人工生命M1号

登録日:2015/12/02(水) 01:01:56
更新日:2023/09/04 Mon 13:59:40
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私はカモメ……

出典:ウルトラQ/円谷プロ/第10話「地底超特急西へ」/1966年3月6日放送


人工生命M1号とは、ウルトラシリーズに登場する怪獣。初出は『ウルトラQ』の第10話。
明確に人工的に作られた怪獣としてはウルトラシリーズ初の存在。

身長:2m
体重:180kg
声:中曽根雅夫(ウルトラQ)、飯塚昭三(ウルトラマンX)

ウルトラQでのM1号

『ウルトラQ』第10話「地底超特急西へ」に登場。
大阪大学の遺伝子工学の権威・相川教授の研究室で生み出された人工生命体。M1号は「Man-Made1号」の略称。

当初は核を持つゼリー状の物体で、遺伝子に刺激を与えない運搬用ボンベに充填され、
星川航空の飛行機便で大阪の阪大キャンパスに運送される予定であったが、自分のものと間違えてボンベ入りのかばんを持った一平が、九州行きの地底超特急いなづま号の報道向け試乗会に呼ばれてもいないのに勝手に忍び込むという事件を起こしてしまった結果車内に持ち込まれてしまった*1
その後車内でひょんなことから浴びた新聞記者のカメラフラッシュに反応して一気に成長。前述の2m・180kgの巨体を持つ、猿人めいた姿になった。

ブルドーザー20台並という異常な怪力を誇るが、純真な3歳児といった風情で周囲への危害を加える様子はなかった。
……ただ、3歳児相当の旺盛な好奇心と怪力が合わさった結果、いなづま号の運転室に乱入。
子供のように機器や運行担当の人工知能を散々いじった挙句に破壊し、制御不能に陥れてしまう。

いなづま号は制御不能のまま高速で突っ走り、緊急手段としてM1号の乗った動力のある先頭車両を切り離す。
しかし先頭車両は当然ながら止まらず、終点の北九州駅に激突。
周囲に大惨事を巻き起こした挙句、爆発に巻き込まれたM1号も宇宙に投げ出されてしまった。えぇ……。

宇宙に放り出された後も生きており、「私はカモメ……」と呟きながら漂っていた。
どうやら爆発のショックか何かで知能が多少成長したようである。

このシーンで話は終わっており、彼の生死は定かではない。
宇宙に悪ガキのイタチ*2とぶっ飛ばされたのは彼らの今際の際の夢という説もあるが、脚本が明言しないんだからわからないったらわからない。
イタチはともかく、M1号は生きてても不思議はないかもしれない。

ちなみに、脚本の準備稿ではいなづま号のエンジンに触っての感電死、決定稿では衝突後の火災での焼死とどちらも死亡オチが用意されていた。

空想非科学大全』では「生後数分で3歳児並みの知能を持った」ということで知能指数90万ということが判明。
まあ、よく考えりゃ0から3歳児並みになったんだからその速度には目を見張るべきである。

なお、この「私はカモメ」には元ネタがあり、
史上初の女性宇宙飛行士・旧ソ連のワレンチナ・テレシコワが宇宙で最初に発した言葉である。
この言葉はテレシコワのコールサインが「チャイカ(カモメ)」であったため管制室からの呼びかけに「ヤー・チャイカ」と返した、というものであり、
「私はカモメ」という訳はチェーホフの戯曲のセリフを交えた、誤訳ではある。

更に余談だが、『ウルトラQ』で彼の声を演じた中曽根氏は後にウルトラマンの声に抜擢される事となる。
そう、あのお馴染みの「シュワッチ!!」の人である。

…それにしても様々な不幸が重なった結果とはいえ、最新の電車に乗りたいからという一平の身勝手な行動のせいで「実験生物の喪失」「自社の預かった荷物の破損」「最新列車大破」「北九州駅とその周辺の壊滅」「少年一人行方不明」と相当な被害が発生している。
ギャグっぽく流されてるがその後一平は大丈夫だったんだろうか…?

