SHUFFLE!(小説)

登録日:2015/07/30 Thu 12:08:22
更新日:2024/04/09 Tue 10:15:25
所要時間:約 13 分で読めます








自分の行く末は、自分自身で決めるべきなんだよ。たとえそれが、間違った道筋でも……ね。

間違った道を正すのが、大人の役目だろ。

違うね……それは家族の役目さ。




『SHUFFLE!(小説)』とはその名の通り、大人気ゲーム『SHUFFLE!』のノベライズ版の事。
とは言え『SHUFFLE!』の小説版とは言ってもいくつかの種類が存在し、
主に小説版として扱われる小形聖史氏の書いたシア編~麻弓編のキャラクターノベル全7巻。*1
他にも同じく小形氏が描く『Really? Really!』のノベライズ版『Really? Really! 恋のジグソーパズル』、
工藤治氏の書く『Tick! Tack!』のノベライズ版である『Tick! Tack!―サンダーキックな恋物語』、
そして『SHUFFLE! アンソロジー・ノベル』(上江洲誠、爲我井徹、馬場卓也、斎藤ゆうすけ等)がある。

アンソロジー・ノベル以外は表紙を原作の西又葵氏、鈴平ひろ氏のどちらかが、挿絵は漫画版の日下皓氏が担当している。
アンソロジー・ノベルの方は様々なイラストレーターが魅力的なヒロイン達を描いてくれている。

なお、これら全ての作品は設定が全く繋がっていない独立した作品である(小形氏が手掛けたキャラクターノベルとジグソーパズルですら全く別の設定を元にしている)。


ただし、『SHUFFLE!』のメディアミックス作品全般はオリジナル展開も多いことから、各作者によるオリジナル設定が混ざっているものの(原作と矛盾する設定は原作設定としては否定されることもある)、
中には元々裏設定として存在していたものもあり、一部の設定は改変の有無はあれど逆輸入されていたりと、原作と同じではないが全く関係が無いということもない。


■概要


小形氏の書くノベライズ版は原作を単に小説にしたものではなく、
個々のルートのネタバレ部分をが知らず2学期を迎えたら……と言うオリジナルストーリーとなっている。
シリーズ物だが一巻完結のためどこからでも読む事が出来る。勿論シア編から読んだ方が良いのだが。

さらに原作でのネタバレ部分に多数のオリジナル設定を導入しているので原作とはほぼ別物
そのため原作をプレイしていても小説版を楽しめるし、小説を読んでから原作をプレイしても、
ネタバレ部分はともかく、その辺含め内容が別物なので十分楽しめる出来となっている。

ただし本作はかなりシリアスである。明るさを売りにしている『SHUFFLE!』で、である。
小形氏も原作や漫画版、アニメ版よりもシリアスと答えているぐらいなのだから、かなりシリアスである。
向こうはいわば展開がシリアスなのに対し、こちらは設定レベルからしてヤバいのが複数存在する。

そのため原作と小説どちらかに手をつけた後、
もう片方にも手を伸ばす場合「アレ? 雰囲気が違う……?」となってしまうため、注意が必要。
また、小説版*2及び漫画版を読んでからアニメ版を見ると、新たな発見があるというファンもいる。


こんな風になったのは小形氏曰く、
「せっかく小説という媒体なのだから、内面を追求してみたい」という考えから、ここまでシリアスになったと言う。
事実、小形氏は心理描写をする為に大きな事件をストーリーに投入するが、それを前にした時のヒロインの描写は見事の一言だろう。読み応えがある。

欠点を挙げるなら、シリアスな事件を起こしながら描写によるフォローが不十分という事だろうか。
このある種の詰めの甘さ、中途半端さが、読者からの批判を招く事がある。

余談だが、桜及び『Essence+』以降の追加ヒロインのキャラクターノベルが発売されていない点については、
キャラクターノベル版の仕様に加えて、後述する芙蓉楓の過去や親衛隊絡みの設定をきちんと表現したらエグいことになりかねないため、
原作のイメージ及びコンセプト的にも発売されなかったのは幸運だった、あるいは仕方ないと、ファンから指摘されることがある。

これに関連して、元々の裏設定を考慮すると“友人との確執といった、ドロドロした人間関係の排除”“悪人のいない明るく楽しい話”というのが原作のコンセプトとはいえ、
原作時点から描くべき場所はたとえシリアスな場面や設定であっても、大幅縮小やカットをせずに描写してフォローしないといけなかったのではないか、という意見もある。
厳しい言い方をすると、特に稟と楓周りの設定は原作の時点で既に原作のコンセプトと反する設定が多いことは明らかであるにもかかわらず、
きちんと描写しなかった為に不都合から目を瞑る形になってしまったとも言える。

またドロドロした部分以外についても、その結果総じて起伏に乏しい物語になっていたり、酷い場合はシーンごとカットしていたためにプレイヤーが混乱することすらあったこともあり、
原作では絵や音などで多少フォローは効いたが、小説では原作通りの方針を踏襲してちゃんとした作品に仕立て上げることは難しいというメタ的な事情もある。



