アテナ(ギリシャ神話)

登録日:2015/12/12 Sat 18:27:40
更新日:2023/10/11 Wed 10:27:07
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■アテナ

「アテナ」はギリシャ神話に登場する女神。
パラス・アテナと云う呼び名でも知られる。
ローマ神話ではミネルヴァと習合した。
オリュンポス十二神の一柱で、戦争と知恵、工芸と芸術を司り、特に勝利と機織り物の女神として語られる。
また、異母姉妹のアルテミスと共に自ら永遠に純潔である事を誓った処女神でもある。
何しろ、大きな前立て付きの兜に黄金の胸当てに長いに丸い……と完全武装で生まれて来たと云うのだから“お堅さ”では他に類を見ない。
古代ギリシャの文化の中心都市であったアテナイ(アテネ)の守護女神としても知られており、彼女を祀るパルテノン(処女宮)神殿は侵略者であるローマ人をも感服させたギリシャ文明の象徴として今日でも威容を誇る。
聖木はオリーブ。
聖鳥は梟。
これらは平和と知恵を象徴し、梟は添え名(輝く眼)とも繋がっている。
勝利を意味する有翼の女神ニケ(ヴィクトリア)も彼女の化身とされている。

父は至高神ゼウス、母はティターンの思慮の女神メティスとされている。
嘗てウラヌスを打倒したクロノスがウラヌス(天)とガイア(地)より受けた「子らに主権を奪われる」と云う予言を畏れて子供達を呑み込みまくった様に、ゼウスもまたウラヌスとガイアより妊娠中のメティスから「父親にも劣らぬ気性と賢い思慮を備えた娘御」と「傲慢な心を持つが神々と人間どもの王になる息子」が生まれて自分の主権を脅かされるとの予言を受けていた。
そこで、ゼウスは身重のメティスを今度は“性的な意味でない方のパックンチョ”をして腹の中に呑み込んでしまった。

メティス「なあに、ダーリン?妊婦プレイをしてみたいとか本当に貴方ってHに対してアグレッ……いやあああああああああ!

こうして、メティスの知恵を得れるわ、新妻(テミス)も迎えられるわで一石三鳥!と安心していたゼウスだったが、十月十日が満ちて凄まじい頭痛に苛まれる事になる。
余りの痛さに鍛冶神ヘパイストス斧で頭をカチ割って貰うと、額から完全武装した戦女神アテナが誕生したのである。

アテナは予言通りに優秀な女神であったが、ゼウス自身より生まれた為かパパっ娘で、ゼウスの主権を脅かす様な危険分子では無かった。
ゼウスは、この美人で強くて賢い愛娘を讃えると共に自らの胸当てを贈り、これをアテナは神盾(アイギス)とした(※普通にゼウスの神盾を下賜されたとの説もある)。

一方、後には傲慢な息子の方も予言通りに生まれているが、此方もテミスより更に後添いのヘラから生まれた為か、としては微妙な程の残念キャラだった。

……ともかくも、この若干のズレによってゼウスの統治は永遠の物と確約され、オリュンポスの神々が世界を統治していく事になったのである。

※生まれたのが男神ではなく女神だったので予言は外れだったとの説もある。
ゼウスへの忠告はガイア、またはクロノスによる忠告の名を借りた呪いだったとされる場合もあるが、何れにせよこれで無効となった。
メティスさんだけが可哀想な気もするし、ヘパイストスがもう登場してたりとか時系列もガバガバだけど、まあほら(ギリシャ)神話だし。


【由来】
元来から同地(アッティカ)で信仰されていた城塞都市の守護女神(ポリウーコス)であり、謂わば地元の人気アイドルであった。
こうした事情からギリシャに支配された後のオリュンポス神族では血統は傍流とされながらも、ゼウスの正妻であるヘラや嫡男であるアレスよりも遥かに神話内での扱いが良い。

これは、元々のアテナ信仰の根深さと、統合されても尚、同地の大女神として小規模な神々をも従えていたとされるエリアボスの人気と強さが窺える。

また、アテナは勝利の女神として英雄達の冒険をバックアップした事でも知られている。
特にペルセウス神話や聖闘士星矢では勝利の女神としてのアテナの加護が重要な働きをしている。

トロイア戦争では発端の一人とされてしまっているものの、後の戦争ではギリシャの勝利を後押ししており、これは出身地域により振り分けられたとされる隠喩的な構図が見て取れる。