その他作品のM1号

「ぼくら」誌に掲載された絵物語版『ウルトラQ』のエピソード「SOS富士山」では富士山火山研究所生まれで、まさかの敬語キャラ
噴火の兆候が見られる富士山に不時着した円盤の調査に出かけた万丈目らに同行し、
円盤に閉じ込められていたジグリ星人ことセミ人間(映像作品と異なり正義の宇宙人)をその怪力で救出し、
セミ人間とタッグを組んで岩石怪獣ゴルゴスと死闘を繰り広げ命と引き換えに溶岩の中へ封印した。

ウルトラゾーン』ではその親しみやすそうな顔立ちから主役エピソードを貰い、何度となく登場。
ウルトラゾーンに登場する彼はウルトラQで宇宙に放り出された個体であり、「地球からなんか呼ばれたから」という理由で帰還したらしい。

よく似ていると言われる渥美清的にフーテンのM1号的にさすらったり、人情話を展開したり、
ラゴンちゃんの兄役になってラゴンちゃんに割とハッキリと「お兄ちゃんやめてー」と言わせたり、
漫才やコントをやったりと割合マイナーな部類になる怪獣ながらコミカルに見えるポイントを活かし活躍。

その他チョイ役でも案内役*3やウルトラマンの噛ませ犬*4
ピグモンにガッツ石松に見間違えられる*5などいろいろな役で出演。そこそこの人気はあった。

Peeng Life×怪獣酒場ではM1号お母さんとして登場し薬売りのロボット長官と会話を繰り広げる。
ロボット長官のことを気に入っており、娘の婿にしようと目論んでいる。
壊れたTVを直すかのようにロボット長官の頭を叩きショートさせ、結婚を認めさせた。

初出がウルトラQということもあり、コアな特撮ファン限定の人気という点は否めなかったのだが、
2013年末の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時』に、
ダウンタウンの浜田雅功に似ていることからかガラモンと共に登場。
特に、笑いの仕掛けとして作られたミニサイズのロボットはAKB48の「ヘビーローテーション」を踊れるほどの高性能であり、ガキ使メンバー達の笑いを誘った


ウルトラマンXでのM1号

前述の活躍が功を奏したのか、『ウルトラマンX』第19話「共に生きる」にメイン怪獣として登場。

口ぶりから『ウルトラQ』に登場したものと同一の個体か同じような事件を経て宇宙に放り出された個体のようだが、
『ウルトラQ』時代の無邪気さも『ウルトラゾーン』の時のボケた雰囲気も失われており、
代わりにエックスの能力を無効化する特殊空間*6の展開や、テレパシー、指パッチンで空間転移させる能力を身に着けている油断ならない相手になっている。
(後に放送された総集編での大地の説明によると、「長い年月を経てM1号の持つ知能と超能力が進化していた」との事)

劇中ではゴモラがダークサンダーエナジーを受け、
EXゴモラとなって暴れる中、止めに入ったエックスがザナディウム光線を撃つことを決めた時に介入。
エックスをフラスコに閉じ込め観察するなど、さながらXioのラボがスパークドールズにやっているような事をして挑発する。