■設定

キャラクターノベル版にはオリジナル設定が非常に多い。
出てくる用語の半分以上はオリジナルと言っても良いぐらいに。
基本的には三世界が出会った、ヒロインが転校して来た、のような大きな設定は原作にあり、細かい設定は小説版のみと考えて良い。

そもそも原作の設定は非常に大雑把と言えるほど流れぐらいしか分からないらめ、
カレハのように、「まままぁ♪」と言いながら細部を妄想するという形式であり、キャラ重視であっても設定重視ではなかった。
神界・魔界はハーレムの為に設定を作ったと公言しているのに、そもそも無印『SHUFFLE!』にハーレムエンドが存在しない事もその一つ。

例えばメディアごとに大筋は変わらないが細部はそこそこ異なる稟との過去という重要設定だが、原作では
  • 事故が起きて稟の両親と楓の母親が亡くなった。楓は生きる気力を失って衰弱した。
  • 稟は憎まれる為に嘘をついて楓を目覚めさせたが、激怒した楓は攻撃を始めた。それは幹夫が助けていたが傷は絶えなかった。
  • 中学二年の頃あたりで楓が真実に気付き、今までと一転、稟への奉仕に精を出すようになる。
という大まかな流れしか判明していない。
攻撃内容も原作では不明であるが、優しい人間が思いつくような攻撃でしかなく、
『鬼のような』ではなかったが、ヒヤッとするものもあり、今でも傷が残っているというものだった。

アニメ版で有名なカッターナイフ事件だが、これだけでも、

◆アニメ版:階段上から下にいる稟に向けて落とす*3
◆キャラクターノベル版:切りつけようとして幹夫にビンタされる
◆漫画版:描写が全く無いので不明
◆コミックアラカルト:切りつける事に成功、稟の背中に消えない傷を残す

……など、攻撃内容自体は結構変わる。

ただし、逆に言えば楓周りの設定の大筋の流れやそこに至った経緯は元々設定されているため、他と比べて後付け部分は少ない部類である。
また、原作における現在の稟との関係性から考えても、決して否定は出来ない設定となっている。

こういったメディアでの違いを楽しむのも『SHUFFLE!』の楽しみの一つである。
細部に関しては、オリジナル設定かどうかは考える必要は大有りだが。




■用語

沢山あるため、代表的なものに絞って紹介する。

  • 神界・魔界
小説版での神界は、雲海に、数多の浮島が連なるの世界。
魔界は無数の小世界が結びついた悪魔の世界。
神族と魔族はかつて数千年の時を生きる種族であったが、魔法文明が便利になり過ぎて現在は人族と同じ寿命になる。
神界を治める神様は軍神ユーストマ、魔界を治めるは史上最大の大魔術師と呼ばれる魔王フォーベシイ


  • 開門
とある『遺跡』で発見された門が開いた事により、三世界が数千年ぶりに繋がった事件。
人界は混乱したが神と魔王が『経済的に豊かだが宗教的な事に無頓着な某国』と国交を結ぶと、
美味い汁を吸わせるかと人界は一致団結した。


  • 遺跡
超古代文明の遺産、門があった場所。
現在神王軍・魔王軍・国連軍の各精鋭部隊が現在も駐留しており、
他世界に行くのなら旅行気分で行けるが、遺跡自体は一般公開されていない。
詳細は不明であり、文献によると地下1000階層以上あるとされ、現在は539階層まで解明されている。
魔物が出るため危険。


  • 天の水盤
人界の様子を見る事が出来る鏡。
幼いシアはこれで稟の様子を見ながら、再会の日を楽しみにしていた。
毎日のように稟の姿を見ていたはずなのに、シアは稟と楓の関係を知らない。
小形氏がシア編の時は楓編の事は考えていなかったか、天の水盤の存在をすっかり忘れていた説が根強い。


  • 幽体離脱呪詛(カーズ・オブ・アストラルトラベル)
二重存在呪詛を試そうとシアが作った素地に、キキョウが手を加えて生まれた新種の魔法。
しかし呪詛は禁忌であり、破った者は王族であっても極刑になるという掟である。


  • 静寂の紫水晶の瞳(サイレント・アメジスト)
人工生命体だけが持っている紫の瞳。原作でも存在していたが名称が付けられた。
作中では時雨亜麻時雨亜沙リコリスプリムラ が該当する。


  • 鮮血の赤の瞳(ブラッディ・レッド) 
魔王の血脈の証。もしくは高貴な魔族の象徴とされる希少な瞳。
所有者は当然、魔王フォーベシイ、ネリネ、そして麻弓=タイム


  • 蒼海の瞳(オーシャン・ブルー)
青い瞳の事。麻弓=タイムの左目が該当する。


  • 双眸異色(ヘテロクロミア)
オッドアイの事。原作で麻弓=タイムが小学生時代に苛められた原因。
小説版では魔界でも苛められていた事にされ、
その理由は『 鮮血の赤の瞳』を持っているのに魔力が無いに等しかったから。


