プロフェッサー・ギル

登録日:2015/11/23(月) 23:06:04
更新日:2019/03/09 Sat 08:23:03
所要時間:約 13 分で読めます





プロフェッサー・ギルとは、『人造人間キカイダー』に登場する悪の科学者である。
(漫画版では光明寺から「ドクターギル」とも呼ばれている)

演:安藤三男(特撮)
声:小川真司(アニメ)

概要

原作漫画及び特撮版においては、老齢の科学者として登場。常にザンバラ髪を振り乱し、黒いローブを身に纏っていた。
本名は原作漫画においてはギル・ヘルバート、特撮版ではアレクサンドル・ポマレンコ
犯罪シンジゲート「ダーク」の総帥であり、いわば本作の諸悪の根源とも呼べる存在である。

ギルはかつて世界的なロボット工学の権威・光明寺信彦博士の腕に惚れ込み、科学技術の発展のために尽力すると嘘をつき
光明寺博士をダークへと招き入れていた。
しかしその本性は人の命を何とも思わない冷徹なマッドサイエンティストであり、ダークも兵器の売買のために作られた犯罪結社であった。

教授と呼ばれる程の天才学者ではあるものの、ぶっちゃけ何を専門としているのかはあんまり語られていない。
特撮版のプロデューサーである平山亨氏によれば「かつてマサチューセッツ工科大学で光明寺としのぎを削った学友であり、恋敵だった」らしい。
え~、追記しておくと、光明寺博士は実はバツイチで、早くに妻(初婚)を亡くし、この時に出来た息子がタロウ。
タロウがまだ幼かった頃に光明寺は再婚し、後妻との間に出来たのがミツコとマサル。
…これから逆算するとギルと光明寺は5~60代ということになる。結構なトシだ。
ま、それはさておき、児童誌ではギルは「宇宙工学の権威」となっている。完全な死に設定だな。
(シャドウがアニメ版のようにダークの後継組織ならまだわかるのだが)

基本的に頭のイカれた人物なので、視聴者置いてけぼりの発想をすることもたまにある。
たとえば

若き天才科学者がいる。こいつはダークのビジネスの邪魔になりそうだ。
 ↓
何? この青年には婚約者がいるのか!?
 ↓
よし! その女を殺そう! そうすれば絶望して二度と研究をすることはあるまい!!! ワーハハハハ!!!

…なぜその婚約者を人質にとってダークに引き入れないのか、なぜ科学者本人を直接暗殺しようとしないのか。
こいつらみたいなことになったらどうするつもりなんだろうか。
モテない中年男の考えることはよくわからん*1


世界征服の野望を抱いたギルは光明寺を騙してアンドロイドを作らせるが、本性が露見すると光明寺はギルを倒すためにキカイダーを製作。
怒ったギルが光明寺を殺しにかかったため、光明寺博士は逃走し、キカイダーは良心回路が不完全なまま世に出ることになった。

ギルはダークロボットを率いて破壊活動や闇取引を行うものの、光明寺博士を捜して彷徨うキカイダーに連戦連敗。
あっという間に光明寺の残した13体のロボットたちはキカイダーに鉄屑にされてしまい、ギルは光明寺の残した技術を元に
ダークロボット第二陣の開発に向かう。

そして悪魔の笛を使いギルはキカイダーを半壊に追いやると、光明寺を連れ帰り新たなロボットハカイダーの建造に移る。
うーん、放送当時からややこしいシナリオだと思っていたが、改めて文章に直すとホモの痴話喧嘩みたいだな(勿論そんな内容ではありません)。
光明寺を邪魔だとばかりに冷凍カプセルに放り込んだギルは、ハカイダーの頭蓋に光明寺の脳髄を移植し、
キカイダー相手に人質を取ったも同然の戦法で挑みかかるのだが、これによってダークが滅びる引き金を引いてしまうこととなる。
ハカイダーは今までの脳筋ダークロボットとは異なり、自分の意思で悪事を働く「悪魔回路」を搭載しているのだが、
そのせいでハカイダーは「キカイダーを壊す!」という活動理念を忠実に守り抜くこととなる。
その結果ギルの言うことすら聞かなくなり、ギルの配下であるアカ地雷ガマがキカイダーを完全破壊した際には、
ハカイダーはマジギレしてアカ地雷ガマを粉砕、更にギルの住むダーク本部を破壊して回ることとなるのだ。
理性を失って暴れ回るハカイダーに向け、ギルは怯えながらも「文句は光明寺に言え」と告げる。
そして去っていくハカイダーに対し、ギルは狂ったような顔をして叫ぶのだ。

