アレス(ギリシャ神話)

登録日:2015/12/08 Tue 10:53:55
更新日:2024/03/14 Thu 23:01:28
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■アレス

「アレス」はギリシャ神話に登場する神。
軍神と呼ばれる事が多いが、より正確には戦争が齎す破壊と狂乱の神。
同じく戦争を司るアテナが戦争での栄誉や理性的な計略を象徴するのとは対照的に、戦争の負の面を強調した神性と言える。
オリュンポス十二神の一柱で神盾(アイギス)もつ偉大なる主神ゼウスと、黄金の沓はくアルゴスの女神…畏きヘラの息子。
ローマ神話ではマルスと習合した。


同じくオリュンポスに名を連ねる他の兄弟達が妾の生んだ傍系ばかりである事を考えると、正に純粋な血統、オリュンポスの未来を背負う存在と言える。


……が、何故か神話内での扱いは散々で、当のゼウスやヘラからすら疎まれていたとのエピソードが付加されてしまう場合も少なくない。

アレス「ダニィ!?

聖獣は猪と狼。
恋人のアフロディテの心を奪った美少年アドニスに嫉妬して、巨大イノシシに変身して美少年に突撃している(意味深)。

配偶神はハッキリとしないものの、愛人であるヘパイストスの妻アフロディテとの間にフォボス(敗走)、デイモス(恐慌)の兄弟と娘のハルモニアを儲けている。
火星の衛生の名前はここから取られている……不穏な名前の衛星だな。
エロスもアレスとアフロディテの子とする場合もあるが、これはエロスがアフロディテの従者、更にはローマ神話のクピド(キューピッド)と習合した少年、或いは幼児の姿の神と捉えられる様になってからの話で、元来のエロスは髭モジャのオッサンである。

エロス「アフロディテ様の美しさに儂が惚れ込んで側に置かしてもらっとるだけじゃけえのぉ!(ダミ声)

……こうした経緯からアフロディテをアレスの正妻とする場合もあるが、かなり狭い意見。
他に、エリス(不和)や婆ちゃんじゃない方のエニュオ(戦)も彼の従者にして多くは妹ともされているが、姉や妻とされることもある。
特にエニュオは母や娘、后とされていることが多い。
ローマ神話でエニュオに対応するベロナがマルスの后とされているのがギリシャにも反映されたのかもしれない。
この他、世界初の裁判の原因となったとされる娘のアルキッペの他、ヘラクレスに番外で退治された残忍な巨人キュクノス、十二の難業でヘラクレスと対峙した勇猛さをもって語られるアマゾネス、同じく十二の難業の人喰い馬を飼っていたトラキア王の方のディオメデス……と妙に悪い意味でヘラクレスと縁がある(※序でに、同じく十二の難業の一つであるステュムパリデスの怪鳥も元はアレスが飼っていたとされる)。
これでもポセイドンの子供達に比べればマシな扱いだが、アレスの子供もまた怪物や狂人、蛮族とされる事が多かった様である。



【神話】
アレスに纏わる神話は数が少ない上に殆どが不名誉なものばかりである。
尚、アレスがこんな扱いになったのはアレスが元々はギリシャに征服、統合されたトラキアの神だからで、トラキア人の勇猛さがギリシャ的価値観には合わずに蛮族とレッテル付けられて偏見の目で見られていた為。
そうした複雑な経緯が神話内での地位の高さと相反した扱いの悪さに繋がったと見られている。


【浮気】
実はギリシャの男神の中でも一、二を争う程の美貌の持ち主のアレス。
そのアレスに醜男と結婚させられていた愛の女神アフロディテが声を掛けた。
容貌に優れないばかりか、いつも工房に入り浸り相手をしてくれない夫への不満を、見た目だけは逞しいアレスの肉体で解消していたアフロディテだったが、流石に自宅に間男を連れ込む行為は直ぐにヘパイストスの知る所となった。

自分を捨てたヘラを黄金の椅子に透明の鎖で縛り付け、解く事を条件に天界に迎え入れさせた時に続いて、非合法行為の現場であるアフロディテのベッドにも仕掛けを施したのだ。

そして、例の如くアフロディテとアレスが激しい前後運動や、ねっとりとした上下運動を働いていると……。

ア・ア「ア?…アイエエエエエエエエエエエ!?」

例の如くの例の如くにベッドの仕掛けが発動。
今回は透明な網が絡み合った二神を更に絡み取った!