  • 砂糖水は薔薇を枯らす
魔界に伝わる諺。詳細な意味は不明。


  • バーベナ学園文化祭
神と魔王が現地の住民の理解を得ようと働きかけた末に、
国連を使ってでも祭りを盛り上げようという文化が出来ている。
そのため文化祭は戦場と化しており『文化祭補完委員会』が暗躍している。
合法と非合法の中間の出し物も沢山あり去年は『踊る大追跡屋』なんかも繁盛していた。
『踊る大追跡屋』は校内の有名人――稟・樹・楓など――を、
追跡・撮影したものを軽食・飲み物を販売しながら流し続けると言うもの。当然の如くKKKに粛清された。
去年の一番人気だった出し物は、ビキニパンツだけを履いたマッチョ系の男子生徒によるポールスタンドダンスを披露する『兄貴部屋』


  • バーベナ学園体育祭
ここの体育祭の目玉は全校生徒参加の『無差別借り物競争』
この競技で一位になると事前にアンケートで選ばれていた『勝利の女神』とキスが与えられると言うもの。
去年の勝利の女神は芙蓉楓
去年は日頃の恨みで全男子は稟の敵になり、
全女子は楓の応援の為に稟の味方になり、男子対女子の大乱闘になった。
結果は土見稟が優勝した。
今年の『勝利の女神』は『土見稟』。


  • 樹の過去
原作でもあまり触れられない緑葉樹の過去話。
あまりに美形で天才だったが故に他人に無関心で麻弓以外に友達はいなかった。
本人もより多くの落伍者の上に君臨する成功者になる為に勉強していると豪語するほど。

同級生から苛められ、大人から嫌われ続けても、
両親からは無償の愛を受け続けていたので、本当の意味で歪みはしなかった。
中学時代は女子人気が強くなったが、男子からの虐めは続いていた。
好意を寄せてきた女子には容姿や仕草の欠点を言いまくって追い払っていた。

そんな時に土見稟芙蓉楓と出会う。
稟に興味を抱いたが故に他人に関心を持つようになり、
どうせ友達を作るなら女子の方が良いな、と考え女好きになっていった。


  • 形状復元魔法樹脂製眼鏡
緑葉樹の眼鏡。
ギャグ世界お馴染みの眼鏡にヒビが入ってもすぐ回復すると言った現象を起こす眼鏡。
世間で話題の品物だが、お値段がお高いらしく庶民とは無縁の眼鏡。
ギャグ描写に理由を付けつつ、樹が裕福な家庭の子供である事を匂わせる匠の品。
ただ眼鏡の説明がある麻弓編は、終盤になるほどギャグと無縁だが。


  • 楓の過去
原作や他媒体が稟と楓だけの関係に焦点を置いているなか、珍しく学校側の話を描写している。
そこでは稟は学校ぐるみで苛められていると悲惨なものになっている。


更に稟の名誉は街レベルで消失しているというオマケ付きである。

しかしながら、稟と楓が和解してから、
苛め問題の解決や名誉の回復を具体的にどのように実践し、その結果どうなったかは描写が全く無いので正確には不明で、
稟が攻撃するように仕向けたとはいえ、ダメ押しと言わんばかりに楓がしでかした事は紛う事なき犯罪行為であり(傷害、器物損壊、名誉毀損は確実)、
その点に関して楓が罰せられた形跡がない。

バーベナ学園入学後すぐに親衛隊が結成され、稟に対する嫌がらせ(追いかけたりどさくさに紛れて殴る蹴るなど)が再発している。
ただし、こちらに関しては稟の評判が悪いのではなく、嫉妬が原動力であり、やっていることはともかくとして陰湿ないじめに関しては原作時点ではない。

なお、稟への恋心を再度自覚してしまった楓にとって、稟の為に何かする自分が媚びて取り入っているように思えていたようである。*4
「恋人になれない、けど家族にはなれる」と決意するも、稟が他の女子と話す姿を見るだけで胸が痛み、そんな自分を浅ましく思うと同時に稟の為に何かしたいという気持ちを押さえきれずにいた。
もっとも、上述の通り稟に対するいじめ問題の解決諸々については、行動・心情共に一切の描写が無い。

こういった肝心な部分に限って描写によるフォローが欠けているのも、小説版が批判されてしまうポイントの一つである。
因みに『恋のジグソーパズル』でも、「全部自分の勘違いで、稟は何も悪くない」という旨の一言を告げる描写だけで終わっている。
とはいえ、この辺りは小説以上に原作の方に見られる問題(明るい作風にするという理由でシリアス・深刻な雰囲気はほぼ全てカットや縮小しているため)であり、
更に言えば原作や小説以外のメディアでもある程度棚上げする形になってしまったが故に、そうなっているのではという節も見受けられる。
*5

