富ませるべく内政に励み、5年で他の公国にも見劣りしない国力を作り上げた。戦姫という職業に強い義務感を持つリュドミラが見たら彼女への見方を変えること請け合いである。病気を装っていたのも、ジスタート王による戦姫への出征命令による国力削ぎ政策への抵抗の意味もあり、オステローデの統治者としては至極理にかなったものといえる。

このように、七戦姫では、悪役と見られていたリーザがいい子だったこともあり、唯一の完全な敵対者。裸を見られたりはしたものの、ティグルとのフラグも今のところ(13巻現在では)立ってはいない。立場上何度かティグルやエレンと共闘したものの、ジスタート女王になるという自らの野望の実現の布石は着々と打っており、いつか彼らと激突の時が来る可能性は高い。他の戦姫が道徳的だったり献身的だったりする中で、彼女のみが己の欲望に従って手段を選ばずに行動する戦姫でもあり、独特なキャラといえるだろう。




【戦闘能力】

エレンたちには「空間転移の竜技を使うと立てないほど体力を消耗する」と言っていたが、これは病弱設定と同様嘘であり、使った後もピンピンしていた。また怪物的な力を持つガヌロンを相手に余裕で渡り合うなど、華奢な外見に似ず戦闘力は決して低くはない。
同時にエレンたちと違い、戦の時は自ら積極的に前に出ることをせず、後方で余裕をもって指揮を取ることを得意とする。その用兵は堅実で隙がなく、激戦の後の隙をついてエレンを捕らえたグレアストをして「ヴァレンティナを罠にかけることはできないだろう」と言わしめている。その腕といい用兵といい、決して奇策や騙し討ちだけに頼る戦姫ではないのだ。

《所有竜具・エザンディス》
『封妖の裂空』『虚影』とも呼ばれる、赤と黒で彩られた禍々しい造形の大鎌。
固有能力は、空間転移、霧のバリアの発生などから、おそらく空間制御と思われる。

○虚空回廊(ヴォルドール)
周囲の空間を歪め、空間転移する。アニメ版魔弾の王OPでヴァレンティナが使っていたアレだと思われる。

○黒霞(ティンカー)
振るった大鎌の軌道に沿って空中に黒い霧を出現させる。黒い霧はバリアのような効果を発揮するらしく、ガヌロンの放った火球を受け止めて消滅させた。




【本編での活躍】

《3巻》
エレンとソフィーの会話に出てくるが、特に詳細は語られない。


《4巻》
特に出番なし。


《5巻》
表紙に登場。
王宮の廊下でソフィーと偶然出会い、お茶に誘われる。一見友好的な会話に見えるも、ソフィーはヴァレンティナの病弱ぶりは擬態であり、何か秘めた野心があるということを薄々感じていた。
エピローグではソフィーの懸念を裏付けるかのように、領地を焼いて失踪したガヌロンとグレアストをかくまう様子が描かれる。大貴族としての義務で仕方なくテナルディエやガヌロンと交流していたミラやリーザと異なり、明確に自分の意志でガヌロンと共謀していることが明かされる。


《6巻》
プシェプスの港町でティグルを待ち受けるも、サーシャの助言を受けて行き先変更したティグルに逃げられる。ジスタート王ヴィクトールがティグルをアスヴァールへの密使に選ぶよう仕向けたのは彼女であり、理由の一つはエレンに怪しまれず会ってみるためだった。協力できるようなら彼の密使の任務を手助けするが、自分の野心の障害となるようなら排除しようと考えるなど、冷徹さが垣間見える。


《7巻》
特に出番なし。


《8巻》
パルドゥ伯爵ユージェンとビドゴーシュ公爵イルダーとの間の、王位継承を巡る確執に付け込み、さらに離間させるべく策略を巡らす。双方の仲裁をするふりをして、ユージェンに対して「イルダーが口を滑らした」と思わせたり、9巻に続く火酒の贈り物にまつわる謀略の伏線を張るなど、他の戦姫では考えられない策略家ぶりを発揮する。