早速ヘパイストスは伝令をやり、この様を他の神々に見せて笑い者にした。

アテナ「無様ね」
アルテミス「軽蔑します」
アポロン「実際羨ましい」
ヘルメス「デスよね~♪」
女神達「…ああん?」
男神達「ゲフンゲフン!」

……この時の結果については諸説あり、普通にアフロディテとアレスが笑い物にされ、恥をかいた彼らがキプロスとトラキアに逃げ帰ったとされる説や、アフロディテと関係を持てたアレスを男連中が羨ましがり、逆にヘパイストスの甲斐性の無さが笑われたとする説もある。
一方、ヘパイストスはアレスとアフロディテの不貞の娘であるハルモニアの結婚に豪華な首飾りを送ったとする神話もある等、アフロディテへの深すぎる愛の形なのか自分の“代わり”を務めた不倫相手への複雑な感情が見えるエピソードもあったりする。
まあ、実はその首飾りが不幸の首飾りだったと云う黒いオチが付く場合もあるのだが(暗黒微笑)。


【敗戦の歴史】
同じ戦争の神とされつつもアテナイの守護者として多大な人気を獲得したのがアテナで、アレスは神話内で度々アテナと戦っては直接、間接を問わず敗れ去っている。

特に有名なのがトロイア戦争にてアテナの加護を得た英雄ディオメデスとの対峙で、この時にアレスは人間であるディオメデスに下腹部を貫かれ、一万人の兵士の雄叫びに匹敵する悲鳴を上げたとまで書かれている。

アレス「ちょっ……お前は何者だ!?」

ディオメデス「ただの……人間だ!!

このトロイア戦争の折には神々も両陣営にそれぞれに加担したとされており、前述の様にアテナやヘラがギリシャ側に付けば、アポロンとアルテミスはトロイア側に付いて争っている。
しかし、アレスは自分の信念はそっちのけで……と云うか元より無くて「戦闘のための戦闘」がしたかったらしく、必要に応じて両陣営に加担しては戦闘を継続させていたらしい。


また、ポセイドンの血を引く僅か9歳にして身長17メートルにも達した巨人のアロアダイ兄弟(オトス、エピアルテス)が世界を欲して傲慢にもオリュンポスの神々に挑もうとした時には、珍しく真っ先に退治に向かうも、あっさりと敗れた上に青銅の壷の中に十三ヵ月も閉じ込められた末にヘルメスにやっとの事で救出されたエピソードもある。


オ&エ「変なオッサンキター!……挨拶代わりにパーンチ!」

アレス「アバーッ!」

オ&エ「…うっそ、弱っ……」

オ&エ「後で怒られると面倒だからこん中入れとこうぜ」



アレス「ヤメロー!ヤメロー!」


こうして、伸びている間に手足を縛られて暗くて狭い壷の中に閉じ込められたアレス……しかし、十三ヵ月とか本気で誰も探さなさ過ぎである。

ヘルメス「いやー心配してましたわー(棒)」


この他にも、前述の息子とされる巨人キュクノスがヘラクレスに退治された際には自らヘラクレスへの復讐に乗り出した事もあると云う。
しかし、ゼウスにより仲裁(物理)されたとか、普通にヘラクレスにボコられ逃げ帰ったとされるエピソードも残る。


【世界初の裁判】
不名誉な神話ばかりが多いアレスだが、正義の立場で立ち上がった事もある。
ある日、自分の血を引くアルキッペがポセイドンの子であるハリロオティオスにレ○プされてしまった(未遂説も)。

