ワイルド7(TV版)

登録日:2015/11/20 (金) 23:26:39
更新日:2024/04/07 Sun 22:33:20
所要時間:約 8 分で読めます





お前がやれぬ 事ならば
俺がこの手で やってやる
何かありそうな あの七人
何かありそうな ワイルド7

概要

1972年に放送された、同名の漫画の実写化ドラマ。
制作は『コメットさん』『忍者部隊月光』を世に送り出した国際放映。
前番組が『正義を愛する者 月光仮面』である事からも分かるとおり、この時間帯は当時子供向け番組に力を入れており、
当初は同様にアニメで行く予定だったが、国際放映側が広告代理店の萬年社を強引に説得、実写化にこぎつけた。
これは当時の国際放映側にアニメのノウハウが無かったための苦肉の策だったが、結果としてこの判断は大成功となった。
子供向けを意識してかブラックスパイダーというレギュラーの敵が登場したり、原作の凄惨なシーンや超人的なバイクテクニックこそ再現出来なかったものの、
アクションでは火薬がふんだんに使われており、40年以上経った今でも見ごたえのある場面となっている。
そのおかげで視聴率は20%前後という高い数字となり、これは月曜19時台の数字としては現在も破られていない記録である。
一時はブラジルロケも計画されていたが、制作費がかさみ作れば作るほど赤字という某3分間巨大ヒーローと同じ問題を抱え、番組は25話で打ち切り。
国際放映ではスタッフのリストラが行われる等、苦い結果となってしまった。
しかしながら原作者の望月三起也氏はこの作品を大いに気に入り、CM前後のアイキャッチやED終了後の「オートバイは正しく乗りましょう」の注意書きで
カットを提供しているほか、
後に作中で「町をきれいにするにはドブをさらう人間も必要なんだ。汚い仕事をするやつがいなけりゃ世の中はよくならんのだ!!」と
OPの歌詞から引用したセリフを草波に言わせている。

登場人物

(カッコ内はキャスト)

「だったら俺を警察官にしてくれ!…俺だって一端の悪党だ!!」

○飛葉 大陸(演:小野進也)
名前は「たいりく」ではなく「だいろく」と読むので注意。
元は横浜を中心に活動する暴走族のリーダーだったが、兄の手により少年院に留置される。
出所後は兄に詰め寄り喧嘩となるものの、後にワイルド7のリーダーであった兄*1が任務で殉職した事を知り復讐を決意。
草波の厳しい入団テストに合格し、メンバー最年少ながら隊長となる。
元々暴走族の一員だったからか、バイクの腕前はメンバーの中でもトップクラスで、
飛葉がいない時には任務の終了に倍以上の時間がかかった事もあった。
作中では新聞配達の少年に慕われていたり、救出した子供に「大きくなったらワイルド7に入る」と言われる等、
正義のヒーロー」「子供の味方」としての面が原作よりも強調されている。
ソルブレインの博士は他人の空似。

○八百(演:手塚茂夫)
早稲田大学卒業というインテリで、プロゴルファー*2からワイルド7へと転職したという異色の経歴の持ち主。
普段からガムを噛んでニヤニヤしており軽薄な印象があるが、「ばかりつくから」という理由で名付けられた
コードネームとは裏腹に作中では特に嘘はついていない。
メンバーの中ではわりかし理論派ではあったようだが、差出人不明の招待状に他のメンバー共々乗せられ
まんまと酒で酔いつぶれるという一面もあることから、「勉強は出来るけど…」なタイプだったのかもしれない。
演じている手塚氏は番組終了後も後番組の『流星人間ゾーン』でゲスト出演したり、『ウルトラマンレオ』でMACの佐藤副隊長を演じたほか、
太陽にほえろ!』でジーパン刑事を刺殺すチンピラを演じる等名バイプレーヤーとして活躍したが、2004年に肺がんで死去。

○オヤブン(演:永井政春)
原作では1000人の子分を率いるヤクザの大親分だったが、ドラマ版では描写が大変なためか一匹狼の渡世人と言う感じに。
ただし情に厚く義理人情を大事にするという点は変わらず、作中では敵が変装した修道女達を
任務の最中にも関わらず「可哀想だな」と助けようとしている。
サイを使った格闘戦を得意とし、戦闘では真っ先に敵に切り込む猪突猛進なタイプ。…が、その性格が災いして敵に捕まる事も。
非番の時はまだしもプライベートでもメンバー相手に丁半博打を行うほどのギャンブラーで、
「単独行動をするかどうか」をサイコロで決めた事もある*3
何故か歌舞伎のように見栄を切るシーンがあったり、赤褌一丁で潜入捜査をするなどコメディ部分を担当する事が多い。
演じる永井氏は『仮面ライダースーパー1』では火焔ウォッチの人間体を演じている。