【ポセイドンとの対立】
海皇ポセイドンとは妙に仲が悪く……と云うか、基本的にポセイドンが優秀な姪につっかかっては噛ませになるパターンが多い。
ポセイドンが野心に富んだニューリーダー病のNo.2とされつつも微妙に影が薄く、余りいい神話が語られなかった事もあってか人気の差が如実に反映されてしまったのかもしれない(ギリシャ神話に組み込まれた時点で零落していた神であった)。

ポセイドンとアテナ関連の神話として特に有名なのがアテナイ(を中心としたアッティカ地方)の支配権を巡り対立したエピソードである。
この争いは「どちらがアテナイの民に有益な贈り物をするか」で競われ、ポセイドンがアクロポリスの山上を三叉の鉾で突いて塩水の湧き出る泉を生じさせたのに対し、アテナは地上にオリーブの木を生み出してみせた。
オリーブの実は食用にも灯油にも医薬にもなり、幹は家具の材料に、枝は勝利者の冠になった。

これを見た審判の神々(或いは初代アテナイ王ケクロプス)はアテナを勝者とし、彼女の為にパルテノン神殿が建立される事になった。
しかし、これを不服としたポセイドンはアテナイを洪水(※津波や地震説もある)で攻撃。
最終的にはゼウスが仲裁に乗り出し、アテナイの第二の守護神としてエーゲ海に突き出すスニオン岬にポセイドンの神殿が築かれたと云う。
……ゴネ得は害悪。
ハッキリわかんだね。

この他にも、愛人であったゴルゴン3姉妹の末妹メドゥーサがアテナの祟りに触れて蛇身邪眼の怪物に変えられたりと直接、間接を問わずに敵対する神話が多い。
ちなみにこの後メドゥーサの姉であるステンノーとエウリュアレー(同名のポセイドンの妻がいるが別の神である)がメドゥーサの事で抗議に来たが同様に化け物の姿に変えてしまっている。

一説によれば欲情したヘパイストスがアテナに襲いかかったのは、ヘパイストスが「(鬼母を解放した)褒美に嫁をとらせる」と言われた時に、ポセイドンが敵対するアテナを犯せと薦めた時の話だともされる(当然の様に拒絶されたが)。
現在ではヘパイストスが自らアフロディテを妻に選んだとされる事が多い為、かなり珍しいエピソードである。

ただし、ポセイドンが「これからは俺がニューリーダーだ!」とばかりにゼウスを縛り上げた際には浮気の罰だったのかヘラと共に協力しているらしい。

実はハッキリした事は解っていないのだが、アテナの異名として知られるパラス・アテナのパラスとはアテナと双子の様に育ったポセイドンの孫(トリトンの娘)であったとされている。
アテナは幼少時の諍い、或いは模擬戦の中でパラスを誤って殺害してしまい、その罪を背負う意味でパラスの名を冠したと云う。

しかし、この神話はアテナの誕生譚を初めとした他の神話とは矛盾しており、パラスをアテナの元々の神性から切り離された分身の様な存在だったと考える説もある。

元来のアテナは水に関連した大地の女神であったと考えられており、元々は“大地の女神の夫”と呼ばれたポセイドンと妙に縁が深いのもそれが理由とも考えられる。
メドゥーサも矢張り古の地母神で、パラス同様にアテナとの関連を主張される事もある。
ポセイドンは同じく古の地母神で配偶者であったとされるデメテルともどちらかと言えば敵対する神話が多いが、よっぽど酷い旦那だったのかもしれない。

この他のパラスの由来としてはアテナ(パラス)を殺そうとした同名の巨人が居り、アテナは逆にこれを殺して胸当てや盾の材料にしたと云う。

……この様に、よく知られた名前の割にはパラスの呼び名の由来は明確では無いのだが、現在ではパルテノンと同じく処女性を示した定冠詞とも考えられている。
単にパラスと記した場合でもアテナを顕し、後にオデュッセウスがトロイアから盗み出したとされるパラディオン像はアテナがパラスの死を悼んで作られたとするエピソードが付けられている(元来はアテナともパラスとも無関係の女神像である)。