《9巻》
ヴィクトール王にユージェンとイルダーの争いの調停を自分に任せるよう申し出るが拒否される。また、イルダーの酒に毒を入れたのが彼女自身であることが明かされる。それも何人もの人間を間に挟み、イルダー邸の使用人を抱きこんで、直接酒に毒を入れず杯の方に細工させるなど、彼女の用心深い性格がうかがえる。二人を争わせた目的は混乱を起こして有利な立場を得ることであり、エレンたち他の戦姫が知ったら激怒するような動機と手口だといえるだろう。同時に祖国オステローデにかける彼女の深い想いも語られ、善悪で簡単に判断しきれない戦姫だと感じさせられる。


《10巻》
直接の出番はないが、エピローグ一歩手前で、リーザたちにポルス伯爵オルゲルト=カザコフが討たれたことに乗じてポルス伯爵家から距離を置いた貴族諸侯に接触して支持をとりつけ、ジスタート北部での影響力を一気に拡大したことが語られている。カザコフはガヌロンに言葉巧みに焚き付けられルヴーシュに出兵した結果エレンに討たれたのだが、ガヌロンの台詞から、彼がカザコフを焚き付けに行ったのがヴァレンティナの差し金であることがほのめかされている。


《11巻》
ジスタート王都シレジアの太陽祭一日目に開かれた戦姫会議に出席。魔物に関する情報交換で、魔物のことは初耳だと言う。だが実際には七人の誰よりも詳しく把握しており、テナルディエに協力していた竜使いの魔物ドレカヴァクの存在と、ガヌロン公爵が魔物を喰って自ら魔物化していることを知っていた。魔物の数が戦姫と対応する七体であることまで知っており、彼女自身魔物はいつか滅ぼさなくてはならないと考えてはいたが、「しばらくは他の戦姫の奮戦を見守ることにしよう」と、あくまで他の六戦姫と距離を置いている。

ザクスタンのブリューヌ侵攻の際にはエレンと共にティグルの援軍に任命され、初めてティグルたちと共闘することになる。その際はティグルとエレンがザクスタン軍と戦っているさなか、戦場へ向かうオステローデ軍を置いて一人でティグルたちのもとへ現れ、エレンを呆れさせている。さらに会談の申し出を装って敵将クリューゲルを呼び出し、騙し討ちにすることを提案し、エレン、リムに不信感を抱かせた。人を悪く見ないティグルでさえ、提案の内容にはとても応じられないと考えた(当たり前であるが)。

その後、水浴び中に偶然ティグルと遭遇し、お互い全裸で向き合うことに。大鎌をティグルのヴォルンしたヴルムドに当てて「罰として切り落としてしまいましょうか」と脅かし、ティグルと男性読者の血の気を引かせている。その後、クリューゲルの幕営を単身訪れ、「ジスタートとザクスタンでブリューヌの領地を分割しましょう。ティグルはすでにジスタートに寝返りました」と誘いをかけてクリューゲルをおびき寄せ、ティグルとエレンに不意打ちさせた。悪質度はだいぶ下がったものの、結局騙し討ちであり、ザクスタン軍に苦戦するティグルも承諾せざるを得なかった。クリューゲルの陣に留められたヴァレンティナは、混乱に乗じて発火剤の造花で放火し、その隙に逃亡した。そして「疲れた」と称してティグルにおんぶしてもらうが、これも無論嘘である。その後少しラブコメっぽいやり取りがありはしたものの、フラグはおそらく立っていない。


《12巻》
カラーページにティグル、レギン、ティッタとともに掲載。だがどう見ても悪の女王である。いかにもレギンとティッタをさらいそうな雰囲気だが、彼女たちとは特に接点はない。否、彼女の行動が一因となって二人が死にかけたとなれば接点と言えるだろうか……。
クリューゲル戦の後、エレンとともにブリューヌ王宮を訪問。廊下でティグルに敵意を持つセルペット男爵に絡まれてこれを追い払っていたエレンの後を面白半分でつけ回し、エレンを苛立たせている。挿絵の二人が全てを物語っているといえよう。だが同時に、正々堂々にこだわるエレンに「そんなことをしていると、大切なひとを横取りされてしまうのでは」と理に適った忠告を与え、エレンを考えさせている。