「殺せェ!! 殺すがいい! 光明寺をなぁ!」
「光明寺を殺せば、お前の脳も死ぬんだ! そしてお前の能力はアンドロイドマン以下になってしまう!!」
「はぁっはぁっはぁっ……アアアーッ!!」

そこにいたのは、最早冷徹な天才科学者ではなく、ただの年老いた狂人だった。

ハカイダーへの恐怖と憎悪に心が満たされたギルは、白骨ムササビを差し向けてハカイダーを討伐。
しかし、ハカイダーが機能停止したことで、光明寺陣営は光明寺博士の脳を取り戻すこととなった。
かくして生き返った光明寺博士の手によりキカイダーは復活。
たちまち白骨ムササビを倒すと、アンドロイドマンの残党兵たちをものともせずにキカイダーはダーク本部を撃滅する。

遂におのれの命運を悟ったギルは、キカイダーを道連れにせんと基地の自爆装置を作動させ、ダークは壊滅するのだった…。



その後、部下の三博士によって脳髄だけが取り出され、ギルはギル・ハカイダーとして生き返るのだが、
やがてハカイダーのAIが自我を持つようになってからはギルはその人格を失い、
ただの蛋白質の塊としてキカイダー01の前に敗れ去るのだった。
その後も亡霊として何度か登場しているため、既にギルは脳死を迎えたようだ。


狂気に満ちた演技と圧倒的なキャラ性から、今なおマッドサイエンティストの代名詞として名が上がる人物でもある。



悪魔の笛


ギルがダークロボットたちに命令を下す際に使用する長い笛。普段は杖代わりに使用している。
特定の周波数を刻むことで、ダークロボットたちの動きを活性化させる。
これにより、ジローの不完全な良心回路はギルの命令を聞かねばならない苦しみで「痛み」を味わわせ、
聞き過ぎれば完全に自我を失い暴れ回ることとなる。
ただし、キカイダーに変身したジローには強力なスピーカーで増幅させない限り効き目はない。
良心回路が完全なイチローに対しても全く効かない(漫画版でも、イチローには良心回路が搭載されていないため通用しない)。

ギルは基本的に基地内から動こうとしないが、キカイダーが九州や山陰にいても平気で聞こえていたため、
もしかしたらダークロボットの体内に通信機でも搭載していたのかもしれない。
(『人造人間キカイダーThe Novel』においては「音波を電波信号に変え、光速で伝播する」と説明がなされている)。

この笛の音に苦しめられるジローがいかにして危機を脱するかが『キカイダー』における最大の山場なのだが、
大概その理由は主人公補正とダークロボットのポカミスに支えられたしょーもないモノであり、今なお語り継がれている。
普通考え着かねーよな、笛の音に苦しみすぎて崖から落ちて近くにあった滝の音で危機を脱するとか…。


派生作品

◇漫画版
漫画版においては、ギルは光明寺のペンフレンドとして知り合ったという設定。
光明寺が妻と息子*2を亡くし、環境を守るためのアンドロイドを作っていると知ると、スポンサーとして名乗り出た。
更に妻に先立たれて傷心している光明寺のために、若い女性を伴侶として紹介している。
やがて光明寺は恋に落ち、その女性と再婚してミツコとマサルを授かることとなる。
しかしながらその女(アニメ版によれば坂本千草さん)は実はギルが送り込んだスパイであり、
ようやく光明寺博士はギルの本性を知ることとなった。

前半ではキカイダーを誘き寄せるために、老紳士に変装して半グレの少年に武器を渡したりするなど、
引き籠りな特撮版に比べるとやや活動的な一面がある。

特撮版同様に逃げ出した光明寺を捕まえ、更に彼の作っていたハカイダーを横取りすると光明寺の脳髄を植え付けて
キカイダー相手に有利に立ち回り、いろいろあって遂にハカイダーはキカイダーを鹵獲しダーク本部に連れ帰る。