後付けはあれど、原作での裏設定も概ねこの通りであるらしく、『Really? Really!』のベースになっている。
ちなみに原作で稟は苛められているかどうかは曖昧にしてぼかしているが、楓の性格や人気に加えて嫌われるようにしていたため孤立していた。*6


  • 楓が気付く理由
原作では楓が自分で気付いた事を強調しているが、小説版では幹夫に真相を聞かされて気付くという展開になる。
なお、楓が退院してすぐの時点で、幹夫は「事故を起こしたのが紅葉である事」までは楓に話している。*7
ただし、劇中描写を見る限り、楓はかなり早い時期――下手をすれば退院する頃には既に、いずれにしろ小学生時代でほぼ確実に――から真相に勘付いている可能性がある。
「早い時期から真相に勘付いてはいたが、受け入れる事が出来ずにいた」というのが、より正確なのかも知れない。

この展開は『Really? Really!』にも取り入れられたが矛盾するため、
直前まで薄々気付き掛けている描写をする事で極力矛盾しないようになっている。
ただ、この設定が原因で楓は結果的にとはいえ、故意に禀の名誉を傷つける形になってしまった。


  • 楓が稟の嘘を鵜呑みにした理由
上記の通り、事故の真相に早い時期から勘付いていながらも、稟の嘘を鵜呑みにした理由は下記の通りである。
  • 考える事を止め、苦しみから抜け出す最良の手段を知りながらも出来ない自分の意気地の無さを忘れる事だけが、自殺という選択肢を忘れる唯一の手段だったので。
  • 事故の真相、稟に対する学校ぐるみのいじめ、自分の所為で稟の立場を悪化させた事から目を背ける事に慣れてしまい、それ以外の選択肢を見つけ出せないようになったから。
実際、真相を告げられた直後に楓はリスカ未遂を起こしている。
原作での稟への態度を見ても(『真相を知らなかった』『目を背けることに慣れてしまう』のいずれでもおかしくないほど)根深い問題だったことは明らかである。


  • マフラー
稟と和解した年のクリスマスイヴに楓がプレゼントした物。
稟は3年の月日が流れた冬でも使っている。


  • 土見家
土見家の家訓その一:約束は守る。
家訓その二:好き嫌いはしない。
家訓その三:早寝・早起き。
家訓その四:家族や友達とも挨拶をする。
家訓その五:誰とでも仲良しになる。
なお土見家は、稟がリコリスと出会った日(シアと初めて会う1日前)の4日後に放火で全焼しており、
犯人は今現在も特定されていない(因みに、稟も取り調べを受け、犯人と言わんばかりに怒鳴りつけられた)。
稟はこの時のショックでシアやリコリスと出会った事を忘れてしまった。


  • ネリネとリコリス
フォーベシイの計らいで寝込んでいるネリネの元に、初めての外出でリコリスがやって来たのが出会いである。
ネリネはさっさと帰って欲しくてヌイグルミをプレゼントしたが、
それはリコリスにとっては初めて貰ったプレゼントだった。


  • 亜沙と楓
キャラクターノベル版では、当初亜沙は楓を嫌っていた。
その理由は、稟という人物が苛められる原因だとされ、
しかも楓が稟の事を聞かれ本気で『死ねばいいんです』と呟く場面を目撃した為である。


  • 麻弓と楓
キャラクターノベル版では、入学した当初、
男に媚びているように見える(稟に好意を抱いている事もあって)事と、
稟に対する苛め――麻弓は自分でもある程度は調べており、噂を鵜呑みにしてはいない――の事もあって、楓の事を麻弓は嫌っていた。
ただし、楓を頭ごなしに嫌っていた訳では無く葛藤もあり、劇中でその事を樹に指摘されている。
この辺のエピソードは原作へ一部逆輸入もされているが、(少なくとも描写されている限りにおいては)二人とも最初から仲良しである。


  • 神界と魔界の共同研究
原作とアニメ版では昔から続く国の大きな研究で、
』という壁を越え、愛する者を救う為の命の研究
亜麻も自ら志願してこの研究に挑んだと言っているのだが……小説版ではなんと違法研究
不老不死を望んだ組織が極秘で研究しており、
研究所の消滅が神王や魔王が気付いた理由なので亜麻の暴走は止められなかったらしい。
実験用の胚が完成しており見殺しにする事が出来なかったのと政治的な理由で、
研究を継続する事になったのが小説版の合同研究の理由である。


  • 夢喰い(バグ)
神界に生息する霊獣。幸福な夢から出る幸せと言う感情が好物。
稟や亜沙を取り込むが――?
なお魔界には悪夢から生まれる恐怖心が好物の夢魔(ナイトメア)が住んでいる。