怒り心頭に達したアレスはハリロオティオスを殺害。
これにポセイドンは「今更親族○イプなんて常識ダルォ!?」と異を唱え、ここに初の法廷裁判が執り行われたのである。

テミス「判決~レイ○とかクズすぎ~(正論)」

ゼウス「せやな、加害者は情状酌量(下半神卒業しといてよかったーーーーーー!!)」

ポセイドン「海でふやけてる間に地上の常識が変化してる!?」

アレス「無罪

アテナ「あーいう悪趣味なギャグどこで覚えてくる……て、合うとるやんけ!!」

……この時、現場となったアレオパゴス(アレスの丘)の地は以降の裁判の聖地となったと云う。


【国の守護神として】
フェニキア王子でテーバイ建国王カドモスは自分の身を守る為にアレスの竜を殺してしまったものの、「アレスを国の守護神として尊崇する」「アレスは娘のハルモニアを降嫁させる」という条件で和解しテーバイの守護神となる。
テーバイの国自体はアレスの後援とカドモス&ハルモニアの建国期の善政で頭角を現し、繁栄を享受するのだが・・・アレスに妻を寝取られた兄であるヘパイストスがハルモニアの婚礼祝いに呪いの首飾りを贈ったせいで王家には不幸が続く事になる。


【交友関係】
比較的に仲がいいのは愛人のアフロディテと冥界王ハデス
アフロディテとはよっぽど肉体の相性がよかったのか、子供の数を見ても例の事件以降も関係を続けていたと見て取れる位である(※口の悪い研究者からは共に神としての資質や他人に与える能力に欠けた似た者同士カップルとも言われる)。

ハデスがアレスに同情的なのは片や鼻つまみ者、片や「名前を言ってはいけないあの人」とされて忌み嫌われている似た者同士だから……では無く(※その可能性もあるが)、アレスが戦争で犠牲を出しまくる→冥界が賑わって嬉しい!かららしい。

ハデス&ペルセポネ「入居者募集中!死ぬだけの簡単審査で永遠に静かで落ち着いた生活が約束されます……幸福になりませんか諸氏!?」

良く知られたアレスとハデスの逸話として、子供達が悲惨な死を遂げ続けた結果、自らの不死性を捨てて死を選んだアレスとアフロディーテの娘ハルモニアをアレスがハデスに頼み込んで善人が穏やかに暮らせるエリュシオン行きにした貰った、というエピソードが有る。
まあ、ハルモニアもその夫のカドモスも国を平和に治めて繁栄させた賢君だったので、アレスが頼み込まなくともエリュシオン行きになっていた可能性も高いが、神が不死性を捨てて死ぬケース自体が極めて稀なのでアレスが心配になったのも分からなくもない。
尤も、ハルモニア自身が兄であるヘパイストスの妻であるアフロディーテを寝取った結果生まれた娘なので、本人が如何に善良な女神でも伯父であるヘパイストスの恨みを買っており、結婚祝いに送られた首飾りに強烈な呪いを込められていたのが、子供達の不運の原因なのだが*1

あと、役割上、本来は格下のはずの死の神タナトスには頭が上がらない。
タナトスがいないと戦争で致命傷を受けた者たちが死ねなくなる(たとえ首が胴とはなれていても)から。
そのため、タナトスが監禁されたときにはアレスが助け出すハメになった。

【マルス】
更なる余談としては、逆にギリシャ神話にも影響を与えてはいるものの、ローマ神話の軍神マルス(火星)は、ローマ帝国建国にも絡められて語られた程の威容と人気を誇る主神格の一柱であり、アレスとは全くキャラが違う事がネタにされる。

マルスは戦争の勝利と共に豊穣をも齎す強さと美しさを兼ね備えた男神であり、命を奪うのではなく、与える神であったのだ。





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最終更新:2024年03月14日 23:01

*1 ゼウスと自ら望んで浮気したセメレーだけは自業自得の面が強いが