○ヘボピー(演:笹本顕)
名前の由来は「ヘボいヒッピー」の略。単純に「ヘボ」と呼ばれることもある。
元々は立川にある米軍基地で航空機を爆破したり銃砲を盗むなど*4飛葉とは違う意味で札付きの悪だった。
いかつい大男だった原作とは違い、演じる笹本氏は痩躯の為同じ服装でも大分印象が異なっている。
初期はサブリーダー的な存在だったが、後期はあまり前に出ることは多く無かった。
実は一度深夜の任務で寝過ごしかけると言う大失態を演じている。(この時は隣にいた両国に起こされて事なきを得ている)

○世界(演:マイケル・中山)
元々はサーカスで空中ブランコを担当していた花形スターだったが、一瞬の隙でパートナーを死なせてしまい
自暴自棄になっていたところをワイルド7にスカウトされる。
経歴が経歴だからか身軽な動きを得意とし、ナイフ投げの名手でもある。
モトクロッサーとしてもトップクラスの腕前を持つためか、バイクの整備をしている事も。
性格は外見通りキザで、頭脳派の八百と共に行動をする事が多い。第一話で十字を切っていた事から信仰はクリスチャンと思われる。
サーカス団時代の過去に触れた単独の主役回が作られる等、メンバーの中では優遇されていた。
演じている中山氏は何とタレントの中山エミリさんの実父。

○チャーシュー(演:花巻五郎)
ワイルド7で一番小柄な体格をした中年男性。表向きの仕事は中華料理店のため原作では他のメンバーと共に行動することは少ないが、
実写版では常に集団行動の中にいる。…店の経営はどうしてるんだろう?アルバイトでも雇っているのだろうか?
長所は石頭で、第一話の紹介では3人を半身不随*5にしている。また、小柄な体型の割にバズーカを発射する場面が多い。
原作では最初に殉職してしまうため「まさかりのような武器*6を使う」「特技は石頭ともう一つ(最後まで未使用)」ぐらいしかわからなかったが、
本作では両国の爆弾使いの設定を引き継ぎ、最終回のブラックスパイダー側の資料で石頭と爆弾使いであると明記されていた。
演じる花巻氏は当初外見がそっくりな両国役を演じる予定だったが、番組開始にあたり急遽別キャストに変更。奇しくも両国は途中で殉職、彼の死後はバイクを引き継ぐ事となる。
その花巻氏は現在は芸能界を引退しているものの、『コンドールマン』のマッドサイエンダー役や
『小さなスーパーマン ガンバロン』のワルベエ役等、特撮作品に多く出演していた。

○両国(演:小池雄介)
表の顔は平凡で寡黙なサラリーマン*7だが、実は大の火薬好きで30件もの爆破事件を起こした爆弾魔。
チャーシューの項目にあるとおり、小池氏のキャスティングは直前になって製作側にねじ込まれた物。
そのため小池も花巻も今ひとつ調子が悪かったそうだ。
原作では次々とメンバーが死んで行くが、ドラマ版では殉職したのは彼一人。
しかも死亡シーンは代役が暗闇の中で撃たれた描写があるだけで、草波の口から死が語られるのみという扱いの悪さだ*8
そんな両国の死は1973年の1月1日の13話。サブタイトルで『両国死す!』と大々的に取り上げられた。

○モヒカン(演:ジョージ津川)
両国の殉職に伴い新たなメンバーとして加入したインディアンの血を引く男。原作には登場しないドラマ版オリジナルの隊員である。
その為か出番は少なく、全話を通してセリフを語ったシーンはわずか3回しかない
…が、初登場の回では普通に世界と「何だ、そうだったのか全然知らなかったよ」と話していたところから
単に話しているシーンがカットされていただけなのかもしれない。
名前通りヘルメットの下はモヒカンヘアーで、発泡スチロール製のトマホークを手に戦う。
共演者の証言によると、中の人は「メンバーで一番ワイルドだった」そうな。