しかし、それを見てギルはふと疑問に思った。
「なぜハカイダーは、任務を妨害しようとしたミツコを殺さなかったのか」…と。
ハカイダーの力であれば人間を殺すのはたやすいにもかかわらず、意図的に「手加減」をしていたのだ。

その顛末を目にして、「ハカイダーの頭蓋の中でも光明寺博士の意識は生きており、いずれ自分に牙を剥く」と判断したギルは、
ハカイダーを解体処分することを決意する。
しかし完全に機能停止する寸前、ハカイダーは基地内に拉致していたキカイダーを再起動させてしまう。
キカイダーは襲い来るアンドロイドマンたちをものともせずに大暴れし、ギルを捕まえると光明寺を蘇生させるように脅迫する。
かくして光明寺博士は生き返り、ダークはキカイダーによって壊滅したのだった。


だがその後、再びジローと遭遇したハカイダーの口から…



「とぼけるな! きさまがおれのからだをつかいものにならなくしたんじゃないか!!」
「だからおれは、おれの脳だけをハカイダーに移植した!! …未来永劫、生きるために!!!」

そう、漫画版においてギルはハカイダーに脳を移植してもなおその自我を保ち続けた。いわば真の意味でのサイボーグとして復活したのである。
同じくハカイダーボディに換装した三博士と共にハカイダー四人衆を結成すると、かつて息子・アキラの身体に刻んだ秘密兵器の設計図を手に入れるべく暗躍する。
キカイダーは兄(試作機)であるキカイダー01を目覚めさせ、二人はアキラを護るために尽力する。
こうしてキカイダー兄弟によりハカイダー四人衆は壊滅したが、ギルは残骸を使ってかろうじてもう一機ハカイダーを作り、
からくも逃走する。

だが、そこに第三勢力・シャドウが現れた。シャドウもまた秘密兵器「アーマゲドン」を狙い、アキラを襲う。
これを不利と見たギルは一旦キカイダー兄弟に協力する。
勿論正義の心に目覚めたわけではなく、アーマゲドンを手にするためである。
新たな仲間・キカイダー00と共にギルはシャドウ基地に乗り込み、攫われたアキラを取り返す。
好機は到来した。ギルはまんまとアキラ、そして妹のルミを攫い出し*3、アーマゲドンの製作に乗り出す。

キカイダー三兄弟とビジンダーはアーマゲドンを破壊するために深山幽谷を突き進むが、
それを察知したギルはE・S・S砲で四人を機能停止させると、全員に「服従回路」を取り付ける。
良心回路を取り外せなかったキカイダーこそ警戒して縛り上げたが、
これによりキカイダー達はギルの言うことを何でも聞くダークロボットになってしまい、
彼らの尽力もあってシャドウはアーマゲドンの超兵器の前に全滅。
キカイダーもやがてギルを様付けし、命令を遂行するためだと言ってビジンダーに縄を解かせる。
かくして世界はギルのものになるかと思われたその時だった。


「…たしかにこのとおり作動しているのだ。お前の組み込んだ『悪の心』がな!!」
「だからこそ付いているのは知っていても恐ろしくて使う気にもなれなかった破壊光線を使えた…」
そして、兄弟だって殺せたんだ!!!

不完全な良心回路を持っていたキカイダーは、皮肉なことにギルの組み込んだ服従回路により、完全な心を持つこととなった。
そしてキカイダーは「人間と同じ」自由意思で、差し向けられた三人をたちまち破壊すると、ギルに挑みかかる。
一瞬の光が交差した中、悪に満ちたその脳髄は弾け飛び、ハカイダーは倒れ伏した。

キカイダーはアーマゲドンを破壊し、遂にダークの野望は潰えた。
しかし、ギルによって奪われたものを、キカイダーは遂に取り返すことはできなかったのである…。





アニメ版
本作に於いてはシャドウはダークの残党が結成した組織ということになり、小川声のギルハカイダーはそのままシャドウの首領に居座る。
この際にギルは特撮版『キカイダー01』で着用していたマントを羽織っている。