さらに、自身が人類に作られながら宇宙に放り出され放棄された*7事を語り、
大地たちXioの唱える怪獣との共存に潜む「人類の独善性」を問いただす。


「ゴモラはやっと、自分の身体を取り戻したのだ。なのに、なぜ自由を奪う?」

「ゴモラは怪獣だぞ? この姿を見てまだ本気で共存出来るとでも?」

「人間らしい考え方だな。都合の悪いことが起こると誰かが悪意を持ってやっていると考える。自分たちがいつもそうしているからだ。」

「これが人間だ。共存などと言いながら、都合が悪くなれば平気で排除する!」

「思い知れ! 人間は他者と共存など出来ぬ!」

「共存出来ぬものは……滅びゆくだけだ」


……誰だお前!?
『ウルトラゾーン』のようなノリの宇宙人も増えてきた中、寅さんの真似をしたりウホウホ言いながらバナナの叩き売りをしていたのとはえらい違いである。


宇宙に放り出された後放置されたのがよっぽど応えたのか、すっかりひねくれた性格になってしまったようだ。

大地の必死の呼びかけも、サイバーゴモラとのユナイト経験があるアスナが命懸けでゴモラの前に立ちはだかり説得に入った時も、
「なんだ、あの茶番は。自己犠牲か?」と一笑に付すが、
何度吹っ飛ばされても必死に説得する姿を見て感じるところがあったのか、エックスを開放し地球に戻す。

……心の底から人類を信じたわけではなかろうが、アスナの必死な気持ちがM1号にも通じた、ということであろう。

やがてゴモラは実体化制限時間を迎えスパークドールズに戻り、事件は解決した。
そして、ゴモラのスパークドールズを手にして泣き崩れるアスナと、それを黙って見つめるエックスを見届けると、「私はカモメ……空高く飛翔し、思考し続ける……」と呟き、人類の観察者として衛星軌道の彼方に去っていった。

『ウルトラマンX』という作品のメインテーマとそこに潜む独善・矛盾に切り込み、
最終回にも通底するであろうテーマへの挑戦を体現する存在という大抜擢を受けたのであった。
メフィラスとか宇宙人でもいいような気がしなくもないが、そこは割合使い古されたパターンではあるし、
人類に作られ翻弄された怪獣で、かつ知能が高く話も出来るのがちょうどM1号ってことなのだろう。

生後2時間で3歳児並みということは、単純にそのまま正比例で伸びたとして半日で成人並みの知能に達し、
49年経った頃には精神年齢は64万歳になっているはずだから、知性はウルトラマンキング並みになっていてもおかしくないということである。
そんなに長い間ずっと一人で、よく発狂しなかったものだ。

総集編で少し出た時はこんな役回りが来ると予想できたファンはあまり多くなかったであろう。いい意味でのサプライズであった。

なお、「ゴモラの実体化実験にダークサンダーエナジーがシールドを粉砕するほど大量に落ちて来たのは彼の差し金では?」と思われたが、
M1号自身は「人類じゃあるまいし、そんなことはしないよ(意訳)」と言っている。
彼の言を信じるならば、彼はあくまで観察者なのだろう。
しかも、彼の言うとおりダークサンダーエナジーの元凶にも本当に悪意は存在しなかった。もしかしたら彼は原因と正体も知っていたのかもしれない。

宇宙から人類を観察し続ける彼に誇れる、怪獣などの他者と真に共存出来る未来を、大地たちは創ることが出来るのだろうか。
次の回でさっそく(現状レイオニクスその他以外で)共存不可能なスペースビーストが出るが…


ウルトラマンZでのM1号

第20話「想い、その先に」にてメイン怪獣として登場。
今作ではストレイジの整備班リーダー、バコさんことイナバ・コジローの娘であるイナバ・ルリが作り出した人工生命。
『X』の時とは異なり言葉を話す事はなく、『Q』の時の様な純粋な幼児程度の知能をしている。
性格は非常に大人しく、ルリや研究チームの言う事をよく聞いている模様。
中でもルリからは息子の様に大切に扱われ、M1号自身もルリに花をプレゼントする程慕っていると両者の関係はかなり良好。

M1号の細胞にはかなりの万能性がある為に将来的には医療などへの応用が期待されているが、
同時にそれを狙う組織も存在しており、ルリの研究チームに紛れ込んだクラタの手引きで拉致されてしまう。
持ち前の怪力で拉致犯に抵抗し、追って来たルリを助ける為に暴れて乱闘になり偶然にも配電盤に激突し、
その電撃のショックで巨大化してしまう。