○草波 勝(演:川津祐介)
ワイルド7の司令で、元は警視庁のエリートだったが司法能力に限界を感じ辞職。独自にワイルド7を結成する。
「普段は非情で冷徹、しかしながら心の奥底ではメンバーを信頼している」という点は原作に準拠しているが、
基本的に戦闘に参加しない漫画版とは違い本作ではバイクに乗って加勢する事が多い。もうこいつ一人でいいんじゃないかな…
また、本作ではオリジナル設定として弁護士事務所という表向きの顔を持っている。
演じる川津氏は『スパイキャッチャーJ3』(1965年)以来の特撮出演となる。
また、ベテランのためかクレジット順では実は彼が一番始めに紹介される。


○映子(演:真理アンヌ)
モヒカン同様ドラマオリジナルのキャラクターで、草波の秘書兼オペレーター。
演じる真理氏は当時人気番組『11PM』の収録のため週に2日しか空きがなく、「もっと出番が欲しい」と製作陣に懇願して
単独エピソード回を入れてもらった。
また、番組開始前は「自分もレザーの衣装でバイクに乗れる」と楽しみにしていたが、結局サイドカーに乗っただけであった事を後に語っている。
最終回ではブラックスパイダーに捕まり、命懸けで本拠地の場所を教えた為に殺害されてしまう。
特撮ファンには『ウルトラマン』のパティ役や『仮面ライダー』のショッカー幹部・マヤ役が有名かも。

○ブラックスパイダー
本作における敵で、世界征服を企む悪の犯罪組織である。
当初は東京のど真ん中でミサイルを爆発させ各国を脅そうとしたり、
現代にヘラクレスを蘇らせたり、銀行強盗用のコンピューターを使って大金を盗み出そうとする等大胆な行動が多かったが、
次第にプロの殺し屋を使っての誘拐や暗殺など地道ながらリアリティに溢れた手口へと変貌していった。
それでも「銃弾を避ける程身体能力を強化したスポーツ選手による暗殺部隊」なんてトンデモ設定もあったが
今作ではワイルド7は国際秘密警察の協力部隊という設定で、このブラックスパイダーを壊滅させるのが目的。
そのため、最終回日本の本部が壊滅後はワイルド7は解散となり、それぞれが別の道を歩む事になる。

○ナレーション(声:中江真司)
クレジットはされていないが、次回予告を担当。
この人の声で「世界制覇の野望に燃える…」とか「突如現れた黒のライダー」なんて言うと違うものを想像してしまう。
バイクも同じSUZUKIだし…

その後

番組終了後の1974年、円谷プロによる『新・ワイルド7』が企画されたが結局実現はせず幻の企画となってしまった。
ワイルド7の実写化はそれからかなり後の2011年、瑛太が主演した劇場版まで待つ事となる。(こちらでもOPの歌詞「どぶさらい」が多用されている。)
1994年には『ラスタとんねるず』内で「ワイルドブンブン自転車隊」というパロディ企画が作られ、飛葉役の小野氏も参加して街のゴミ拾い等を行った。
2009年には『そらのおとしもの』のEDで本作OPのパロディが作られた。歌は保志総一朗と鈴木達央の二人。




バイクは正しく乗りましょう
追記・修正は正しく行いましょう

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最終更新:2024年04月07日 22:33

*1 原作漫画では大陸に優秀な兄がいたのは同じだが、特にワイルド7関係者ではない。

*2 原作では野球選手だったが、当時発生した「黒い霧事件」という野球賭博問題に配慮してか設定が変更されている。「八百」も「八百長」の意味らしかったが同じ理由で「嘘八百」由来とされている。

*3 この時は中心からズレた位置に重りを入れたインチキ用のサイコロを使っており、飛葉に「一杯食わされた」と呆れられている

*4 原作では「日米安保反対」という理由があったが、流石に学生デモや日本赤軍のテロが跋扈していた時代背景を考慮してかこの辺はぼかされている。

*5 作中ではカ○ワとはっきり言っているが、現在では放送禁止用語のため割愛。

*6 中華料理屋設定からすると骨ごと肉を切るときに使う大型の包丁かもしれない。

*7 原作は真逆のキャラクターで、明るい性格のコメディリリーフだが社長の弱みを握っている為に社内では特別待遇を得ている。

*8 しかも死亡する直前の12話では全く出番がない事から、何らかのトラブルがあったものと推測される。