  • 亜沙の過去
魔法を憎んでいる理由は原作と違いはない。
ただし、幼い頃の亜沙は制御出来ず漏れ出る魔力の所為で、
周囲から『化け物』と呼ばれ苛めを受け、
隠しきれなくなると引っ越すという過酷な設定が追加されている。
亜沙が人族に拘るのは亜麻の件の他に、また化け物と呼ばれるのを恐れているため。


  • 稟と楓の名前の由来
稟:家という意味。大地にドカッと根っこを張って家を構える人物になってほしいと言う鉢廉の想い。
楓:秋という意味。枯れることもまた大切だという幹夫の考え方。


  • 稟ちゃんパワー
稟ちゃんが放出する稟ちゃんエネルギーを稟ちゃん袋にため込む事で起こる、
稟ちゃん変換によって発生したエコロジーかつエキセントリックなパワー。


  • 亜麻の過去
故郷も親も知らない高い潜在魔力を宿した魔族の捨て子だった。
上記のどこぞの組織が非道な実験を何年も繰り返した末に、魔力が暴走し人間界へ。
空の裂け目から海辺へと落ち、実験か暴走のせいか記憶喪失になっていたのを発見したのが現旦那の時雨葉だった。


キャラクターノベル版とジグソーパズル版の最大の被害者にして最大の加害者の一角。

正式名称がKKK以外変更されており、事実上原作とは別組織に。
「シアちゃん突撃親衛隊 好き好きシアちゃん」略して「SSS」
「リンちゃん親衛騎士団 らんらんリンちゃん」略して「RRR」
「プリムラ親衛浪士隊 プリムラぷりぷりちー」略して「PPP」
……と、なっている。
ちなみにアンソロジー・ノベル版でのSSSは「シアちゃん新鋭傭兵団」となっている。
原作ゲーム版の「親衛傭兵団」とは漢字違い、誤植を疑うレベルである。

なお、光陽学園時代の親衛隊は陰湿で暴力的な苛めを行う腐った集団となっているが、
こちらに関しては原作からしても否定出来ないどころか、むしろそれに近いことは多々あったと考えても不自然ではない(そうであると明言はされていないが)。

「PPP」の方はネットを介して世界規模の秘密結社へと成長中。恐るべきプリムラの魅力……。

原作では日々稟と追いかけっこするギャグ担当だがキャラクターノベル版では上記の通り、陰湿な犯罪集団へと豹変してしまう。
原作での親衛隊は嫉妬に狂って稟をボコったり、稟も親衛隊をボコったりして日々を過ごしていたが、この行動は小説版と相性が悪かった。

これらの行為はギャグ漫画においての肉食動物との遭遇のようなもの。
追いかけっこしても逃げ切れるし、頭を噛みつかれてもダバダバ血が流れて終わりか、魂が逝きかける程度ですぐに完治してしまう。
けれどシリアス漫画では一般人が危険な動物に出会えば死亡する事は避けられない。
つまり同じ行為であってもジャンルによって結果自体が大きく異なってしまう。親衛隊にもそれが起きた。

原作はコメディ中心なのに対し前述した通りノベライズ版は全体的にシリアスなため、
親衛隊と稟の絡み自体がギャグでは済まない行動に変化、稟も心身共にボロボロになってしまう。
最終的には『血の五月』事件に発展してしまう。麻弓と親衛隊は泣いて良い。

ちなみにKKKは稟達の一年の終わり頃には事実上活動停止状態だったが、
シア達の転入と同時にSSS等に分裂した代わりに活動がまた始まったそうだ。
なお、この『血の五月』事件は小説オリジナル設定で原作設定としては否定されている。

因みにバーベナ学園の親衛隊は
  • 稟達が入学する少し前に光陽学園のOBが中心になり、光陽学園の親衛隊すら吸収した
  • 元々犯罪結社的な側面が強かったが、それなりに頭の良い連中が中枢を握った為に光陽学園時代の物とはもはや別物
とのことである。

その一方で
  • 光陽学園からバーベナ学園への入学者はほとんど居らず、光陽学園時代の親衛隊もほぼ関与していない(規模は光陽学園時代より増加)
という設定もあったりするが、ここは原作での設定と小説版の設定の違いの一つと言える。

親衛隊については原作でも『Essence+』以降出番は減少。
そのため下種で外道な親衛隊はノベライズ版、それなりに綺麗な親衛隊は漫画版と『Essence+』、
ウザいと評判の親衛隊は無印とアニメ版で出会う事が出来る。
なお漫画版の親衛隊は影が薄いが一応存在し、多分一番目立ったのは最終話。


  • 『血の五月』(ブラッディ・メイ)事件
『SHUFFLE!』の原作のコンセプトとは真っ向に反する、劇中における最低最悪の事件
この事件は端的に言うと親衛隊(KKK)による麻弓=タイムレイプ未遂事件及び稟達の暴行事件である。
親衛隊の事件は実行犯約20人、遮音結界などを張っていたらしい裏方組を入れるとなんと約100人になるという。