キングジョーSCの麻酔弾で一時は眠りについたが、市街地から3000mと言う近さな上に目覚めた時に被害が出るとも限らない為に駆除命令が下され、ヘビクラ隊長もこれを承諾する*8が、ハルキの訴えにより「市街地から1000m付近に来たら容赦なく駆除する」と言う条件の下、M1号の名札に残された体毛から大急ぎで細胞分裂促進剤を開発し、それを撃ち込んでM1号を元に戻す為の時間稼ぎが始まった。

そうして時間稼ぎの為の作戦がスタートするが…

・バナナの匂いで引き寄せて落とし穴に誘導して動きを封じる「バナナだよ!捕獲作戦」
ウインダムとキングジョーSCのダブルタックルで動きを抑える「ラグビーダブルタックル!作戦」
・アンカーを引っ掛け、特空機2体がかりで引っ張る「負けるな!綱引き捕獲作戦」
・ストレイジ整備班がドラム缶を太鼓代わりに叩き、特空機2体も踊って音と踊りで注意を引いてその隙に捕らえる「叩いて!踊って!ドン作戦」

…とどこかで見たような防衛チームの作戦の様な面白作戦を各所からの電話に平謝りするヘビクラ隊長をバックに実行。
特空機2体がかりでも止められないM1号の怪力に振り回されて足止めが上手く行かず、遂には阻止限界地点に達してしまうが、ストレイジの時間稼ぎとルリの尽力によってギリギリのタイミングで細胞分裂促進剤の準備に成功。
ウルトラマンゼットベータスマッシュのプロレス殺法で撃ち込む準備の時間を稼ぎ、デルタライズクローのデスシウムクローで動きを止めてる所にキングジョーSCの口の中で待ち構えていたバコさんが細胞分裂促進剤を撃ち込み無力化に成功した。

何気にTVシリーズ初となるM1号の巨大化&ウルトラ戦士との直接対決でもある。原典で見せた人間大でありながらブルドーザー20台分を誇る怪力もサイズ相応にグレードアップしており、前述の通りウインダムとキングジョーSCが束になっても全く歯が立たないほどの凄まじい怪力を見せつけた。このキングジョーSCはレッドキングと殴り会えるほどのパワーの持ち主で、素体となったキングジョーに至ってはウルトラセブンすら遥かに凌駕する程の怪力を誇っていたことを考えると、M1号の怪力がいかに常軌を逸したものであるか理解できよう。

なお、この事件の収束は、ハルキがレッドキングや、グルジオライデンの大事件による心の迷いを乗り越えたからこそ出来たのかもしれない。

この回は他にも過去のウルトラシリーズ作品のオマージュが散りばめられており、ウルトラシリーズファンは見て損はないだろう。


私はWiki籠もり……項目を作成し……追記し続ける……。

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最終更新:2023年09月04日 13:59
添付ファイル

*1 「新幹線の倍の速度で走れる超特急で、報道向けの試乗会が開かれており、まだ貨客運転には至っていなかった。…なぜ貨物が混ざりこんでしまったのだろう」と当初はこの脚注に書かれていたが本編を見れば分かる通り一平の軽率な行動のせいで紛れ込んでしまったのが正しい。

*2 彼も試乗会に紛れ込んだ招かれざる客である。国鉄のセキュリティはどうなっているのだろうか…

*3 『ウルトラQ』を取り上げたドキュメンタリー

*4 『ウルトラマン前夜祭』

*5 映画『ウルトラマンZOFFY』

*6 ウルティメイトゼロカードを無効化するため結構強力な様子。

*7 もっとも、いなづま号事故かそれに似た事件で宇宙に放り出されたようなので半ば自業自得ではあるが……

*8 基本的には駆除路線であったが、ヘビクラは部下が反発する事を見越しており、敢えて非情な態度を取った事が青柳尊哉氏のtwitterで明かされている。