※他にパラティヌス丘の名の由来とされたりするパラースなる複数人の男性名もあるが此方は関係ない。


【主な神話】
人気の英雄達を助けたエピソードでも知られ、ペルセウスのメドゥーサ退治にの盾(自分の神盾だったともされる)を貸し出したり、怪鳥を誘き出すガラガラを用意したり、ベレロポンにペガサスを手懐けられる黄金の手綱を渡している他、オデュッセウスの姿を元に戻したのはアテナだったとされる。
……仲の悪いポセイドンやアレスの血縁や眷属ばっかりが相手な気もするが気のせいである。
ペルセウスからはメドゥーサの首を献上されており、これによりアテナの神盾は最強の武器にもなった。

処女神として従者の乙女達にも純潔を守らせたアテナだが、一人だけ息子と呼べる存在が居る。
アテナイ王にしてギリシャ式戦車を生み出したとされるエリクトニオスの事で、仕事の依頼に工房を訪れたアテナにヘパイストスが欲情して迫り、拒絶はされたものの美脚にぶっかけられてしまい、それを忌々しげに拭ったアテナが地面に男汁(苦)を叩きつけるとエリクトニオスが生まれたのだと云う。
ここまでの経緯については諸説あり、ヘパイストスがアテナに日頃から懸想していたとか、妻(アフロディテ)に相手にされない寂しさが我慢の限界に達したとかの説がある(一週間程度だが)。
生まれた子供に罪はないと引き取りはしたアテナだが、何故だかエリクトニオスを箱に入れて、何故だかアテナイ王ケクロプスの3人娘に預けたとする神話もある。
結局3人娘は好奇心に勝てずに箱を開けてしまい、アテナが自らの神殿で育てる事になったのだと云う。
純潔の女神が子供を生むと云う奇妙な神話だが、アテナイの守護女神と血縁を結びたいと云う純粋な信仰心から生まれた微笑ましいエピソードであろう……欺瞞!
このエピソードからアテナを「鍛治神の伴侶」と呼ぶ場合もある。

ヘパイストス「照れるぜ」
アテナ「……死んだら?」

ギガントマキナでは、アテナは巨人たちの中でも最も強力で不死身のエンケラドスと戦うも圧倒。
まあ、軍神(笑)も一撃で倒せる娘だし。
巨人が逃げ出した所にシチリア島を投げつけて押し潰したとされる。
これがエトナ山だともされるが、この神話は後にテュポンのエピソードとして吸収されてしまったと思われる。
※これ以前のテュポンはゼウスに灼き払われて殺されたとされていた。


【機織り対決】
アテナの神話と云えば天才機織り娘アラクネとの機織り対決も忘れてはならない。
天才だが傲慢で神々に唾するアラクネを老婆に化けて諭すも聞き入れられず、正体を明かしたアテナは機織り勝負を挑んだ。

「おーっと王者の雷光三段織りだーーー!これで決着かー!?」

「い、いや、見てください挑戦者を!?」

「な、なんとアラクネ選手!桃源無尽乱交織りだーーーー!!処女神への精神的ダメージも兼ねた圧倒的官能美!!これには王者も届かない!!!」
※実況&解説同僚のおばちゃん達。

……アラクネの機織りの技はアテナにも匹敵、或いは勝る程のものであったが、彼女がタペストリーに織り込んだのは父のゼウス(や他の神々)の酒池肉林と青姦獣姦乱交の下半神ぶりを精緻に描いた淫らな画であった。
これに激怒したアテナは反省(物理)でアラクネを打ち据え、アラクネも己を恥じて自ら命を絶ったともされる。
でもゼウスのヤリ夫っぷりを考えると文句言えた義理でも無いよね。

アラクネはこの後、トリカブトの汁で蜘蛛の姿に変えられるが、永遠に糸を紡ぎ続ける蜘蛛への転生をアテナの呪いとするか、慈悲とするかで解釈が分かれる。
後代では呪いとされる事が多かったらしく、ダンテが『神曲』で蜘蛛の下半身の亡者として描いたのを皮切りに現在まで創作世界で人気のモンスターとして扱われてしまっている。
アラクネの名は蜘蛛を呼ぶ名詞とされた他、彼女と道ならぬ恋に落ちた弟のバランクスは罰として蛾に変えられたとの神話まで付け足された……やめたげてよぉ!

この他、どっかで聞いた話でもあるが沐浴中に裸を見られたテイレシアスを祟りで盲目にしてしまったとのエピソードもある。
まあ、テイレシアスは替わりに予言の力を授かるのだが、極端な祝いと呪いがアテナの神話には付いて回る様である。




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最終更新:2023年10月11日 10:27