これは人一倍誠実で責任感の強い稟を楓から離れさせるには、
仲の良い麻弓に暴行を加える事で自分が楓から離れなかった所為だ、レイプされた責任を取る為に麻弓と恋人になろう。
……と責任を感じた稟を麻弓とくっ付けようとした事件である。
正直な話、犯行理由とテンションがギャグ要因のままで意味不明だが、やっていることは性質が悪いというレベルではない。

もちろん本事件はかなり寛容とはいえ、いざという時のパワーはとんでもない稟と樹をブチ切れさせ、
結果、殺意の波動に目覚めた怒りモードの稟と樹、そしてノリノリな麻弓(樹からマジックアイテムレンタル済)によって、
参加した親衛隊は全員重症を負わされた――という事件である。
三世界共存が目的のバーベナ学園は開校間もないのにトンデモ事件を抱えてしまい、
麻弓達が稟の暴行を無かった事にする為に学園に働きかけた事で、最終的に揉み消す事にした。
この事件自体はタブー視されているが、事件が事件なだけに学園中で話題になった。
このような事件が発生した以上、小説版においては瑠璃が親衛隊の創設や活動を認めることは流石に無いと思われる。

因みに、(事件発生後に)この事件及び犯人の動機を楓がどう思っているか、そして事件後における楓の身の形振りは、これまた描写が全く無いため不明である。
尺の都合などが多々あるのだろうけれど、描写によるフォローとはそんなに不味い事なのだろうか?

小形氏がこの事件を描いた背景としては
原作で麻弓が語っていた、「稟が騒ぎを起こしたり、人を殴ったりするなんて信じられない」という台詞と、
麻弓ルートの核である、「稟は他人の為に本気で怒るし、殴ったりもする。そして麻弓は守られる事に慣れていない、だから守られると意識してしまう」を意識して描いたものと思われる。

完全に後付けの弊害*8なのだが、現在のバーベナ学園にはこの事件の犯人達が普通に在籍・卒業していることになる。
またシア編などでの言動を考えると、(学校が事件を揉み消したこともあってか)まるで反省していない様にも解釈出来てしまう。
以上の点についてファンから苦言を呈される事もある。

これを原作と比較すると、
  • 原作にも登場している親衛隊がネタや冗談では済まされない集団になってしまうこと
  • バーベナ学園という舞台が陰湿なイメージになること
  • 上記事件が起きても稟達が平然と過ごしていること
という具合に非常に不味いことになるためか、前述の通り原作でこの事件は否定されている。


  • 芙蓉楓の設定
元より楓の設定は他のキャラと違い、原作の時点できな臭いものや物騒なものが多かった。
そして、それらの設定はキャラクターノベル版と(良くも悪くも)相性が良過ぎた。

問題の設定は、原作や漫画版ではぼかされたりバッサリとカットされており、表に出る事は殆ど無かった。
しかし、上述の楓の過去のように、シリアス重視な上にある程度詳細に描くキャラクターノベル版(原作が描かな過ぎる)においては、
前述の親衛隊の設定と同様に楓の所業が自然と深刻になってしまった。
付け加えると、稟が学校ぐるみの苛めを受け、立場も悪くなってしまった事に関しては、残念ながら楓は断じて無関係ではない。

楓は光陽学園時代も学園のアイドル的存在となっていた。
楓は性格も良く、その他楓周りの描写からも、男子のみならず女子からも慕われていた。*9
そんな彼女に――学校内で稟に表立って暴力を振るうことはないにせよ、殺したい程に――嫌われている稟の方が何か悪いことをしたのだろうと周囲が思い込み、
一方的に悪人となってしまう方が自然な流れではある。
この辺りの点を全否定すると、逆説的に楓が光陽学園時代も慕われているという設定に支障が発生するので*10
原作時点の楓周りの設定からしても、上記の流れは不自然ではない。

本来ならば、楓はこれらの所業に対する裁きを受けるか、何らかの形でけじめをつけるのが筋である。*11
しかし、稟が楓と和解した後で『全部済んだ事だから、これまでの事は忘れよう』と流し、*12
それに幹夫も同調し、楓も『罰されないことが償いであり罰である』と自己完結してしまい、事実上なあなあで誤魔化す形になってしまった。
ややメタ的に言うと、楓は『肝心な事に限って劇中で何一つとして巻き返す事が出来ず、良い所無しのままで終わってしまった』という事である。

ただしこれを補足すると、楓本人としてもむしろ罰して欲しかったと思っているのだが、厳しい言い方をするとここでケジメを付けたかったという甘えとも言える。
楓が悪いと思っていない稟にその気はないのだが、楓は延々と贖罪の気持ちを抱えることに繋がっているため、むしろより重い罰を背負うこととなった。
大局の視点から見ても、楓一人を罰した所で事態の好転や解決――稟の信用回復、稟に対するいじめ問題の解決、稟と楓それぞれのケアなど――には、全く繋がらない。