その後、テナルディエ公爵未亡人のメリザンドがレギンに強い不満を持ち、何か企んでいることを把握すると、「ティグルはジスタートに寝返っている」という手紙を書いてセルペットに渡るよう仕向ける。前巻で自分が使った狂言をこともあろうにティグルになすりつけたのである。そして「もしティグルが死んでもそれはそれでかまわない」と考えていたが、その後でガヌロンが直接ティグルの黒弓の力を試しに現れると、自ら割って入りティグルを援護。それにより彼女もガヌロンも、黒弓の力を見るという目的を達成したのだった。その後、メリザンドの反乱を放置して王宮付近の山中へ移動し、さっきまで戦っていたガヌロンと密談を交わした。

その後、シュミット将軍率いるザクスタン軍と月光の騎士軍との戦いに参戦。今度は「ザクスタン軍の利用する川に毒を流そう」と提案して、またもや一同の反発を買う。普段温厚なマスハス卿までキレかけていた。ケフカがドマ城で使った手、と言えばおわかりいただけるだろうか。ザクスタン軍には有効な策ながら、近隣の町や村にも大きな被害を与える策であり、当然採用されなかった。前巻の会談での騙し討ち同様、えげつないことを提案して相手が嫌がる顔を愉しんでいるだけだったのだろう。さらに言えばつい先日のメリザンドの反乱で王宮の兵士に毒が盛られたことでティグルたちが苦戦したことも知った上での発言である。

シュミット軍との決戦の際には、エレンやリムのように前線で戦いこそしないものの、巧みな指揮ぶりを見せ付けた。その後も、リムが命の危険のあるアスヴァール軍への使者に志願するのへ賛意を示すなど、エレンへの地味な嫌がらせを忘れていない。ザクスタン戦で行動を共にする以前は彼女について何も知らなかったエレンのヴァレンティナへの見方は、この一戦で大体定まったといえるだろう。


《13巻》
二度目の表紙掲載。普段表紙にいるエレン以外で二度目に表紙に載ったのは、ミラ以外では彼女が初である。
ガヌロンとの戦いに関して、マスハスたちに情報提供をする。この時、冷静にガヌロンを「伝説の怪物」ではなく「超常的な力を持つ生物」と認識し、対策を考えているオージェやボードワンに対して感心の念を抱いている。ただしガヌロンが人外だと初めて知ったのはこの戦いの時だと、またも嘘をついている。実際には5年前初めて会った時、すでにエザンディスが彼を魔物だと知らせていた。
さらに、これからグレアスト軍と戦ってエレンを救出しようという時に「ジスタート王からはザクスタン討伐の命令しか受けていませんので」と言ってさっさと帰ってしまう。正論ではあるが要するにティグルやエレンの味方にはならないと態度で示したわけであり、リムはエレン救出後の会議ではっきりヴァレンティナは味方ではないと見切っている。
ちなみにヴァレンティナはその後月光の騎士軍とグレアスト軍との交戦中、しれっとグレアスト軍の背後から攻撃を加えている。形の上ではティグルたちとの共闘であるものの、すでにティグルたちと距離を置いた以上、漁夫の利を占めに来たと言っても良いかもしれない。実際、グレアストが軍を捨てて逃げた後、森で彼を発見しても捕らえたり斬ったりすることはなく、必要な情報だけ聞き出して逃がしてしまった。ブリューヌを混乱させるグレアストが生きていることは彼女の利益になるからであり、これまたティグルへの明確な敵対行為といえるだろう。この時彼女がグレアストから聞き出したのは発狂したジスタートの王子ルスランに関する情報であり、それを得たヴァレンティナはさらに大胆な行動に出る可能性もあるだろう。


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最終更新:2024年04月07日 22:15