末路は基本的に漫画版と変わらないものの、こちらでは最終決戦においてキカイダーを静止するためではなく
わざと苦しめるために01と00を差し向けるなど、悪辣さが目立っている。


◇小説版
人造人間キカイダーThe Novel』においては、「プロフェッサー」ではなく「プレジデント」として登場。
政財界にも顔が効く「ダーク・マジェスティック・エンジニアリング」のCEOという設定であり、
設計図を一目見ただけで良心回路の不具合を見つけ出すなどの俊英ではあるものの、
その実は「死」への恐怖に常に怯えている小心者であり、ハカイダーを作り出したのも、機械の身体を手に入れることで
永遠に生き続けるためだった。

ジローが本部に殴り込みをかけると、キカイダーが人間には本気を出せないことをいいことに
光線銃で仕留めようとするものの、ある奇策に嵌り敗れることとなる。


◇KIKAIDER00版
KIKAIDER00』はTV版「キカイダー01」の続編と言う設定で話が進む。
ギルの脳はハカイダーに搭載されていると思われていたが、実はアーマゲドンゴッドに搭載されており、
なんと念動力まで身に着け(本来なら動くようにできていない)アーマゲドンゴッドの腕で白骨ムササビを握りつぶしたりした。
あれ、じゃあシャドウが呼び出していた亡霊はいったい…。
また、本作ではハカイダーの脳の光明寺の妻・坂本千草がギルの愛人だったという設定になっている。昼ドラかよ。


キカイダー REBOOT
ギルバート神崎名義で登場。演者は鶴見辰吾。
アンドロイドの平和利用を目的として開発に携わる光明寺博士(なお、本作では結構若い)と対立し彼をARKプロジェクトから排斥し、
ARKプロジェクトを乗っ取ってアンドロイドの軍事開発に乗り出した。
本作ではハカイダー及びマリを作り出したのも彼本人という設定。
従って、本作には「光明寺ハカイダー」は登場しない。

また、『仮面ライダー鎧武』に登場する戦極博士は彼の知り合いらしい。
類は友を呼ぶ…と言いたいところだが、ハカイダーに関しては戦極も「こんなものを作って何がしたいんだ」*4と明らかに引いていた。


スーパーヒーロー作戦
キカイダーシナリオのラスボスとして登場。通常攻撃はアンドロイドマンの大軍勢を呼び寄せてけしかけると言うもの。
…見かけは酷いがウルトラマンやアールガンにダメージが通る当たり何気に凄い。
最期は特撮版同様の末路をたどるが、光明寺の脳を取り出したハカイダーに脳髄を移植し、ギル・ハカイダーとして復活。
三博士と共にハカイダー四人衆を結成し、ネロス帝国の破壊ロボット軍団凱聖の座に着いた。
漫画やアニメと同じく意識はそのまま続いていたため、キカイダーからは「サブローはお前のように卑怯ではなかった!」と言い放たれる。


特撮冒険活劇 スーパーヒーロー烈伝
本作ではハカイダーは量産されていたという設定であり、ダーク壊滅後も新型のブラックハカイダーに脳を移植して
光明寺の脳が入ったサブローハカイダーと敵対する。
キカイダールートだと、あらゆる悪の組織の総帥という設定になる。
(ゴレンジャールートだと黒十字王、ライダールートだとクライシス皇帝の手駒扱い)


人造人間ハカイダー ラストジャッジメント版
本作の黒幕として登場。
ジーザスタウンの支配者・グルジェフがハカイダーに倒されてから10年後、
グルジェフの後釜(元老院首領)としてジーザスタウンの新たな支配者となった。
そして、ハカイダーをも支配しようとしたが、自由を奪う者を嫌うハカイダーは当然ギルに従うことを拒否。
その制裁として手下のワルダーにハカイダーを一度敗北させたが、それが後々になって自らの首を絞めることとなる。

+しかしその正体は…
ハカイダーは遂にギルを殺すことに成功した。しかし、爆炎の中から飛び出してきたのは機械部品…。
「ギル」はお飾りに過ぎず、実際はグルジェフが自分の姿を隠すために作り上げたロボットに過ぎなかった。
そしてグルジェフはブルーハカイダーに脳髄を移植し、サイボーグとして蘇ったのである。






追記・修正を怠るものは、ダークへ還れ。


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