結果論になるが、必要な事は楓を安易に許したり、もちろん罰する事でも無く、
稟にしろ芙蓉家にしろ自分一人だけで抱え込まずに、皆で助け合いながら少しずつ立て直していく事だったと言える。

加えて全メディアに共通して言える事だが、断絶時代の約五年分の負債を和解後~物語本編開始までの約三年*13で全て清算するという前提自体にそもそも無理がある。
物語開始までに過去を全て清算し切らなければならないといった事は無い*14上に、0か100かで語れる問題ではない事も念頭に置く必要がある。

つまり劇中の時系列を踏まえると、物語開始の時点で過去を清算し切れていないこと自体は、何一つとしておかしくもなければ、やましくもない
楓が上記のように贖罪の気持ちを抱え続けているという原作における根幹的な重要設定にも十分に合致する。


また、キャラクターノベル版の楓は親衛隊(光陽学園・バーベナ学園共に)の創設に間接的に関わってしまっている。
楓自身が親衛隊を助長するような言動をしてしまっているのだが、
光陽学園の親衛隊は元々過去設定を詳細に描こうとすると悪役配置がほぼ必然的なものになってしまうため、その余波を受けたというところだろう。
バーベナ学園のものに関しては、原作と比較すると物語展開の都合としか言いようがないが。


■恋のジグソーパズル

  • 紅葉達が亡くなった後に楓が植物状態になった理由
当時の担当医は幹夫に以下のように話している。
「えぇ……確かに熱も下がってますし、呼吸器系にも問題はありません」
「いいですか、お父さん。私たちも最初は、単なる疲労が原因だと考えていました。
風邪をこじらせたところにお母さんを亡くすというショックを受けたわけですから、たとえ子供でなくとも数日くらい、
寝込んでしまうのは当たり前だろうと……そう判断したんです」

「ですが……今日で三日目です。確か……お葬式の最中でしたよね、倒れられたのは」

「もう少し経過を見るべきですが……おそらく、精神的なものではないかと」
「有り体に言えば、心を閉ざしてしまっているんです」

「ここまで極端な事例は非常にめずらしいものですが……大切な人を失い、それをキッカケに人が変わってしまうということは、よくあることです。
おそらく娘さんは、お母さんが死んだことを信じたくないという一心で、お母さんの死んだこの世界そのものを否定しようとしているんだと思います」

「優しい……娘さんですね」

「普通ならなにかを、誰かを強く憎みます。人は憎むことで、どうすることもできない悲しみを乗り越えようとするものなんです。
ですが、娘さんは誰も憎もうとしない。いえ、憎む事ができないのかもしれない。それこそ、先に死んでしまったお母さんを憎んでもいいのに」

誰も憎もうとしない・憎む事が出来なかったというのも楓が倒れた原因の一つであるため、当時の楓の心が弱かったとは一概には言い切れない
このように、楓は稟の嘘に縋る事をしないで、彼を責める事さえも出来ずに、そのまま衰弱死してしまっていた可能性も十分にあった。
つまり楓が稟の嘘を鵜呑みにしたことは、不幸中の幸いだったという側面もある。


  • 稟が例の嘘をついた理由
稟曰く『両親のように、楓が白いベッドの上で死んだようになっているのが嫌だった』から。
なお、楓からは正直な思いをぶちまけて欲しかったと思われていたようである(この事を話したのは記憶世界であり、実際には楓に何も言っていない)。

稟は『全部自分のワガママ』『楓は馬鹿な嘘に付き合わされた』『こんな嘘はすぐバレる、楓を酷く傷つける事は分かっていた』と自分を責めているが
――事情を踏まえれば、彼が自分を責めてしまうこと自体は仕方ないが――
その割には光陽学園進学後もなお楓に嘘がバレた・楓に真相を気付かれた場合の対策を全く練ろうとしておらず、自分を責めることである意味言い逃れをしたり、楓やこれからの事から目を背ける為の理由探しをしているようにも取れてしまうのが実に不味い所だが
誰か一人だけが悪い・誰か一人に全責任を押し付けて叩けば解決するという類の問題ではない


■アンソロジー・ノベル


  • シアが迷子だった理由
他媒体と同じく父親の仕事についてきた。
しかしヌイグルミが欲しくなってしまい、ユーストマから1万円を貰い一人で買いに行く。
単にヌイグルミが欲しかったわけではなく、キキョウに人界を歩いて欲しかったと言う理由もある。
キキョウに交代している間にヌイグルミが行方不明になってしまい、探していたら迷子になってしまった。


  • 楓の人生が後悔の連続と言う意味
稟のお世話なら問題なく遂行出来るが、自分の事となると失敗の連続になる事。
なにより稟と擦れ違った事で、稟を傷つけてしまった事。


  • 神様に祈る事が無意味だと知った訳
後悔してしまう過去によって昔の楓は神様に赦しを乞うていたが、
隣に越してきた神様なら二人の過去を知ったら『小さい事』と赦し、豪快に笑い飛ばすだろうから。


  • 自分を悪魔だと思っていた理由
後悔する過去では些か行き過ぎた行動をしていたが、それを思い出しては自分を悪魔だと思っていた。
しかし実際の悪魔……というか魔王は楓に微笑んでくれるような優しい魔族だった。


  • バレンタインデー
2月14日に女の子がチョコを渡す日。シア達も稟にチョコを渡そうと行動する。
しかし娘からチョコを貰えない事を察した神様が、他の男も貰えなくしてやる、と町内一帯のチョコを買い占めてしまう。
時を同じくして、料理下手なネリネのチョコ作りを手伝っていた魔王も限界が訪れ病院に運ばれていった。


  • 魔界獣ゾルドバス
卵から孵ったばかりで直ぐに二階建てほどまで成長する、二頭の魔獣。
酔っぱらっていたユーストマを気絶させ稟を弄んでいた所に、やって来たネリネと交戦する。
その力は強く、光陽町を壊滅状態に追い込みネリネの攻撃を数発食らっても平気と言う耐久力を持つ。
実は寂しがり屋で二頭を持つのもそのため。
魔王が新聞屋から貰った『友達の卵』から産まれた怪獣。


  • 神王再生破壊部隊
神王の部下。壊滅した光陽町を元通りにした他、記憶も弄った。


  • 魔王フォーベシイ
ここでは星を消し去る力を持ち、
人類が人としての形を持っていなかった頃から生きている事がうかがえる。
若い頃は血の気が多かったらしく、世界を何度か滅ぼしている
それゆえ創造の力の存在を忘れてしまったらしい。


  • 神界と魔界の共同研究
所謂蘇生魔法の研究の事だが、ここでは研究の理由として、
神王ユーストマと魔王フォーベシイは生命の創造する魔法を有していたが幾多の昔に忘れてしまった、
つまり本来持っていたであろう『本当の神の力』を復活させる研究。
これは神をも恐れぬ所業と稟に言われているが、これは二人が神と魔王だから出来る事。


  • アルバイト生活
ハンバーガーショップ・喫茶店・美術スクール等でプリムラが働いた事。
しかしあまりに魅力的過ぎて男が釣られてしまい、
神王・魔王にボコボコにされて、プリムラがクビになるまでが一連の流れ。
特に美術スクールの講師は一番魅了されたらしく、
人気のない所でプリムラに手を掛けようとした所をガチギレした神王・魔王の友情攻撃で倒された。







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最終更新:2024年04月09日 10:15

*1 発売されたのはPS2版までのヒロインの分だけで桜及び『Essence+』以降の追加ヒロインのキャラクターノベルは発売されていない。そもそもメディアミックス自体が『リアリア』以降出ていない。

*2 特に芙蓉楓編、時雨亜沙編、麻弓=タイム編

*3 余談だが、件の場面での楓の動作を踏まえるとカッターナイフの落ち方が明らかに不自然だったりする

*4 劇中ではこれを「地獄の日々」と表現している。

*5 例えば稟は親衛隊に関しては楓が悪い訳ではないから関係ないとフォローするが、原作では事実そうであるし稟の性格とも合致している発言である。一方で楓はフォローする機会を失い、また彼女の視点・立場からすれば「関係ない」の一言で納得しろというのも無理な話である(それで納得したらしたで、楓が酷い女という事になってしまいかねない)。また、一貫して稟は楓との過去について楓は悪くないと思っているため、なおさらフォローが難しくなっている。この点では稟の側も「楓が悪くない、関係ない理由」を具体的に説明し、楓に納得してもらえるように尽力する必要がある。無論、稟にしろ楓にしろ一方的なものではいけないが。

*6 余談だが『Love Rainbow』の瑠璃=マツリのルートでは、稟に憤りをぶつける者や嫌がらせをする者がいた事に少し触れられている。

*7 「誰が紅葉に連絡したのか」を幹夫が楓に話したのは、楓と稟が中学二年生になる直前である。

*8 血の五月事件の初出は最終巻である麻弓=タイム編であり、それ以前のリシアンサス編~カレハ編ではそもそも示唆すらされていない。

*9 ちなみに女子からの評価は、稟に対するいじめ関連や妬みから元々真っ二つに割れていた。

*10 仮に稟と楓の対立で稟は悪くない、間違っているのは楓ではないかと周囲が思っていたのであれば、皆がそれでも楓を慕い、稟が学校で孤立する光景は非常に違和感の強い設定となる。

*11 上述の通り楓は傷害、器物損壊、名誉毀損は確実に犯しているので一切のお咎めなしは流石に無理があり過ぎる。メタな視点から見れば、楓が読者から反感を買って嫌われかねないという重大なリスクも発生する。

*12 稟の性格上、楓を罰することはまず出来ない上に楓に対して負い目を抱えているので、自然な台詞ではある。

*13 受験を踏まえると、光陽学園三年生時の一年を引いて実質約二年か。

*14 物語上の意味も当然あるが、焦りは禁物という意味でも。